TOUCH THE SECURITY Powered by Security Service G

近年、クラウドサービスの利用拡大やリモートワークの普及に伴い、企業のセキュリティリスクは急激に高まっています。従来の境界型防御では社外からのアクセスや内部不正に十分対応できず、情報漏えいや不正アクセスの問題が深刻化しています。
そのため、「ゼロトラストとは何か知りたい」「ゼロトラストモデルのメリットや導入の際の注意点を詳しく理解したい」と考える企業も増えています。
この記事では、ゼロトラストの基本概念から従来型セキュリティとの違い、導入時のメリット・デメリットについて詳しく解説します。ゼロトラスト導入を検討中の担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次

監修:大畑 健一(おおはた けんいち)
パーソルクロステクノロジー株式会社
採用・教育統括本部 ICT採用本部 キャリア採用部 2G
メーカーや教育、キャリア系を中心にネットワークエンジニアの経験を持つ。
2020年10月にパーソルクロステクノロジー(旧パーソルテクノロジースタッフ)に入社。
2022年4月から現在の部署にて中途採用エンジニア向けの広報を担当。
ゼロトラストとは何か
近年、サイバー攻撃の巧妙化やクラウドサービスの普及に伴い、従来のセキュリティ対策では防ぎきれないリスクが増加しています。こうした背景の中で注目を集めているのが「ゼロトラストモデル」です。 ゼロトラストとは、「すべてのアクセスを信用しない」という前提のもと、ネットワークやシステムへのアクセスを厳格に管理するセキュリティフレームワークです。以下で、ゼロトラストの基本概念や従来型セキュリティとの違いについて詳しく解説します。
ゼロトラストの概念
ゼロトラストは、"Never Trust, Always Verify"(決して信用せず、常に検証する)という考え方に基づいています。従来のセキュリティモデルでは、企業の内部ネットワークを「安全な領域」とし、外部からの攻撃を防ぐ「境界防御」が主流でした。しかし、クラウドの普及やリモートワークの増加により、境界防御だけでは不十分となりました。 ゼロトラストでは、すべてのユーザーやデバイスのアクセスを疑い、認証・検証を厳格に行うことで、内部・外部を問わずセキュリティを強化します。
従来型セキュリティとの違い
従来のセキュリティは、ファイアウォールやVPNを活用して企業ネットワークを守る「境界型防御」が基本でした。しかし、クラウドサービスの利用拡大やリモートワークの一般化により、社内ネットワークに依存したセキュリティ対策では対応できなくなっています。 ゼロトラストでは、すべてのアクセスを慎重に確認し、必要最小限の権限だけを付与することで、ネットワークの内外を問わず安全を確保します。
ゼロトラストモデルとゼロトラストセキュリティの定義
「ゼロトラストモデル」は、企業のIT環境全体を保護するための概念であり、「ゼロトラストセキュリティ」は、それを実現するための具体的な技術やフレームワークを指します。 ゼロトラストセキュリティには、多要素認証(MFA)、エンドポイントセキュリティ、ネットワークセグメンテーション、動的アクセス制御などが含まれます。
ゼロトラストセキュリティが注目される理由
ゼロトラストが注目される背景には、以下のような要因があります。
クラウドサービス利用の拡大
クラウドベースのSaaS(Software as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)などの普及により、企業のデータがオンプレミス環境にとどまらず、さまざまなクラウド上に分散されるようになりました。従来の境界防御では、こうしたクラウド環境の保護が難しくなっています。
社外アクセスの増加とデバイス多様化
リモートワークやモバイルワークの拡大により、従業員が社外から業務システムにアクセスする機会が増えました。また、個人所有のデバイス(BYOD: Bring Your Own Device)を業務に利用するケースも増えており、従来の「信頼できるデバイス・ネットワーク」の概念が崩れつつあります。
内部不正・情報漏えいリスクの高まり
企業内の従業員や委託業者による内部不正が問題となっています。特に、特権アカウント(管理者権限を持つアカウント)が不正利用されるケースが後を絶ちません。ゼロトラストの考え方を取り入れることで、内部からの脅威にも対応できるセキュリティ体制を構築できます。
ゼロトラストモデルの構成と要素
ゼロトラストを実装するうえでは「常に検証し、決して信頼しない」という原則を人・デバイス・ネットワーク・データ・ワークロードの五つの軸で徹底する必要があります。単にアクセス制御を強化するだけではなく、デバイスの状態確認、機密データの保護、脅威の監視・対応までを統合的に仕組み化することで、初めて“境界のない”環境でも一貫したセキュリティが担保されます。以下では、ゼロトラストを構成する主要要素と具体的な役割・ベストプラクティスを解説します。
認証とアクセス管理
ゼロトラストの出発点は厳格な本人確認と動的アクセス制御です。信頼の前提を置かず、リクエストごとに「誰が・どのデバイスで・どこから」アクセスするのかを検証します。
多要素認証(MFA)
パスワード+生体認証やFIDO2セキュリティキー、プッシュ通知型OTPなど、“知識・所持・生体”の複数要素を組み合わせて不正アクセスを大幅に低減します。近年はリスクベースMFA(リスクの高い接続のみ追加要素を要求)で利便性も確保しています。
ID管理とアクセス制御(IAM)
IAMは最小権限の原則(PoLP)を自動で適用し、不要な権限の横展開を防止します。
・RBAC/ABACによる動的ポリシー
・JIT(Just-In-Time)アクセスで一時的な権限付与
・IDフェデレーションやSAML/OIDCでクラウド間をシームレス連携
などが鍵となります。
ネットワークセキュリティ
「社内=安全」という境界モデルを廃し、通信単位で信頼を再評価します。
ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)
SDP(Software-Defined Perimeter)技術を用い、ユーザーの属性・デバイス姿勢・場所を検証したうえで必要なアプリケーションへの個別トンネルを確立します。 VPNより細粒度かつ設定ミスが少ないのが大きな利点です。
マイクロセグメント化
ワークロード/サーバー間をL4/L7ポリシーで細分化し、万が一侵入されても縦横展開させない構造を作ります。エージェント型分散FWやSD-WAN/SDNでのポリシーテンプレート化が有効です。
エンドポイントセキュリティ
エンドユーザー端末はクラウドやSaaSへの入口でもあり、ゼロトラストではデバイス健全性の証明が必須となります。
EPP(Endpoint Protection Platform)
次世代AV(NGAV)や機械学習型マルウェア検知で既知・未知の脅威をブロックします。パッチ管理・外部メディア制御・アプリケーションホワイトリストも統合します。
EDR(Endpoint Detection and Response)
振る舞い分析によりゼロデイ攻撃を検知し、隔離・ロールバックなどの自動レスポンスでMTTD/MTTRを短縮します。最近はネットワーク・クラウドのログまで統合したXDRへ拡張するケースも増えています。
データ保護
アクセス先がクラウドかオンプレかを問わず、データ自体を防御対象として扱うことがゼロトラストの要諦です。
DLP/暗号化/CASB
・DLPで機密情報の持ち出しや画面キャプチャを制御
・ファイル暗号化とIRMで外部共有後も権限制御を維持
・CASBでSaaS利用状況を可視化し、シャドーITを排除――
これらを連動させることでデータ主体のセキュリティが完成します。
可視化と分析
すべてのアクセスイベントを中央に集約し「継続的検証サイクル」を回します。
SIEM(Security Information and Event Management)
ログをリアルタイム相関分析し、UEBA(User & Entity Behavior Analytics)で異常パターンをスコアリングします。MITRE ATT&CKフレームワークを組み込むと、攻撃ライフサイクルを可視化できます。
自動化と運用効率の向上
人手依存を減らし、即応性と一貫性を高めることで、ヒューマンエラーも減少させられます。
SOAR(Security Orchestration, Automation and Response)
インシデント→チケット発行→隔離→証跡保全――といった一連のプロセスをプレイブックとして自動実行。人的コストを抑えつつ、 SLA遵守と証跡の一元管理を両立させます。
ゼロトラストセキュリティの構成要素やメリット、導入手順を徹底解説!
ゼロトラスト(モデル)導入の背景と必要性
近年、企業のIT環境は急速に変化し、従来のセキュリティ対策では対応が難しくなっています。特にクラウドサービスの普及やリモートワークの増加により、境界型防御の限界が明らかになっています。以下で、ゼロトラストが求められる理由や市場・業界の動向について詳しく解説します。
ゼロトラストが求められる理由
ゼロトラストの導入が必要とされる背景には、従来のセキュリティモデルが抱える課題があります。主に以下の3つの理由が挙げられます。
境界型防御の限界
従来の境界型防御は、企業のネットワーク内に「安全な領域」を設け、外部からの攻撃を防ぐ考え方に基づいています。しかし、クラウドサービスの利用が拡大し、従業員が社外から業務システムにアクセスする機会が増えることで、境界の概念が曖昧になりつつあります。 ゼロトラストは「すべてのアクセスを信用しない」前提のもと、ネットワークの内外を問わず厳格な認証とアクセス制御を行うことで、従来の防御モデルの限界を克服します。
テレワーク・クラウドサービスの普及によるセキュリティリスクの増大
新型コロナウイルスの影響もあり、多くの企業がリモートワークを導入しました。その結果、従業員が自宅やカフェなど、さまざまな場所から業務を行うようになり、企業ネットワークの外部からのアクセスが増加しています。 さらに、企業が利用するクラウドサービスも増え、従業員が個人所有のデバイス(BYOD)を業務に使用するケースも一般的になりました。これにより、従来のVPNや境界型防御だけでは、適切なセキュリティ対策を維持することが困難になっています。 ゼロトラストは、これらの新たなリスクに対応するための重要なフレームワークとして注目されています。
市場・業界の動向
ゼロトラストの概念は、IT業界だけでなく、さまざまな業界で採用が進んでいます。特に、政府機関や金融機関といった高いセキュリティを求められる業界では、ゼロトラストモデルの導入が急務となっています。
国内外の次世代セキュリティ要件
ゼロトラストは、国内外の政府機関や企業において、次世代のセキュリティ対策として推奨されています。 例えば、アメリカの連邦政府は「ゼロトラスト戦略」を策定し、政府機関全体でのゼロトラスト導入を義務付ける動きを進めています。日本においても、デジタル庁や総務省がゼロトラストの導入を推奨しており、企業における採用が加速しています。
ゼロトラスト(モデル)導入のメリットとデメリット
ゼロトラストは、企業のセキュリティ対策を抜本的に見直すための有力なアプローチです。しかし、その導入には多くのメリットがある一方で、課題やデメリットも存在します。以下で、ゼロトラスト導入による具体的な利点と、考慮すべきリスクについて解説します。
メリット1:セキュリティ強化と情報管理の向上
ゼロトラストの最大のメリットは、セキュリティの強化です。従来の境界型防御では、社内ネットワークに侵入された場合、内部の情報資産が一気に危険にさらされるリスクがありました。しかし、ゼロトラストを導入すると、アクセスごとに厳格な認証・検証が行われるため、不正アクセスのリスクを最小限に抑えることができます。
具体的なセキュリティ向上のポイントは以下のとおりです。
- 不正アクセスの防止
- データ流出のリスク低減
- 脅威の早期検知
メリット2:あらゆる場所からの安全なアクセス
リモートワークの普及に伴い、企業は従業員がどこからでも安全に業務を遂行できる環境を整備する必要があります。ゼロトラストを導入することで、従業員はオフィス、自宅、出張先など、どこにいてもセキュリティを確保しながら業務を行うことが可能になります。
デメリット1:導入コストと運用負担の増加
ゼロトラストの導入には、初期コストと運用コストがかかります。既存のシステムを大幅に変更する必要がある場合、ハードウェアやソフトウェアの投資が必要となり、導入コストが高額になることがあります。
また、ゼロトラストは従来のセキュリティモデルよりも複雑な管理が求められるため、IT部門やセキュリティ担当者の負担が増加する可能性があります。具体的な課題として、以下の点が挙げられます。
- システムの見直し:既存のアクセス管理や認証システムをゼロトラスト対応にするための調整が必要。
- 従業員の教育・研修:新しいセキュリティポリシーを理解し、正しく運用できるようにするための研修コストが発生。
- 継続的な監視と運用:リアルタイムでのアクセス制御やログ監視が求められ、運用負荷が増える。
デメリット2:業務効率への影響
ゼロトラストの導入により、セキュリティが強化される一方で、業務の利便性が低下する可能性があります。例えば、アクセスのたびに認証が必要になるため、従業員にとっては手間が増えるケースがあります。
また、ゼロトラスト導入後は、従業員が社内システムやデータにアクセスする際のルールが厳格化されるため、以前はすぐにアクセスできたデータが、申請しないと閲覧できなくなったといった不便さを感じることもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事では、ゼロトラストモデルの基本概念から導入の背景、具体的なセキュリティ対策や企業における戦略まで詳しく解説しました。 ゼロトラストは、従来の境界型防御では対応できないリスクに対処し、安全なIT環境を実現するための重要な考え方です。理解は深まりましたか? 企業のセキュリティ強化が求められる今、本記事を参考に、ゼロトラストの導入を検討し、より強固なセキュリティ体制を構築してみてください。
セキュリティエンジニアを目指す方
パーソルクロステクノロジー社で実現しませんか?
パーソルクロステクノロジー社では現在、
AWS、Azureといったクラウド業務のプロフェッショナルとして活躍したい方を募集しております。
パーソルクロステクノロジー社では、充実した環境で
セキュリティエンジニアとしてのキャリアを歩むことができます。
- 上流から構築まで幅広い領域・分野のプロジェクトへの参画
- 未経験者でも安心の教育制度(集合研修、e-learning研修、リモート学習など)
- 仕事とプライベートを両立できる環境
気になる方はぜひ下の詳細ページをクリックしてみてください。