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次世代技術発展のカギとなる「インバータ」って何?

機電派遣コラム

「インバータ」という言葉を目にしたことはありますか?家電量販店に行くとエアコンや洗濯機などの家電にうたい文句で用いられているのをよく見かけますが、インバータとはどんな技術なのか詳しく知っている人は多くありません。実は、このインバータという装置は電気自動車(EV)やロボット、太陽光発電システムといったこれからの市場成長が確実な研究分野の価値を決める、キーテクノロジーなのです。今回は、サステナブルな社会実現に欠かせないインバータの技術について解説するとともに、技術開発と応用開拓を担うエンジニアの役割を紹介します。

 

そもそも「インバータ」って何?

発電所から家庭や工場に供給される電力は一般的に交流電力で、電球やモーターなどは交流電力で動きます。しかし、パソコンやテレビなどに搭載されている半導体は直流電力でないと動きません。このため、家庭用のコンセントにつないだ電子機器には、交流電力を直流電力に変えるための「コンバータ」と呼ばれる電気回路が使われています。電子機器のケーブルの途中にあるACアダプタは、こうしたコンバータの一種です。

そして最近では、逆に直流電力を交流電力に変えて使うニーズもにわかに増えてきました。例えば、電気自動車(EV)は、バッテリーの出力である直流電力を交流電力に変換し、これをモーターに入力して動かしています。他にも、大規模太陽光発電所(メガソーラー)では、太陽光パネルで生み出した直流電力を系統と呼ばれる電力網を通じて送電するため、交流電力に変換しています。この直流電力を交流電力に変える電気回路のことを、コンバータの逆の処理をするという意味から、「インバータ」と呼んでいます。

インバータを活用する機器やシステムの例。
(左)電気自動車のボンネットの内部、(右)メガソーラーで利用されるインバータ
出典:moonrise / romaset ? stock.adobe.com

さて、「インバータってエアコンの省エネ技術のことでは?」と思った人も多いかもしれませんが実はその通りで、エアコンにもインバータが使われています。エアコンはコンプレッサ(モーターの力で冷媒を圧縮する装置)を家庭用交流電源で動かす家電なので、一見インバータは要らないように思えます。しかし、インバータにはもう1つ大切な機能があるのです。それが交流電力の電圧や周波数などを自由自在に調整する機能です。この調整機能を利用すれば、エアコンや洗濯機、工場の工作機や産業ロボット、さらに車や電車などを動かすモーターの省エネルギー化ができるのです。

一般社団法人日本電機工業会によると、世界中で消費している電力のうち、40%?50%がモーターを回すために消費されているといわれています。しかも、今後自動車の動力源はエンジンからモーターに変わることが確実で、この割合はさらに高まることが予想されます。つまり、インバータはモーターの低消費電力化のキーテクノロジーであり、サステナブルな社会の実現に欠かせない技術なのです。

 

スイッチの動きを制御して直流を交流に変える

それでは、インバータの動作原理を1個の電池が出力する直流電力から交流電力を作り出す場合を想定して簡単に解説します。この時、下図のように最低4つのスイッチを組み合わせてインバータを構成することになります。それぞれのスイッチは、通常トランジスタとダイオードを組み合わせて作られており、回路中のスイッチのうち、対角線上のスイッチ同士を一組(AとDもしくはBとC)として動かします。一方の組が“オン”の時、もう一方の組が必ず“オフ”になるように、一定のリズムでスイッチを開閉すると、回路中央の負荷に流れる電流の方向がスイッチの開閉に沿って切り替わって交流電力になります。これがインバータの基本原理です。

直流電力を交流電力に変えるインバータの基本原理

モーターをスムーズに動かすためには、波形が滑らかな正弦波の交流電力を作る必要があります。ところが、先ほど説明したインバータ回路では、電流の方向を一定周期で切り替えるのみで滑らかな交流電力を作ることができません。この問題を解決するために、スイッチを作り出す交流の周期よりも細かく開閉し、同時に開閉時間を精密に制御することで、滑らかな交流電力を擬似的に作り出しています。こうした制御法は、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)制御と呼ばれ、様々な省エネ型モーターの制御に使われています。

インバータの性能はスイッチを構成するトランジスタなど半導体の特性と、PWM制御の巧妙さによって決まります。このうち、PWM制御でスイッチを開閉するタイミングは、マイコンを使ってソフトウェア制御することになるため、インバータの開発にはプログラミングの知識も必要になってくるのです。

 

交流を直流に変えるスイッチング電源

スイッチを高速動作させつつ、精密制御することで思い通りの電力を作るインバータの動作原理は、コンバータの省エネルギー化や小型・軽量化にも利用されています。このようなスイッチを使って電力を変換するコンバータのことを、スイッチング電源と呼んでいます。

1990年代までのACアダプタの中には大きな鉄の塊であるトランスが入っており、家庭用の100Vの交流電力を低電圧に変換して直流電力に変換していました。そのため、当時のACアダプタは電子機器よりも大きく、重たいものでした。これに対し、スイッチング電源では、電圧を変化させないまま100Vの交流電力を直流電力に変換します。この直接変換した直流電力の電圧を下げる際に利用されるのがインバータの応用です。

スイッチを高速で開閉してPWM制御することで、電圧が安定した擬似的交流を作り出します。この時、家庭用の交流電力の周波数である50Hzや60Hzよりも高い10kHz?数100kHzでスイッチを開閉することによって、周波数に反比例するトランスを小型化できるのです。さらにPWM制御で電圧を安定させているため、これまで電圧を安定させるために使っていた電力損失が大きい半導体部品を削減することにもつながります。こうしてACアダプタの劇的な小型・軽量化と変換効率の向上が可能になりました。

 

EV市場の成長がインバータ技術の進化を加速

インバータやスイッチング電源は現在も技術開発が盛んに進められていますが、この動きを加速させているのが世界中でムーブメントとなっているEVシフトです。ヨーロッパや中国、インドなど、多くの国々はガソリン・ディーゼル車の販売禁止時期を定めていて電気自動車への切り替えを促しています。電気自動車の市場成長が確実となる中、自動車メーカー各社の目下の課題はクルマの性能や航続距離、使い勝手に大きく影響するインバータの開発になるというわけです。

そんな中で、電気自動車用インバータのスイッチに使われるトランジスタやダイオードでは、大きな技術革新が進行中です。これまで半導体の素材は主にシリコンが使用されていました。しかし、新素材のシリコンカーバイド(SiC)に変えることで、より高効率かつ、高い周波数でのスイッチングが可能です。SiCベースの半導体でスイッチを構成すれば、インバータの大きさや電力変換時の損失が半減するといわれており、電気自動車だけでなく、鉄道やメガソーラー、工場設備など、高電圧の電力を扱う分野での活用が広がりつつあります。

インバータなどのスイッチを構成する半導体に技術革新が起きている

また、家庭用電源レベルの比較的低電圧の電力を扱うインバータやACアダプタでも窒化ガリウム(GaN)という新しい半導体材料が研究されています。これはスイッチング電源の動作周波数をさらに高めることができるため、ACアダプタを今よりも一層小さくできる可能性があります。

SiCやGaNといった新材料をベースにしたスイッチを利用するためには、動きを制御するための新たな制御回路が必要になります。これまではシリコンベースの半導体をスイッチとして使うことを前提にした制御回路が作られてきました。しかし、今後新材料に対応した制御回路の開発はますます活発化していくことでしょう。この分野の技術に対する需要は極めて高く、付加価値の高い回路設計者を目指す人にとっては見逃せません。

EVのモーター駆動システムの構成

 

 

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