Wi-Fiの100倍速い! LED照明の光で無線通信できるLi-Fiとは
無線通信技術「Li-Fi」は光を利用する次世代無線通信技術です。
Li-FiはWi-Fiの100倍に相当する速度でデータ通信が可能といわれています。
2019年から2024年にかけて、Li-Fiの世界市場における年平均成長率は70.54%を超えると見込まれています。
この記事ではLi-Fiについて詳しく解説します。
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LED照明で無線通信! Li-Fi(ライファイ)とは
LED照明の光でデータ通信ができるLi-Fiとはどのようなものなのでしょうか。
開発までの研究過程と技術について説明します。
Li-Fiはいつどこで生まれた? その後の研究過程
「Li-Fi」は「Light Fidelity」の略で、光無線通信技術の一種です。
2011年にドイツの物理学者ハラルド・ハース教授より、「Li-Fi」は発表されました。
光を使った無線通信は、可視光通信(VLC:Visible Light Communication)と呼ばれ、その歴史は1880年代までさかのぼります。
歴史的に見れば、光を利用したモールス通信なども可視光通信に入りますが、現在ではLEDを使った通信技術に重点が置かれています。
Li-Fiの技術は、人の目にはわからないほど超高速でLEDを点滅させることにより、光をデジタル信号に変えてデータを送信するというものです。
Li-Fiが発表されてから約4年後の2015年に、エストニアの企業Velmenniが首都タリンで実証実験を行なったところ、1秒あたり約1ギガバイト(8ギガビット)のダウンロード速度が計測されました。
研究室内の実験では理論上、毎秒224ギガビットの情報を送信できることが確認されています。
これは1.5ギガバイト(2時間ほど)の映画18本分のデータをわずか1秒でダウンロードできる速度です。
Li-Fiの技術・原理とは
Li-Fiの技術・原理を詳しく説明するにあたり、類似するテレビの赤外線技術を例に挙げましょう。
- リモコンのボタンを押してチャンネルを変える指示を出す。
- 「チャンネルを変える」という指示がバイナリコードに変換され、リモコンセンサーが発する赤外線に乗って伝送される。
- テレビの赤外線センサーがその光波を受信して解読、指示通りにチャンネルを変える。
Li-Fiの場合、LED電球が発する変調光波が赤外線の役目を果たし、データを伝送します。
そして、スマートフォンやノートパソコンに搭載されている光センサーがデータを受信、解読する仕組みになります。
日本では2019年にLi-Fi対応照明器具が発表された
日本でのLi-Fi(LiFi)実用化に向けた動きも紹介しておきましょう。
2019年、シグニファイジャパン合同会社よりインターネットに接続可能なLiFi技術対応の照明器具が発表されました。
シグニファイジャパンは、これまでもLED照明器具をはじめ、IoT、可視光通信を活かしたソリューションを提供している先進的な企業です。
このLiFi対応照明器具は日本で初めてインターネット接続に対応した照明器具です。
これなら照明としての品質はそのままに、30Mbpsのブロードバンド接続が可能となります。
照明さえつけておけば、ビデオ通話をしながら複数のハイビジョン画質のビデオを同時にストリーミングするということもスムーズにおこなえます。
Wi-Fiとの違い
現状のスタンダードな無線LANの一種である「Wi-Fi」と「Li-Fi」ではどのような点が異なるのでしょうか。
可視光通信である
Wi-Fiは電波を使って通信をおこないますが、Li-Fiは光を使用します。
電波は目に見えませんが、LED光は色が付いているので見ることが可能です。
目に見える光を使って情報を伝達する技術を「可視光通信」と呼びます。
Wi-Fi通信の場合は電子レンジと周波数が重なってしまい、速度低下を引き起こすなどの問題がありました。
しかし、Li-Fiなら電波の影響を受けないため電波障害の心配はありません。
また、Wi-Fiのように大量の電力を要する電波塔を設ける必要がないため、エネルギー効率が良いこともLi-Fiのメリットです。
Li-Fiの速度はWi-Fiの100倍
Li-Fiの通信速度は圧倒的で、Wi-Fiと比較すると100倍以上スピードの差があるといわれています。
無線高速通信が可能な理由は可視光線を使用するデータ通信方法にあります。
可視光線はWi-Fiが使用する電波よりも多くの情報を通信できる光スペクトルを持つため、Wi-Fiよりも高速での通信が可能です。
大容量の動画やゲームもスピーディーにダウンロードできます。
壁を通らない
LEDの光は壁を透過しません。
そのため、外部から無断でネットワーク接続されるようなこともなく、ユーザーの制御がしやすくなります。
Li-FiならWi-Fiよりも強固なセキュリティ対策が可能です。
電波干渉がない
Wi-Fiには通信規格があり、現在は主に「IEEE 802.11ac」と「IEEE 802.11n」が普及しています。
これらの通信規格で使用する周波数帯は2.4GHzもしくは5GHzです。
同周波数帯に通信が集中すると電波干渉が起こり、通信の遅延が発生するなどの支障が起こる可能性があります。
一方、Li-Fiは電波を利用しないため干渉の心配はありません。
たとえば、ショッピングモールやスポーツスタジアムなどで、大勢の人が同時に動画やライブストリーミングなどにアクセスしても、Li-Fiなら通信の遅延は起こりません。
Li-Fiがとくに活躍する場所は?
将来的にLi-Fiがとくに活躍すると考えられているのは、下記のような場所です。
病院
Wi-Fiの電波が精密機器に影響を与えるため、病院内ではワイヤレスインフラの導入がなかなか進みませんでした。
しかしLi-Fiなら導入が可能です。
Li-Fiで無線通信が可能になれば、病院内のどこにいても、スマートフォンやタブレット端末で、電子カルテを見ることができます。
また、Li-Fiの技術をもってすれば、廊下のLEDライトが位置情報を発信し、電動車いすに乗った患者を自動的に診察室へ誘導するということも可能です。
病院と同様に電波が機器に支障を与える可能性があるためWi-Fiが使えなかった旅客機の機内や原子力発電所でも、問題なくインターネットが利用できます。
自動車
自動車のライトにLi-Fiを導入することで、多数のメリットが生まれます。
豊田中央研究所では、LEDを用いたV2V(車車間通信=車と車の間の通信)やI2V(路車間通信=路側機と車の間の通信)の研究を進めています。
光を使った通信は電波よりも遅延が少ないため、車同士で通信しながら加減速の調整をおこなうことが可能です。
また、路側機や信号機、街灯から走行中の車へ、現在の道路状況に関する情報を提供することも可能になります。
車がリアルタイムで交通情報を受信できるようになれば、渋滞の緩和や、安全性の向上につながります。
ほかにも、壁を透過しないというLi-Fiの特性を活かして、セキュリティが重視される金融機関や空港、研究所での活用も期待されるでしょう。
実用化にあたり今後の課題は?
Li-Fiの実用化にあたっては、いくつかの課題があります。
LED照明がある部屋でしか使用できない
Li-Fiは壁を通らないため、設置している部屋以外から通信を傍受される心配はありません。
一方、たとえ一戸建てだとしても、壁で区切られている場合は各部屋にLED照明が必要になります。
照明も従来のLED照明をそのまま使うことはできません。
Li-Fi対応のLED電球への変更が必須です。
デバイス側もLi-Fi対応の光センサーを搭載していなければ使用できません。
屋外では使用できない
屋外の直射日光のもとでは、光センサーが変調光波を検出できないため、Li-Fiは基本的に使用できません。
屋内と屋外でLi-Fiと他の通信技術の使い分けを考慮する必要があります。
ただし、前述のV2V、I2Vの研究は屋外でのLi-Fi利用を想定して進められています。
直射日光下で動作するLi-Fiの送受信機の開発例もあり、課題解決への道筋は見えているといってよいでしょう。
2020年商用化予定の5Gと併用が理想!
現在、2020年の5Gサービス開始にあわせてLi-Fiの規格化が進められています。
5Gとは
5Gとは、モバイルネットワークの第5世代技術のことで、第5世代移動通信システムとも呼ばれます。
5Gは、4Gのようにスマートフォンに限定したものではなく、あらゆる端末のための技術として開発されてきました。
5Gに期待される要件は以下の通りです。
- トラフィック量の増加に伴う大容量化
- 時間・場所問わず安定した高速通信
- 通信の低遅延化と自動運転の安全性を保つ信頼度
- 同時接続可能な端末数の大幅アップ
- コストの削減と省電力化
5Gサービスは、2020年の商用化を目指してNTTドコモをはじめとする通信各社がすでに研究開発を進めています。
5Gが今後主流の通信技術となることは間違いないでしょう。
しかし、5G技術は電波干渉を起こす可能性があり、航空機内や手術室等では使用できないというデメリットがあります。
この点はLi-Fiとの併用で解決可能です。
現状の通信環境で感じているストレスをクリアしたうえで、さらなる通信の可能性を5GとLi-Fiが広げてくれることは確かでしょう。
- Li-FiとはLEDの光を使った可視光無線通信
- Li-FiはWi-Fiの100倍以上の速度が出せる
- 壁を透過しないためセキュリティに優れている
- 課題をカバーし合う5GとLi-Fiの併用が理想的