ロボットエンジニアになるには?年収や仕事内容、向いている人の特徴を解説
ロボット掃除機や配膳ロボットなど、わたしたちの身近な生活のなかで、ロボットが活躍する姿は多く見られるようになりました。今後ますます深刻化する高齢化や人手不足といった社会課題の解決に向け、ロボット技術の進化には大きな期待が寄せられており、ロボットの設計や開発を担うロボットエンジニアの仕事にも注目が集まっています。
また、国内企業各社が産業用ロボットの世界シェア上位を占有しているように、日本は世界有数のロボット開発大国でもあります。技術者としてのレベルアップや高い市場価値の獲得も念頭に、ロボットエンジニアの仕事に興味を抱いている人も多いのではないでしょうか?
本記事では、ロボットエンジニアの具体的な仕事内容や求められるスキルのほか、年収や将来性などについても考察していきます。
POINT
- ロボットエンジニアとは、ロボットの設計や開発、運用、メンテナンスなどを担うエンジニア
- 極めて高い将来性が見込まれる職種で、年収水準は他のエンジニア職と比較しても高め
- 就業の際にはロボット工学や電子工学などの専門知識が求められるケースが大半であるほか、ITエンジニアの経験やプログラミングスキルなど、関連する業務の経験値が問われることもある
- 未経験者にとって、就業までのハードルは低いとはいえないが、間口は比較的開かれており、派遣案件も充実している
Contents
ロボットエンジニアとは
ロボットエンジニアとは、ロボットの設計や開発、運用、メンテナンスなどを担うエンジニアです。プログラミングなどのITスキルのほか、機械工学や電気工学といった分野における専門的な知識が求められる職務となります。
なお、ロボットと一言でいっても、その種類はさまざまです。
- 工場などで使用される「産業用ロボット」
- 医療現場で用いられる「手術支援ロボット」
- 飲食店のオペレーションに加わる「配膳ロボット」
- 一般家庭向けの「ペットロボット」 など
ロボットエンジニアは、これら多様な領域に浸透しているロボットの開発や運用に従事します。
ロボットエンジニアの仕事内容
ロボットエンジニアが担う職務は多岐にわたります。設計や開発工程はもちろん、その前段階となる仕様策定から動作検証、さらには製品化後のメンテナンスサポートに至るまで、ロボット活用に関する一連のフェーズに携わります。
ロボットエンジニアの仕事内容について、次のプロセスごとに確認していきます。
- 仕様・用途の策定
- 設計・開発
- 実験・検証
- メンテナンスサポート
仕様・用途の策定
ロボット開発のファーストステップにあたるのが、ロボットの用途や仕様の策定です。これはITシステムやWebサービスの開発フローと同様であり、まずは要件定義からスタートする流れです。
たとえば自社製品の開発であれば、市場調査などからユーザーのニーズや課題を発見し、それらに応えられるように、ロボットの用途や機能といった仕様を定めていきます。クライアントからロボットの開発を受託する場合は、ヒアリングを経て要望や課題を整理し、仕様を決定する流れになります。
その後、ロボットの性能や安全基準など、さらに具体的な要件を掘り下げていきます。
設計・開発
ロボットの用途や仕様を決定したら、ハードとソフトの両面から設計・開発に移行します。
設計段階では、機械的な構造や電子回路、ソフトウェアのアーキテクチャなどを定めます。開発フェーズでは、設計に基づいて実際にロボットを組み立て、正しく動作させるためのプログラムを作成します。
なお、この工程では「センサ系」「知能・制御系」「駆動系」といったように、チームに分かれて作業を進めていく方式が一般的です。
センサ系 |
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知能・制御系 |
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駆動系 |
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実験・検証
続いて、設計した仕様が守られ、プログラミング通りに動作するか、実験を重ねて結果を検証します。具体的には次のようなテストを実施し、ロボットが期待通りの性能を発揮できているか、動作に不具合がないかなどを細かくチェックします。
- 性能テスト:ロボットの各部品やシステムが設計通りに動作するかを確認します。たとえば産業用ロボットであれば、精密な動作の確度や高負荷環境下での動作をテストします
- 環境適応テスト:ロボットが使用される環境を想定し、正常に動作するか確認します。温度や湿度、振動など、さまざまな環境条件下で実施します
- 安全性試験:ロボットが安全に動作することを確認するためのテストです。特に医療用ロボットや人間と直接触れ合うサービスロボット開発では極めて重要な工程になります
- 耐久試験:ロボットが長期間の使用に耐えうるかを確認するための試験です。繰り返し動作させることで、部品の摩耗や劣化をチェックします
これらの実験・検証作業を通じて、必要に応じて設計やプログラムの修正を行います。
メンテナンスサポート
ロボットを製品として納入した後、安定した動作を確保するためのメンテナンスも、ロボットエンジニアの重要な職務です。定期的な点検のほか、消耗品や磨耗した部品の交換、修理対応などを行います。
また、機能追加やセキュリティ関連などのソフトウェアのアップデートといった業務も含まれます。これにより、ロボットの性能を維持し、長期間にわたっての安定稼働を確保します。
ロボットエンジニアの高い将来性と「やめとけ」といわれる理由
ロボットエンジニアの仕事には、極めて高い将来性が見込まれています。これは、ロボット技術やAI技術の急速な進化を受け、多様な分野における需要がますます増加していくためです。医療分野や製造業、サービス業など、あらゆる産業でロボットの活用が進んでいることから、ロボットエンジニアに対するニーズも高まっていくと見られます。
また、少子化による生産年齢人口の減少に伴う人手不足も、ロボットの活用が拡大していく要因のひとつです。工場や店舗、介護施設などへのロボットの導入は、中長期的に増加していくでしょう。
しかし、高い将来性の一方で「ロボットエンジニアはしんどいからやめとけ」とネガティブな声も聞かれます。こうした主張は、次のような背景に起因すると考えられます。
- タイトな納期:まずはクライアントの求める開発スケジュールの厳しさが挙げられます。これはロボットエンジニアに限った話ではありませんが、納期までに製品化を間に合わせなければならない精神的負荷は軽いものではありません
- 技術進歩が速い:ロボット技術はイノベーティブな分野であり、常に最新の知識を追いかける必要があります。継続的な学習と自己研鑽が求められることに辛さを感じることもあるでしょう
- プレッシャーが大きい:高度な技術を取り扱うことから、失敗が許されない場面にも出くわします。特に医療用ロボットや産業用ロボットでは安全性や正確性の確保が重要であり、プレッシャーのかかる仕事です
これらの理由から、一部ではロボットエンジニアというキャリアに対して慎重な姿勢をとる人もいます。
しかし、「タイトな納期」はロボットエンジニアの人材難が背景にあり、需要の高さの裏返しとも捉えられます。継続的な自己研鑽を重ねてプレッシャーを受け止められる技術力を獲得する、そんなチャレンジを乗り越えられれば、ロボットエンジニアは非常にやりがいのある職種であり、高い将来性が担保されます。
ロボットエンジニアの年収
高い将来性は給与面にも顕著に反映されており、ロボットエンジニアの年収水準は他のエンジニア職と比較しても高めです。
求人サイトdodaが報告している平均年収ランキングでは、上述した「ロボットエンジニアの仕事内容」に関連した職種である「先行開発/製品企画」の平均年収は580万円、「回路/システム設計」は529万円と、平均年収の414万円を大きく上回る水準です。
ただし、ロボットエンジニアの年収は他のエンジニア職と同様に、経験やスキルに応じて大きく変動するものです。そのため平均年収を鵜呑みにすることはできませんが、キャリアを通じてスキルアップを果たすことで、年収1000万円以上を稼ぐ可能性も十分です。
ロボットエンジニアのキャリアプラン
ロボットエンジニアとしての経験の蓄積は年収面に跳ね返ってくるほか、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャー、研究開発部門といった管理職を目指すキャリアパスの後押しにもなります。
また、ロボット開発の経験は、ロボットの導入支援を手がけているコンサルティング会社などでも活かせます。あるいは高い将来性から、独立してロボットの開発・製造を行う会社を起業するといった道も考えられます。
ロボットエンジニアになるには
ロボットエンジニアになるには、ロボットの開発メーカーやロボットSIerなどの求人を探し、就職する必要があります。
ただし、就業の際にはロボット工学や電子工学などの専門知識が求められるケースが大半です。また、ロボットエンジニアの実務は未経験であっても、ITエンジニアの経験やプログラミングスキルなど、関連する業務の経験値が問われることもあります。そのため、特に未経験者にとっては、就業までのハードルは低いとはいえません。
しかし、その一方で間口は比較的開かれている傾向です。ロボットの開発メーカーのみならず、たとえば自動車メーカーなどでも製造ラインで動作する産業用ロボットの開発を担うロボットエンジニアが活躍しています。ロボットエンジニアの登用を検討している企業やメーカーは増えており、派遣案件も充実しています。「未経験歓迎」を謳う企業もあるほどです。
なお、ロボットエンジニアになるために必須となる資格はありませんが、専門的な知識が求められる職種であることには変わりありません。そこで、ロボットエンジニアに求められるスキルや就業時にプラスに働くこともある資格についてみていきます。
【ロボットエンジニアに求められるスキルや知識】
- ロボット工学の知識
- プログラミングスキル
- 想像力
- 語学力
ロボット工学の知識
ロボット工学とは、ロボットの設計や制御、製作に必要とされる機械工学や電気・電子工学、計測・制御工学、情報工学などを総合的に研究する学問であり、ロボットエンジニアにとって必須ともいえるバックグラウンドです。
機械工学では、機械力学や熱力学、流体力学、材料力学をもとに、ロボットのフレームや機構の設計に関わる知識を。電気・電子工学では、ロボットを動かすための電子回路の制御や通信技術を。そして情報工学ではロボットの動作を制御するためのプログラミングや情報通信などの技術などを学びます。
ロボット工学の知識は、大学の工学部のロボット工学に関わる学科のほか、電子工学系学科や機械工学系学科で身につけられ、大学院への進学も選択肢となります。これはロボットエンジニアを目指すための一般的なルートでもあります。
プログラミングスキル
プログラミングスキルは、ロボットの動作を制御するシステム開発に必要とされます。これはロボット工学における「情報工学」と重なる部分でもあり、具体的にはロボット開発で使われるC言語やC++、Javaなどの履修が推奨されます。
また、ロボット開発はAI技術の活用が進んでいる分野でもあり、Pythonなどの習得も有効です。
想像力
ロボットエンジニアには、専門的な知識だけではなく想像力も必要とされます。市場のニーズや課題を分析し、新たなロボットを生み出していくには、豊かな想像力を活かした発想が求められる場面も多々あるためです。
また、既存ロボットの改良においても、新しい技術を投入してバージョンアップを図る際などには、柔軟な思考力や想像力が求められます。
語学力
高度なロボット開発に取り組むには、英語など語学力も重要です。ロボット技術やAIに関わる海外論文を参照する機会があるほか、海外企業との共同開発に携わったり、国際的な学会へ参加する機会があったりするためです。
また、海外の組織との共同プロジェクトに参画する際には、多様な文化的背景を持つメンバーと、スムーズにコミュニケーションをとるスキルも求められます。
ロボットエンジニアに活かせる資格
ロボット開発に特化した資格ではありませんが、次のような資格の取得はロボットエンジニアとしてのスキルを磨いていくにあたりプラスとなるものです。
資格名 | 概要 |
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情報処理技術者試験 | ITに関する専門的な知識や技術力を証明する国家資格 |
CAD利用技術者試験 | 2次元CAD・3次元CADに関する知識や設計・製図の知識を証明する資格 |
機械設計技術者試験 | 機械の設計・開発に関わる専門的な知識や技術力を認定する資格 |
電気主任技術者試験 | 電気設備の保安監督に従事するための国家資格 |
また、これらの資格の取得は専門的な知識を持っていることの証明としても機能します。
ロボットエンジニアに向いている人の特徴
ロボットエンジニアとして活躍していくためには、次のような適性があると望ましいです。
- 論理的な思考力がある
- チームワークを大切にできる
- ものづくりに興味がある
- 学び続けることができる
まずは論理的な思考力です。複雑な設計やプログラミング工程が主となるロボット開発では、物事を整理して筋道を立てて考えていくロジカルシンキングがベースとなります。また、ロボット開発はチームで取り組むことが一般的であるため、協調性を持って行動するなど、チームワークを重視する姿勢も大切です。
また、ロボット開発の過程では、想定外のトラブルなども起こり得ます。問題に真摯に向き合い、意欲的に取り組み続けるには、やはりものづくりそのものへの興味関心も欠かせないでしょう。さらに、日進月歩で技術革新が進んでいくため、新しい技術を学び続けられるモチベーションも、ロボットエンジニアに求められる要素です。
- ロボットエンジニアとは、ロボットの設計や開発、運用、メンテナンスなどを担うエンジニア
- プログラミングなどITスキルのほか、機械工学や電気工学といった分野における専門的な知識が求められる
- 要件定義から設計・開発、実験・検証、メンテナンスサポートに至るまで、ロボット活用に関する一連のフェーズに携わる
- ロボットエンジニアの仕事には、極めて高い将来性が見込まれており、年収水準は他のエンジニア職と比較しても高め
- 一方で、タイトな納期やプレッシャーの大きさから、「ロボットエンジニアはしんどいからやめとけ」とネガティブな声も聞かれる
- 就業の際にはロボット工学や電子工学などの専門知識が求められるケースが大半であるほか、ITエンジニアの経験やプログラミングスキルなど、関連する業務の経験値が問われることもある
- 未経験者にとって、就業までのハードルは低いとはいえないが、間口は比較的開かれており、派遣案件も充実している