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ROSとは?ロボット制御・開発のデファクトスタンダードになるプラットフォームの特徴と活用事例

ロボット技術が急速に進化し、多様な産業や身近な日常への浸透が期待されるなか、ロボット開発の「効率化」「標準化」の需要はますます高まっています。これらのイノベーションを牽引する役割として注目されているのが、ロボットの知能化や動作の最適化、マルチセンサーデータの統合などを実現するROS(Robot Operating System)です。

ROSの登場によって、ロボット開発は一気に加速し、より身近なものになりつつあります。本記事では、「ロボット開発を効率化したい」「ROSを活用して高度な制御を実現したい」と考える技術者に向け、ROSの基本概念や「ROS2」との違いのほか、具体的な活用事例や技術的な特徴について詳述します。

POINT

  • ROSは、ロボット開発のためのオープンソースプラットフォームであり、制御や通信の基盤を提供している
  • 自動運転、産業用ロボット、サービスロボットなど、幅広い分野で実用化が進んでいる
  • ROS2では、リアルタイム性・セキュリティ・分散処理の強化が図られており、産業用途に最適化されている
  • オープンな仕組みだからこそ、個人・企業問わず、幅広いプロジェクトで導入しやすい

 

 

ROS(Robot Operating System)とは

ROSとは、ロボットのソフトウェア開発を効率化するオープンソースプラットフォームです。ロボット開発が内包している課題を解決し、効率化や標準化を推進する役割を担い、すでに自動運転や産業用ロボット、サービスロボット、ドローン開発など、多くの分野で活用されています。

たとえば、従来のロボット開発では、次のような課題が指摘されていました。

  • ハードウェアごとに制御方式が異なり、統一的な開発が難しい
  • センサーやモーター、AIアルゴリズムなど、多様な技術が必要
  • 異なるシステム間でデータ通信を行う仕組みも必要

ROSは、これらの課題を解決するために設計されており、具体的には次のような機能を提供します。

【ROSの主な特徴】

  • ロボットのモジュール化と再利用性の向上
  • ハードウェアに依存しない共通インターフェースの提供
  • ノード(ソフトウェア部品)間の通信を統一
  • 豊富なオープンソースライブラリとツールの活用

 

ROSとROS2の違い

ROS2は、ROSの機能を拡張し、商用利用や産業用途に適応している、いわば「次世代版のプラットフォーム」の立ち位置です。

ROS ROS2
通信方式 シングルスレッド マルチスレッド対応
リアルタイム性 低い 高い
ミドルウェア 独自通信方式 DDS(Data Distribution Service)
セキュリティ 非対応 高度なセキュリティ機能
OSの対応 Linuxのみ Windows、MacOSにも対応

このようにROS2では、リアルタイム処理やセキュリティ、分散処理の強化がなされており、より実用的なシステム開発を可能とします。

 

ROSの活用事例

ROSは、すでに研究用途にとどまらず、実社会の多様な分野で広く導入されており、特に次のような自律制御や複雑なセンサーデータ処理を必要とするシーンにおいて、その真価を発揮しています。

  • 自動運転:リアルタイムな環境認識やルート制御などに貢献
  • 産業用ロボット:工場内の組み立てや搬送自動化を支援
  • サービスロボット:人と接する業務で、柔軟な対話や移動を実現
  • 掃除ロボット:部屋の環境を自律的に認識し、最適な清掃ルートを判断
  • ドローン:空中での自律飛行やセンサーデータの解析に対応
  • 農業ロボット:農作業の自動化や精密農業を支える技術基盤
  • 医療ロボット:手術支援やリハビリなど、高精度制御が求められる領域でも活躍

このように、ROSは柔軟性と拡張性を備えたロボット開発の共通言語として、多彩な現場に浸透しています。

 

自動運転

自動運転を支える技術として、ROSは欠かせない存在です。具体的には、車両制御や環境認識、経路計画などに活用されています。

【自動運転でのROSの活用例】

  • センサーデータ統合:LiDAR、カメラ、GPSのデータを統合して車両の位置を推定
  • 経路計画:動的な障害物を検知し、安全なルートを選択
  • 車両制御:アクセル、ブレーキ、ハンドル操作を制御し、安全運転を実現

自動運転の中核機能である、センサーやカメラからの情報統合やリアルタイム判断の実行には、柔軟な通信システムが必要です。その基盤を提供しているプラットフォームがROSであり、実際にオープンソースの自動運転ソフトウェアAutowareもROS上で動作します。

 

産業用ロボット

産業用ロボットの分野では、ROSを活用した自動化が進行しており、生産ラインの効率化に貢献しています。

【産業用ロボットでのROSの活用例】

  • ロボットアームの制御:物体を正確に把持し、組み立てやピッキングを自動化
  • 自律搬送ロボット(AGV):工場内の物品を自動で搬送し、物流を最適化
  • 協働ロボット:人間と共存しながら作業を分担

特に、ロボットアームや自律搬送ロボットでのROSの活用が進んでおり、いまでは多くの種類の産業用ロボットがROSに対応し、柔軟なシステム開発を支援しています。

 

サービスロボット

ホテルやレストラン、医療現場など、さまざまな場面で人とロボットが共存する時代になりました。有名な人型ロボット「Pepper」にもROSが活用されており、対話システムやジェスチャー認識といった機能を支えています。

【サービスロボットでのROSの活用例】

  • 配膳ロボット:障害物を回避しながら料理を運ぶ
  • 接客ロボット:顔認識を用いた顧客対応や案内業務を実施
  • 介護支援ロボット:高齢者の移動や健康管理をサポート

このように、サービスロボットでは音声認識や視覚認識、移動制御の基盤として、ROSが活用されています。

 

掃除ロボット

掃除ロボットの環境認識や清掃ルート計画にも、ROSが利用されています。たとえばiRobotの「ルンバ」もROS技術を活用し、部屋の構造を学習しながら最適なルートを決定しています。

【掃除ロボットでのROSの活用例】

  • マッピングと自己位置推定:部屋の形状を学習し、効率的な清掃経路を計算
  • 障害物回避:家具やペットを避けながら掃除を実施
  • 自動充電:バッテリー残量が少なくなると、自動的に充電ステーションへ帰還

このように、掃除ロボットの分野ではROSとSLAM技術(自己位置推定と地図作成)が活用されており、部屋の構造をリアルタイムで把握しています。

 

ドローン

ROSは、ドローンの飛行制御やセンサー統合、自動航行の分野でも活用されており、特にAIと組み合わせることで、自律的な飛行や環境認識を実現しています。

【ドローンでのROSの活用例】

  • GPS・IMU(慣性測定装置)統合:位置情報を正確に取得し、安定した飛行を実現
  • 自動飛行ルートの生成:SLAM技術を活用し、障害物を回避しながら飛行
  • リアルタイム映像解析:カメラ映像をリアルタイムで処理し、監視や測量に応用

たとえば農業や測量分野では、ROSを活用した自律飛行ドローンが農薬散布や地形解析に活用されています。

 

農業の分野

農業分野では、ROSは自律型農業機械やロボットの制御に活用されています。農業の自動化が求められる背景には、労働力不足とそれに伴う作業の効率化需要があります。そこでROSを活用した農業ロボットが活躍しているのです。

【農業ロボットでのROSの活用例】

  • 自動運転トラクター:GPSとセンサーを組み合わせた精密農作業
  • 収穫ロボット:画像認識とAIによる果物・野菜の自動収穫
  • 害虫駆除ドローン:カメラとAIで害虫を識別し、農薬をピンポイント散布
  • 水管理ロボット:センサーを活用した土壌の水分量の最適管理

ここでもSLAM技術の貢献は大きく、農業機械はフィールド内を自律的に移動できるようになりました。結果、農業ロボットの省力化・高精度化・環境負荷の低減など、多くのメリットにつながっています。

 

医療の分野

医療分野では、手術支援ロボットやリハビリ支援機器にROSが活用されています。なかでも医療の精密さが求められる環境では、ROSのリアルタイム性や分散処理機能は大きな強みとなっています。

【医療ロボットでのROSの活用例】

  • 手術支援ロボット:微細な手術を遠隔操作で行う
  • リハビリ支援ロボット:患者の動きを補助し、リハビリの効果を高める
  • 自律搬送ロボット:病院内で医薬品や検体を運搬する

医療ロボットへのROSの導入は、手術の成功率向上、医療従事者の負担軽減、医療サービスの効率化など、多くの利点をもたらしています。

 

ROSの主な特徴

ROSがロボット開発の現場で支持されている理由は、秀逸なアーキテクチャにあります。特に、開発の柔軟性・拡張性・効率性を支える、次の3つの特徴が際立っています。

  • 分散処理が可能:複数のコンピュータやノードで同時に処理を分担できる
  • ノード間通信の柔軟性:異なる機能同士が効率的に情報をやり取りできる
  • オープンソースによる再利用性:世界中の開発資産を取り込みながら、自分のプロジェクトに応用できる

これらの特徴により、ROSはプロトタイプから実運用レベルのロボット開発まで幅広く対応可能なプラットフォームとなっているのです。

 

分散処理が可能

ROSの大きな特徴のひとつに、「分散処理」が挙げられます。これは、複数のコンピュータやプロセスが協力しながら、ロボットの動作を同時並行で処理できるということです。

【分散処理のメリット】

  • 処理負荷を複数のコンピュータに分散できる
  • ネットワークを介してリモートシステムと連携
  • センサー処理・制御・AI解析を同時に実行できる

たとえばロボットの画像認識はGPUサーバーに、モーター制御はマイコンに、といった形で処理を分散することで、全体のパフォーマンスを向上できます。

 

ノード間通信の柔軟性

ROSでは、各機能が「ノード」として独立して動作し、それらが柔軟に通信しながらロボット全体を構成しています。この通信方式が「パブリッシャー・サブスクライバー」「サービス」「アクション」という3つのモデルに分かれている点が、ROSの柔軟性を支えるポイントです。

たとえば、次のような活用方法です。掃除ロボットやドローンの動作をイメージしてみましょう。

  1. カメラノードが画像を送信(パブリッシャー)し、画像認識ノードがそれを受信(サブスクライバー)して処理
  2. 移動指令ノードが「この方向に進め」と指示(サービス通信)を出し、モーター制御ノードが応答して移動を開始
  3. ナビゲーションノードが長距離移動の開始・停止を制御(アクション通信)

このように、各ノードが互いに直接依存せずに情報をやり取りできるため、一部機能だけの個別差し替えや構成変更、処理の並列実行や拡張などに強い構造となっています。この仕組みにより、システムの拡張が容易になり、開発の自由度が向上します。

 

オープンソースによる再利用性

ROSはオープンソースとして開発・提供されており、世界中の研究者や開発者が作成した機能を「再利用」できます。これにより、ゼロからすべてを作る必要はなくなり、開発のスピードと質が大きく向上します。

  • SLAM(自己位置推定と地図作成)パッケージ
  • ナビゲーション(自律移動)モジュール
  • 音声認識、物体認識、センサードライバなどのライブラリ

これらはROS公式リポジトリなどで公開されており、簡単に導入が可能です。自身が作成したパッケージも他者と共有できるため、開発者同士が知見と成果を持ち寄り技術の循環が生まれています。

このエコシステムの存在こそが、ROSが世界的に普及し続けている理由でもあります。

 

ROSを構成する要素

ROSは、ロボットシステムの基盤を構成する土台となっており、通信・ツール・機能・エコシステムの4つのカテゴリに分類されます。

  • plumbing(通信)
  • tools(ツール群)
  • capabilities(機能群)
  • ecosystem(エコシステム)

この4要素が連携し、ROSは柔軟で再利用性の高いロボット開発環境を提供しているのです。

 

plumbing(通信)

plumbing(プランビング)は、ROSにおける基本的な通信インフラです。ROSではロボットの各機能を「ノード」として分割しており、それらをつなぐ「通信システム」としてplumbingが役立っています。

【plumbingの役割】

  • ノード間のデータ通信を管理
  • パブリッシャー・サブスクライバー方式によるメッセージ伝達
  • サービス(Service)によるリクエスト・レスポンス通信
  • アクション(Action)による非同期処理の実装

上述の「ノード間通信の柔軟性」でも触れた通り、この通信方式によってROSの柔軟なアーキテクチャが構築されており、ロボットの拡張性を高めています。

 

tools(ツール群)

ROSには、開発を効率化するための豊富なツール群(tools)が用意されています。これにより、ロボット開発のシミュレーションやデバッグが容易になります。

【代表的なROSツール】

  • Rviz:ロボットのセンサー情報や動作を可視化する
  • Gazebo:3Dシミュレーション環境を提供
  • rqt:ノードの監視やデバッグを行うGUIツール
  • rosbag:ロボットのデータ記録・再生を行う

これらのツールを活用することで、ロボット開発のプロセスを効率化できます。

 

capabilities(機能群)

ROSのcapabilities(機能群)とは、ロボットが必要とする主要な機能を提供するライブラリの集合です。

【代表的なROS機能】

  • SLAM(自己位置推定と地図作成)
  • ナビゲーション(自律移動システム)
  • 物体認識(AIによる画像解析)

たとえばROSのナビゲーションスタックを利用することで、障害物を回避しながら自律移動するロボットを簡単に開発できます。

 

ecosystem(エコシステム)

世界中の開発者が参加するオープンなエコシステムも、ROSの大きな特徴です。

【エコシステムの主な要素】

  • ROSパッケージの共有(GitHubやROS公式リポジトリ)
  • 世界中の開発者コミュニティ
  • 企業・大学との連携プロジェクト

ROSの公式リポジトリには数千のライブラリが公開されており、開発者はすぐに最新技術を活用できます。

 

まとめ
  • ROSは、ロボット開発のためのオープンソースプラットフォームであり、制御や通信の基盤を提供している
  • 自動運転、産業用ロボット、サービスロボットなど、幅広い分野で実用化が進んでいる
  • ROS2では、リアルタイム性・セキュリティ・分散処理の強化が図られており、産業用途に最適化されている
  • ノード間通信の仕組みにより、柔軟かつ拡張性の高いシステム構築が可能
  • 分散処理によって、複数のコンピュータ間で処理を分担し、負荷を分散できる
  • 豊富なツール群が開発・デバッグ・シミュレーションを強力にサポート
  • SLAM、ナビゲーション、物体認識など、ロボットの中核を成す機能群もパッケージとして利用可能
  • 世界中の開発者によるエコシステムにより、再利用性と最新技術の吸収力が高い
  • オープンな仕組みだからこそ、個人・企業問わず、幅広いプロジェクトで導入しやすい

 

 

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