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SLAMとは?自律ロボットや自動運転に使われるアルゴリズムの仕組みをわかりやすく解説

ロボットや自動運転などのイノベーションが加速し、私たちの生活や産業のあり方を大きく変えつつあります。その中核技術のひとつに位置づけられるのがSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)です。

SLAMは、自己位置推定と地図作成を同時に行い、移動しながらリアルタイムで環境を認識する技術です。この技術によって、ロボットや自動運転車はGPSに頼ることなく、未知の環境でも自律的に移動することが可能になります。

本記事では、SLAMの基本概念や仕組み、活用事例、そして技術的な課題までを詳しく解説します。

POINT

  • SLAMとは「自己位置推定」と「地図作成」を同時に行う、ロボットの自律移動に不可欠な技術
  • GPSが使えない場所でも、ロボットが自律的に移動できる点が大きな特徴
  • ドローン、自動運転車、AGV、掃除ロボットなど、多様な分野で実用化が進んでいる

 

 

SLAMとは

SLAMは、ロボットや自動運転車が自分の位置を正確に把握(自己位置推定)しながら、同時に周囲の環境をマッピング(地図作成)する技術です。これにより、事前に地図がない環境でも、リアルタイムで情報を取得しながら安全に移動できます。

たとえば掃除ロボットは、SLAMを活用して部屋のレイアウトを把握しながら効率的に動作します。自動運転車では、GPSが不安定なエリアでもSLAMによって正確なルートを選択でき、安全な走行を実行します。

つまりSLAMは、ロボットの「目」と「脳」の役割を果たす技術といえます。

 

SLAMのアルゴリズムの仕組み

SLAMのアルゴリズムは、おおむね次のステップで動作しています。

  1. センサーによる情報収集:カメラやLiDARなどのセンサーで周囲の環境を取得
  2. 特徴点の抽出とマッチング:画像や3Dデータから特徴的なポイント(ランドマーク)を特定し、比較
  3. 自己位置推定:ロボットがどこにいるのかを推測
  4. マッピング:収集したデータをもとに周囲の環境マップを構築
  5. 位置推定とマップの更新:移動しながら環境情報を更新し、精度を向上させる

 

SLAMが活用される技術

SLAMは、ロボティクス分野の多様な場面で活用されています。特に自律移動を必要とする機器においては、SLAMの有無が機能性や効率性を大きく左右するといっても過言ではありません。

次の分野でSLAMがどのように活用されているのか、具体的に解説します。

  • ドローン:GPSが使えない環境でも飛行可能に
  • 車の自動運転:高精度な走行と安全性を実現
  • AGV(無人搬送車):倉庫内を柔軟かつ効率的に移動
  • 掃除ロボット:最短ルートでムダのない清掃

 

ドローン

SLAM技術は、ドローンの自律飛行において重要な役割を果たしています。

従来、ドローンはGPSを頼りに飛行していましたが、屋内や森林、地下空間などGPS信号が届かない環境では、正確な位置情報を取得できないことがありました。しかしSLAMの活用で、GPSが使えない環境でもドローンは自己位置を推定しながら飛行できるようになります。

【SLAMを活用したドローンの機能】

  • 環境マッピング:周囲の空間をリアルタイムでマッピングし、飛行経路を作成
  • 障害物回避:カメラやLiDARセンサーを活用し、木や建物などの障害物を回避しながら飛行
  • 自律飛行:操縦者なしで目的地までの最適ルートを計算し、安定した飛行が可能に

このようにSLAMを搭載したドローンは、より柔軟で安全な自律飛行が可能なため、人が立ち入れない場所での災害救助や、高層ビルや橋などのインフラ点検、あるいは農業分野など、多くの産業で活用されています。

 

車の自動運転

自動運転においてもSLAMは欠かせない技術要素です。

自動運転車は、周囲の環境を認識しながら安全に走行する必要がありますが、GPSの精度には限界があり、トンネルや都市部の高層ビル群では信号が遮断されやすいという課題もあります。そこでSLAMを用いて、GPSに依存せずにリアルタイムで車両の位置を特定しながら、周囲の環境を把握します。

【SLAMによる自動運転の技術】

  • 高精度な自己位置推定:LiDARやカメラを用いて、道路標識や周囲の建物を基準に正確な位置を特定
  • リアルタイム環境認識:歩行者や他の車両、信号機などを識別し、動的な環境に適応
  • 最適な経路計画:交通状況に応じて安全なルートを選択し、スムーズな運転を実現

テスラなどのメーカーは、SLAMを活用したより安全で信頼性の高い自律走行技術の開発に取り組んでいます。将来的な完全自動運転の実現にも大きく貢献する技術となるでしょう。

 

AGV(無人搬送車)

AGV(Automated Guided Vehicle)は、工場や倉庫などで荷物を自動的に運搬するロボットです。

従来のAGVは、床に敷かれたガイドライン(磁気テープや反射マーカー)を頼りに移動していました。しかし、この方法では環境の変化への柔軟な対応は望めず、運用コストも高くなります。一方、SLAMを搭載したAGVは事前に地図を作成しなくても、自律的に経路を判断して移動します。

【SLAMを活用したAGVの特徴】

  • 動的な環境への適応:倉庫内の商品配置が変わっても、最新の環境情報をもとにルートを再計算
  • 障害物回避:人や他のAGVを検知し、安全に停止・回避行動を実施
  • 効率的なルート選択:複数のAGVが同時に稼働しても、最適な経路を計算して渋滞を回避

現在、多くの物流センターや工場にて、SLAMを活用した次世代AGVが導入されています。作業効率の向上と自動化の促進に貢献しているほか、配線工事や磁気テープのメンテナンスといった運用コストも削減されています。

 

掃除ロボット

掃除ロボットも、SLAM技術を活用している代表的な事例です。SLAMを搭載することで、ロボットは部屋の構造を理解し、最適な掃除ルートを決定できます。

【SLAMを使った掃除ロボットの動作】

  • 環境マッピング:部屋の壁や家具の配置をリアルタイムで検出し、仮想マップを作成
  • 最適な移動経路の計算:障害物を回避しながら、最短距離で効率的に掃除を実施
  • 自己位置推定:どこを掃除したかを把握し、未掃除エリアを残さない

一方、SLAMを搭載していないと無駄な動きが増えたり、一部のエリアを掃除し損ねたりすることがあります。SLAMによって、掃除ロボットはより効率的かつ高性能化しているのです。

 

SLAMの種類

SLAMは、実装方法や使用するセンサーの種類によって、いくつかのタイプに分類されます。また、目的や環境に応じて、どの種類のSLAMを採用するかは異なります。

ここでは、代表的な4種類のSLAM技術について解説します。

  • Visual SLAM:カメラを使用して環境認識、小型デバイスにも適用する
  • Lidar SLAM:LiDARセンサーを用いた高精度マッピング
  • Depth SLAM:深度センサーを活用
  • Landmark based SLAM:信号機や建物の角など既知のランドマークを利用

 

Visual SLAM

Visual SLAMは、カメラで環境を認識し、コンピュータビジョン技術を介して画像から特徴点を抽出・マッチングすることで、自己位置推定と地図作成を行います。

【Visual SLAMの特徴】

  • カメラだけで動作:他のセンサーが不要で低コスト
  • 小型デバイスに適用可能:スマートフォンやAR/VR機器でも活用される
  • 光の影響を受けやすい:暗所やガラス面が多い環境では精度が低下する

Visual SLAMは、スマートフォンのARアプリやドローンのナビゲーションなどに利用されています。

 

Lidar SLAM

Lidar SLAMは、LiDARセンサーを使用して高精度の3Dマッピングを行う技術です。なお、LiDARとはレーザーを用いた距離測定技術で、光の反射時間を計測して環境の詳細な点群データを取得します。

【Lidar SLAMの特徴】

  • 高精度な距離測定:数センチ単位での正確な環境認識が可能
  • 暗所でも利用可能:光の影響を受けず、夜間や屋内でも安定
  • コストが高い:高性能LiDARセンサーは価格が高め

Lidar SLAMは自動運転車や無人搬送車(AGV)などを筆頭に広く採用されており、安全な移動を実現します。

 

Depth SLAM

Depth SLAMは、深度(Depth)カメラを使用して環境を認識するSLAM技術です。RGB-Dカメラなどを用いて、画像と同時に距離情報を取得します。

【Depth SLAMの特徴】

  • 奥行き情報を取得可能:物体との距離をリアルタイムで測定できる
  • 3D環境の認識が可能:VR/ARデバイスやロボットに適用される
  • 計算コストが高い:深度データの処理負荷が高くなる

Depth SLAMは、ロボットのナビゲーションやAR/VRデバイスの環境認識に活用されています。

 

Landmark based SLAM

Landmark based SLAMは、既知のランドマーク(特徴点)を基準にして自己位置推定を行う手法です。特定の目印(QRコード、信号機、建物の角など)を用いてロボットの位置を補正します。

【Landmark based SLAMの特徴】

  • 既存のランドマークを活用:事前に登録された特徴点を用いる
  • 安定した位置推定が可能:ノイズや誤差が少なくなる

Landmark based SLAMの技術は、屋内ナビゲーションや工場のAGV運用などで主に活用されています。

 

SLAMを活用するメリット

SLAMは、自律移動技術を支える中核的な存在として、すでに多くの現場で活躍しています。その導入によって得られるメリットは、単なる「位置がわかる」ことにとどまりません。

ここでは、特に注目すべき2つのメリットにフォーカスします。

  • GPSが届かない場所でも使える:屋内や地下空間でも高い自律性を確保
  • 効果的・効率的な動作を実現できる:環境を理解し、ムダのないルートで動作

 

GPSが届かない場所でも使える

SLAMの最大ともいえるメリットは、GPS信号が届かない場所でも自己位置を推定できる点です。地下鉄や屋内などGPSが使えない環境でも正確な位置情報を取得できるほか、崩落した建物の内部を調査するレスキューロボットのように災害現場でも活用されています。森林や洞窟探査にも役立つでしょう。

つまりSLAMの活用によって、ロボットやドローンのより柔軟な移動が可能になります。

 

効果的・効率的な動作を実現できる

SLAMは次のような特性から、ロボットや自動運転システムの効率的な移動に役立っています。

  • 最短ルートを自動計算してムダな移動を削減
  • 障害物を回避し、動的な環境にも適応
  • データのリアルタイム更新で、環境変化にも即座に対応

たとえば倉庫内のAGVにSLAMを搭載することで、磁気テープや反射マーカーなど床に敷かれたガイドラインに依存していた従来の固定ルートと比較して、柔軟かつ効率的な移動や配送が可能になります。

 

SLAMの技術的な課題

ここまで見てきた通り、SLAMは有用な技術である一方で、導入や運用にあたってはいくつかの技術的ハードルも存在します。特にリアルタイム性と精度の両立、センサーの信頼性、計算負荷といった観点では、現場での実用に向けて課題が残されています。

計算時間と精度
  • リアルタイムでの大量のデータ処理に、高い計算負荷を強いられる
  • 高精度なSLAMになるほど膨大な計算が必要となる
  • ハードウェアの進化やアルゴリズムの改善など、計算コストを抑えつつ精度を向上させる技術開発が求められる
自己位置推定の精度
  • SLAMは環境に依存するため、光の変化や障害物の増減などによって自己位置推定が不安定になることがある
  • 環境の変化に対応するために、複数のセンサーを組み合わせて精度の向上を図るべき
処理時間(コスト)
  • 演算コストの高さから、バッテリー消費や処理遅延の問題が発生することがある
  • ハードウェアの高性能化や、エッジコンピューティングの活用などが求められる

 

まとめ
  • SLAMとは「自己位置推定」と「地図作成」を同時に行う、ロボットの自律移動に不可欠な技術
  • GPSが使えない場所でも、ロボットが自律的に移動できる点が大きな特徴
  • ドローン、自動運転車、AGV、掃除ロボットなど、多様な分野で実用化が進んでいる
  • SLAMには主に4つの種類があり、用途に応じた選択が重要(Visual / Lidar / Depth / Landmark based)
  • SLAMの活用で、効率的・効果的な経路選択や障害物回避が可能になる
  • メリットの一方、計算コストや環境変化による誤差など、実用上の課題も存在している

 

 

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