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プロティアンキャリアとは?従来のキャリア形成との違いやこれからのビジネスパーソンに必要とされる理由

社会やビジネスの変化のスピードはますます加速し、不確実性が高まる現代。かつてのように、会社にキャリアを委ねるだけの姿勢では、理想の働き方の実現は難しくなっています。そんな時代において注目されているのが、プロティアンキャリアという考え方です。

本記事では、プロティアンキャリアとはなにか、従来のキャリア形成との違いを比較するとともに、ビジネスパーソンがどのようにこの考え方を取り入れてキャリアをデザインしていくべきかを考えていきます。

POINT

  • プロティアンキャリアは、柔軟かつ自律的にキャリアを形成する新しい考え方で、組織のなかでの成功ではなく、人生そのものの成功を目指す概念
  • 従来型キャリアとは異なり、組織主導から個人主導へとシフトし、安定志向よりも成長や柔軟性を重視する
  • テクノロジーの変化に対応するため、継続的なスキル習得や知識のアップデートが求められる

 

プロティアンキャリアとは

プロティアンキャリアとは、急速に変化する現代社会におけるキャリア形成の新しい考え方で、わかりやすく説明すると組織のなかでの成功ではなく、人生そのものの成功を目指す概念といえるものです。これは心理学者ダグラス・ホールが提唱した概念で、自己主導的にキャリアをデザインし、変化する環境に柔軟に適応する能力を重視します。

たとえば、理想の職場を求めて転職を繰り返すのではなく、転職の機会を活かしてスキルや経験を身に付けていき、人生というプロセスにて継続的な進化を目指すイメージです。ゴールは組織のなかにあるのではなく、「組織も経験の一部」として蓄積しながら、個人のキャリアを積み上げていきます。

なお、プロティアンキャリアを提唱する『一般社団法人プロティアン・キャリア協会』では、この概念を以下のように定義しています。

キャリアは「結果」ではなく、個々人が「何らかの継続経験」 を通じて「能力」を蓄積していく「過程」を意味します。

引用:一般社団法人プロティアン・キャリア協会

このように、プロティアンキャリアは従来の「安定志向」「会社任せ」なキャリア形成とはまったく異なり、個人の価値観や目標に基づいて柔軟に進化していくことが特徴です。現代社会では変化適応力や自己成長が求められる場面が増えており、プロティアンキャリアはその解決策となる考え方としても注目されています。

 

プロティアンキャリアの考え方

プロティアンキャリアは、従来の「伝統的キャリア」と比較することでその特性がより明確になります。以下の表は、両者の違いを要約したものです。

組織内キャリア(伝統的キャリア) 自律型キャリア(プロティアンキャリア)
環境変化 安定的・予測可能 動的・不確実
キャリアの所有者(主体) 企業や組織 個人
核となる価値観 忠誠心・安定志向・昇進・権力 柔軟性・自律性
成果 ポジションや報酬 個人的成長・満足
態度 受動的・指示待ち 主体的・能動的
アイデンティティ(自分らしさ) 職位や役職 自己らしさ・価値観
アダプタビリティ(変化適応力) 限定的な適応 多様な変化への適応

特に変化の速いIT・エンジニアリング業界においては、プロティアンキャリアの考え方は現場で働くプログラマーからマネジメントレイヤーまで、キャリアパスを設計する際の参考となるものでしょう。

 

環境変化の違い

従来のキャリア形成では、環境変化は予測可能な範囲であり、企業が用意したキャリアパスを辿ることが一般的でした。しかし、現代では技術革新や急激な社会変化により、予測が困難な局面が増加しています。

ITエンジニアを例に挙げると、従来は特定のプログラミング言語に精通することがキャリア形成の鍵とされていましたが、現在では新しい技術やフレームワークを常に学び続ける柔軟性がより強く求められています。

つまり、プロティアンキャリアの考え方では、以下のようなスキルや能力が重要になってきます。

  • 自己変革力:状況に応じて自分を変える能力
  • 成長マインドセット:学びを継続しようとする姿勢
  • 柔軟性:変化する環境で成果を上げる力

これにより、不確実性のなかに身を置きながらも、自己主導的にキャリアを切り拓くことが可能となります。

 

キャリアの所有者(主体)の違い

キャリア形成における「所有者」は、従来の伝統的なキャリアとプロティアンキャリアの最大の違いといえるかもしれません。

伝統的キャリアでは、従業員は用意された役職や評価基準に従いながらキャリアを築いていく仕組みでした。これはキャリアの所有者は「企業」「組織」にあるとも解釈できる状態です。一方、プロティアンキャリアではキャリアの所有者は完全に「個人」に移行します。

エンジニアのAさんを例に考えます。伝統的なキャリア形成では、企業が求めるスキルや役割に応じてトレーニングを受け、指定されたキャリアパスを歩むことが前提でした。しかし、プロティアンキャリアの考え方に基づくAさんは、自分が興味を持つ分野や市場でのニーズに応じてスキルを選び、成長のための学習に自主的に取り組んでいきます。

こうした変化により、企業におけるマネジメント層の役割も変わりつつあります。企業には、個人が自己主導でキャリアを設計する際の環境づくりや適切な支援が求められていくようになるでしょう。

 

核となる価値観の違い

「核となる価値観」とは、キャリア形成における土台となる信念や目標を指します。わかりやすくいえば「何のために働くのか」です。

従来の伝統的なキャリアでは、安定志向や組織への忠誠心、あるいは昇進などが価値観の中心にありました。つまり、組織内での権力や地位の向上がキャリア成功の指標とされていたのです。一方で、プロティアンキャリアでは、以下のような価値観が重視されます。

  • 柔軟性:環境の変化に対応し、自分の目標ややり方を調整する能力
  • 自律性:組織の指示ではなく、自分自身の意思で行動する姿勢

たとえば、Bさんというプロフェッショナルが、AI技術の発展に伴い従来の業務から離れて新たな技術分野へシフトした場合、それは柔軟性と自律性に基づく行動です。こうした変化を支える価値観は、組織や社会全体の成功よりも個人の満足度や成長に重きを置いています。

 

成果の違い

プロティアンキャリアにおける「成果」とは、従来のキャリアで重視される「役職」「給与」といった外部的な指標とは異なり、内面的な成長や自己実現が中心になります。

たとえば伝統的なキャリアでは、昇進やボーナスが主な成果と見なされていました。一方、プロティアンキャリアでは以下のような要素が成果として評価されます。

  • スキルの向上:自身の市場価値を高めるスキルや知識の習得
  • 新たなチャレンジ:未経験の分野で成功体験を積む
  • 自己満足:目標達成に伴う達成感や自己実現

エンジニアのCさんが新しいプログラミング言語を学び、自身のプロジェクトで成功を収めたとします。この場合、Cさんにとっての「成果」は、新たなスキル習得や成長への喜びに他なりません。

 

態度の違い

プロティアンキャリアを支える態度は、「受動的」から「能動的」への転換です。従来のキャリアでは、上司や組織の指示を待つ姿勢が一般的でしたが、プロティアンキャリアでは自発的に行動を起こし、自分の未来を切り拓く姿勢が求められます。

たとえば変化の激しいIT業界では、プロティアンキャリアを意識する個人は、新しい技術やトレンドを自ら学び、次のプロジェクトにてその知識を応用します。こうした態度は、企業にとっても価値ある資産となり得るものです。

 

アイデンティティ(自分らしさ)の違い

プロティアンキャリアでは、アイデンティティこそがキャリア形成の中心的な要素となります。

従来型キャリアでは、職位や役職がその人のアイデンティティを象徴するものでした。「部長」「マネージャー」という肩書きによって、職務における自分の価値を定義していたのです。一方、プロティアンキャリアでは、自己の価値観や信念、個人的な成長などがアイデンティティを形成します。

あるエンジニアが「社会的に役立つ技術を開発したい」という信念を持ち、それを軸にキャリアを構築するケースを考えてみましょう。この場合、彼のアイデンティティは肩書きではなく、その信念に基づいた成果や行動によって表現されます。

プロティアンキャリアにおけるアイデンティティを重視する考え方は、個人が「自分らしさ」を保ちながらキャリアを進化させる自由を提供し、不確実性の高い時代における重要な支えとなるものです。

 

アダプタビリティ(変化適応力)の違い

アダプタビリティ(変化適応力)は、プロティアンキャリアの核となる能力です。この適応力は、急速な環境変化の中で自己を進化させ、価値を提供し続けるための原動力となります。

従来型キャリアでは、変化への適応は限定的でした。特定の職種に長く従事し、同じスキルセットで昇進を目指すこともその一例です。しかし、プロティアンキャリアでは次のような特性が重視されます。

  • 学び続ける力:新しい知識や技術を柔軟に吸収する姿勢
  • 挑戦を受け入れる力:リスクを恐れずに未知の領域に挑む意欲
  • 視野の広さ:さまざまな分野や文化から学びを得る能力

たとえば、テクノロジーの進化が速いIT業界では、クラウド技術やAIなどへのシフトにいち早く適応できるエンジニアが成功しやすい傾向です。プロティアンキャリアのアダプタビリティは、こうした変化を乗り越える力を育む土台となる能力です。

 

プロティアンキャリアが注目される理由

近年、プロティアンキャリアが注目される主な理由は以下の3つに集約されます。

  • 汎用的スキルの有用性が高まっている
  • キャリア形成が企業から個人にシフトしている
  • 成功の定義や価値観が曖昧になってきている

 

汎用的スキルの有用性が高まっている

汎用的スキルとは、どんな仕事でも通用するスキルのことです。たとえば、特定の言語を用いたプログラミング能力は専門的なスキルである一方、コミュニケーション能力や課題解決能力は、どんな現場でも重宝される汎用的なスキルです。

現代のビジネス環境では、特定の職務や役割に縛られない、こうした汎用的スキルの重要性が増しています。これには以下のような背景があると考えられます。

  1. 技術革新のスピード

    AIやデジタル技術の急速な進化により、従来の専門知識だけでは対応しきれない場面が増えている

  2. 働き方の多様化

    リモートワークやフリーランスの普及により、個々人が自立したスキルを持つことが求められるようになった

  3. 市場ニーズの変化

    グローバル化が進み、問題解決能力やコミュニケーション力など、どの職種にも通用するスキルが評価される

たとえばエンジニアが単にプログラミングを学ぶだけでなく、プロジェクト管理スキルやデザイン思考を取り入れることは、より広範なキャリアの可能性を生む一例です。プロティアンキャリアの考え方では、こうした汎用的スキルを継続的に伸ばす姿勢が不可欠になります。

なお「エンプロイアビリティ」の言葉が注目されているのも、この汎用的スキルの重要性の高まりに関連します。

 

キャリア形成が企業から個人にシフトしている

過去のキャリア形成は、主に企業や組織が主導するものでした。昇進や異動が決まれば、それに応じてスキルを磨くという流れが一般的だったのです。

しかし、近年ではキャリア形成の主導権は「個人」に移行しています。この変化には、次のような要因が関連しています。

  • 終身雇用制度の崩壊:長期的な雇用保証が難しくなり、個人は自分自身でキャリアを守る
  • 多様な働き方の受容:副業や起業など、個人の裁量でキャリアを形成する選択肢が拡大

プロティアンキャリアの考え方は、このような自立的なキャリア形成を支える指針となります。

 

成功の定義や価値観が曖昧になってきている

かつての「成功」といえば、安定した職や高収入、役職の獲得といった指標が一般的でした。しかし現代では、次のような理由から「成功」の定義が多様化し、曖昧になっています。

  • 価値観の多様化:個人が「何を幸せと感じるか」は人によって異なり、画一的な成功基準は通用しない
  • 働き方の変革:短時間労働やプロジェクト単位の仕事が増えたことにより、成果の尺度が変わっている

たとえば、ある人はリモートワークによって得た自由な時間を「成功」と考える一方で、別の人はキャリアチェンジに挑戦して新しい分野で学ぶことを「成功」と捉えます。プロティアンキャリアの概念は、こうした「成功の再定義」に柔軟に対応し、個人が自分なりの満足を追求するための道を切り開く考え方です。

 

プロティアンキャリア実践チェックシート・具体的ステップ

プロティアンキャリアを日々の生活やキャリア形成に活かすためには、いくつかの具体的なステップを踏む必要があります。実践のためのステップを以下の観点からまとめました。

ステップ 実践する内容
自己分析
  • 自分の価値観や目標を明確にする
  • 「自分が大切にしている価値観は何か?」「どんな働き方が自分にとって理想的か?」を考える
スキル習得と学びの継続
  • スキルの陳腐化が速いため、常に学び続ける姿勢が求められる
  • 最新の業界動向や技術を学ぶためのオンライン講座やウェビナーへの参加、書籍を活用した知識のアップデート
ライフデザインの検討
  • 仕事と私生活のバランスを大切にすべく「ライフデザイン」の考え方を取り入れる
  • 仕事だけでなく、家族や趣味、地域活動などにも重点を置く
実践とフィードバックのループ
  • 学んだことを積極的に実践に移し、その結果を振り返る習慣をつける
  • PDCAのサイクルを回す
メンター活用
  • 一人で全てを考えるのではなく、信頼できるメンターなどからアドバイスを受ける
  • 自分では気づけない強みや課題の指摘をキャリア形成に活かす

これらのステップを実践することで、変化の多い現代のビジネス環境にも柔軟に対応できる、自律型のキャリア形成が推進されます。重要なのは、ただ知識を得るだけでなく、それを行動に移し、結果から学び続ける姿勢を持つことです。

 

まとめ
  • プロティアンキャリアは、柔軟かつ自律的にキャリアを形成する新しい考え方で、組織のなかでの成功ではなく、人生そのものの成功を目指す概念
  • 従来型キャリアとは異なり、組織主導から個人主導へとシフトし、安定志向よりも成長や柔軟性を重視する
  • テクノロジーの変化に対応するため、継続的なスキル習得や知識のアップデートが求められる
  • 成功の定義が多様化する中で、自己実現や成長といった新しい価値観を取り入れる必要がある
  • 自己分析を行い、自分の価値観や目標を明確にすることが、プロティアンキャリア実践の第一歩
  • 仕事と私生活のバランスを考え、人生全体の目標を設計する「ライフデザイン」の視点も重要

 

 

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