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派遣エンジニア実態調査レポート|「スキル志向」と「キャリアの自律性」が生み出す新しい働き方のかたち

働き方の多様化が進む現代、エンジニアやプログラマーを取り巻くキャリア環境もまた、大きな転換点を迎えています。正社員雇用に加え、フリーランスや派遣社員、さらに業務委託や副業など、働き方の選択肢の幅は広がる一方です。

これは、一人ひとりのエンジニアが、自らの価値観やライフステージなどに応じたキャリアのあり方を「選び取る時代」に突入したことを示唆しています。それぞれの選択肢がエンジニアのキャリア形成にどのような影響を与えているのか、定量的に把握する必要があるでしょう。

また、「派遣」という働き方に対しては、いまだ「安定性に欠ける」「経験が偏る」といったステレオタイプな見方が根強く存在します。しかし実際には、現場で活躍する派遣エンジニアたちはそうした先入観とは異なり、前向きかつ戦略的な動機のもと、この働き方を選んでいることがわかりました。

本記事では、派遣就業経験のあるエンジニア418名を対象に実施したアンケート結果を参照し、派遣という働き方の実態と、そこから浮かび上がる現代エンジニアのキャリア観の変容を分析。派遣が「自己成長」や「主体的なキャリア設計」に資する働き方である可能性を考察します。

※本記事は、記事内容を監修するMARKEDELIC株式会社の協力の下で制作しています

 

 

 

派遣という働き方がエンジニアに選ばれる理由

「派遣」という就業形態に対して、「臨時的な働き方」「正社員になれない人の選択肢」といった先入観を抱いている人は少なくないでしょう。実際に「働きやすさ」「柔軟性」といった要素は、派遣就業の主なメリットとされてきたことも事実です。

しかし本記事で参照するアンケート調査では、派遣に抱かれがちな「腰掛け」といったイメージとは対照的に、キャリア形成に対する中長期的な視座、とりわけ「成長」や「スキルアップ」への関心が強く表れました。

特にエンジニア職においては、派遣という選択肢は決して消極的なものではなく、主体的かつ戦略的な判断に位置づけられている実態が浮かび上がります。

アンケート調査概要

  • 調査対象:エンジニア職の派遣社員(現役または就業経験者)
  • 調査人数:418名
  • 調査方法:インターネットアンケート(2025年3月実施)
  • 実施主体:MARKEDELIC株式会社

 

最も多い選択理由は「スキルアップの機会」

「派遣エンジニアという働き方を選んだ理由」の設問(複数回答形式)では、最も多かった回答は「スキルアップの機会が多いと感じた(42%)」となっています。これは、「ワークライフバランスを重視したかった(34%)」「給与や待遇が魅力的だった(20%)」といった、いわゆる「働きやすさ」や「待遇」に関する項目を大きく上回る結果です。

このデータは、「派遣」という選択がキャリア投資の手段としても認識されていることを示唆します。

特にエンジニアは技術のライフサイクルが短く、継続的なスキルアップが求められる職種です。そのことから、開発環境や現場を変えること自体が学習機会と捉えられ、派遣の流動性の高い働き方が、自己成長を促進する合理的な選択肢とみなされているのかもしれません。

これはエンジニアという職種特有の「スキル市場主義」「変化への適応力」を背景に、いわゆる安定志向から、「柔軟かつ能動的なキャリア観」へのシフトが進んでいるとも言い換えられるでしょう。学び続けなければ生存競争に取り残されるといった構造に起因し、「成長意欲=生存戦略」という強いインセンティブが働いているということです。

 

他職種と比較しても際立つ「スキルアップ志向」

この「スキルアップ志向」がエンジニア特有の傾向であることは、他職種との比較からも浮き彫りになります。

たとえば厚生労働省が実施している「派遣労働者実態調査」の令和4年の調査結果では、派遣労働者として働いている理由(※複数回答)の1位は、「自分の都合のよい時間に働きたいから」(30.8%)となっています。一方、「専門的な技能等をいかせるから」の回答は13.8%にとどまります。

つまり、一般的な派遣の働き方においては、ライフスタイルとの親和性が最重要視される一方で、エンジニア職では市場価値の維持・向上といった成長軸が重視されているということです。

もちろん、これはいずれかの傾向に優劣があるということではありません。職種固有の文化的・構造的な価値観の違いが如実に反映された結果といえるでしょう。

 

「多様なプロジェクト経験」も成長志向の一端

「多様なプロジェクトに関わりたかった」という回答が33%と多く選ばれていることも、成長志向の一側面として見逃せません。

特にエンジニア職においては、ひとつの社内や開発現場での就業経験だけでは身につかない業種横断的な知見や、異なるアーキテクチャ・フレームワークに対応する力が求められるケースが増えています。

派遣という働き方は、こうした「現場で学び、技術を掛け合わせていく」ための構造的なメリットを内包しています。異なる業界・規模・文化のプロジェクトに参画することで、技術力だけでなく、汎用性のあるビジネススキルや環境適応力も身につき、結果としてエンジニアとしての市場価値が大きく拡張されるのです。

 

派遣就業後の実感とスキル習得・成長の手応え

このように、派遣エンジニアのスキルアップ志向が顕在化する一方で、世の中には「派遣は不安定」「成長機会が乏しい」といった印象が根強く残っていることも事実です。「スキルが中途半端になりそう」「社員との待遇差が気になる」といったイメージは、派遣という制度特有の心理的ハードルでもあるでしょう。

しかし、実際に派遣として開発現場に従事したエンジニアたちの回答は、それらの懸念とは対照的なものとなっています。派遣就業前に抱いていた漠然とした不安は、実務での経験を通じ確かな成長実感へと変化しており、キャリアにプラスになったと捉えられている傾向も顕著に見られます。

 

「派遣の印象がポジティブに変わった」が最多

同調査では、「派遣エンジニアとして働いた前後で、その印象は変わったか?」という設問に対し、約過半数の46%が「ポジティブに変わった」と回答。一方、「ネガティブに変わった」はわずか12%と、およそ9割が否定的な印象を持っていないという結果になっています。

なお、この設問は年齢層に応じて回答傾向は少々異なっています。20〜40代では「ポジティブに変わった」が最多の回答である一方で、50代以上では「特に変わらなかった」が優勢となっており、年齢によって期待と実感のギャップの大きさに差分が見受けられます。

この背景には、若年層ほど派遣に対する不安感があり、そのギャップを実体験でポジティブに覆したことが強く反映されていると考えられます。

 

90%のエンジニアが「新しいスキルが身についた」と回答

派遣エンジニアとしての勤務経験を通じた成長実感に関する設問では、「何らかのスキルが身についた」と回答した人は全体の90%に達しています。

このデータは、派遣エンジニアとして働く一番の選択動機である「スキルアップの機会が多いと感じた」との高い整合性を示しており、期待と成果が一致しているポジティブな傾向といえるでしょう。「派遣ではスキルが身につきにくい」といった固定観念を、現場実態が明確に打ち破っている証左でもあります。

なお、50代以上のエンジニアにおいてもこの傾向は変わりません。「何かしらの新しいスキルを身につけられた」の声が9割近くと優勢です。シニア世代のエンジニアには、これまでに培ってきたスキルを「提供・還元する側」のロールが求められるイメージもありますが、決して衰えない成長意欲は、まさに百戦錬磨のエンジニアの矜持を表します。

 

成長を実感した具体的なポイント

「具体的に成長を実感できた点」の設問(複数回答形式)では、「新しい技術を学ぶ機会が多かった(49%)」「多様なプロジェクトに携われた(44%)」といった、派遣エンジニアならではの開発環境や現場の流動性の高さに起因する項目が上位を占めています。ここでも、派遣エンジニアを選ぶ動機との整合性が見て取れます。

 

対人スキル向上・人脈形成も重要な軸に

さらに注目すべきは、「新たな人脈を獲得できた(31%)」「コミュニケーションスキルが向上した(29%)」など、技術的成長のみならず、人間的な成長や職場適応力の向上といった、副次的・ソフトスキル習得への評価が高いことです。

これは派遣という働き方が、エンジニアに広義でのビジネススキルをもたらしていると評価できます。対人スキルの向上は、チーム開発・要件定義・顧客折衝といった、より上流工程へのステップアップにも直結します。「単にコードが書ける」だけではない、総合的なエンジニアリング能力の高まりを示すデータでしょう。

特に将来的にフリーランスや独立を視野に入れるエンジニアにとって、人脈は最大の資産です。派遣エンジニアという働き方は、単なる就業スタイルではなく、キャリア開発の戦略的な土壌としても機能している実態が浮かび上がります。

 

案件選びの基準から見えるキャリア志向の変化

キャリア観が多様化する現代において、派遣エンジニアという働き方は「つなぎ」や「一時的措置」ではなく、戦略的キャリア形成の一手段として機能しています。

派遣エンジニアにとって、案件選択は単なる「条件の良い仕事探し」ではありません。それは自分自身のキャリアに対する価値観を反映させる、戦略的な意思決定に他なりません。

「案件を選ぶ際に重視するポイント」の設問においても、エンジニアたちのキャリア観の成熟と多様化を象徴する結果となっています。

 

「スキル獲得」が最大の判断軸

案件選択のポイント(複数回答形式)とその理由(自由記述形式)の設問にて、最も多かった回答は「新しいスキルや業務経験を獲得できる(45%)」。次いで「自身のスキルと業務内容の合致(42%)」が続いています。ここでもエンジニア職特有のスキルアップ志向が顕在化した格好です。

この傾向は、従来の「収入」「勤務地」といった物理的条件ではなく、「キャリア資産」を構築する視点から就業先を選んでいることを意味します。派遣エンジニアの多くは、「今の自分」と「未来の自分」の間にあるスキルギャップを意識し、案件選びを通じてそのギャップを埋める戦略を立てる、いわば自己投資的な視点を反映していると考えられます。

派遣で就業する魅力は何といっても一つの会社に縛られず身軽なことで多くの仕事に携わることができてスキルや経験を得ることができることだと思うから。 ●30代/SE・プログラマー・開発エンジニア

新たな分野に挑戦することで仕事に対するモチベーションも維持しやすく、結果として業務への積極性や成果にもつながると考えています。過去にも未経験分野の業務に携わったことで、キャリアの選択肢が広がった経験があり、「新しいスキルの獲得」は最も重視しています。 ●30代/SE・プログラマー・開発エンジニア

派遣先企業について要望を出せたので、自分から新しいスキルを習得できる環境を選ぶことができたため。実際にフロントエンドとサーバーサイドの両方の現場に実務経験を得ることができ、スキルアップできたと思います。 ●30代/SE・プログラマー・開発エンジニア

派遣社員の強みとして、スキルや経験の多様性は重要だと考えている。そのため、派遣先が変わるごとに、その蓄積を増やしていきたいと考えているため。 ●30代/機械系エンジニア

こうしたコメントは、派遣就業を通じて自己成長を遂げていくための明確な意志と選択眼の存在を示しています。

 

テレワークや高時給は必須条件ではない

興味深いのは、「テレワークの可否(27%)」や「高時給案件への挑戦(26%)」といった条件面が、中位の優先度に留まっていた点です。

本来、これらは派遣求人において極めて訴求力のある条件とされてきました。実際に「テレワークのほうが仕事に集中できる」「高時給案件はモチベーションにつながる」と評価する声も寄せられています。

しかし、これらの項目の選択率の相対的な少なさは興味深い傾向です。この結果は、条件面よりも「本質的価値」を重視する、そんなプロ意識のあらわれといえるかもしれません。

報酬額より自分のスキルの中でミッションを達成できる内容を選択しています。新たなスキルをリスキングし挑戦していきたいです。 ●30代/SE・プログラマー・開発エンジニア

1番優先したいところは、実務経験や新たなスキル獲得になるかと思います。幅広く案件をこなすためには応用が効くスキルがついているなお良いかと思います。 ●20代/SE・プログラマー・開発エンジニア

こうした回答からも、エンジニアにとって派遣案件は労働条件を第一に選ぶものではなく、技術を磨く場であるという文化的前提が強く根付いていると考えられます。

 

「正社員登用」は視野にない?キャリア形成の自律性

また、案件選択において「正社員登用の可能性」を重視する回答は、わずか6%にとどまっています。これは決して偶然ではなく、派遣エンジニアの多くが雇用形態に縛られず、自分の意思でキャリアを形成していることの裏付けでしょう。

つまり派遣という働き方を「通過点」「代替手段」と捉えるのではなく、現在のベストな選択肢として主体的に選んでいる層が多いということです。これも自らの能力を軸に、契約形態に縛られないキャリア戦略を描くことが一般的になりつつある、エンジニア職ならではの特徴でしょう。

派遣という働き方を選択する理由の一つに、多様な企業や業務を経験し、自身のスキルアップを図りたいという思いがありました。そのため、自身のキャリアプランに合った業務内容であるかどうかは、非常に重要な判断基準だったからです。 ●30代/SE・プログラマー・開発エンジニア

正社員ではなく派遣を選ぶのだから、残業が少ない、休日がしっかりあるなどを派遣会社に確認してワークライフバランスを重視したい。 ●40代/ヘルプデスク・テクニカルサポート・OAインストラクター

こうした声が物語るのは、「正社員か否か」はもはやキャリアの本質的指標ではないという価値観の定着です。

 

他職種と比較して見える「自律性の高さ」

他職種との比較からも、この傾向の特異性は際立ちます。

たとえば前述の厚生労働省が実施している「派遣労働者実態調査」の令和4年の調査結果では、派遣労働者として働いている理由(※複数回答)として、30.4%が「正規の職員・従業員の仕事がないから」の回答を選択しています。

これをもって、「正社員になりたい」の希望を反映している数字である、と単純に論ずることはできませんが、一般事務職などでは依然として正社員登用を望む声が強いと推察できるでしょう。

これらの結果から、派遣エンジニアは「どこに派遣されるか」ではなく、「何を得て、どう活かすか」という自律的キャリア観に基づいて、職場を選び取っていることが明確に読み取れます。

 

派遣という選択が映し出す、新時代のエンジニアキャリア

エンジニアにとって派遣という働き方は、もはや「代替手段」ではありません。本記事を通じて読み解けるのは、エンジニアたちが派遣という形式を、自らのキャリア戦略の中で能動的に位置づけているという事実です。

実際に多くのエンジニアが「スキルアップ」や「成長実感」を主軸に派遣という働き方を選んでおり、さらにその選択が正しかったと実感している様子もうかがえます。

現代の派遣エンジニアは、テレワークの可否や正社員登用、あるいは高時給といった条件面だけに流されるのではなく「どこで、何を学べるか」「どのように価値を創出できるか」という観点から判断しており、その姿勢には、従来の派遣就業観を根底から覆すような能動性と自律性が感じられます。

そして何より、スキルや経験といった技術獲得、いわばハード面での成長にとどまらず、多様な現場での適応力、対人関係スキル、人脈の形成といったソフトスキル領域での成長も多く語られていた点は、エンジニアという職種にますます総合的な人材力が問われるようになっている証左といえるのかもしれません。

 

 

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