優秀なエンジニアが働きやすい環境を提供するため、エンジニアから「企業のお医者さん」であるコンサルタントに転身

安倍 義明さん(仮名) コンサルタント 38歳
安倍 義明さん(仮名) コンサルタント 38歳
大学院終了後、6年ほど電力分野の研究開発職に従事。仕事にやりがいを感じつつも、研究開発より周囲の人のサポートをする方が性に合っていると感じ、新事業の展開や現事業の問題点把握などのサポートをするコンサルタント会社に転職した。
現在はエンジニア時代の経験を活かしながら顧客企業の課題を分析して解決策を出し、ITツールやシステムの実行支援、導入のサポートを担っている。エンジニアとして培った「現場にあると助かるもの」「不足しているツール」「定量的に判断できる」といったスキルを活かし、企業のお医者さんとして工学的なソリューションを提供している。

 

エンジニアから「企業のお医者さん」であるコンサルタントへ

――まずは、エンジニアを目指したきっかけについて教えてください

小・中学生の頃に地球温暖化問題について学んだ際、「これは技術の力で解決すべき課題だ」と感じたことがきっかけです。今思えば、仕組みや制度づくりなど解決に向けたアプローチは様々ありますが、当時の私は「技術で解決したい」という思いが強く、エンジニアを志しました。

エンジニアを志した後は、工学部に進学。授業や研究、実験を通して知識を深めていく中で、「CO₂排出量を減らすには、エネルギー問題の解決が鍵になる」と感じました。さらに、エンジニアといっても設計、生産技術、研究開発など多様な職種があることを知り、研究室で「君は研究が得意だね」と言われることが多かったことから、研究開発の仕事をしたいと考えるようになりました。

就職活動を始める頃には自分でも研究開発の仕事が合っていると感じていこともあり、発電技術の分野で社会に貢献したいと考え、電機メーカーの研究開発職に就きました。

大学では機械工学を専攻していたため、入社後は電気分野を学び直しながら、電力の安定供給を支える電力システム・マネジメント業務に携わりました。

――どのようなお仕事をされていたんですか

発電された電力を需要と供給のバランスを考えながら制御する、と一言で言うと簡単ですが、この分野だけでも一つの研究テーマとして成立するほど奥深い世界です。

私はその中で、電力システムの需要と供給のバランスを効率的に管理する技術開発に取り組んでいました。具体的にはマイクログリッドという、停電時に地域で電力を自給自足できるシステムの構築について研究していました。

また、鉄道用の電力変換機の効率化など、ほかの応用分野での研究開発にも携わっていました。

 

――エンジニアからのキャリアチェンジのきっかけを教えていただけますか?

研究開発職として働きながら電力発電に関する知識を習得していた私は、入社4年目ごろには技術分野や研究対象の全体像を把握できるようになり、尊敬するリーダーの下でやりがいを感じながら楽しく働いていました。

しかし、5年目になるころには「自分は研究開発職として大きく活躍できる素養がないのではないか」と思うようになリました。周囲の優秀な同僚のサポートをしながら働くのが性に合っていることに気づき、また、彼らが自分の業務に集中できるよう、ビジネス面の検討や事務的な業務を代替する人やツールが必要なのに、それを議論する時間がなく、どんどん負担が増えていく様子を目の当たりにしていました。

そんな中で、「こうした業務を代替する人やツールを、会社内だけで稟議を通して活用するのは難しい」「それでも導入しなければ仕事は回らない」と強く感じるようになり、課題を分析して他社に提案するコンサルタントの仕事に興味を持つようになりました。

実際、研究開発職の業務をしながら業務提案やITツールの活用を提案することも多く、それが自分に合っていると実感していました。そこから業界リサーチや準備を重ね、現在のコンサルタント会社に転職しました。

――今はどのような仕事をされているんですか?

依頼内容によってさまざまですが、例えば「新しい事業部を立ち上げたい」という相談の場合には、まずその事業がどうすればビジネスとして収益化できるかを検討します。具体的には、市場レポートを調査し、企業の強みや保有技術を分析したうえで、現場の生産体制を実際に見に行き、事業化の支援を行います。

反対に「業績が赤字なので、この事業を続けるべきか判断したい」という依頼もあり、その場合も同様に現状調査から改善策の検討までをサポートします。

多くの場合「こういう困りごとがある」といった相談から始まるので、そこから下図のようなプロセスで進めていきます。

図:困りごとの相談から改善までのプロセス

 

スモールスタートで4〜7を段階的に回しながら、着実に課題を解決していくケースも多いです。

なかでも、最も重要なのは2の課題抽出です。お客さまが「困っている」と感じていることは、実際の根本原因のほんの一部であることが多いため、担当スタッフが丁寧にヒアリングを行い、現場に足を運んで自分たちの目で確かめながら真の課題を探ります。課題が多い場合には優先順位を付け、どこから着手するかをお客さまと一緒に検討します。

――今の仕事を楽しんでいますか

楽しんでいる部分もありますし、そうでない部分ももちろんあります。

もともと私は「あるべき姿」を描きながら、市場レポートや株価を調べ、企業や業界の強み・弱みを分析し、ビジネスの上流から下流までを見渡して戦略を練ってソリューションを導き出す――そうしたプロセスが好きで、実際にこれをできていることに楽しさを感じています。

また、実際に現場で頑張っているエンジニアをはじめとする方々が、よりよい環境で力を発揮できるよう支援できたときは「自分の仕事が誰かの挑戦を後押しできた」と実感でき、やりがいを感じます。

 

エンジニアの経験を活かしてコンサルタントとして活躍

――エンジニアとしての経験はどう活かされていますか?

まず、数値に強いというエンジニアとしての強みが評価されていると感じます。お客さまから「このツールを導入したい」と相談を受けた際に、Excelで簡単に演算してみたり、Pythonでコードを書いてざっくりとしたシミュレーションしたりと、定量的に検討できる点は大きな武器ですね。

また、制度やツールを導入する際に一部だけを切り取って誤解してしまうケースもあるのですが、「それは原理原則に反している」と早い段階で気づけるのもエンジニア時代に培った視点のおかげです。

さらに、自分自身がエンジニアとして現場で困った経験があるので、お客さまがまだ気づいていない課題にも気づけることがあります。「こういう部分で困っていませんか?」とこちらから提案し、実際にツール導入支援を経て業務が改善したときなどは、まさにこれまでの経験が活きていると実感します。

エンジニアとして培ってきたスキルも経験も、今のコンサルティングの仕事にしっかりつながっていると感じます。

 

――エンジニア時代と今の仕事、共通点があれば教えてください

技術を説明する際に全体像から整理して伝える力は、エンジニアにもコンサルタントにも欠かせないスキルだと感じます。たとえば「系統電力とは何か」という大枠から始め、送電線や変電所を経て電力がどのように工場や家庭に届くのかという流れを示し、そのうえで個別の技術や課題に落とし込んでいく。このように、背景から一連のつながりを踏まえて説明することで、相手の理解を深められます。

特に、自分とは異なる分野の方に技術的な内容を伝える場合は、イメージしやすい構成や資料づくりを意識しています。また、自分が別の分野について調べる際にも、省庁のウェブサイト、教科書、論文など信頼できる情報源から一次情報を得るという原理原則を大切にしています。

これはエンジニアやコンサルタントといった職種を超えて、共通して求められる姿勢だと思います。

さらに、定量的に評価する視点や、自分の意見に客観性があるか常に確認すること、業界動向を継続的に追うことも共通点として挙げられます。

こうした姿勢は学生時代や研究開発職時代に徹底的に鍛えられたもので、当時は苦労もありましたが、今の仕事で大きく活きていると感じます。指導してくださった方々には本当に感謝しています。

 

ワークライフバランスの取り方や、今後の展望

――家庭と仕事、どのように両立させていますか

なるべく仕事の時間を短くして、家族との時間を大切にするようにしています。

管理職になる前は余計な時間や労力をかけずに効率的に仕事を進められるよう、上司に対して設定したゴールやプロセス、期間などを細かく報告・連絡・相談して、途中で認識のずれが生じないよう心がけていました。

管理職になった今は、なるべくスタッフに仕事を任せチーム全体で分担しながら人を育てることを意識しています。私自身も含め、誰か一人に負担が偏らないようにし、残業時間を増やさないよう努めています。

独身の頃は、家に帰っても一人だったので、残業が多くてもあまり気になりませんでした。でも今は家族との時間をしっかり取りたいと思うようになり、「どうすれば仕事をより効率的に回せるか」をチーム全員で意識しています。

また、客先訪問や重要な打ち合わせ以外は在宅勤務にしており、昼休憩などの合間に子どもや妻と話すことで、オン・オフのメリハリをつけています。自分だけで抱え込まず、上司やスタッフと連携しながら仕事を進める――それが、残業を減らし、健全に働くためのコツだと思っています。

 

――今後の理想の働き方や、将来像について教えてください

働き方については、今のスタイルにとても満足しています。このまま、自分もスタッフもそれぞれのライフステージに合わせて柔軟にアップデートしながら働ける環境を続けていけたらと思っています。

エンジニアからコンサルタントに転身して改めて感じたのは、エンジニアの仕事の重要性と大変さです。だからこそ、コンサルタントとして困りごとを解決しながら、エンジニアの方々がより働きやすい環境を作っていくことを、大切にしていきたいと考えています。

そのためにも、管理職として依頼を受けた範囲にとどまらず、「こんなツールもあります」「こういう戦略はどうでしょう」と、自ら提案できる存在になっていきたいです。図々しいかもしれませんが、お客様と二人三脚で並走できるようなコンサルタントを目指しています。

正直なところ、自分で考えた戦略やツールを使って事業の立ち上げから実装まで一貫して携わり、世の中に送り出したいという思いもあります。ただ、コンサルタントという立場上、それは少し高望みだと思っています。

これからも、お客様の挑戦を支えながらエンジニアとはまた違う形で社会に貢献していけたらと思っています。

 

■おすすめ書籍

最近読んだ本の中では、『コンサルが「マネージャー時代」に学ぶこと』(ソシム社、著:高松 智史)が特に印象に残っています。

この本では、叱咤激励によるモチベーション管理に頼る時代は終わり、今は「インテレクチュアルにリードする」ことが重要だと説いています。さらに、マネージャー1年目は「インテレクチュアルリーダーシップを磨く」、2年目は「クライアントへ自分を売り込む」、3年目は「上をマネージ、下を愛す」といった具体的なステップが示されており、これはコンサルタントだけでなくすべてのビジネスパーソンに役立つ内容だと思っています。

管理職に昇進すると戦略立案だけでなく、営業やマネジメントなど担当業務が格段に増えます。もともと研究開発職だった自分にとっては未知の業務ばかりでしたが、この本を通して各業務に向き合う考え方や姿勢の基本に立ち返ることができ、とても参考になりました。

 


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