2017年に学生インターンを経て、新卒で株式会社Fusicへ入社。受託開発領域を中心に、Web・アプリ開発、機械学習、クラウド技術など多様なプロジェクトに携わり、技術経験を積む。配属当初から顧客折衝や要件整理など上流工程に関わり、開発だけでなく事業推進やプロジェクト設計にも関心を広げてきた。現在は事業本部・先進事業部門の部門長としてチームマネジメントを担うと同時に、プリンシパルエンジニアとして高い専門性を持つ技術者としても活躍。2026年2月現在、入社8年目。技術・組織・事業の三領域を横断しながら、新しい価値を生み出している。
吉野雅耶(よしの・まさや)さんは、2017年に新卒として株式会社Fusicへ入社し、受託開発領域を中心にキャリアを積んできたエンジニア。現在は、事業本部・先進事業部門の部門長として組織マネジメントを担いながら、技術面では高度な専門性とビジネス視点の両立を求められるプリンシパルエンジニアとして活躍しています。
エンジニアとしての領域を広げながら、チームづくりや事業推進に励む吉野さんに、取り組まれている事業や挫折を乗り越えた方法、前進し続ける原動力、そして道に迷ったときの向き合い方について伺いました。成長の途中で立ち止まってしまった人や、新しい環境へ踏み出そうとしているエンジニアの方々へ、未来へ歩むためのヒントを届けます。
学び続ける姿勢が、Webエンジニアとしてのキャリアを切り拓いた
――現在エンジニアとしてご活躍されている吉野さんは、学生時代もIT関連を専攻されていたのでしょうか?
いいえ、大学でITを専門的に学んでいたわけではありません。私の専攻は文学部で、その中でも言語学を研究していました。研究テーマは方言や言語構造といった、人の言葉に関する領域ですので、今の仕事とはまったく異なる分野です。
ただ、ITやインターネットに興味を持ったのは大学に入ってからではなく、高校時代に趣味でブログを作ったり、HTMLを触ったりしていた頃にさかのぼります。専門的な学習というより、面白いから触ってみる、そんな感覚でした。
そのような状況でエンジニアの仕事に興味を持ち始めたのが、サークル活動でホームページ制作を任されたタイミングです。「自分の書いたコードが動いてくれる」という手触りのある体験が、IT業界に進むきっかけにつながっていきました。
――複数あるエンジニアの業種のなかでも、Webエンジニアを希望された理由は何ですか?
まず、サークルでのホームページ制作をきっかけに、「自分の手で仕組みをつくり、それが誰かが使ってくれる」という感覚に強く惹かれたこと。そしてもう一つは、株式会社Fusicのインターンで実際に開発現場に入り、Webエンジニアの仕事を間近で見て、ただの興味が「仕事として続けたい」という確かな実感に変わったことが理由です。
当時、エンジニア職だけではなく、総合職や企画職などの選択肢も検討していました。ですがエンジニアの仕事に比べると、「自分が作る側にいる」という気持ちになれず、やりがいにつながらないのではないかと感じました。一方でWebエンジニアのような技術職は、取り組んだ分だけ成果や成長が返ってきます。その分難しさもありますが、その挑戦が楽しさにもなっていました。
また、エンジニア職のなかでもWebという領域を選んだのは、変化が早く、新しいサービスや技術が次々と生まれる環境に魅力を感じたためです。「学び続けられる仕事をしたい」と思ったとき、Webエンジニアという働き方が自然と自分の答えになっていました。
――Webエンジニアとして働く8年間で、苦労したことを教えてください。
特に印象に残っているのは「役割の変化に伴う壁」との向き合い方です。
入社して数年は、ひたすら技術を吸収しながら開発に向き合う日々で、知識不足によるトラブル対応や、バグや障害が発生した際にお客様へ迷惑をかけてしまった経験は、とても苦しいものでした。ただ、その失敗を繰り返さないために検証や作業手順を改善し、再現性を高めていくことで、少しずつ自信につながっていきました。
その後、チームリーダーを任され、技術だけでなく採用・評価・組織づくりといった新しい課題に向き合うことになります。思い通りにいかない場面も多くありましたが、仲間を増やし、チームとして成果を出すことに視点を広げられたのは大きな転機でした。現在の部門長という立場でも、技術・事業・組織のバランスに悩むことはありますが、その積み重ねこそが今の自分をつくっていると思います。
プリンシパルエンジニアとして、宇宙・地域DXへ挑戦
――Webエンジニア(プリンシパルエンジニア)としてどのような業務に取り組まれていますか?
現在、私はWebエンジニアのなかでもプリンシパルエンジニア(技術面における専門性・ビジネス視点を併せ持つ役職)として、プロジェクトに関わっています。
会社としては受託開発と自社サービスの両軸で活動していますが、私は受託側の責任者として、お客様からの要望に対し、要件整理・技術選定・アーキテクチャ設計といった上流工程から入るケースが多いです。扱う技術領域もWeb開発やアプリケーション開発だけでなく、クラウド基盤構築、機械学習領域など幅広く、テーマに応じてチームを組成し、技術選定から開発まで伴走しています。
また、プリンシパルエンジニアというポジションは、単に技術を深掘りするだけではなく、「なぜ作るのか」「誰の価値になるのか」といったビジネス視点を踏まえ、プロジェクト全体を設計する役割を担っています。お客様との対話やコミュニケーション、事業的な判断、開発プロセスの整備なども含め、技術を軸にしながらプロジェクト全体を動き回る立ち位置と言えるかもしれません。技術とビジネスの橋渡し役として、責任と面白さの両方を感じながら取り組んでいます。
――これまでの事業の中で、印象的なプロジェクトがあれば教えてください。
これまで携わったプロジェクトのなかで特に印象に残っているのは、「JAXA地球観測衛星データ提供システムのクラウド移行」の案件です。
当プロジェクトは、国主体のプロジェクトであることから、仕様・計画・コスト・運用体制・実績を客観的に比較できる入札方式(コンペティティブな選定プロセス)での提案が必要でした。技術力だけでなく、セキュリティ基準、長期運用計画、災害時のバックアップ体制、将来仕様の拡張余地など、多面的な提案が必要な点に難しさを感じました。
――宇宙事業の取り組みのなかでも、特にこだわられたポイントを教えてください。
このプロジェクトでは、技術そのもの以上に「開発プロセスの在り方」を見直す必要がありました。これまで当社では、お客様と対話しながら柔軟に仕様を固めていくアジャイル寄りの進め方が多かったのですが、入札案件では、入札や契約の都合もあり、開発前に詳細な仕様書を作成し、レビューを重ねるプロセスが欠かせませんでした。「作りながら考える」から「決めてから作る」へのマインドチェンジは、正直なところ自分にとっても大きなチャレンジでした。
さらに今回は、新しいクラウド基盤を採用しているため、その技術的なメリットだけでなく、「従量課金ゆえに予算見通しが立てづらい」といったデメリットも含めて、きちんとお客様にお伝えし、納得いただく必要がありました。単に「技術的に優れているから使いましょう」では通用せず、予算や運用体制も含めた全体最適の観点でディスカッションを重ねていったことは、エンジニアとしても大きな学びでした。
また、この案件は当社だけでなく他社とジョイントベンチャーを組んで進めており、複数社で一つのチームをつくるという点でも難易度の高いプロジェクトです。進捗共有や認識合わせの方法、役割分担の仕方などを試行錯誤しながら、「ワンチーム」として進めていくことを意識しました。
今回求められているのは「ただの置き換え」ではなく、「未来に耐えうる基盤づくり」だと考えています。単なる開発業務ではなく、社会インフラとして機能するプラットフォームをつくるという責任と向き合うプロジェクトです。
――先進技術関連で他に取り組まれたプロジェクトはありますか?
もうひとつ印象的な取り組みとして、地域商品券アプリである「まちのわ」アプリ開発があります。
「まちのわ」はスマホ決済機能を持ったサービスで、地域のプレミアム付き商品券のDX化を目的としたプロダクトです。私はプロジェクトマネージャーとして約3年間携わり、設計・開発を含む役割を担いました。技術だけでは成立しないサービスであるため、「実際に使われる環境」や「ユーザー体験」を深く考えながら進めた点が印象に残っています。
また、プロダクトがリリースされ、街で実際に使われる様子を見られたことは、Webエンジニアとして非常に大きなやりがいを感じました。単なる開発ではなく、地域の課題解決や新しい価値提供に携われた点が、このプロジェクトの面白さでもあり、先進技術領域の可能性を感じた経験でした。
――メインの業務以外で取り組まれていることはありますか?
仕事以外では、エンジニアコミュニティへの貢献にも積極的に取り組んできました。
たとえば、福岡にある「エンジニアカフェ」ではハッカーサポーターとして、イベント運営や技術相談のサポートを担当しています。また、以前は「Geek Studio」というコワーキングスペースを運営し、勉強会や交流イベントを開催しながら、エンジニア同士が学び合える場所づくりを行っていました。
ほかにも、学生時代から続けているアイドルとしてパフォーマンスを提供するサークル活動もあり、現在は依頼ベースではありますが、イベント出演や余興として呼んでいただくこともあります。エンジニアとしての仕事だけでなく、人とのつながりから生まれる活動にも価値を感じています。
キャリアを動かすのはスキルではなく姿勢
――キャリアアップの成功要因を教えてください。
キャリアアップの要因を一つに絞るのは難しいのですが、振り返ってみると「好奇心を持って、境界線を越えていく姿勢」が大きかったと思います。
Webエンジニアとして技術を深めることはもちろん大切ですが、私は技術だけで完結する働き方よりも、「なぜこの技術が必要なのか」「事業として成立させるには何が足りないのか」といった、周辺領域に踏み込むことに興味がありました。採用に関わったり、イベント運営をしたり、プロジェクトマネジメントに挑戦したりと、本来の担当領域を越えた経験を積むことで、視点が広がり、意思決定の解像度も高まっていきました。
もちろんすべてが順調だったわけではなく、慣れない領域で失敗したこともあります。それでも「まずやってみる」という姿勢を続けたからこそ、経験やスキルが連鎖的に積み上がり、結果的に評価にもつながったのだと思います。技術への探求心と、領域を越えて試してみる行動力。おそらくこの2つが、私のキャリアの推進力になっています。
――エンジニアとしての求められるスキルや考え方を教えてください。
「好奇心を持ち続けられるかどうか」だと思います。技術は常に進化し続けていて、今使っている技術が数年後には当たり前ではなくなることも珍しくありません。そのなかで成長し続けるためには、誰かに言われたから学ぶのではなく、「面白いから学びたい」「知らないことを知るのが楽しい」と思える姿勢が必要です。
また、エンジニアというと専門知識やプログラミングスキルばかりが注目されがちですが、新しい技術や情報に素直に興味を持ち、自分から触れていける人ほど伸びていきます。逆に、受け身の姿勢だとアップデートし続けるのがつらくなり、途中で停滞してしまうことも少なくありません。技術力はもちろん重要ですが、「学び続けたい」という気持ちがある人ほど、この世界では活躍できると感じています。
目指すべきは「キャリア」ではなく「自分がワクワクする未来」
――Webエンジニアとしての目標や今後の展望を教えてください。
今後は、Webエンジニアという枠を超えて、事業をつくる側の視点をより強く持っていきたいと考えています。今期から先進事業部門として独立し、宇宙領域における新規事業の立ち上げを任せてもらっているのですが、これは私にとって初めての挑戦です。新しいドメインで、0から価値を積み上げていくプロセスは未知な部分も多い分、非常に刺激的ですし、ワクワクしています。
そして私が掲げる目の前のミッションは、まずこの事業を成功させることです。単なるプロジェクトではなく、「会社の事業ポートフォリオのひとつとして成立させること」をゴールにしています。数年後、当社、株式会社Fusicの実績のなかに「宇宙」という領域が確立され、それを自分の手でつくったと言える状態にしたい。それが今の自分にとっての挑戦であり目標です。
――Webエンジニアを目指す方々へメッセージをお願いします
Webエンジニアとしてこれからの道を考えている方は、「学び続けることはもちろん、自分がどこを目指したいのか、方向性を考えること」が大切です。
今はChatGPTをはじめ、AIや自動化ツールが台頭し、数年前とは全く違うスピードで技術が変化しています。プログラミング言語を覚えることはもちろん大切ですが、ただ学ぶだけでは代替されてしまう場面も増えていくでしょう。
だからこそ、「技術を極めたい人」はとことん深く踏み込み、技術的な専門性で戦う道があります。一方で、技術を軸にしながら事業やプロダクトづくりに関わる道もあります。どちらが正しいということではなく、自分にとってワクワクできる方向性はどちらか、早い段階で意識することが大きな差になります。
もし未経験で迷っているなら、一人で学び続けるより、現場に踏み出す方が成長は早いです。エンジニアは「実務と会話を通じて成長する職業」だと考えているので、人と話し、コードに触れ、失敗して直して、また挑戦する。その循環が経験と自信になります。
また、エンジニアはこれからも必要とされ続ける仕事です。だからこそ、自分がどんな未来に関わりたいかを軸に、挑戦を続けてほしいと思います。あなたの技術は、きっと誰かの役に立ちます。そう信じて、一歩踏み出してみてください。
■おすすめ書籍
私が最近読んだ本のなかで特におすすめしたいのは、『急成長を導くマネージャーの型』です。会社としても推奨されている一冊なのですが、マネジメントを体系的に理解できる構成になっていて、「感覚でマネジメントしていた状態」から、言語化して実践できる状態に引き上げてくれた本だと思っています。
この本では、マネージャーがやるべきことを大きく4つの領域に分類しているのですが、そのフレームワークが非常に実践的です。「チームの成果をどう最大化するか」「採用と育成をどう設計するか」「既存メンバーのパフォーマンスをどう引き出すか」など、漠然と考えていたことが整理され、自分の強み・弱みを客観的に捉えるきっかけになりました。

