「子連れで会議」は当たり前!日本の20年先を行く、ユニコーン企業のダイバーシティ推進|ギーク アメリカ vol.5

日本でもすっかり浸透してきた「ダイバーシティ」というフレーズ。大手企業のウェブサイトでCSRの情報欄を見ると、決まり文句のように“ダイバーシティ推進”と記載があります。

でも、それって実際にはどれくらい実現できているのでしょうか?企業によっては、目標として掲げながらもなかなか取り組めていないところもあるでしょう。その反面、全社的なサポートをして積極的な取り組みをしているところもあると思います。

しかし、ひとたびアメリカのユニコーン企業(企業としての評価額が10億ドル以上で、非上場のベンチャー企業)に目を向けてみると、そこには天と地ほどの差があります。積極的に多様な文化を許容している同企業では、ただの決まり文句ではなく、“企業カルチャー”として実際にそれを体現しているのです。

アメリカのエンジニアのリアル。第5回目となる本稿は、ユニコーン企業で行われているダイバーシティ施策をご紹介します!

全社会議に子連れで何が悪い!子供がオフィスにいるのは“当たり前”

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日本でダイバーシティ推進というと、概して「女性の社会進出」「子育てとの両立支援」といったイメージがあります。しかし、アメリカのIT企業に勤めている人が見れば「まだそんな事を言っているのか」と驚くでしょう。

ユニコーン企業では、1か月程度の育児休暇が取れるのはもちろん。ベビーシッターが体調を崩した日は、社員が小さな子供をオフィスに連れてくることもしばしばあります。それは、全社会議のような重要度が高いシチュエーションであっても同じ。誰一人怪訝な顔などしません。

これは、会社としてダイバーシティを受容するカルチャーが社員に染み付いている証拠。日頃から互いを理解しようと努め、同じ組織の一員としての愛情を持っていなければこういった状況は生まれません。

日本でも近い将来、社員が連れてきた子供を見た瞬間、誰もが笑顔で声をかけるような文化が根付く事を強く望みます。

会社がLGBTイベントを支援。社内がレインボーカラーに染まる

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ここ数年で、日本でもようやく認知度が上がってきたLGBT(女性同性愛者、男性同性愛者、両性愛者、性同一性障害を含む性別越境者などの人々を意味する頭字語)。しかし、日本企業では、LGBTへの支援どころか配慮をしているところはほとんど無いでしょう。場合によっては、そういった社員に偏見を持ってしまうケースすらあるかもしれません。

しかし、アメリカのユニコーン企業は違います。こぞってLGBT関連イベントのスポンサーとなっていますし、社内でのLGBTイベントも公式なものとして応援しています。ゲイやレズビアンである事をオープンにしている社員も多くいますし、彼らに対して差別的な視線を送る者もまずいません。

そして、この課題を「アメリカと日本は違う」で済ませてはいけないでしょう。なぜなら、日本国内にもオープンになっていないだけで、十分に大きなLGBTコミュニティーあるいはそれを隠して生きている人々が数多く存在するためです。

NYのマンハッタンを歩いていると、よくカラフルな色の服を着こなしたオシャレなゲイの方を見掛けます。そして、すれ違い様に「いけてるジャケットだな!」と声を掛ける人も少なくありません。このようにアメリカでは、自由に自己表現を行い、周囲もそれを理解し尊重する文化があります。

いまだにテンプレートのように「男性はスーツにネクタイ」「女性は派手すぎないオフィスカジュアル」と決まっている日本企業では、まずは私服での出社を推進することから、LGBTへの理解や、受容する文化の醸成が始まるのかもしれません。

社員食堂は「食のマイノリティー」の声を聞く

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多くのユニコーン企業が、社員食堂で食事を無償で提供しています。「毎日タダで3食食べられるなんて、なんて素晴らしいんだ」と思う方もいるでしょう。

ただ、無償という点よりも評価すべきはそのメニューの“豊富さ”です。ベジタリアン向けは当然ながら、グルテンフリーメニューやハラル料理など、身体あるいは宗教上の理由で、食べられるメニューが限定されている社員にとっても公平に美味しい食事を提供する精神がそこにはあります。

この精神なしに、ただ有名レストランのメニュー提供や美味しいビールが毎日飲み放題といった見せかけの福利厚生充実をしてはいけません。それによって大多数の社員の満足度は上がりますが、少数の社員は逆に大きな疎外感を感じる可能性があるからです。そして、それは後に大多数の社員の感情にもネガティブな影響をもたらします。

常に社員からのフィードバックを得ながら新たなメニューを設置したり、特定の日には普段と変わった各国の料理を提供したりするなど、マイノリティーの声も等しく受け止める姿勢こそが、全社員の満足感を高めることにつながります。

今後、日本に求められるダイバーシティのあり方

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最後に、ダイバーシティ推進をするために日本人に意識してほしいのが「先入観を捨てて、まっさらな視点で物事を評価する」ということです。

例えば、東京の職場に関西人が加わった場合、あなたは何の悪気もなく「関西弁を話してみて」「面白いこと言って」と声をかけてはいませんか。そして、その「関西人=○○」という先入観が、関西出身者にしばしば居心地の悪さを与えていることをご存知でしょうか。

ダイバーシティ推進とは、こういった小さな部分を意識することから始まります。まずは偏見を持たずに、相手のことを理解するのが重要。日常的にそれを行っていくことで、女性の働きやすさ向上やLGBTフレンドリーな職場、身体障害者が働きやすいオフィスなどの実現につながっていきます。

さあ、皆さん。今日からほんの少しだけ、自分とは異なる文化を持つ相手への思いやりの気持ちを持ってみませんか?



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