紺野さんは、出身地である北海道札幌市の建設会社で約2年間、SNS運用と事務職を経験したのち、秋田県雄勝郡東成瀬村に第三セクターとして設立された東成瀬テックソリューションズ株式会社(通称:なるテック)へ転職しました。札幌から東成瀬村への移住、子育て、SE経験ゼロからのスタートと多くの課題に直面しながらも、持ち前の前向きさと行動力でエンジニアの世界に飛び込み、日々奮闘しています。エンジニアとしてはまだまだ新米で一歩を踏み出したばかり、それでも希望実現のため明るく前向きに課題へ取り組む紺野さんへ、「今を頑張れる秘訣」について話を聞きました。異業種からの転身に対する不安や、仕事と家庭との両立に悩むエンジニアの方々へ、アドバイスを送ります。
前職は札幌市の建設会社でSNS運用と事務を担当。SNSアカウント運用業務の中で扱っていた管理ツール「Meta Business Suite」の利便性に魅了されたことをきっかけに、未経験からSEとしてエンジニアの道を志す。2024年9月、秋田県雄勝郡東成瀬村にある東成瀬テックソリューションズ株式会社(通称:なるテック)入社。家庭では母として子育てをしながら、一人前のエンジニアを目指し、スキル習得とITを活用した地域活性化プロジェクト推進などに取り組んでいる。
世の中にある便利なモノ。その開発に魅力とやりがいを感じ、未経験からSEの道へ
――前職は建設会社でSNS運用と事務を担当されていたそうですね。
紺野:はい。子育てをしながら2年間ほど、札幌市の建設会社でSNS運用と事務を担当していました。事務業務では主に取引先業者の請求書管理などを行い、SNS運用の方では会社のSNSアカウントを管理運用する、といった内容です。当時、SNSの知識がほぼゼロの状態でしたので、手探りの状態からスタートしましたね。会社のブランドや認知を高めるためにInstagramから建設に関する豆知識などの情報を発信していました。
――エンジニアに興味関心を持つようになったきっかけは?
紺野:Instagram運用に関しては素人同然。だからこそ競合他社のアカウントを分析したり、効果的なサムネイル画像の作り方を研究したり、そういった努力は欠かさないようにしていました。また、扱っていた管理ツールの「Meta Buisiness Suite」(※)の利便性に感動し、どんどんのめり込んでいったのは大きかったですね。「世の中にはこんなに便利なモノがあるんだ!」と。次第にその感動はHTMLなどのプログラミング分野への興味関心へと変わっていきました。プログラミング関連の書籍などを買い求めて読むようになったのも、その頃からです。
※Meta社が提供するFacebookとInstagramのビジネスアカウントを一元管理できる無料ツール)
――なるほど。その後、エンジニア転身の決め手となった出来事はありましたか?
紺野:SNS運用業務をしていく中で、少しずつ、Instagramの投稿をきっかけとした問い合わせが会社へ入るようになりました。「(SNSの発信を)見てくれた」「SNSから集客できた」というポジティブな反響が生まれたことで、手応えを感じるとともに、自信にも繋がりましたね。この成功体験を通し、「自ら開発し、世の中に便利なモノを提供していく側になろう」と心に決めました。
東成瀬村のような地方だからこそ、SEとして働くやりがいがある
――札幌から東成瀬村へ移住しようと思ったのはなぜですか?
紺野:やはり、エンジニアになりたかったからですね。「なりたい職業」に就くことを第一の目的に転職活動をする中で、なるテックという会社が村外からの地域おこし協力隊員によって構成されていると知りました。ちょうど社員募集枠があったので、チャンスだと思い応募したところ、無事に採用をいただくことができたのです。この出来事を機に、東成瀬村へ移住することになりました。
――現在の環境(東成瀬村)は、仕事にどんな影響を与えていますか?
紺野:移住するまで東成瀬村のことを知りませんでしたが、とにかく自然が豊富で、都市部にはない人と人との密接な関わりがあり、とても魅力的な環境だと感じています。村全体として防犯意識が高く、登校班制度もあるので子育てにも適しています。なにより、こういった環境のおかげで、安心してエンジニアの仕事に集中できるのは大きな利点です。山村地域におけるIT事業と聞くと違和感を持つ方も多いかもしれませんが、最低限のインフラさえ整っていれば実はエンジニアにとって理想的な環境なのです。この東成瀬村の集中できる環境は、学力日本一や著名漫画家の輩出にも繋がっていますよね。移住してみて、過疎地域と言われる地域にこそ、新たなクリエイティブやイノベーションが生まれるのではないか、と思いました。
――移住と転身(転職)を同時に果たすのは大変だった?
紺野:そうですね。ただ大変だったと言えば、行政上の手続きが多く面倒だったことくらいです。それ以上にメリットを感じる場面の方が多く、村からの住宅斡旋や引越し資金援助など、支援制度が非常に充実していることはとても魅力的でした。加えて、なるテックは村外から移住してくる地域おこし協力隊が従業員として働いている会社なので、IT業界、ひいてはエンジニアの世界への門を叩く同じ志を持った若い人が多く集まります。励みになりましたし、エンジニアを目指すモチベーションを高く保ったままで、移住と転職という大きなライフイベントを迎えることができました。
――子育て(家庭)と仕事の両立はいかがですか。うまくいく秘訣を教えてください。
紺野:家事においては完璧を目指さないことだと思います。メリハリを大切にしながら、常に余裕を持つことを心がけていますね。それは仕事にも同じことが言えるのではないでしょうか。その意味においても、この東成瀬村の環境や会社のリモート中心の働き方は本当に仕事がしやすく、良い影響を与えてくれています。休日は子どもと買い物に出かけたり、横手市の生涯学習館「Ao-na (あおーな)」で過ごしたりしながら、リフレッシュしていますね。地方の田舎ならではの長閑な環境は、生活面においても快適さをもたらしてくれるので、今のところ移住して後悔したことは一度もありません。
――地方(過疎地域)におけるSEの使命や役割とはなんだと思いますか?
紺野:地方では人口減少によってIT人材が不足し、住民のリテラシーも低いのが現状です。結果、生活における不便や不満を解消できずにいることが多く、東成瀬村も例外ではありません。ITの力で、そういった地域の課題を解決しながら、持続可能な村づくりに貢献していくことが、なるテックの使命であり役割だと思っています。そこで、私たちが大切にしたいと考えているのは、今ある資源を活かして、地域のポテンシャルを最大化させること。繰り返しになりますが、東成瀬村には学力日本一という強みがあり、IT人材が育つための素地は以前から整っていました。ただ、それを活かせる人がいない。ここに地域の課題の本質があり、私たちの使命や役割も生まれると思っています。これまで会社として、IT人材を育成するため、地域の小学生向けにクラウド型eラーニングでプログラミング教室を定期開催しており、私も運営支援スタッフとして携わってきました。現場では地域特有の人と人との密な関わりが存分に活きており、近い距離感で子どもたちと学びの場を共有することができています。また、村の特産物には“仙人しいたけ”や“あわびしいたけ”などのブランドを持つ椎茸や米がありますが、それらを生産する農家の方とタッグを組んだプロジェクトにも取り組んでいるところです。ICTソリューションを導入し、作業効率化や生産性向上に向け実証実験などを重ねてきました。なるテックでは、こういった地域との連携によるITプロジェクトの成果を、“なるフェス”というイベントを通じて定期的に発表しPRすることにも注力しています。ここ東成瀬村から、イノベーションの新風を起こし、他地域へも波及させていきたいですね。将来的に、私もそういった地域活性化プロジェクトのコアメンバーとして参加できるよう、与件をこなすだけではなく、お客様や地域へ課題解決策を提案し、ソリューションを設計・アウトプットできるようなSEへと成長していきたいと思っています。
※東成瀬テックソリューションズが入居する東成瀬村山村開発センター
充実した新人研修プログラムを通し、エンジニアの難しさとやりがいを知る
――エンジニアとしては未経験からの転身。苦労したことはありましたか?
紺野:とにかく実際にProgate(※)などを触ったり技術書を読み漁って勉強したりしながら、スキル習得に励みました。専門性の高い仕事なので覚えなくてはいけない用語や身につけなくてはいけない技術、そしてエンジニアとしての思考法などが沢山あることは覚悟していましたが、やはり初めての経験が多く、飲み込みには時間がかかりましたね。私の場合、札幌からの東成瀬村への移住や子育てなど仕事以外の課題も抱えていたので、心細さもありました。でもそんなとき、なるテックの先輩社員の皆さんが手厚くフォローしてくださったのです。なるテックはリモート中心の働き方にも関わらず、社員一人一人の繋がりがとても強い。業務でわからないことがあれば、Google MeetですぐにWEB会議を設けてアドバイスをくれます。右も左もわからない私でしたが、「いつでも頼っていいよ」と言ってくれる先輩方のフォローのおかげで、苦労や課題を乗り越えることができました。
※オンラインプログラミング学習サービス
――SE転身後、現在までどんな案件やプロジェクトに携わりましたか?
紺野:なるテックでは新人研修プログラムが充実していたので、OJTの一環として、社員の業務効率化と全体最適化を図ることを目的に、インターネット上で管理できるSaaS型の日報管理アプリを開発しました。開発の過程ではJavaやSQLなどの言語に関する知識をしっかり深めることができたので、基礎力向上に繋がったと思っています。
――充実した新人研修プログラムの中で、実践に役立つスキルは習得できましたか?
紺野: OJTと並行した専門研修で、要件をシステムへ落とし込む力がいかに重要かを知りました。エンジニアはバックエンドも含め矛盾がなく再現性の高い設計書を作成し、その記述内容を忠実にシステムへ実装させなくてはなりません。そのためには、お客様の要望を正確にヒアリングする能力や課題の本質を見極める想像力、そしてそのインプットした情報を書面やシステムにアウトプットする力などが必要となります。現在もまだまだ勉強中ですが、なるべく早いうちに習得したいスキルですね。
――仕事面における今後の目標や課題は?
紺野:やはり、要件整理やヒアリングの仕方、設計書の作り方などをしっかり身につけて、エンジニアとしての一連の役割をこなせるようになることです。入社2年目、今はとにかく一人前のSEを目指して、目の前の課題一つ一つに挑戦していこうと思っています。
一人前のエンジニアへ成長するために必要なこと
――紺野さんご自身の経験から、SEに求められる要素やスキルはなんだと思いますか?
紺野:昨今、IT業界ではリモート中心の働き方が主流になっているため、オンライン上で相手といかに充実したコミュニケーションがとれるか、そのスキルがとても重要だと思います。リアルの対面では相手の表情などが見えやすく、意図を汲み取ることも比較的容易ですが、生産性や業務効率化・合理化を優先したオンライン上のコミュニケーションでは逆にそれが難しくなるからです。要件や欲しい情報を満足に得るために、また、後の工程に悪影響を及ぼさないようにするためにも、オンライン上でのコミュニケーション力をしっかり磨いていこうと思っています。
――コミュニケーション力向上のため、全社的に行なっている取り組みはありますか?
紺野:会社全体として、チャットのメッセージ文の末尾に必ず絵文字を付けるという取り組みを行っています。一見、小さなことかもしれませんが、絵文字の有り無しによって感情の伝わり方が全然違ってくるので、円滑なコミュニケーションに対して一定の効果を発揮しているなと感じます。
――最後に、ITエンジニアを目指す方々へアドバイスをお願いします。
紺野:エンジニアに転身して2年目。まだまだ駆け出しの未熟者なので大きなことは言えませんが、迷ったり考え込んだりする前に、毎日少しずつでも手を動かすようにした方がいいです。「継続は力なり」とよく言います。もちろん専門性の高い技術職である以上、忍耐や根気は要りますが、だからこそ目標を達成したときの充実感や成長を肌で感じられる、やりがいの大きな仕事であることも確かです。思いきって飛び込んでみよう、手を動かし行動してみよう。ITエンジニアの道を志すならば、そういった気概でチャレンジしてみてください。5年後、10年後に振り返ったとき、必ず、勇気と苦労に見合ったスキルが身についているはずです。
◆おすすめの書籍
牛尾 剛 (著)「世界一流エンジニアの思考法」(文藝春秋)
私がこの書籍をおすすめする理由は、なんといっても実践に役立つロジックが満載なところ。著者の牛尾剛氏は、米マイクロソフトの現役ソフトウェアエンジニアをしていた方で、超巨大クラウド開発の最前線で学んだ思考法がわかりやすく書いてあります。
特に私のような新米エンジニアは生産性を上げるために行動しようと思っても、どこから手をつければいいのか、なにから理解すれば良いのか、プロセスの優先順位がわからず迷ってしまうことが少なくありません。
その点、この書籍には「自らの疑問(問い)をもって理解にのぞむ」「基礎の理解に時間をかける」「準備と持ち帰りをやめて、その場で解決する」など、合理的で役に立つ考え方や仕事の仕方がぎっしりと書かれています。仕事をする中で壁にぶつかったときや、なにかに迷ったときは必ず読むようにしている一冊です。
