Special Talk | 特別対談

多様化してきた「働き方」 エンジニアのニーズに応えるキャリア支援とは――キャリアアドバイザー座談会

新型コロナウイルスの流行や、社会的な「多様な働き方」の推進を通して、派遣市場では企業側のニーズはもちろん、求職者であるITエンジニアの働き方も大きく変わってきました。

そういった市場変化のなかで、パーソルクロステクノロジーのキャリアアドバイザーはどのようにスタッフの方々のキャリア支援を行っているのでしょうか。組織としての取り組みについて、人材開発部の近藤部長と、現場で日々スタッフの多様な働き方ニーズと向き合っているキャリアアドバイザー2名に聞きました。

  • パーソルクロステクノロジー株式会社 IT営業本部 人材開発部 部長

    近藤 晃洋

    関東・名古屋・関西のITエンジニアのキャリア支援の責任者
    大切にしていること:営業とCAが連携して、個人キャリアを支えていく環境づくり

  • パーソルクロステクノロジー株式会社 IT営業本部 人材開発部 首都圏IT第1G

    菅野 美佳

    関東エリア/Web開発エンジニアのキャリア支援
    大切にしていること:一人ひとりの心情に寄り添って、じっくり対話をすること

  • パーソルクロステクノロジー株式会社 IT営業本部 人材開発部 西1G

    井上 晃太郎

    西日本(関西と九州)エリア/ヘルプデスクやインフラエンジニアのキャリア支援
    大切にしていること:やりたい気持ちを尊重して、お仕事紹介やキャリア支援を行うこと

働き方の多様化とともに、派遣エンジニアの希望もそれぞれに

  • ——昨今の新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、IT領域における派遣市場の変化をどのように感じていますか?

    近藤 :2020年の新型コロナウイルス感染症の第1波では、IT領域の派遣市場も大きな影響を受けました。しかしその後は各企業ともDXが加速し、リモートワーク環境が整い始めた頃には派遣ニーズも戻っていきました。

    2022年にいたっては、コロナ禍前よりも派遣ニーズが高まってきた印象です。その中でも、「時短勤務」や「リモートワーク」など、スタッフの方が持つ働き方への要望が強まっているのが最近の傾向かもしれません。特にリモートワークを第一希望にされる方が非常に多いですね。

    菅野 :現場で見ていても、首都圏だとリモートワークの要望が高い印象ですね。井上さんの担当エリアはどうですか?

    井上 :関西・九州エリアも同じ傾向ですが、さらにいえば、スタッフの方の希望がより細かくなってきたように感じます。例えば、家庭の事情などでフルリモートのお仕事しかできないという方から、リモートワークを経験した結果「一人で仕事をするのは気が滅入るから、月あるいは週のうち何日かは出社したい」という方まで、さまざまなタイプの方がいらっしゃるように思います。

    菅野 :首都圏エリアは、IT領域でのリモートワークが普及するようになって、首都圏から実家のある地方に戻られるなど、生活の環境が変わって、その結果「フルリモートで仕事がしたい」というニーズが増えている印象ですね。

  • ——一方、企業側から派遣エンジニアの方へのニーズに変化はあるでしょうか?

    近藤 :より即戦力を求める企業が増えているように思います。これは、リモートワークが中心になり、エンジニアに対面で指示を出したり、教えたりする機会が少なくなってきたのが理由です。

    コロナ禍前は、「若手」や「未経験」などのポテンシャル採用による就業受け入れが比較的多かったのですが、コロナ禍以降はいわゆる「エルダー層」をはじめ、年齢が上がっても経験を持つエンジニアのニーズが高まっています。

    菅野 :エルダー層になると、私が担当しているWebエンジニアの分野では、即戦力で活躍できる経験年数・スキルおよびエンジニアが少ない言語やフレームワークの経験を持つスタッフを求める傾向が高い気がします。 

    井上 :関西・九州エリアも同じですね。

    近藤 :パーソルクロステクノロジーでは、エルダー層のキャリア支援に力を入れていることもあり、最近では70歳になるスタッフの方の就業が決まった事例もあります。

スタッフの多様な働き方に寄り添う、キャリアアドバイザーの仕事

  • ——そんな中でパーソルクロステクノロジーでは、「時短・週4日以下・フルリモート」といった働き方の推進や、エルダー層の活動支援に力を入れているとお聞きしました。

    近藤 :そうですね。多様化する働く人のニーズに応えるために、会社の方針として小さなナンバーワンをつくっていこうという目標を掲げました。そうすると、「産休育休を経て、仕事に復帰したいママ層」や、「定年退職後も働きたいエルダー層」など、さまざま層から自分らしい働き方を求める声が聞こえてくるようになりました。

    現在は、そういった方々に向けた支援の取り組みを進めているところです。「時短・週4以下・フルリモート」というのは、「より、個人の希望や事情に合わせた働き方の支援を進める」という目的によるものです。

    菅野 :働く人のニーズが多様化した結果、企業からのオーダーとスタッフ希望との間にズレが生まれて、それぞれをすり合わせることの重要性も増してきているように思います。個々のニーズや価値観を理解し双方にしっかりと説明して、ご納得いただく。

    その話し合いの時間はきちんと取らないといけないですよね。

    井上 :働き方や価値観などが多様化しているので、スタッフの方一人ひとりの希望をしっかりと把握して、担当営業や就業先の企業とコミュニケーションをすることが、これまで以上に求められているように思います。

    近藤 :市場観でいえば、フリーランスといった働き方も普及しています。今後フリーランスとして働きたいので派遣でスキルアップをしたい方や、フリーランスと並行して働きたい方など、今後のキャリアを形成する為に派遣を選択する方も増えていると感じます。

    その辺りも含め、エンジニアの方はご納得して就業できるように、キャリアアドバイザーは一人ひとりに寄り添って、仕事紹介やキャリア支援を行っています。

  • ——現場で働くお二人は、最近のキャリア支援で印象に残っている出来事はありますか?

    井上 :私は、当時60歳を超えていたインフラエンジニアの方の支援ですね。

    菅野 :どういうご相談だったのでしょうか?

    井上 :「これまで経験のない新しい技術に携われる案件を紹介してほしい」というご依頼でした。キャリア支援では今までの経験を活かせる案件をご紹介するのが一般的なのですが、この方の場合、新たな領域の案件をご希望されていたので、就業が決まるまで時間がかかりました。

    菅野 :どのくらい時間がかかったのでしょう。

    井上 :およそ3カ月です。それでもスタッフの方は「焦らなくていいから」と言っていただいたので、二人三脚でじっくりと進められました。最終的に決まったのは、トレンドの1つである「5G案件」です。その方に紹介すると、次の日にはご自身で5Gについて詳しく調べられて、「こういう領域の案件をやってみたかったんだ」と目を輝かせながら話してくださいました。私も、何としても決めたいと強く思ったのを覚えています。

    近藤 :企業へは、どのようにアプローチしたの?

    井上 :第三者が見ても、「この方にお仕事を任せたい」と納得できるものを提案することが肝になりました。そのために、5Gに関連する経験や取得資格などを収集するために、その方に再度ヒアリングを行い、職務経歴書をまとめ直しました。そして、5Gについて深く勉強されていて、関連資格も取得しようとしている現在の取組姿勢を企業の方に一緒に伝えて、エンジニアの方の実績と意欲をアピールしました。その甲斐あって、最終的には念願の案件に就業できました。

    菅野 :それはよかったですね!

    井上 :ご本人のがんばりが大きかったと思います。考え方も含め、尊敬できる方だったので、将来自分もあんな生き方をしたいと心底思いました。

    菅野 :私の場合は、小学生のお子さんを持つ40代のシングルマザーの方で、ひとりで子育てをされているので、「フルリモートで時短勤務ができるフロントエンドエンジニア案件を紹介してほしい」というご依頼でした。

    ご本人はWeb制作の経験はあるものの、フロントエンドの実務経験はなかったので、既存のオーダーの一件一件に対して交渉していきました。20件以上相談して、「その条件でもいいですよ」って引き受けてくださる企業が1社あって、決定しました。

    井上 :決め手は何だったのでしょうか?

    菅野 :スタッフの方が、ワークスタイルに求めるバックボーンを詳細に共有くださったことでしょうか。お話を聞いて、「確かにどの条件も譲れない」ことを私も理解できましたし、企業と交渉する上でも、そこを把握しているからこそ一歩踏み込んだ提案ができたと思います。2カ月半近くかかってしまったんですが、就業が決まって本当によかったです。

    近藤 :難しい条件なので、スタッフの方も喜ばれたでしょう。

    菅野 :「条件に合致する案件で大満足です」と。「菅野さんに担当してもらって、本当によかったです」という感謝の言葉もいただき、それが今の仕事の原動力になっています。

    近藤 :私たちが大事にしているのは「点から線へのキャリア支援」です。それは、単に希望の条件を聞いて、それに合った就業先を決めるだけでなく、「なぜ、それを希望しているのか」その背景もヒアリングして、「ただ、お仕事を紹介する」だけでない、スタッフの方の中長期的なキャリアを見据えたアドバイスやサポートを行うことです。

    そのため、「長期的な視点で考えたら、こちらのお仕事のほうがスタッフの方のキャリアにとってプラスになる」と判断した場合は、ご本人が希望するのとは違う案件や働き方を提案することもあります。

    菅野 :キャリアアドバイザーにご要望や背景をご説明いただければ、応募条件の年齢制限を超えたエンジニアの方でも、その人の強みをしっかりと引き出して企業にアピールできることもあります。これまでのキャリアや働くうえで大事にされていることなどは、些細なことでもお話いただけるとうれしいですね。

    近藤 :スタッフの方にあわせたキャリア支援を行うためには、キャリアアドバイザーは市場観や最新技術のトレンド、各職種で求められる能力などを把握して、客観的なアドバイスをできることが重要です。そこで、当社ではGCA(ゴールドキャリアアドバイザー)という社内資格制度を導入して、国家資格としての「キャリアコンサルタント」に準じた知識や技術が磨けるような環境を整えています。

    パーソルクロステクノロジーのキャリア支援について

社内連携を通して、よりスタッフに合わせたキャリア支援を目指す

  • ——皆さんが、キャリア支援を行う際に大切にしていることは何ですか?

    井上 :スタッフの方の希望する働き方やキャリアの話をするときは、相手のプライベートな内容のお話をしてもらわなければいけないことがあります。

    しかし、ご自分のことを話すのに抵抗がある人も少なくないはずなので、まずは私自身のことをオープンに話すようにしています。例えば、お子さんがいらっしゃる方であれば、「私も子どもが生まれたばかりで……」と、率先して自己開示して、話しやすい雰囲気をつくっています。

    菅野 :私の場合は、初回の電話では極力細かいことをお聞きしないようにしています。
    関係構築ができていないので、センシティブなことを話すことに抵抗感がある方も中にはいらっしゃり、心の距離感を図りつつ関係構築をするよう心がけています。

    井上 :なるほど、それはいいですね。

    菅野 :2回目以降の関係が深まってきたタイミングで、他愛のない会話から入って、緊張がほぐれてきたタイミングで、プライベートな内容を尋ねるようにしています。

  • ——今後「アフターコロナ」へと時代が変化して、働く環境はどのように変わっていくと思いますか。また、エンジニアの方をどのように支援していこうとお考えですか?

    近藤 :これから高齢化がさらに進展し、働き手もどんどん減ってくる社会になるので、企業側は働き手を確保するためにフリーランスも含め、いろいろな採用の間口を広げていくでしょう。

    そういう状況になったときに、スタッフの方一人ひとりのキャリアに今以上に寄り添ってサポートしていかないと、個人の成長はもちろん、お客様である企業の成長にもつながらないと思います。だからこそ、エンジニアの皆さんには自身のキャリアを見つめ直す機会を提供して、主体的にキャリアを形成していけるように、キャリアアドバイザーが伴走してサポートしていきたいと思います。

    菅野 :そのためにも、GCAを取得して、私たちキャリアアドバイザーはカウンセリング力をさらに高めていく必要がありますね。

    近藤 :そうだね。今年度から、パーソルクロステクノロジーでは、営業活動のDX化を推進しています。企業の求人情報や経営情報、そしてエンジニアの経歴や志向性、カウンセリング内容などの個別情報を蓄積して、今後はマッチングの精度をより高めていきたいと考えています。

    井上 :そうなれば営業とキャリアアドバイザーとの連携がより加速して、エンジニアの細かいニーズにも迅速に応えられそうですね。

    近藤 :そういう世界を目指していきたいよね。

    菅野 :お仕事紹介を条件重視で選んでいると、キャリアは浅く広くなる傾向があるため、エンジニアの方が年齢や経験を重ねていった時に、得意分野が持てずに、その後のご支援が難しくなってしまう状況があります。そうならないためにも、中長期的な視点で、分野をしぼって深く究めていける案件や、上流工程や複数の言語の経験を積めるようなプロジェクトをご提示するなど、キャリアアドバイザーとして助言をしていく必要があるな、と思っています。

    近藤 :井上さんは、どう?

    井上 :IT業界だと、常にトレンドが求められるので、そういう変化は迅速にキャッチして、エンジニアの方の半歩先の提案ができるようになりたいですね。おそらく、今以上に多様性が広がり、細かなニーズが求められる時代になると思われるので、市場と照らし合わせながらもその要望に応えるためにも、カウンセリング力をレベルアップさせていきたいなと思います。

    ——本日は、どうもありがとうございました!

文=西谷忠和/写真=品田裕美/編集=伊藤 駿(ノオト

本文中に記載の社名・部署名等は取材時点のものです(2023年1月16日時点)