ITと介護を結びつけるビーブリッド代表竹下康平氏。エンジニアの新たな社会的価値はここから生まれていく。

街を歩き、ふと周りを見渡せば、4人に1人が75歳以上の高齢者。そんな社会が、ほんの10年も経たないうちに訪れようとしています。

そこで年々のその需要が高まる介護の現場において、エンジニアのテクノロジーを使い、課題解決をするビーブリッド社の取り組みを紹介するとともに、これからの介護とITの関係性について代表の竹下氏にもお話を伺いました。

迫る2025年問題!変革が求められる介護業界

街を歩き、ふと周りを見渡せば、4人に1人が75歳以上の高齢者。そんな社会が、ほんの10年も経たないうちに訪れようとしています。想像を超える速さで進む日本の超高齢化社会で、今まさに多くの課題が生まれようとしています。

・増え続ける社会保障費、増えない税収
・年金制度をはじめとした社会保障制度の破綻
・老人ホームといった介護施設の不足

出典:介護問題超ワカール

数々の問題が明らかになってきましたが、一段深刻さを増しているのが「介護業界の人材不足」です。

これから重要度が増していく産業であるはずなのに、人材不足は進み、生産性も一向に上がらない介護業界。この現状をITの力で打破すべく、一人のエンジニアが立ち上がりました。

ITで介護を変える!エンジニア竹下康平氏の挑戦

出典:株式会社ビーブリッド

「介護・福祉・医療業界へ役に立つITを届けたい」との思いで株式会社ビーブリッドを立ち上げた竹下氏。

記録と請求程度のことしかできないソフトなのに、なぜこんなに高いのか。介護業界が質の悪いIT業者の餌食になってしまうのが許せなかった。

 
引用元:ASCII.jp

前職の大手SIメーカー時代に抱いていた”違和感”がいつしか”義憤”へと変わった竹下氏は、日本の介護を革新するために起業をしました。現在は『ほむさぽ』という名のITコンサルティングを中心とした、お手伝いサービスを提供しています。

【エンジニアは介護業界に必要】竹下氏が感じる「介護」と「IT」の距離感

人手不足に悩む介護業界を救える存在の一つがエンジニア。「ITエンジニアはヘルプマンのヘルプマン※(”要介護者”を助ける”介護士”を助ける”介護人材”)になれる」と竹下氏は語っています。
※注釈:「ヘルプマン!!」(原作くさか里樹)は日本の老人介護をテーマに2003年より連載している介護業界のバイブル的漫画。

実際、IoT(Internet of Things)モノのインターネットという言葉があるように、ITはすべてのモノと組み合わせられます。そして、介護業界も喉から手が出るほど、”人材”を渇望しています。しかし、介護業界に興味を持つエンジニアは多いとはいえず、エンジニアを求める介護系企業も少ないというのが現状なのです。

「ITは他産業に使ってもらう事が収益源であるから、非常に多種の産業界での引き合いがある。にもかかわらず、大手転職サイトを見ても、福祉・介護関連におけるITエンジニアの求人情報はほとんど見つからない」

引用元:介護人材確保地域戦略会議(第2回)(H27.2.27)資料2

現状に危機感を感じている竹下氏。”IT業界”と”介護業界”のギャップを埋め、エンジニアが「ヘルプマンのヘルプマン」として活躍できる環境を整えるため、数々の啓蒙活動に尽力しています。

特に、2015年1月。エンジニアが1000人集まる”イベントエンジニアサポート”CROSS”での講演「超高齢化社会到来!介護の現状とこれから我々IT業が出来る事とは?」で語った竹下氏。集まったエンジニア向けに日本の高齢社会の状況や介護業界のこと、そしてエンジニアへの期待を伝えました。


出典:ビーブリッド株式会社

そして同年10月、八戸学院大学(青森県)主催「かいごの学校」に講師として参加した竹下氏。介護の専門家に交じり、介護業界に活用可能なITや、ITを使う時の注意など幅広く80分の講義を行いました。

他にも青森県で開かれた「介護」×「IT」ハッカソンへの参加などを通じ、”介護”と”エンジニア”の距離をつなぐ活動に奔走している竹下氏。徐々に、介護業界でも変化が起こりそうな兆しが見えてきたそうです。

【まとめ】これからの「エンジニア」の存在意義を問う!ITと介護を結ぶ竹下康平氏に、3つの疑問を投げかけてみました。

Q1.「ヘルプマンのヘルプマン」を増やすために、介護業界に興味・関心を持つエンジニアを増やされる活動にご尽力されていますが、介護業界における「エンジニアの重要性」および「エンジニアだからこそ生み出せる価値」についてお伺いします。

「エンジニアの重要性」については、もちろん高いと考えます。一定以上のIT知識があるからこそ、「汎用技術あるいは他業界向けの技術を応用することで、介護業務の改善や高齢障がい者のQOLを向上させれるのではないか」と疑問を持てるようになるからです。

その疑問が、やがて業界に特化した形での製品やサービスに繋がるわけですが、そもそもその発想を生み出すのに必要な知識が現状十分ではないことが業界向けITの発展を遅遅とさせている一因となっていると考えています。一般的な技術(モバイルやセンサー技術)は、大きな進化を遂げています。

特段、介護に特化した技術開発を基礎研究から行うより、他の基礎技術を応用した方が、当然スピードも速く、またそれが汎用技術であればあるほど、言うまでもなくコスト的にも有利に働くというわけです。

Q2.過去のインタビュー記事の中で、エンジニアが介護業界に“はまる仕事”がないとの発言を拝見しました。現在、エンジニアが”はまる仕事”は介護業界に生まれてきているのでしょうか?

未だ無いと言えましょう。自分がエンジニアになった気持ちで、職探し(医療でなく介護・福祉業界)をしてみてください。おそらくは大手も含め、エンジニアらしい職種の求人は皆無だと思います。

その点については、一つ前の質問の回答に近いですが、いわゆるソフトウェアやハードウェアを開発する会社に就職しつつ、技術を研鑽したうえで、その技術を応用転嫁する考えで仕事ができれば、その方が現実的です。

と言いながらも一般的なソフトウェアなどの会社に入社しても、技術的にエッジが効いた介護向けサービスを行う会社は数少ないのが現実です。

Q3.現在御社で開発中であったりこれから実用化されていくと思われる技術はございますか?

間違いなくその一つはセンサーですね。センサー技術は並行して劇的な進化をしているIoT(ネットワーク側)の進化、コモディティ化により発展を遂げるでしょう。繰り返しになりますが、その汎用技術を応用できれば、アイデア次第で介護向けに十分威力を発揮すると考えます。

また、自動運転技術にも大きな期待をしております。実用化されれば一部の介護サービスの存在意義すら揺るがす技術だと考えます。

センサー技術が当たり前のように普及し、運用されれば、その集積データを解析し、新たなサービスが創出されるでしょう。また、データそのものを行政(国)でも欲しています。そのような理由で実用化が早いと思っています。

最後に、現役エンジニアの方に伝えたいことを伺ったところ、「近所の老人ホームや福祉施設にボランティアなどで行ってみると良いと思います」とのこと。続けて、「歳を重ねた方々の英知に触れるチャンスですし、そこで見聞き出来ることは、恐らくエンジニアに取って刺激的で、自分の持っている技術が人々を豊かにする可能性を見出すことができるきっかけとなるでしょう」

竹下氏も元々エンジニアという経歴から、介護福祉に関わったことで技術が人の幸せを生む可能性を実感したといいます。近い将来、みなさんの技術力が多くの介護の現場で有効活用されることを願います。

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