メイクアップサポート動画サービス「FirstMake」を提供する株式会社FirstMakeは、2016年当時、女子高生起業家だった内山恵梨香さんと、筑波大学の学生だったエンジニアの横山賢吾さんが立ち上げた会社です。
大学生になった内山さんが企業経営者との2足のわらじを履き続けるのは、「普通ではない人になりたい尖った自分」と、「女子大生の感覚を大事にしたい普通の自分」が同居しているからだと言います。
二人はなぜITの領域で起業し、何を武器としてビジネスを展開しているのか、そして学生起業家ならではの醍醐味とは何なのか、話を聞きました。
ファッションとしてのメイク
――最初に、御社が提供する「FirstMake」というサービスがどのようなものか教えていただけますか?
内山:ひと言で言うと、ファッションに合ったメイクの仕方を紹介している動画です。女性が何でメイクを決めるかというと、ほとんどの人がファッションによってなので。
――FirstMakeを作ろうと思ったきっかけは何ですか?
内山:私がスタートアップウィークエンドというビジネスコンテストに参加したのがきっかけです。メイクの仕方を教えるハウトゥー動画みたいなものが当時はまったくなかったので、やってみようと思ったんです。
――ビジネスコンテストを知ったのはどういういきさつですか?
内山:とりあえず自分で行動してみようと思い、その第一弾として学生団体に入りました。その学生団体の中で出会った人がスタートアップウィークエンドの運営もやっていたので、その人から聞いたという感じです。
――その中で横山さんと出会ったのですね。横山さんは、内山さんと出会ったとき、どういう印象だったのですか?
横山:そもそもスタートアップウィークエンドというイベントは、参加者の年齢がけっこう高かったんです。平均で30代くらいという中で、一人だけ制服を着た女子高生が来たので、すごく目立っていました。その歳でよくビジネスに興味を持っているな、というのが最初の印象です。
――その後、協力して株式会社FirstMakeを立ち上げるわけですが、立ち上げのきっかけというのはどんなものだったのですか?
内山:私の中では「サービスを作るイコール会社を作る」みたいな感じだったので、このサービスを作り続けるなら会社にするのかなと思っていました。
プログラマーには向いていない
――なぜITの領域を選んだのですか?
内山:そんなにコストがかからずにできるからです。
――横山さんはどうしてそもそもプログラミングに興味を持ったのですか?
横山:自分は小さい頃から物づくりが好きで、例えば小学生時代は秘密基地を作ったりしました。中学生になると、ゲームをするうちにだんだんパソコンにハマり始めてきて、自然とプログラミングを学びました。
――内山さんは、横山さんとどうして一緒にやろうと思ったのですか?
内山:グループワークの初めにチーム集めの時間があって。その時に私はエンジニアがいなくてはサービスを作れないということだけはわかっていて、それで声をかけたんです。
――ご自身はプログラミングの知識はなかったのですか?
内山:ゼロです。高校生になってもパソコンを持っていなかったですし、急遽必要になってレノボを買ったくらいで。そこにイラストレーターをぶち込んで動かなくなったりして、パソコンにキレるほどのリテラシーしか持っていませんでした。
――今はけっこう詳しくなったのでは?
内山:全然詳しくないです。
――アプリ開発をするうえでプログラミングに興味がわかなかったのですか?
内山:ちょっとやってみたりはしたのですが、圧倒的に向いてないし、好きではないと思ったんです。近くにこんな優秀な方がいるのに、私が悪あがきしてもしょうがないとも思いまして。
横山:いやいやいや。
――では実際に横山さんが関わることで、開発するアプリの質などで助かったところも多かったのですか?
内山:助けてもらってばかりです。
――今のお二人の関係は、アイデアがあって具体的にコンセプトを共有して立ち上げて、ということだと思いますが、どういう部分がいちばん苦労しましたか?
内山:今は4人でやっているんですが、2人きりの頃は動画コンテンツをどう作ろうかというところでいちばん悩みました。大学に入ってみると協力してくれる人も現れるかと思ったんですが、サービスを作っていると言うと、「意識高いキモ」みたいな感じで全然友だちができなくて、孤独にコンテンツを作るのが辛かったです。
横山:2人でやっている頃はお互いの時間も限られているので、あまり前に進まなかった。そういうところで苦労はしましたね。
――途中で「やっぱりやめようか」と思うことはなかったのですか?
横山:それはなかったですね。
内山:私もないです。
横山:仮に全然進まなかったとしても、やめるのではなく、ゆっくり進められればいいかなと思っていましたからね。
――実際にアプリを開発するうえで、「ここにはこだわっている」という部分はありますか?
内山:私はアプリのストーリーみたいなUIがすごく気に入っています。
横山:FirstMakeを作ったのは2年前なのですが、当時は動画メディアが数えるほどしかありませんでした。もちろんインスタグラムもストーリーもなかったんです。この2年間で動画アプリが増えてきて、ユーザーも慣れてきて、みんなUIとしても洗練されてきました。その中でいちばん良いものにしようということで、デザイン修正などを繰り返し、ガラッと変えた感じですね。
――デザインの部分も、基本的には内山さんが「こういうのがいい」というふうにディレクションするのですか?
内山:機能などについては言いますが、あとは経験に基づいて組み立てていただくスタイルになっています。
女子大生としての感覚は持っていたい
――学生時代に起業して良かったと思うことはありますか?
内山:ただの人ではなくなるのが良いのではないでしょうか。やはり普通ではない自分でいたい人間は世の中に一定数いるので、その中でサークルの部長だったりとか学生団体を立ち上げたりとか、留学したりとか色々あるのですが、ビジネスやサービスづくりに興味のある人が普通ではなくなりたいのなら、起業とかしたほうが突き詰められるのではないかと思います。
――内山さん自身は学生時代に起業して、その時にご両親や周りから何か言われたりしましたか?
内山:進路変更とかのときに、親とはだいぶバトルしました。「薬学部に行け」とずっと言われていて、それを破ったら「こいつはもう言うことを聞かないから、何を言っても無駄だ」と諦められました。
――自分が学生であることのメリットを活かしてやろうと思うことはありましたか?
内山:注目してもらいやすいので、それはメリットだと思います。
――やりたいことで起業をしたのに、それでも大学にまだ通っておこうと思うのはどうしてなのですか?
内山:やはり自分の中に普通ではなくありたいという尖った自分と、ある程度普通の感覚も持っておきたいという自分が共存しているからですね。FirstMakeのサービスを提供するうえで、普通の女子大生の感覚がわからないのはけっこう致命的なので、女子大生としての感覚は常にアップデートしていきたいと思っています。
――最後にお聞きしたいのですが、実際に今起業したくて「プログラミングをやってみたいな」と思っている人がいるとしたら、何から始めるのが良いと思いますか?
横山:良い師匠を見つけるというか、プログラミングができる人を見つけてそこから学ぶのがいちばん良いかなと思います。それがプログラミングを学ぶうえでの最短距離ではないかなと。そこで学び方を知り、あとは1人で今後、何でも学べる素養がというか、そういうものを身につけることが大事だと思います。やはり良い仲間を見つけるのが大切です。仲間が見つかったら、あとは本当に行動あるのみだと思います。
――本日は貴重なお話をありがとうございます。
取材協力:株式会社FirstMake