「セクシーな職業は何か」と聞かれた時、みなさんはどんなものをイメージするでしょうか?
ズバ抜けた頭の回転を武器に、重要な取引を遂行する商社マン。溢れる情熱を鍵盤に叩きこむピアニスト。鮮やかな手つきでイカしたヘアースタイルを作っちゃう美容師。どれもこれもイケてますよね。痺れますよね!きっとみなさんも、こういった職業に関しては「間違いなくセクシー!」と答えてくれるのではないでしょうか?
それでは、エンジニアはどうでしょう?この職業もセ…。あ、あれ?そこのあなた!「セクシーではないよなあ…」と小声で言っているの、聞こえていますよ!静粛に!
確かに、真面目、機械が好きそう、あるいはフリーランスが多いなどのイメージはあっても、“将来有望で、結婚したいクールな職業No.1”という印象は、日本のエンジニアにはそれほど無いかもしれません。
ただ、日本から一歩足を踏み出せば、エンジニアに対する周囲の考え方は180度異なります。特に、アメリカにおいては“最もセクシーな職業”とも呼ばれ、従来はエンジニアを目指す学生のみ受講していたCS(コンピューターサイエンス)も、一般教養科目で一番人気。つまり、モテてるんです。アメリカにおいては、エンジニアは“モテまくり”と言っても過言じゃないんですよ!
アメリカのエンジニアのリアル。第3回目となる本稿は、日本とアメリカで生じているエンジニア観の違いの理由を解き明かしていきます!
年功序列がいまだ根強く残る。そんな日本で働く有望な若手エンジニアに報酬、そしてリスペクトを!
そもそもエンジニアの話に限らず、日本は労働に対する報酬の考え方もアメリカと全く異なります。例えば、「ちゃんと仕事してくれ!」って思うような人、会社にいませんか?そうそう、あなたの隣の席に。
日本では、そういう人でも“年齢が上である”という理由だけで比較的高給をもらえるのに対し、アメリカではすぐに解雇されます。これは、そもそもの社会制度が違うためです。
日本企業の多くは終身雇用制を取ってきたので、年功序列の昇進・昇給の考えがいまだ根強く残っています。そのため、どんなに努力をしても、成果を出しても、“10歳年上だけど宴会芸だけが取り柄”という仕事のできない先輩に収入で勝てません。悲しい…。
それに加え、エンジニアは社内の何でも屋。つまり、コキ使われてきた存在でした。彼ら無しにはサービスもシステムも構築されないという事実には、評価のスポットライトは当たってこなかったのです。
一方、世界で活躍する多くのIT企業を生んできたシリコンバレーがあるアメリカ。そこではプロダクトを生み出してきたエンジニアがまず評価をされます。高い報酬は勿論ですが、エンジニアに対する絶大なリスペクトが存在するのです。これは日本と大きく違っている点でしょう。
“流動性”こそ、エンジニアが企業にモテまくる理由
日本でも近年ITベンチャー企業が増え、急激な成長を遂げるスタートアップ企業が現れ始めています。特にそこではエンジニアが重宝され、その人材不足が課題となっているのです。どこの企業の人事担当者も、「いいエンジニアが全然見つからないよ」とため息をついていますよね。ただし、他の職種と比べてフリーランサーの人数や転職回数も多い日本のエンジニアも、アメリカと比較するとまだまだ人材の流動性は高くありません。
それは、“どこの企業に属しているか”を重視する日本と、“何をやっているか”を重視するアメリカとの違いでもあります。
アメリカのエンジニア達は、世間的にイケていると思われている企業に属する事よりも、会社が無名であれ世界を変革させるようなエキサイティングなプロダクトを作る事にこそ大きな価値を見出します。そのため、シリコンバレーではIT企業間でのエンジニア人材の流動は非常に激しく、人材の奪い合いになっているのです。そう、まさに「モテてモテて困っちゃう」という状況なわけです。こんなセリフ、人生で一度は言ってみたい!
おっと、話が横道にそれました。もちろん良い部分ばかりではなく、成果主義のため解雇も早いという側面もあります。
こういった点も、エンジニアに対する評価や印象が日米で大きく異なる要因です。
ベンチャー企業台頭、キャリア観の変化がエンジニアを主役にする
ここまでの話だと、今後も日本のエンジニアは組体操のピラミッド最下段でただ上の主役やメインプレーヤーを支えるだけの様に聞こえるでしょう。「どんなに努力しても、結局は年功序列かよ…」というエンジニアの嘆きが聞こえてきそうです。赤提灯の居酒屋で同僚にグチらなきゃ、やってられませんね!
しかし、10年後には間違いなく状況は一変しています。それはどうしてでしょうか?
まずはやはり、ITベンチャー企業が現在よりも多く出てくる事が要因。さらに、ただのベンチャーではなくメルカリ社の様に短期間で急成長を果たす企業が増えれば、状況の変化は格段に速まります。そうした企業にとってエンジニアの確保は常に大きな課題。そのため、会社の行方を左右するほどの存在に対して、リスペクトと正当な評価が自然に行われるからです。
そして、エンジニアに対する評価が変わるもう1つ大きな要因が、世の中のキャリア観の変化です。従来の“勤めあげる”美学はほぼ消滅し、自らスキルを身に付けながらキャリアを築いていくという新たな価値観が徐々に芽生えてきています。これが一定浸透した際には、間違いなくエンジニアという存在が主役級の正当な評価がされているでしょう。
もちろん、どう評価されるかは社会の問題だけではなく、エンジニア自身のアピール方法次第でもあります。自らの向上のためにも、流動性を持ってキャリアを形成してみてはいかがでしょうか。そうすればあなたも、“モテまくり”なエンジニアになっていくことは間違いありません!
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次回のギークアメリカは、シリコンバレーで暮らすエンジニアたちのライフスタイルをレポートします。 彼らは1日をどのように過ごし、いかに生活を充実させているのか。そのワークライフバランスの秘密とは? 米国エンジニアのリアルな情報が読めるのはi:ENGINEERだけ!乞うご期待です!
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