「シリコンバレーに住むエンジニアの生活」と聞いて、あなたはどんなイメージを思い浮かべますか?
テスラの自動車に乗って。無駄に広いマンションに住んで。最新の電子機器はもちろん手に入れて。週末は自社Tシャツに短パン姿で、友人たちと派手にパーティー!?なんという人生エンジョイしている感!
「こんな生活できたらなあ」と、思わずため息が出そう。う、羨ましくなんかないぞ!
……おっと、取り乱しました。
もちろん、実際にそんな誰もが羨むアッパークラスの生活を送る人もいます。けれど、“普通のエンジニア”の平均的なライフスタイルはどういったものなのでしょう。金曜に安い居酒屋で飲んで、ラーメンでシメるような、庶民的な生活習慣は果たしてあるのでしょうか?
アメリカのエンジニアのリアル。第4回目となる本稿は、意外に知られていない彼らの生活に迫ります!
サラダだけで1,000円以上?高すぎるサンフランシスコのランチ事情
シリコンバレーがあるサンフランシスコで近年問題となっているのが物価の高騰。それは、高給取りのエンジニアの胃袋にも大きな影響を与えています。
例えば、カフェで野菜がたっぷりのサラダパックを買おうとしたら1,000円以上。ラーメン1杯に替え玉追加でなんと2,000円近くします。ひえっ、これは驚きです!酔い覚ましのシメにはある意味最適かも……。
では、食費を浮かせるため、彼らは毎朝早起きして手作り弁当を作り、時にはキャラ弁の画像をInstagramにアップでもしているのでしょうか?あ、もちろん大量のハッシュタグを付けるのも忘れずにね!
そういう自炊派もいるでしょうが、大多数は豊富なメニューを誇るカフェテリア(社員食堂)を利用しています。
これは、シリコンバレーのIT企業が優秀なエンジニアを確保するためにとても重要な事。各社こぞってカフェテリアを無料利用できるようにし、メニューも各国の料理を取り揃えています。最近ではインド人社員が増えた事もあり、インドカレーコーナーができているほど。また、コーヒーもわざわざ外で$4も使わずとも、社内キッチンに行けばブルーボトルの豆を高価なコーヒーメーカーで淹れて飲む事ができます。
日本でもごく一部のIT企業がこうした福利厚生を導入し始めていますが、まだまだ主流になっているとは言い難いですよね。
スタートアップなら長時間働いて当然?そんなことない?企業フェーズにより異なる“残業”への考え方
PayPal社の前身であるX.com社を設立した起業家イーロン・マスクは、“週に100時間働けば必ず成功する”と言っています。では、シリコンバレーのエンジニアたちは普段どれくらい働いているのでしょう?
この問いは個人、企業差が非常に大きいのですが、1つ言える事はアーリーステージ(起業した直後の時期)の少人数企業ならばイーロンが言っている事は間違いなく正しく、実際、長時間働いている人が多いです。
一方、FacebookやGoogle、Twitterのようなアーリーステージを超えたスタートアップ企業は別。そういった企業で働く日本人に、残業に関する質問をするとたいていクスっと笑われます。それは、日本で時に美徳とされがちな長時間労働への考えは存在しないという意味。
当然プロジェクトやタスク次第で深夜まで残るメンバーもいますが、基本的には終業時間あるいは少しだけ残って帰宅する人が大多数です。
これはプライベートタイムを重んじる社会性もありますが、むしろ生産性を重視するからこそ終業までに仕事を終わらせ、リフレッシュタイムを持ち、翌日に響くような非生産的な労働は行わないという考え方もあるのです。
東京のワンルーム一人暮らしは安い!?東京の2倍もするアメリカの家賃事情
東京で一人暮らしするとお金がかかりすぎる。確かに地方出身の方からするとこれは間違いない事実。ただアメリカと比べれば、まだまだ私たちは恵まれています。
なぜなら、アメリカではそもそも“一人暮らし”自体のハードルが高いからです。アメリカの大学生がよく寮でルームシェアをしているのは皆さんもご存知でしょうが、実は社会人になっても多くの人がルームシェアをしています。
理由はその家賃にあります。一概に比較はできませんが、感覚的には東京なら8万円で住める単身世帯向け物件がサンフランシスコでは15万円以上します。な、なんと倍近くの値段……。これを知ってしまうと、「東京のワンルームは高いなあ」なんてこと、おいそれとは言えなくなってしまいますね。
これはどうしてかというと、物件自体古いものが多いうえ、単身世帯向け物件となるとその希少価値がさらに高くなってしまうからです。したがって、意外な事に充分な稼ぎがあってもルームシェアをするエンジニアはたくさんいます。
当然、経済的な理由もありますが、日本と違い学生時代からルームシェアに慣れている彼らは、プライベートルームさえあれば気心の知れた仲間と暮らす事にむしろメリットを感じるのです。
意外と庶民的な生活を送るシリコンバレーのエンジニア。だがそのマインドには、チャレンジ精神が溢れている
使えないと判断されれば1ヶ月で解雇される、競争が激しいシリコンバレーのIT業界。そこで日々戦っているエンジニアたちは、良い給料をもらって鼻高々に優雅に暮らしているのではなく、意外にごく普通の人間味ある生活を送っています。
ただ1つ他の地域のエンジニアと大きく違うのは、常に生活を楽しみながら、さらなるチャレンジ・冒険を求めて自分を高めるマインドセットがあること。高い技術のみならずそういった精神面を持っているのも、シリコンバレーのエンジニアが優秀たる所以なのでしょう。
「高級マンションに住みたい!」といった野望を持つのもいいですが、もっと大事なのは日々の1つ1つの事を楽しんで、高い目標に向けて行動すること。そのことを彼らの生活は教えてくれます。
Geek America|ギークアメリカ Back Number
第1回『シャイなギークは生き残れない?米国エンジニアの自分売り込み力がスゴい理由』
第2回『新卒年収1,000万円でも入社しない!?これがアメリカの学生エンジニアにとっての“クールな働き方”』
第3回『アメリカじゃエンジニアがモテまくり!?日米のエンジニア観がこんなにも違っている理由』