大切なことはみんな本から学んだ! Kaizen Platform, Inc.の新CTO渡部拓也さんの本棚をのぞいてみよう

WebサイトのUI/UXを改善するためのプラットフォーム「Kaizen Platform」を運営している「Kaizen Platform, Inc.」。

同社は、かつてリクルートにおいて最年少執行役員を務めていた須藤憲司氏と、同じくリクルートにおいて技術適応・応用系プロジェクトを多数リードしてきた石橋利真氏によって2013年にアメリカで創業されました。以来、破竹の勢いで事業は成長を遂げています。

その同社に、2017年2月1日より新CTOである渡部拓也氏が就任しました。彼は、グリー株式会社のNative Game事業本部における開発・事業の責任者、スマートニュース株式会社の広告プロダクトマネージャを歴任してきた輝かしいキャリアの持ち主です。

急成長を続ける同社で、テクノロジーと経営の屋台骨を担う渡部氏。彼はこれまでどんな本を読み、そこからどのような知見を得てきたのでしょうか? そのラインナップをご紹介していただきました。

良いコードの本質を学んだ『CODE COMPLETE―完全なプログラミングを目指して』

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スティーブ マコネル (著), クイープ (翻訳)
『CODE COMPLETE 第2版 上 完全なプログラミングを目指して』日経BP社

――本日はよろしくお願いします! 1冊目である『CODE COMPLETE―完全なプログラミングを目指して』はどんな本なのでしょうか?

渡部:「良いコードとはどのようなものか?」を徹底的に解説してある本です。プログラミング言語は特に指定されておらず、基本的にどのプログラミング言語を使うときにでも共通に使用できるような質の高いプラクティスが掲載されています。

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――この本は、何をきっかけとして読むようになったのですか?

渡部:かつて働いていた会社の先輩に薦められたことがきっかけです。その先輩は、当時の私が書いたコードを見て「渡部の書くコードは全然駄目だ」と指摘してくれました。その先輩に「まずこの本を読んで勉強しよう」と言われたのが、これだったんです。

――厳しいけれど、後輩をきちんと育成してくれる立派な先輩だったのですね。

渡部:そうですね。その先輩からはすごく大きな影響を受けました。私は日常的にたくさん本を読むのですが、それは先輩からかけてもらった「一流のプログラマやエンジニアの読書量って半端じゃないんだよ」という一言がきっかけになっています。今の私があるのは彼のおかげだと思っていて、本当に感謝していますね。

その問題の本質ってどういうこと?『ライト、ついてますか―問題発見の人間学』

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ドナルド・C・ゴース (著), G.M.ワインバーグ (著), 木村 泉 (翻訳)
『ライト、ついてますか―問題発見の人間学』共立出版

渡部:次は、『ライト、ついてますか―問題発見の人間学』。これは、僕が尊敬しているグリーCTOの藤本真樹さんが勧めていた本です。本人に直接「尊敬しています」と言うと「嘘つけ、お前全然思ってないだろ」ってよくキックされるんですけどね(笑)。

――ほほえましいやり取りですね(笑)。これはどんな本なのですか?

「問題の本質とは何なのか?」ということが解説されている本です。例えば、こんなフレーズが記載されています。

“もしいまが昼間でライトがついているならライトを消せ
もし今暗くてライトが消えているならライトをつけよ
もし今が昼間でライトが消えているなら、ライトを消えたままにせよ
もし今暗くてライトがついているなら、ライトをついたままとせよ”
――『ライト、ついてますか―問題発見の人間学』より引用

この説明って、ごちゃごちゃして複雑ですよね。でも、これらの文って「ライトついてますか?」という一言で代弁できるのがわかりますか?

――なるほど! 言われてみればそうですね。その一言が、先ほどの4文で書かれている問題の本質をシンプルに言い換えていると思います。

渡部:そういうことです。これは、ソフトウェア開発における“問題解決”のために必要な考え方だと思っています。個別の事象だけを見て対処療法をするのではなく、問題が持っている本質とは何かを考えた上で根本治療をする。その姿勢こそが、難易度の高い問題を解決するには必要になってくると思います。

賃金って、どうやって決められてきたんだろう?『日本の賃金を歴史から考える』

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金子良事 (著)
『日本の賃金を歴史から考える』旬報社

渡部:次は『日本の賃金を歴史から考える』です。これは、日本型の雇用や評価制度、賃金体系などがどのようにして形成されてきたのかを、歴史的な背景から紐解いている本になっています。何か一冊Kaizen Platformっぽいものがあったほうがいいなと思って挙げてみました。

――この本のどういう部分が“Kaizen Platformっぽい”のでしょうか?

渡部:当社では、クラウドソーシングを活用して「グロースハッカー」と呼ばれる方々にWebサイトのUI/UXを改善してもらうビジネスを展開しています。それによって、これまで当たり前だったような「企業に所属して仕事をする」という働き方ではない「21世紀の新しい働き方」を構築しようとしているんです。

そのエコシステムを構築する際に考えなくてはいけないのが「成果に応じた仕事を依頼する場合、働いてくれた人たちの賃金をどうやって決めるのか?」ということ。それを考えるためには「そもそも日本では、どのようにして賃金が決められてきたのか?」の歴史を学ぶ必要があると考えています。それが、この本を読むに至った理由ですね。

チーム全体のクリエイティビティを育てるために『ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』

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エド・キャットムル(著), エイミー・ワラス(著), 石原薫(翻訳)
『ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』ダイヤモンド社

渡部:このあたりからは、チームビルディングやマネジメントに関連する本になってきます。

『ピクサー流 創造するちから―小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法』は、アメリカの有名映像制作会社であるピクサーが、どのようにして創造的な組織づくりを実現しているのかを解説しているものです。具体的には「1人の天才に頼るのではなく、チームとしてクリエイティブになっていく」ために、ピクサーが実施している施策が紹介されています。

当社のCEOである須藤憲司にしても、私にしてもそうなんですけど「リーダー・マネージャー格の人がいなければ機能しない組織」って不健全だと考えていて、そうではない組織を作るにはどうすればいいんだろうと思ってこの本を読みました。

天才に頼りっきりで部下が育たない組織よりも、全てのメンバーのクリエイティビティが磨かれて、チームとして良いプロダクトを作れる組織の方が健全じゃないですか。自分がマネジメントする組織も、そうありたいなと常々思っています。

マネジメントを体系的に学ぶために。珠玉の2冊

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モーガン マッコール(著), 金井 壽宏(翻訳), リクルートワークス研究所(翻訳)
『ハイ・フライヤー―次世代リーダーの育成法』プレジデント社

――『ハイ・フライヤー―次世代リーダーの育成法』は人材育成の本ですか?

渡部:その通りです。先ほど「リーダー・マネージャー格の人がいなければ~」という話はしましたが、とはいえ事業を拡大していくためには、陣頭指揮がとれる人材は必要不可欠です。そういうレベルの人材を育てるには、この本のように体系化された知識を学ぶことが非常に効果的になります。

人材育成やマネジメントは先天的に「できる人」「できない人」がいるわけではなく、インプット・アウトプットの量と質を高めていけば誰もが後天的にできるようになると思っています。コードを書くことと同じで、知識を得ることと実践することのくり返しなんです。

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ハロルド・ジェニーン(著), 田中融二(翻訳)
『プロフェッショナルマネジャー』プレジデント社

同様にマネジメントを体系的に学ぶための本として『プロフェッショナルマネジャー』をおすすめします。これは、経営や事業のマネジメントについて解説してある本で、株式会社ファーストリテイリングの代表取締役である柳井正さんも、この本から大きな影響を受けたそうです。

――この本を読み、どのようなことを学んだと思いますか?

渡部:事業計画や営業戦略を考える際に「目的から逆算する」という習慣がついたと思います。多くの企業がやりがちなのですが「現状の売り上げの伸び率が○○くらいだから、それをベースとして□年後の売り上げ目標を△△にしよう」と考えることって実は全く意味がないんです。

なぜなら、そういう考え方って「特定のマーケットのうち、自社はどれくらいのシェアを持っていれば生き残っていけるのか」というビジネスの全体像が見えていないですし、それが見えていないということは最終的に失敗することが目に見えているからです。

そうではなく、例えば「自社は○○という業界において△年後にシェア№1になりたい。そのためには、今年はこれくらい成長する必要がある」という事業のゴールを元にして計画を立てるべきだと考えています。

――CTOといえば「テクノロジー領域において責任を持つ役職」というイメージが強かったのですが、お話しを伺っていると渡部さんは“経営”という部分に強く意識が向いていることがわかってきました。

渡部:CTOは、技術責任者である以前に経営者でなければいけません。企業の目的はビジネスを成功させることであり、ビジネスの成長に貢献しないテクノロジーは意味を持たないからです。だからこそ、CTOは事業や経営についても理解しなければいけないと思います。

――あくまで「事業」が中心であり、そこで成しとげたいことを実現するために「テクノロジー」が必要になるということなのですね。

渡部:そうですね。事業をスケールさせるためには儲ける仕組みが必要であり、その仕組みは多くの場合プロダクトが実現しています。だからこそ、そのプロダクトを開発するエンジニアは企業において非常に重要な存在だと私は考えているんです。

改善活動を加速させる、CTOの新しいDNA

テクノロジーから経営に至るまで、幅広いジャンルの本を選定してくれた渡部氏。彼の話からは、企業そのものの成長を見据え、大局的に物事を見る姿勢が伺えました。

新しいDNAが加わったKaizen Platform, Inc.が、これからどのような世界観を作り上げていくのか。その動向にこれからも注目しましょう。

取材協力:Kaizen Platform, Inc.

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