ここ数年で頻繁に耳にするようになったDMP(データマネジメントプラットフォーム)。
DMPとは、ネット上に蓄積される膨大なデータを結合管理して、ユーザーとの適切なコミュニケーションを行えるようにするツールの総称。
膨大なデータを解析・分析することにより、サイトに訪れるユーザーの特性を見極め、サイト改善やユーザーの属性に合わせたマーケティング施策が行えます。
SEO、インターネット広告、Webサイト構築など、デジタルマーケティング事業を行なう株式会社PLAN-Bが開発する、ユーザー分析特化型DMP「Juicer(ジューサー)」は、そんなDMPのひとつ。
サイト分析・ペルソナ分析・行動ターゲティング・A/Bテスト・顧客満足度テストなど、さまざまな機能が搭載されており、分析はもちろん具体的なマーケティングアクションまで行えるのが特徴です。
国内で約20,000件ものWebサイトに導入されているJuicer。
膨大なデータを活用してユーザーの「感情」を可視化させ、さまざまな施策につなげられる状態を目指しています。
そんなJuicerの、企画・設計・広報を担当するのが、Juicer事業部、プロデューサーの西岡彩織さん。
機能の企画設計から、エンジニア・デザイナーへのディレクション、カスタマーサポートまで、多岐にわたる業務を一人でこなす彼女に、Juicerの魅力、そしてJuicerにかける想いを伺いました。
Web担当者のための「より使いやすい」DMP
まずはJuicerの機能について。
Juicerはどのようなコンセプトのもと開発されたツールなのでしょうか?
「ユーザーのリテラシーに関係なく、誰でも使えるマーケティングツールを作ろうというのがJuicerの基本的なコンセプトです。Webサイトに蓄積された情報にはサイト改善やマーケティングを実施するためのヒントが多く隠されています。データを集めて・分析して・改善する、この3つのステップをWebに慣れていない方が自力で行えるツールを目指して、さまざまな機能を追加しています」
Juicerの機能は、ユーザー分析・ニーズ分析・動線分析が行える他、A/Bテスト機能・リード育成機能など、さまざま。
ユーザー分析では、サイトに訪れているユーザーの属性や好みがわかる「推定ユーザー像分析」やサイトに訪れるユーザーの熱量がわかる「ユーザーの熱量分析」など、細かな解析結果を手軽に確認することができます。
また、20,000という膨大な利用サイトを、400以上のカテゴリに細かく分類。
これにより、競合サイトの平均的なパフォーマンス(アクセス数など)を確認できるなど、業界内でのサイトの立ち位置を確認できる機能も搭載されています。
従来の解析ツールで確認できる、ユーザーがどのページを辿ったのか、どこで離脱したのか、合計で何分滞在したのかという行動ベースのログだけでなく、ユーザーの行動が変化したのはなぜか?といった「感情」の部分をあぶりだすため、直感的に理解できるグラフィカルな表現にこだわっています。
そんなJuicerが、現在もっとも力を入れているのは「人工知能や機械学習」。
Juicerには、さまざまな分析・改善ツールを動かすために、多くの人工知能のアルゴリズムが搭載されています。
素早く正確な分析結果・改善策をユーザーに届けるために、日々人工知能の機能をブラッシュアップしています。
▲性別、年齢、血液型、お金の使い方など、サイトに訪れるユーザーの属性を人工知能が推定する
「Juicerの特徴である解析~改善までの精度を高めるためには、分析結果から改善策を導き出すための“思考”の精度を高める必要があります。誰に・何を・いつ・どのように発信するべきなのか?といった改善策を、より速く、より正確に提供するために、人工知能・機械学習に注力しています」
10名程度のメンバーで開発しているというJuicer。最近では、人工知能・機械学習だけを研究・開発する専門チームが立ち上がり、品質の向上に努めています。
その中で西岡さんの役割は、あるときは社外に向けてJuicerの魅力を発信し、あるときは、UI(ユーザーインターフェース)※の設計、新機能の企画、エンジニア・デザイナーへのディレクションなど、開発の方向性を定めること。
※UI(ユーザーインターフェース)
ユーザーがコンピュータを操作する際に接する、機器やソフトウェアの操作画面・操作方法。
「こうしたい!という想いやヴィジョンを発信して、チームに共感してもらうことがプロデューサーの最大の役割」と語る西岡さん。
社内外でさまざまな人を巻き込みながら開発を進める彼女は、どのようにして現在の位置に辿りついたのか?
Juicerにかける、西岡さんの想いを伺いました。
ユーザーに寄り添ったUI設計を目指して
入社以来、約2年に渡ってJuicerの開発に携わる西岡さん。
デザインもプログラミングも未経験なまま、憧れだけでJuicer事業部を志したといいます。
「内定者としてアルバイトをしているときに、ちょうどJuicerプロジェクトがはじまって、興味を持ったのがきっかけです。設計やデザインディレクションのような仕事に憧れを持っていたこともあり、最初はJuicerの登録画面の設計とか小さなものからお手伝いさせてもらっていました」
西岡さんは、UIやデザインはもちろん、Webに関する知識がほとんどないままプロジェクトに飛び込み、Juicerとともに社会人生活をスタートさせました。
現在ではプロデューサーという肩書でさまざまな業務を行っていますが、その中でもメインとして捉えているのは、入社当初から一貫してUIの設計だといいます。
「誰でも使えるDMPと謳うからには、使いやすさやわかりやすさが必要不可欠です。どんなツールであっても使いやすいデザインの裏には、必ず緻密な設計が隠されています。Juicerのコンセプトでもある”誰でも使える”を体現した設計図を描くこと、それが私の業務の中心です」
カスタマーサポートやセミナーでのスピーカーといった業務も、よりよい設計を生み出すための伏線として捉えているとのこと。
「使いやすいツールを設計するには、客観的な視点が必要不可欠です。実際に利用している方がどのような部分に不満を感じているのか?これから使いたいと考えている方は、どんな部分に不安を感じるのか?お客様の声に耳を傾けることで、自分では気づけなかったさまざまな設計のヒントに気づくことができます」
ただし、設計図を実装するのはあくまで技術者たち。
機能や設計をJuicerに反映させるためには、設計の意図や想いに共感してもらうことが大切です。
▲手書きの設計図の例。ユーザーのアクションに対して、どのような表示を行なうかがびっしり書かれている。
「どれだけ丁寧で緻密な設計書が書けても“なぜその機能が必要なのか?”という想いが伝わらなければ良いものは作れません。こういうものが作りたい、こんな課題を解決したいという想いを伝えて、共感してもらうこと、それが何よりも大切なのではと考えています」
設計や機能のディレクションを行なう際、西岡さんがもっとも注意しているというのが、仕事へのスタンス。
共感を得るには、互いの業務へのリスペクトが必要不可欠です。
指示を出すのではなく、同じ方向に進む仲間を作るというスタンスで、メンバーに想いを伝えているとのこと。
様々な職種のメンバーが共存するぶん、指示する側、される側という上下関係が発生しやすいプロダクト開発の現場で、自分が上から目線になってしまうと良いものは生み出されないと西岡さん。
誰にとっても使いやすくわかりやすい「ユーザーに寄り添った設計」を目指して、チームを巻き込みながらJuicerをよりよいツールへと進化させます。
JuicerでDMPの概念をひっくり返す
Juicerとともに歩んできたこれまでの開発過程で、西岡さんがもっとも嬉しかったというのが、Juicerのお客さんから伝えられたというこんな言葉。
「『JuicerがWeb戦略を行なう社員とそれ以外の社員の共通言語になっている』と言っていただけたのが印象に残っています。都市圏に多数の店舗を持つ大企業のお客さんで、Webリテラシーの高いWeb戦略部の社員とリテラシーがあまりない店舗の社員の意思統一が難しかったそうですが、Juicerが両者の架け橋となり、認識の乖離が解消されたと言っていただけました。Juicerが、私たちの目指すツールになってきたことを実感できた瞬間でした」
Webの知識に左右されずに誰でも使えて、詳しい方でも満足できるDMP。
最終的な目標は、現在のマーケティング・DMPの概念をひっくり返すことと西岡さん。
「良いツールは費用が高い・情報はお金のあるところにしか集まらない・データ活用は大企業にしかできないといった、DMP・マーケティングツールの概念をJuicerでひっくり返したいと思っています。データを集めて・分析して・改善する、この3ステップを無料で誰もが手軽に行える世界を目指して、今後も開発を続けていきます」
現時点では、新機能の企画はプロダクトオーナーである上司が行なうことが多いのとのことですが、将来的には、機能を自分で企画して、その魅力を最大限に引き出すUI設計まで自分で行ないたいと西岡さん。
JuicerがDMPのスタンダードとなるその日まで、西岡さんの挑戦はまだまだ続きます。