夜空に広がる星座の幻想的な世界を描き出し、子どもたち一人ひとりの感動体験を演出するプラネタリウム。
光学・メカトロニクス・グラフィックなど、多彩な技術が詰まった心臓部が、中央に構える投影機です。その中で、もっとも重要なシステムが「電気回路」。今回は、そんな大切なテクノロジーを支えるプラネタリウムのエンジニアである”電気回路設計技術者”について紹介します。
Index
そもそもプラネタリウムについてどれだけ知ってますか?
Photo By halfrain
「プラネタリウム」は、まずはじめに1923(大正12)年ドイツのカール・ツァイス社によって生み出されました。
日本では、千代田光学精工株式会社(現:コニカミノルタプラネタリウム株式会社)社長の田嶋一雄氏が、プラネタリウムの第一人者・信岡正典氏に協力を仰ぎ、その生産に着手。1957(昭和32)年に念願の国産プラネタリウム1号機が誕生しました。
昨今ではCGやプログラミング技術を駆使し、新たなプラネタリウムの開発が進んでおり、その設備を扱う責任者である「電気回路設計技術者」の重要性も高まっています。
小さな回路でプラネタリウム全体の性能と安全性を決定づける、電気回路設計技術者という存在
【漆黒の夜空に星を投影】
プラネタリウムのエンジニアは、人を感動させる仕事であることは言うまでもありません。プラネタリウムに映し出される星空は、実際の宇宙空間に基づいてつくられており、公的な機関で公開されている精度の高い電子データが情報元となっています。
それを館内の装置を使って、恒星原板(恒星の元となる細かな穴の空いた板)に焼き付けて投影。ホール内の都合で誤差はあるものの星の位置や明度を正確に調整するのもエンジニアとしての仕事のひとつ。天体写真の画像から特殊なソフトウェアを使い、星の位置や明るさを抽出したものも使っているケースが多いです。
Photo By John R. Southern
こちらは、ハードウェアを制御する電子機器の「マイコン」を始めとした部材。電気回路設計技術者は、マイコンの周辺回路を設計し、前述の星を投影する仕組みを完成に導くのが主な職務となります。限られた資源で最適な電気回路で形作り、光学・メカトロニクス・グラフィックなどプラネタリウムの頭脳を設計します。
どんなに美しい星座のグラフィックがあったとしても、どんなに高性能の投影機があったとしても、すべては電気回路の設計次第で、そのプラネタリウムの性能が左右されるという、まさにエンジニアの技術が問われるポジションです。
【美しい映像を巨大スクリーンで表現】
星のような点の情報ではなく、大容量のデータを使用する映像作品の場合、プラネタリウムの課題は、その際に発生した熱を逃がす冷却構造の設計にあります。これも電気回路設計技術者の腕の見せ所。
「パワー回路」と呼ばれる電源・ランプ制御回路を効率的に設計しつつ、空気の出入り口を作り、どのように空気を逃がすかを考えぬくことで、星を投影するユニットと干渉しないよう、また騒音を出さないように熱を逃がす冷却ファンを設置するかを試行錯誤します。
プラネタリウムを動かす電気回路は、そんなエンターテイメントの裏側をしっかりと下支えしているのです。
エンジニアの技術力が、子どもたちの笑顔と安心を支えている
Photo By Matt Biddulph
一つひとつの電気回路が、プラネタリウム投影機の安全な動作と高性能な映像美を演出していることがわかりました。それは、ホール一面に描き出された星空に驚き、目をキラキラと輝かす子どもたちの笑顔を支えている電気回路設計技術者というエンジニアの存在があってこそ。
もし今度プラネタリウムに行く機会があれば、子どもたちに夢と希望を与え続けるエンジニアの存在を、星座に夢中になっているわが子に教えてあげてはいかがですか?
出典:「日帰り宇宙旅行 プラネタリウム散歩」 (マーブルブックス編)