スマートフォンやタブレットにインストールされているアプリやWebを使って、家中の照明を操作する、鍵の開け閉めをしたり、家電の操作をする…… ITやIoTの技術を活用した住宅のスマートハウス化が注目されています。
デジタル技術をふんだんに取り入れた“次世代の住宅”を体験することができるショールームが東京都渋谷区にあります。
リノベる株式会社が運営しているスマートハウスショールームの「Connectly Lab.」です。
一般のお客さんはもちろん、エンジニアの方々も多く訪れている「Connectly Lab.」の魅力とスマートハウスの今後について、リノベる株式会社でスマートハウス事業を推進している木村大介さんにお話しを伺いました。
Index
エンジニアも多く訪れているスマートハウスショールーム
—本日はよろしくお願いします。まず、リノベる株式会社と御社のスマートハウスショールーム 「Connectly Lab.」についてお聞かせ下さい。
木村:弊社の業務は、中古住宅のリノベーションです。 古くなってしまった住宅を元の状態に戻す、一般に言われるリフォームとは違い、リノベーションは古い物件に新たな価値を与えることを言います。
既存の建物に手を加えて、入居者の好きなように間取りを大きく変えたりすることが可能というメリットがあります。
そして、弊社が行っている新規事業の1つにスマートハウス事業というものがあり、スマートハウスショールーム 「Connectly Lab.」は、従来のショールームに世界中のスマートデバイスを集めている場所です。
2015年9月8日から運営を開始して、当初は10個前後のスマートデバイスを置いていましたが、現在では20個前後に増加しています。
ショールームとして、お客様に実際にスマートデバイスを体感して頂くこともできます。
それだけでなく、各デバイスのAPIをエンジニア向けに公開をしているので、「Connectly Lab.」に来ることでデバイスの新しい使い方を模索したり、開発をしたりするキッカケづくりの場としても提供しています。
スマートハウスの実験室・研究室という意味を込めて「ラボ」という言葉を使っています。
趣味でIoTデバイスを作っていたことをキッカケに、スマートハウス事業の道へ!
—木村さんの本職は営業ですよね。なぜスマートハウスに関するお仕事をされているのでしょうか?
木村:以前は広告会社にいましたが、2014年10月に「IoT」の存在を知り、「家をスマート化するビジネスをしてみたい」と思い、転職することにしたんです。
大学時代に機械系の勉強をしていたのですが、私はエンジニアではありません。新規事業を立ち上げた経験もなかったですし、そもそもスマートハウスに特化した事業をしている会社も少なかったんです。
ですから、まずは「社内新規事業公募制度」のような新しいことにチャレンジできそうな会社を探していました。
いくつか選考を受けていた会社の1つだったリノベる株式会社も、営業マネージャーとして入社して、機会を窺おうと思っていましたが、「スマートハウスに関する事業の構想がある」と面接で聞いたときに「趣味でIoTデバイスを作っています」と話したことで、今のスマートハウス事業を担当することになりました。
—趣味でIoTデバイスを作る!? 具体的にはどのようなデバイスを作られていたのでしょうか?
木村:以前いた広告会社では「会議室がとれない」という問題がありました。 中に人がいるかどうかが、外からでは分からない構造になっていたので……
誰も使っていないのに「使用中」になったままになっていたり、会議が長引いていることに気づかずにドアを開けてしまったりすることも……
この問題を解決するには、「どうすればいいかな?」と考えた時に、「Webから会議室が使われているかを確認できるシステムを作ろう」と思ったんです。
具体的には、会議室に人感センサーを設置して一定時間、人の動きがないと「誰も居ない」と判断するアルゴリズムを組んでWebで分かるようにするシステムです。
そこまで高度な知識はなかったので、人感センサーと小型PCのRaspberry Piを使って装置を作りました。サーバー実装についても詳しくなかったので、TwitterのAPIを利用して、「(会議室に)いるよ」「いないよ」とつぶやくようにしました。最後のつぶやきが「いないよ」だと会議室は空室ということです。
▲実際に使用していたRaspberry Piと人感センサー
木村:デバイス作成の作業としては、プログラムを組んで、人感センサーとRaspberry Pi会議室に取り付けただけ。知識がほとんどない状態でしたが、数日で完成しましたね。
—いまでも、IoTデバイスは自作されているのでしょうか?
木村:デバイスの作成はしていませんが、自宅では既存のデバイスを使って色々と試しています。 例えば、スマート電球のhueという製品を自宅で利用しています。
木村:hueは電球の色をスマートフォンやタブレットのアプリから自由に変更することができます。私の場合は色を変えるだけでなく、 雨の日は電球を青く光らせるといったように、通知機能のように使っています。
特別に難しいプログラムを組んでいるわけではなく、既存のWebサービスを組み合わせて、デバイスをより便利に使う方法はないかと、日々考えています
進化し続ける家に、エンジニアは絶対に必要
—今後、スマートハウスはどのように発展し続けていくと考えていますか?
木村:スマートハウスは、「スマートフォンのように進化し続ける家」だと考えています。 スマートフォンは、自分で使いやすくなるようにアプリを入れたり、最新のOSをインストールしたりして、より便利に機能を拡張していくことで可能です。
住宅の場合、暮らしや生活を便利にする機能拡張という点では、リフォームやリノベーションという方法しかありません。
もっと手軽に、「暮らしや生活を便利にしたい」と考えたら、住宅にデバイスを複数設置してスマートハウス化するという選択肢が登場するはずです。
日本国内でスマートフォンが販売され始めた時、私も含めて多くの人が「誰がこんな携帯使うんだろう」と思っていました。ですが、今ではスマートフォンは無くてはならないスタンダードな存在になっています。
スマートデバイスのある暮らしであったり、住宅というものを一度体験すればスマートハウスは、ごく一般的なものになっていくと考えています。
—スマートハウスやIoT系のデバイスの分野でエンジニアは、どのような関わりを持っていくと思いますか?
木村:スマートハウスに関して言えば、エンジニアの方は活躍する場所が増えていくと思いますし、必要不可欠な存在になるでしょうね。
デバイスの回路や半導体の設計、無線通信、サーバーの取り扱い、人工知能など、様々な領域と横断して制作や仕事をすることになります。
あらゆる分野のことを知っているエンジニアは、スマートハウスやIoT分野などで活躍することができるのではないでしょうか。
エンジニアが関わることで、暮らしは大きくアップデートしていく
2016年、ますますの盛り上がりを見せているIoTデバイス。 それらの最新機器を使用してスマート化した住宅が増え続けています。
たった1つのデバイスを導入するだけで、多くの時間を過ごす自宅での暮らしは、便利になります。
今後、住宅や暮らしなどをより便利にしていくには、エンジニアの力は必須になっていくはずです。
スマートハウスやIoTデバイスの分野では、ハードやソフトなど幅広い知識を有したエンジニアこそ活躍することができます。
日々の暮らしをアップデートしていくのに、エンジニアの仕事が大きく関わってくる時代になっています。
取材協力:リノベる株式会社 CS事業部 新規事業チーム 木村大介さん Connectly Lab.