東京・赤坂に2016年4月にオープンした「TechShop Tokyo」。レーザーカッターや3Dプリンター、UVプリンターをはじめとした50種類以上の工作機器を取り揃える会員制メイカースペースです。
1,200平米の広大な工房内は金属加工や木工、溶接など、加工内容ごとに7エリアで構成されています。ワンフロアタイプのオープンなスペースで、会員同士の交流が盛んなのも「TechShop Tokyo」の特徴です。
▲1フロアにすべてのエリアが集結しているのも「TechShop Tokyo」の特徴
また、会員・非会員を問わず参加可能なワークショップやトークショーなど、ものづくり初心者でも気軽に参加できるイベントを定期的に開催しています。
そんな「TechShop Tokyo」にはどんな工作機器があり、どんなものづくりができるのでしょうか?
50種類以上の工作機を自由に使える工房!
「TechShop Tokyo」の最大の特徴は、50種類以上にもおよぶ工作機器が自由に使えるところ。これらの機器を使うにあたって、まずは基礎講習を受講。利用中に使い方が分からない場合でも、ドリームコンサルタントと呼ばれる専門のスタッフがていねいにサポートしてくれるので、初心者でも安心してものづくりに没頭できます。
▲ボタンを押すと音楽が流れ、店内のドリームコンサルタントがすぐに駆け付けてくれる。
「TechShop Tokyo」にはどんな工作機器があって、どんなものづくりができるのでしょうか。ドリームコンサルタントの横岩良太さんに案内してもらいました。
▲ドリームコンサルタントの横岩良太さん
もっとも広いワークスペースには、レーザーカッターやUVプリンター、3Dプリンターなどのデジタル機器のほか、真空成型機やカッティングプロッタも設置されています。
▲立体的にプリントできるUVプリンターなら、畳のような独特な質感も演出できる。
▲プラスティックや板、段ボールなどにも印刷できる大型プリンター。
▲レーザーカッターは2種類のサイズを設置。最大で100センチの大きさ、アクリルであれば厚さ1センチのものもカット可能。
工房内にある機器を使って作業をしたり図面を広げたりはもちろん、会員同士の交流が行われるのもこのワークスペースがメイン。オープンなコミュニティになっているので、ほかの会員の作品を見て、ものづくりのヒントを得るもよし、共通の趣味を持つ仲間を作ってもよし、利用者の好みに応じて使い分けることができます。
▲電気工作(Robotics/Electoronics)と縫製(Textiles)のエリア
続いては、電気工作と縫製のエリアに移動。
手前の電気工作エリアには、データを取り込んで基板を掘るプリント基板加工機や、はんだごて、メタル彫刻機などの電気工作機器が設置されています。
縫製エリアには、家庭用から工業用、職業用までさまざまな種類のミシンがスタンバイ。キルトや刺繡など、あらゆる用途に応じてミシンを使い分けられるのも、縫製エリアの特徴です。
「服飾を学ばれているある学生の会員様が、最初、ミシンを目的に縫製エリアを頻繁にご利用いただいていたのですが、たくさんの工作機器があるということで、布を自分の好きなデザインに染めたり、レーザーカッターを使ってメガネを作ったりするようになりました。オープンなスペースにさまざまな機械があることで、自分のクリエイティビティをアイデア次第で広げることができるのは「TechShop Tokyo」の魅力ですね」
「TechShop Tokyo」は、利用者のものづくりの幅を大きく広げる可能性を秘めています。
アイデアさえあれば、それをカタチにできる環境が整っているのです。
▲木工(Wood Shop)エリア
木工エリアにはジグソーやサンダー、木工のCNCマシニングのほか、オープン時には関東に1台しかないと言われたCNCターニングマシン(旭川機械工業/3DT-SD50)も設置されています。
▲CNCターニングマシンを使えば、職人レベルの複雑な家具を作ることも可能。
▲データ通りに木材を切削するCNCマシニングも設置。
こういった貴重な機器を使い、「自分にはできない」と諦めていた作品を手掛けられるのも、「TechShop Tokyo」を利用することによるメリットです。
▲金属加工(Metal Shop)エリア
金属加工エリアには、メタル彫刻機や樹脂用のCNCマシニング、ワイヤーカット放電加工機をはじめとした10台以上の工作機器を設置。
▲溶接(Welding Shop)エリア
金属加工エリアで加工したアイテムなどの金属を溶接できるのも「TechShop Tokyo」ならでは。また、溶接だけでなく、研磨剤を吹きかけ、独特な質感を演出するサンドブラスターという機器も設置されています。同じスペースにさまざまな工作機があるからこそ、さまざまな製造工程をここで行えるのも魅力的です。
▲エアブラシができる塗装(Painting)エリアも完備。
さらに、完成した作品を撮影するフォトスポットも完備。SNSにアップするなど、クリエイターの活動をトータルでサポートする設備が整っています。
「TechShop Tokyo」は、どのような方々が利用しているのでしょうか?
また、「TechShop Tokyo」はどのような意図を持って作られたのでしょうか?
運営元であるテックショップジャパン株式会社の代表取締役社長・有坂庄一さんに、改めて「TechShop Tokyo」について伺いました。
お一人でも安心!ものづくりを促進する「ヒト・コト・モノ」が集結するメイカースペース
▲有坂庄一さん
2018年1月現在、「TechShop Tokyo」の会員数はおよそ850人。そのうち、およそ300人強が法人会員で、大日本印刷や富士ゼロックスをはじめとした30数社が法人登録しているとのこと。
「個人の方だと、エンジニアはもちろん、ベンチャー企業の社員、リタイアした年配の方、新規事業を託された方がプロトタイプを作るために登録するなど、職種や年齢はバラバラ。中には、著名なクリエイターも登録しています」
とはいえ、ひとりで来ることにどうしても躊躇してしまう方もいるはず。「そんな場合は、定期的に開催しているワークショップやイベントに来て、TechShop Tokyoの雰囲気を感じてもらえたら」と有坂さん。
▲ワークショップで作ったiPhone用スピーカー
「TechShop Tokyo」では、ワークショップやトークショーなどのイベントを月に10回ほど開催。過去には、iPhone用のスピーカーやTシャツ、クリスマスオーナメントなどを作るワークショップを開催しています。ものづくり初心者の方にはとくにおすすめです。もちろん、会員・非会員を問わず参加可能とのこと。
また、交流会やビジネスアイデアをプレゼンするコンテストなど、会員同士の交流を促すイベントも定期的に開催しています。
「会員になってしまえば、ワークスペースという絶好の交流場所があるので、ひとりでも心配はいらないと思います。ほかの会員さんが何を作っているのか横目で気になって、『何を作っているんですか?』と聞いている方もたくさんいらっしゃいますよ」
東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」から徒歩1分の場所にある「TechShop Tokyo」。なぜ、東京都内でも有数の繁華街、赤坂・六本木エリアを舞台に選んだのでしょうか?
「場所を探す段階で、じつは80箇所以上の物件を見ました。その中でも、ふたつの軸をポイントにして最終的に決定したのが、赤坂のアーク森ビルという場所だったんです。まずは、クリエイティビティが高い人たちが集まる場所であること。そして、地域密着という観点から、街ぐるみでクリエイティビティを高めていける環境にあること。そう考えた時に、赤坂にあるアーク森ビルがベストだと判断しました」
実際、共催してトークイベントを開催するだけでなく、赤坂アークヒルズで毎年開催されるイルミネーションをプロデュースするクリエイターとの接点を作ったのは森ビルの担当者だったそう。それ以来、そのクリエイターは「TechShop Tokyo」を利用するようになったとのこと。
また、アーク森ビルのほど近くに位置するサントリーホールがリニューアルする際には、リニューアルを記念してノベルティ作成を手掛けるなど、地域に密着した活動を積極的に続けています。
現在でも、さまざまな方に利用され多くの利用者を持つ「TechShop Tokyo」。有坂さんは、今後この工房をどのように成長させたいと考えているのでしょうか?
最後に、「TechShop Tokyo」の今後の展望について、有坂さんにお伺いしました。
活発な議論をアイデアに!「TechShop Tokyo」のこれから
▲今後の展望を語る有坂さん
「TechShop Tokyo」の今後について、ただものづくりが好きな人たちが集まる場ではなく、「世の中がもっとこうだったらいいのに……」など、社会課題の議論ができる場になってほしいとのこと。
有坂さんのそんな想いは、定期的に開催されるトークイベントにも表れています。トークイベントではクリエイターはもちろん、さまざまな業界の第一人者が登壇。
「TechShop Tokyo」は、ただ最先端の機械を使える場所、ではなく、参加者同士がさまざまなテーマについて議論し合い、それを形にできる場所として進化し続けています。
「議論から生まれたアイデアをストレスなく形にできるように、『TechShop Tokyo』はこれからもクリエイターが安心してものづくりに専念できる場所を提供していきます」と有坂さん。
最先端工作機の数々、新しい知識や技術に触れるトークイベントやワークショップなど、「TechShop Tokyo」には魅力が盛りだくさん。
ものづくりに関わっている方、またはこれからものづくりをやってみたいという方は、一度「TechShop Tokyo」を訪れてみてはいかがでしょうか?