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コラム

2024.04.05

エンジニアの上流工程は何をするの?仕事内容や向いている人の特徴、スキル・資格を紹介

クラウド化が進んでいる現代で、現在日本ではITエンジニアの人材が不足しています。特にインターネットの基盤を担うインフラエンジニアは年々需要が高まっています。その中でも上流工程は開発システムの初期段階にあたり、重要な役割を担っています。

では、上流工程で担当する業務は具体的にどのようなものなのでしょうか。様々な視点で比較していきます。
今回は 上流工程の仕事内容からやりがい、向いている人の特徴、役立つ資格まで解説いたしますので、上流工程に興味を持っている人はぜひご参考にしてください。

監修:大畑 健一(おおはた けんいち)

パーソルクロステクノロジー株式会社
採用・教育統括本部 ICT採用本部 キャリア採用部 2G
メーカーや教育、キャリア系を中心にネットワークエンジニアの経験を持つ。
2020年10月にパーソルクロステクノロジー(旧パーソルテクノロジースタッフ)に入社。
2022年4月から現在の部署にて中途採用エンジニア向けの広報を担当。

エンジニアの上流工程とは?

上流工程とはシステム開発において前半部分に位置する工程のことで、システムの計画・設計を行います。主に要求分析、要件定義、基本設計、詳細設計などの工程があります。要求分析でクライアントの要求やニーズを正確に把握し、それを基に要件定義をします。要件定義ではプロジェクトの方向性を定めます。
その後、要件定義を基に基本・詳細設計をします。正確なシステム開発の計画・設計をすることが求められるため、上流工程は重要な役割を担っていると言えるでしょう。

下流工程との違いは?

下流工程は、上流工程で定義された要件や設計に基づいてシステムを構築し、構築後に運用・保守をします。ここではプログラマーやテスターなどの開発チームのメンバーが中心となって作業を進めます。下流工程は、上流工程で設計されたシステムを実際に形にするため、技術的なスキルや実務経験が重視されます。

一方で、上流工程と比べると、クライアントとの直接的な折衝が少ないことが特徴です。プロジェクトの舵取りや顧客とのやり取りは、主に上流工程で行われます。しかし、上流工程がプロジェクトの方向性を定める役割を果たす一方で、下流工程はその方向性を具体的な形に落とし込む役割を担います。

上流工程には、実務以外にもマネジメント能力が求められることがあります。これは、プロジェクト全体の目標やスケジュールを把握し、開発チームのメンバーをリードしてプロジェクトを推進する能力が必要だからです。また、上流工程ではクライアントとのコミュニケーションや要件の把握が重要ですが、これらの情報を適切に下流工程に伝えることも上流工程の役割の一部です。これらの能力を持ったエンジニアがプロジェクトをリードし、成功に導くことが期待されます。

上流工程の仕事内容

上流工程は大きく4つの業務内容に分かれます。

  • 要求分析
  • 要件定義
  • 基本設計
  • 詳細設計


それぞれについて詳しく解説します。

要求分析

要求分析は、システム開発プロジェクトの上流工程における重要な業務です。顧客の要求を明確にし、システム化のニーズについて調査・分析することがその主な目的です。この段階での審議は非常に重要であり、慎重に行うことが求められます。

要求分析はプロジェクトの成功に不可欠なステップであり、顧客や利害関係者との密接な連携と深い理解が求められます。正確かつ明確な要求分析は、システム開発プロジェクトの進行を円滑にし、最終的に顧客の満足度を高めるための重要な前提条件です。

要件定義

要求事項に対し、実現できる内容を定義することを要件定義といいます。予算や納期などを考慮すると全ての要求事項がシステムに反映できるとは限りません。クライアントと開発者の間で要求の衝突が生じる場合があります。そのため、 クライアントの要望を正確に把握し、実現可能な機能を明確に定義することが求められます。

要求定義書は開発プロジェクトの進行や成果物の品質を保証するために重要な役割を果たします。そのため、詳細に情報を記載し、開発チームや関係者が共通の理解を持てるように注意深く作成する必要があります。

基本設計

基本設計は、要件定義の内容をもとに、システムの全体的な設計を行なう工程です。基本設計は、システム開発における重要な工程の一つであり、外部設計とも呼ばれます。この工程では、システムの仕様や機能を具体化する作業が行われます。 レイアウトや構成、配置など、ユーザーの期待に応えるよう適切に反映することでユーザーの満足度が高まります。

詳細設計

詳細設計は、基本設計をもとにシステムの内部構造や処理フロー、データ構造などを詳細に設計していきます。物理データなどをプログラマーがわかりやすくコーディングできるように、事細かに設計していく工程です。 基本設計で定義された外部からの要求や機能を、実際のプログラムやシステム内部の構造として具体化する段階と言えます。

詳細設計はシステム開発において重要な工程であり、 プログラムやシステム内部の具体的な構造を明確に定義することで、効率的かつ正確な実装が可能となります。

上流工程で起こるトラブルと問題は?

上流工程は責任が重大な業務です。その工程の重要性から、確認を怠るとプロジェクトに深刻な問題が生じる可能性があります。 上流工程で起こるトラブルについて以下の3つが挙げられます。

  • スケジュールの遅れ
  • 予算不足
  • 開発後のシステムトラブル


それぞれについて詳しく解説します。

スケジュールの遅れ

上流工程での遅れは、下流工程に大きな影響を及ぼします。エンジニアが上流工程で直面する困難の一つは、 プロジェクトのスケジュール管理に集中的な労力が必要な点です。
システム開発などのプロジェクトでは、クライアントのニーズや、仕様が頻繁に変更されることがあります。これらの状況が発生すると、開発のスケジュールが遅れ、納期に間に合わなくなる可能性があります。
さらに、 クライアントとのコミュニケーション不足や認識の違いも、案件の進捗を妨げる要因になります。

予算不足

見積もりの設定が甘いと想定外の追加開発が必要になった時に開発コストが増大することがあります。上流工程における見積もりは重要です。 見積もりの誤差が生じると、開発プロジェクトに大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、期日の延長といった問題に直面する可能性があります。これにより、クライアントとの信頼関係が損なわれる可能性があります。 開発プロジェクトの予算やスケジュールを立てる際には、クライアントとの慎重な話し合いや正確な見積もりが必要です。

開発後のシステムトラブル

システムをリリースした後でトラブルが発生する場合があります。 これらのトラブルは下流工程の作業不備だけでなく、上流工程での設計や計画不備にも起因することがあります。
そのため 上流工程と下流工程のエンジニアや関係者が連携し、コミュニケーションを密に取りながら、リリース後のトラブルを最小限に抑える努力が必要です。

上流工程を担当する際のメリットは?

上流工程を担当するメリットは主に2つあります。

  • 年収がアップする
  • 達成感や充実感を得られる

年収がアップする

専門的な技術を要する職業は、その技術やスキルの難易度や市場需要に応じて給料が変動する傾向があります。 政府統計の総合窓口によると、上流工程を担当する方の平均年収は約660万円、下流工程の場合は約550万円です。年収に110万円の差があることが分かります。

上流工程は下流工程とは異なり、上流工程ではプロジェクト全体を計画し、設計していく段階であり、その過程での責任や影響力が大きいため年収がアップ します。

達成感や充実感を得られる

上流工程エンジニアは、プロジェクトの初期段階から関わり、設計や計画、進捗管理などの重要な役割を担います。彼らの仕事はプロジェクトの成功に直接関わるため、彼らの役割は非常に重要です。過程での責任や影響力が大きいと言えます。 大きな仕事を任されることで達成感や充実感を得ることができるでしょう。

上流工程のやりがいは?

ここでは、上流工程のやりがいについて紹介します。主に2つのやりがいがあります。

  • 充実感が大きい
  • チーム一丸となって達成感を味わえる

充実感が大きい

プログラミングが主体となる下流工程とは異なり、上流工程ではプロジェクト全体を計画し、設計していく段階であり、その過程での責任や影響力が大きいと言えます。 自らのアイデアや提案がプロジェクトの成功に直結することを実感し、充実感や達成感を得ることができるでしょう。

チーム一丸となって達成感を味わえる

上流工程ではチーム全体で目標を達成する達成感を共有することができます。プロジェクト全体を計画し、設計していく過程においてチーム全体で協力して目標を達成することが求められます。 チームメンバーと協力し、アイデアを出し合い、解決策を見つける過程で、達成感が共有されます。

上流工程に向いている人の特徴は?

ここまで解説した通り、上流工程には設計、管理能力からコミュニケーション能力まで多くのスキルが必要になります。そのため、全てのエンジニアが上流工程の作業をこなせるとは限りません。
上流工程作業に向いている人の特徴を5つ挙げます。

  • 積極的にクライアントの課題を解決したい人
  • コミュニケーション能力が高い人
  • 責任感が強い人
  • 管理能力が高い人
  • 人に分かりやすく説明することが得意な人
それぞれについて詳しく解説します。

積極的にクライアントの課題を解決したい人

上流工程では、クライアントのニーズや課題を把握し、それに基づいて適切なソリューションを提案することが求められます。積極的な姿勢を持つ人は、クライアントとのコミュニケーションを通じて課題を理解し、適切な解決策を提案する能力を持っています。
自らのアイデアや提案がプロジェクトの成功に直結するため、解決するという強い意志がある人が向いています。

コミュニケーション能力が高い人

顧客から必要な情報を引き出すコミュニケーション能力はエンジニアにとって非常に重要です。顧客はすべての要望を自ら認識しているわけではありません。エンジニアが適切な質問や洞察力をもってヒアリングを行うことで、 顧客が意識していないニーズや潜在的な要望を引き出すことができます。

顧客が提示する要望だけでなく、潜在的な要望やニーズを把握することがプロジェクトの成功に直結します。また、 良いチームワークを築くためにも仲間とのコミュニケーションは必須です。

責任感が強い人

上流工程では、 プロジェクトの初期段階から関わり、設計や計画、進捗管理などの重要な役割を担います。彼らの仕事はプロジェクトの成功に直接関わるため、彼らの役割は非常に重要です。

そのため、過程での責任や影響力が大きいと言えます。充実感や達成感が味わえる一方で、責任が大きいことを理解しておきましょう。

管理能力が高い人

上流工程では、プロジェクトの初期段階から関わり、要件定義や設計、計画などの重要な業務を担当します。これらの業務を遂行するには、優れた管理能力が不可欠です。 クライアントとの慎重な話し合いや正確な見積もりをして、予算やスケジュールを立てる必要があります。

人に分かりやすく説明することが得意な人

説明力はプロジェクトの成功において重要な役割を担います。チームメンバーがプロジェクト全体のビジョンを共有し、正確な理解を促進する必要があります。そのため 上流工程を担う人はプロジェクトチームに対して、要件や計画、目標などを明確に説明することが求められます。また、 クライアントに分かりやすく・適切に進行状況を説明することも求められます。

上流工程で求められるスキル

上流工程において求められるスキルは主に4つあります。

  • 業務に関する知識
  • コミュニケーション能力
  • ドキュメントの作成能力
  • マネジメントスキル
それぞれについて詳しく解説します。

業務に関する知識

業務システムを開発する際には、その業務に関する知識が重要です。業務に関する知識を持つことでユーザーのニーズを正しく把握することができます。業務に関する知識がないと、言葉の意味を間違って理解してしまう可能性があり、相手との信頼関係を失ってしまいます。

また、業務に関する知識があれば、 システムの設計や機能の提案において、実際の業務に適した形で設計することができます。開発後のサポートやトラブルシューティングにおいても、業務に関する知識が役立ちます。 システムが実際の業務にどのように影響を与えているのかを理解し、ユーザーからの問題や要望に迅速に対応することができます。

コミュニケーション能力

顧客から必要な情報を引き出すコミュニケーション能力はエンジニアにとって非常に重要です。顧客はすべての要望を自ら認識しているわけではありません。エンジニアが適切な質問や洞察力をもってヒアリングを行うことで、 顧客が意識していないニーズや潜在的な要望を引き出すことができます。

顧客が提示する要望だけでなく、潜在的な要望やニーズを把握することがプロジェクトの成功に直結します。
また、良いチームワークを築くためにも仲間とのコミュニケーションは必須です。

ドキュメントの作成能力

要件定義書や設計書は、上流工程で作成される重要なドキュメントであり、開発プロジェクトに関わるすべての人が理解しやすいように作成される必要があります。

要件定義書や設計書は、プロジェクトの成果物や進行状況を把握するための重要な資料です。明確で理解しやすい文章構成を心がけることで、 関係者間のコミュニケーションや理解を促進し、プロジェクトの成功に寄与します。

マネジメントスキル

2つの具体的なマネジメントスキルについて説明します。
  • スケジュール管理と役割分担
  • メンタルケアとキャパシティ管理

スケジュール管理と役割分担

チームメンバーとの連携を取るマネジメントスキルは非常に重要です。マネジメントの中心となるのは、スケジュールの調整やタスクの適切な管理です。プロジェクト全体の進行状況を把握し、各メンバーに適切なタスクを割り振ることが重要です。また、 適切なスケジュール管理や役割分担を行うことで、チーム全体がバランスよく作業を進めることができます。

メンタルケアとキャパシティ管理

チームメンバー1人1人のメンタルケアやキャパシティ管理も重要な役割です。 適切なタスクの割り振りや負荷の配慮、必要に応じたサポートやフィードバックの提供などが含まれます。チームの健康状態を確保し、生産性を最大限に引き出すためには、メンタルケアの実施が欠かせません。

上流工程で役立つ資格4選

上流工程の仕事に役立つ試験は以下の4つあります。

  • 応用情報技術者試験
  • プロジェクトマネージャ試験
  • システムアーキテクト試験
  • オラクル認定資格制度
それぞれについて詳しく解説します。

応用情報技術者

基本情報技術者の上位資格です。 基本情報技術者は全て選択肢問題であるのに対し、応用情報技術者からは試験の半分が記述式となり、難易度が非常に上がります。 テクノロジー分野からの出題もあるので、経営全般やプロジェクトマネジメント、法務についての問題も出題されます。 ITスキルを証明する資格としてITパスポート、基本情報技術者、応用情報技術者、高度情報処理技術者の4つがあり、基本情報技術者はレベル2に当たる資格です。インフラエンジニアになるためには基本情報技術者は最低限必要な資格といえ、実務経験を積みながら応用・高度情報処理技術者へとステップアップしていくのがおすすめです。

プロジェクトマネージャ試験

プロジェクトマネージャーはプロジェクト全体を管理し、目標の達成に向けて責任を負います。 高度なIT知識と経験を活かし、プロジェクトの成功に向けたリーダーシップが必要です。情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験の一部で、このようなプロジェクトマネジメントスキルを測る試験です。

システムアーキテクト試験

システムアーキテクト試験は、情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験の一部で、 基本情報技術者試験や応用情報技術者試験よりも難易度が高い試験です。この試験は情報処理技術者試験の中でも最も難しい「高度区分試験」に分類されています。 システムアーキテクト試験は、システムアーキテクトに必要な知識とスキルを評価するもので、 事業におけるシステム戦略を徹底的に理解し、システムの構想段階から全体の業務モデルを把握できる能力が求められます。 この資格を取得することで、エンジニアとしてのキャリアを飛躍的に向上させることができ、年収の増加にも寄与する可能性が高いです。

オラクルマスター

オラクルマスターは、日本オラクル社が運営しているデータベースに関する認定資格です。 この試験では、 データベースの構築や保守、SQLに関するスキルが問われます。 その中のBronzeはデータベース管理者として、最低限の知識を保有していると証明できます。データベースエンジニアには多くの知識が求められ、その中でも指示されれば対応できるレベルのスキルです。

Oracleに関連する資格の中でも入門的なもので、出題されている内容は易しいものです。とはいえ、Oracleの製品を前提とした知識と、データベースの一般的な知識の両方が問われます。そのため、入門的とはいえどもOracleの経験がなければ合格するのは難しいでしょう。

また、資格を取得するためにはOracleに関するスキルの他に、SQLの基礎知識を証明する試験を受験しなければなりません。SQLはデータベースを扱うエンジニアにとって必須の言語であるため、こちらについても資格の中で問われるようになっているのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。 今回は 上流工程の仕事内容から向いている人の特徴、求められるスキルについてご紹介しました。この記事が、上流工程の業務に興味や疑問、不安を持っている方の一助となれば幸いです。

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