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コラム

2024.11.06

自動車産業の現状とは?課題や解決策、今後の動向について解説!

現在の自動車産業は、「CASE」の登場や電動化、DX(デジタル・トランスフォーメーション)など、百年に一度と言われる変革期を迎えています。

そんな中、自動車業界ではソフトウェアの重要性が急速に高まっています。
本記事では、特にセキュリティ分野に焦点を当て、課題とその解決策、今後の動向を詳しく解説します。

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監修:大畑 健一(おおはた けんいち)

パーソルクロステクノロジー株式会社
採用・教育統括本部 ICT採用本部 キャリア採用部 2G
メーカーや教育、キャリア系を中心にネットワークエンジニアの経験を持つ。
2020年10月にパーソルクロステクノロジー(旧パーソルテクノロジースタッフ)に入社。
2022年4月から現在の部署にて中途採用エンジニア向けの広報を担当。

自動車業界とは?

自動車業界は、自動車の設計、製造、販売、メンテナンスまでを担う一大産業です。 自動車業界は、単に「自動車メーカー(OEM)」の集まりではなく、 さまざまなプレイヤーが連携するサプライチェーンのピラミッドのような構造で成り立っています。

構造としては、以下のようになっています。

  • OEM(完成車メーカー)
  • ティア1サプライヤー(主要部品供給企業)
  • ティア2・ティア3サプライヤー(下流サプライヤー)
  • IT・ソフトウェア企業
  • エネルギー・インフラ企業
  • 販売・アフターサービス業者
  • 規制・監査機関
”自動車産業サプライヤー”

OEM(完成車メーカー)

OEM(Original Equipment Manufacturer)は、自動車の設計・製造を行う企業です。トヨタ、ホンダ、日産などのように、自社ブランドの車を製造し、販売します。

トヨタ、ホンダ、日産などは、世界の自動車市場でも存在感があり、特に燃費性能と品質で高い評価を受けています。

ティア1サプライヤー(主要部品供給企業)

ティア1(Tier 1)は、OEMに直接製品や部品を納入するサプライヤーです。エンジン、ブレーキシステム、電動モーター、AIプラットフォームなどの重要なコンポーネントを提供します。

主な企業には、デンソー、ボッシュ、ZFなどがあります。

ティア2・ティア3サプライヤー(下流サプライヤー)

ティア2・ティア3は、ティア1サプライヤーに素材や部品を供給する企業です。例えば、半導体、センサー、鋼材などを提供します。

ティア2例:半導体メーカー(ルネサスなど)
ティア3例:原材料メーカー(アルミ、プラスチックなど)

IT・ソフトウェア企業

自動車がコネクテッドカーや自動運転車へと進化する中で、ソフトウェアやクラウドサービスの提供企業が重要になっています。
これらの企業は、AIアルゴリズムやセキュリティプラットフォーム、OTA(Over-the-Air)更新システムなどを開発しています。

エネルギー・インフラ企業

EVの普及に伴い、エネルギー業界や充電インフラ整備企業も業界構造の一部を担っています。
代表例としては、テスラ(充電スタンド網)、ENEOSなどの企業があります。

販売・アフターサービス業者

ディーラーや整備工場が、エンドユーザー向けの車両販売やアフターサービスを提供します。サブスクリプション型のサービスも普及し、販売後のビジネスモデルも変化しています。

車両の販売、メンテナンス、リースやカーシェアリングの提供などの役割を担います。

規制・監査機関

国際的な自動車安全規制(UN-R155など)の順守が必要であり、各国の政府機関や国際機関が市場監督を行います。これらの規制が車両の安全性とセキュリティの基準を決めます。

現状課題

変革期にあるといわれている自動車業界ですが、現状、生産台数自体は減少しており、いくつかの課題を抱えています。
課題は以下のようなものがあります。

  • 人手不足
  • 消費者行動の変化
  • デジタルの需要

順番に見ていきましょう。

人手不足

言わずもがな、日本は少子高齢化という問題を抱えています。
その影響は自動車業界にも及んでおり、自動車業界では労働人口の減少、平均年齢も高齢化していることが分かっています。

国土交通省の報告によると、 少子化や若者のクルマ離れの進展や職業選択の多様化により、近年、自動車整備士を目指す若者が減少しているため、近年、自動車整備要員の有効求人倍率が上昇しています。

さらに、自動車整備要員の平均年齢は上昇傾向にあり、平成30年度には 45.3歳に達していることが分かっています。

消費者行動の変化

消費者の価値観やライフスタイルの変化は、自動車業界に大きな影響を及ぼしています。特に都市部では 「所有」から「利用」へのシフトが進んでおり、若者を中心に車を所有する意欲が低下しています。

なぜなら、都会は公共交通機関が非常に充実しており、移動手段には困らないからです。
昔は車の所有がステータスという価値観もありましたが、今は所有することによる経済的負担を抑えるという若者が増えているのです。

これに伴い、 カーシェアリングやサブスクリプションサービスが急速に普及しています。

デジタルの需要

自動車業界は、DX化など新技術によって大きな変革を迎えています。
それに伴い、車載ソフトウェアの重要性が急速に高まり、 ITやセキュリティ分野の人材需要も拡大しています。

しかし、デジタル化の進展によって、同時にサイバーセキュリティのリスクも高まります。
例えば、車両がネットワークに接続されることで、ハッキングや不正アクセスといったリスクが生じるため、セキュリティ対策の強化が必要になります。
また、EVの普及に伴い、充電ステーションやクラウドを利用した車両管理システムなど、インフラの整備も必要になってきます。

したがって、自動車業界はIT企業やエネルギー企業との連携を深める必要があります。

解決策はDX化!

現在、様々な業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進んでいますが、自動車業界における DX は主に製造面で進んでおり、 産業用ロボットやシステムを導入し、製造工場を自動化する動きが盛んになっています。

具体的には、以下のような施策が挙げられます。

  • 生産ラインの自動化・効率化
  • 自動運転技術の開発
  • カスタマーエクスペリエンスの向上
  • 業務のクラウド化

順番に見ていきましょう。

生産ラインの自動化・効率化

自動車の製造工場では、ロボットを活用した自動化が進行中です。
AIやIoTを組み込んだロボットシステムを使い、生産ラインの予知保全や品質管理を強化しています。
そうすることで、人為的なミスの削減やコスト削減が可能になり、製造工程の効率が大幅に向上しています。

さらに、5G通信を活用したリアルタイム監視により、工場全体の生産状況を即座に把握できる仕組みが整備されつつあります。
異常が発生した場合の対応が迅速になり、ダウンタイムを最小限に抑えることを可能にします。

自動運転技術の開発

自動運転車の開発には、AIや機械学習、ビッグデータ解析が欠かせません。
車両はセンサーを通じて道路や周囲の環境を認識し、クラウド上での解析を経て最適な運転を行います。自動運転の進化により、無人運転車による配送サービスの導入も検討されています。

また、自動運転の安全性を担保するためにシミュレーションとリアルタイム監視システムを組み合わせたテストが進められています。そうすることで、道路交通の安全性と効率が高まることが期待できるのです。

カスタマーエクスペリエンスの向上

DXの取り組みにより、顧客の体験(CX: Customer Experience)の改善も重要視されています。
コネクテッドカーが普及することで、ユーザーは車両の状態をアプリで確認できるほか、リモートでの車両操作が可能になります。例えば、車のメンテナンス時期が近づくと通知が届いたり、OTA(Over-the-Air)で新しい機能が追加されたりすることもあります。

さらに、オンラインでの車両購入やサブスクリプションサービスの普及により、ユーザーは自分に合ったサービスを自由に選べるようになりました。
その影響で、従来のディーラーによる販売は衰退しつつあることも事実です。

業務のクラウド化

業務プロセスのクラウド化は、自動車メーカーにとってDXの重要な柱です。
クラウドプラットフォームを活用することで、部門間のデータ共有がスムーズになり、車両開発やサプライチェーンの効率が向上します。また、クラウドはセキュリティの強化にもつながるため、不正アクセスのリスクを抑えます。

具体例を挙げると、トヨタは、クラウド上で各車両の運行データを蓄積し、AIで解析することでメンテナンス予測を行っています。
このような取り組みにより、車両の運用コストを抑えるだけでなく、顧客に対して迅速なサービスを提供することが可能になります。

周辺産業への影響

自動車産業の変革が起こると、周辺産業へも影響があります。自動車に直接関わる企業だけでなく、一見関係なさそうな業界にも影響が及ぶこともあります。
順番に見ていきましょう。

自動車部品産業への影響

電動化や自動運転技術の進展に伴い、部品産業も大きな変革を迎えています。

従来のエンジン関連部品の需要が減少し、代わりに半導体、センサー、バッテリーの需要が急増しています。
部品メーカーは、これまでの「機械部品」から「電子部品」へのシフトを余儀なくされているのです。

また、部品のモジュール化が進んでおり、複数の機能を一体化した高性能ECU(電子制御ユニット)が求められています。これにより、少数のティア1サプライヤーが巨大な市場シェアを持つ構造に変わりつつあります。

IT業界への影響

自動車業界では、車両がクラウドやAIと連携する 「コネクテッドカー」が普及しており、IT企業の役割が増しています。
GoogleやNTTデータなどの企業が、車両のコネクティビティプラットフォームやAIシステムを提供し、OTA(Over-the-Air)更新を通じたリアルタイムの機能追加が可能になっています。

さらに、自動車のネットワーク化に伴い、サイバー攻撃のリスクが拡大しています。これに対しIT業界は、 侵入検知システム(IDS)やVSOC(Vehicle SOC)といった新たなセキュリティサービスを開発しています。

タクシー業界への影響

自動運転技術とMaaS(Mobility as a Service)の進展により、タクシー業界も変革が進んでいます。
自動運転車を利用した無人タクシーが普及することで、運行コストが削減される一方で、 従来の運転手の雇用に影響を与える可能性があります。

さらに、スマホアプリを利用した配車サービスが主流になり、タクシー業界はITとの連携が不可欠になっています。運行管理やルート最適化もAIを活用したものに移行し、業務の効率化が進んでいます。

医療業界への影響

「ヘルスケアMaaS」と呼ばれる自動車と医療の融合が注目されています。自動運転車を利用した移動診療所や、車両内でのオンライン診療など、モバイルクリニックの展開が始まっています。

例えば、トヨタ車体の「MEDICAL MOVER」では、医療機器を搭載し、患者の自宅を訪問することで診療を行う実証実験が進んでいます。従って、高齢化や過疎化が進む地域において、医療アクセスの改善が期待されています。

また、車両の健康管理機能を活用し、乗員のバイタルサインをモニタリングすることで、運転中の体調変化を即座に検知し、医療機関に連絡するシステムも開発されています。

今後の動向

今後の自動車業界を語る上で欠かせないキーワードに、 「CASE」があります。
これは、メルセデスベンツ社が2016年に提唱した考えで、
「Connected(つながる)」
「Autonomous(自動運転)」
「Shared & Service(シェアとサービス)」
「Electrification(電動化)」
の4つの頭文字をつなげたものです。

Connected(つながる)

Connectedとは、車と外部の接続のことを指し、盗難防止や安全システム、事故時の自動通信システムや地図データの受信などに応用されています。
これまでにも多くのサービスが搭載されてきていますが、今後もさらに車内外とのシステムの連携やセキュリティが重視されるようになります。

従って、ソフトウェアを担当する自動車エンジニアの需要も高くなりました。

Autonomous(自動運転)

言わずもがな、現在自動運転機能の搭載された車は非常に増えていますが、今後もさらに高度な機能が一般化されるように開発されていくでしょう。

また、自動運転の段階は0から5まであり、完全な自動運転であるレベル5の実現にはまだ時間がかかるとされています。それまでに、技術、インフラ、法整備が急速に進んでいくでしょう。

Shared & Service(シェアとサービス)

先ほども述べた通り、カーシェアリングやライドシェアリングの普及は、車を「所有」から「利用」へのシフトを促しています。
特に日本では、都市部でカーシェアリングの利用者が増え、必要なときだけ車を借りることで所有コストの削減や環境負荷の軽減が期待されています。

一方、ライドシェアリングは世界的には拡大していますが、日本では法規制が障壁となり普及が進んでいません。

このようなシェアリングモデルの拡大により、自動車の生産台数が減少することにつながり、 メーカーは製造業からモビリティサービスの提供へと事業転換を求められています。

Electrification(電動化)

これは電気自動車(EV)の普及を指しています。 従来のガソリンやディーゼルエンジンに変わり、環境に配慮した新型自動車を開発する動きが高まっています。

しかし、繰り返しになりますが、充電ステーションやクラウドを利用した車両管理システムなどインフラの整備という課題は残るため、自動車業界はIT企業やエネルギー企業との連携を深める必要があります。
電気自動車はコネクテッドと自動運転の実現にも寄与することが期待されています。

自動車開発エンジニアに向いている人

ここまでの文章から気付いた方もいらっしゃると思いますが、今後求められる人材は自動車のソフトエンジニアです。
ここからは、自動車開発エンジニアに向いている人の特徴を挙げていきます。

  • 乗り物やモノづくりが好きな人
  • 車を通じて社会貢献がしたい人
  • 好奇心が強くトレンドに敏感な人
  • 最新技術に関わりたい人

乗り物やモノづくりが好きな人

自動車開発は、ハードウェアとソフトウェアの統合が進む分野です。そのため、車両設計やプログラミングに興味を持ち、細かい部分にこだわりを持てる人が向いています。

大前提として、自動車そのものに興味を持ち、製造やモノづくりのプロセスを楽しめることが大切です。

車を通じて社会貢献がしたい人

自動車業界は、これまでの文章からも分かるように、環境保護や安全性向上の面で大きな社会課題の解決に貢献しています。
自動運転技術やEVの普及は、交通事故削減やカーボンニュートラルの実現に寄与します。
こうした社会貢献にやりがいを感じる人材が求められます。

好奇心が強くトレンドに敏感な人

AI、自動運転、コネクテッドカーなど、 自動車業界は急速に進化する技術の最前線にあります。そのため、トレンドに敏感で、新しい技術を積極的に学び、取り入れる姿勢が求められます。

最新技術に関わりたい人

車両開発は、ソフトウェア、AI、センサー、クラウドといった最先端技術の集合体です。

特に、プログラミングやシステム開発が得意で、クラウドやIoTにも興味がある人は、今後の自動車開発エンジニアとして活躍が期待されます。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。自動車業界は今技術革新のまっただ中にあり、今後求められる人材にはソフトウェアエンジニアが不可欠であることが理解できたと思います。

ぜひ、今後のキャリアの参考にしてみてください。

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自動車技術の進化に伴い、コネクテッドカーや自動運転車の導入が進む一方で、車載システムのセキュリティリスクも急速に増大しています。車内の電子制御ユニット(ECU)や車載ネットワークが外部と接続されることで、ハッキングや不正アクセスの危険性が高まり、車両制御の安全性が脅かされる可能性があるからです。そこで、本記事では 車載セキュリティとは 自動車のサイバー攻撃 セキュリティの規格 などについて解説しています。車載セキュリティについて興味がある方や自動車のエンジニアになりたい方はぜひ本記事をご覧ください。

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