【エンビジ!】 やりたいことができる働き方なら『畳み人』を目指せ!

※この「エンビジ!」では、エンジニアに役立つであろうビジネス書をご紹介しつつ、著者の方にもお話を聞いていきます。



さて、今回のテーマは「やりたいことを仕事にする」です。エンジニアという仕事は皆さんやりたくて選んできたと思いますが、会社に所属していると「本当にやりたいことはこれじゃないんだけど…」といった不満もあるかも知れません。

そんななか、今回は「やりたいことを仕事にするための働き方」についてお話を聞いていこうと思います。

お話を聞くのは『畳み人(たたみにん)という選択』という本の著者であり、幻冬舎という出版社にお勤めの設楽悠介(しだらゆうすけ)さんです。

――こんにちは、よろしくお願いします。

はい、よろしくお願いします。『畳み人という選択』の著者、設楽です。


『畳み人という選択』の著者・設楽悠介さん


――この『畳み人という選択』という本、サブタイトルには『「本当にやりたいこと」ができるようになる働き方の教科書』とありますが、やりたいことをされているということですよね。

ええ、おかげさまで色んなことをやらせていただいてます。


普通の会社員でも、やりたいことはできる

――肩書を拝見すると、幻冬舎という出版社でコンテンツビジネス局の局次長ということですが、具体的に何をされているんですか?

幻冬舎では電子書籍事業の責任者や、書籍の編集者として働いています。あと、漫画出版社である「幻冬舎コミックス」やクラウドファンディング出版の「エクソダス」などの関連会社の取締役も複数社兼務しています。

――幻冬舎コミックス?…あ、以前に登場いただいた『ザ・テクノロジー マンガでわかる11の最新技術』も幻冬舎コミックスでした!

<参考>【エンビジ!】 今こそ知っておきたい 最新テクノロジー

それはそれは、お世話になりました。他にも、ブロックチェーン専門メディアである『あたらしい経済』の編集長など、いくつかの新規事業の責任者を務めています。

――ブロックチェーン専門メディアの編集長も!


ブロックチェーン専門メディアの『あたらしい経済』


さらには個人活動として、ボイスメディア『Voicy』にて音声番組の配信もやっています。

――音声番組の配信も!

ええ、こちらはNewsPicksの野村高文さんとコンビを組んで、『風呂敷畳み人ラジオ』というビジネスパーソン向けの仕事ノウハウを提供する番組ですね。


Voicyの『風呂敷畳み人ラジオ』は60万回以上も再生されている


あと、それにまつわるイベントへの登壇やメディア出演もしています。最近では、上場企業が行う新規事業のアドバイザーなどの仕事も始めました。

――ええ!…すごいですね。設楽さんてスーパーマン過ぎるんですけど、エリート家系出身で海外育ちとかですか?

いえいえ、僕は普通の家庭で生まれ育って、普通の大学を卒業して、普通の会社員としてここまで働いてきています。

――普通の人がなんでそんなにやりたいことをバンバンできているんでしょう…。最初に入った会社がめちゃくちゃ有名な会社だったとか?

いえいえ、最初の会社も普通ですし、はじめての仕事は一番やりたくなかった営業職でしたよ。それでも、僕は仕事を一つずつ丁寧に実行することを大切にし続けてきたんです。それが今に繋がっていると思っています。


畳み人としてイベントに登壇する設楽さん


『畳み人』とはどういう人なのか

――なるほど、「仕事を一つずつ丁寧に実行すること」っていうのがポイントですね。それが「Voicy」の番組タイトルやこの本のタイトルにもなっている『畳み人』というキーワードに繋がるわけですか。

まさにその通りです。目の前の仕事を着実に実行していたら、やがて周りから『畳み人』と呼ばれるようになっていきました。

――『畳み人』って、なんだか『必殺仕事人』みたいですよね。そもそもどういう意味なんですか?

大風呂敷を広げたようなビジネスアイデアを、きちんとした形に畳める人というたとえを基にした造語ですね。

――ああ、会社の上のほうの人たちってよく大風呂敷を広げますよねえ…

まさに、経営者や上司の突飛なビジネスアイデアを、着実に実行して形にできる人のことを『畳み人』と呼んでいます。

――なるほど。社長の右腕とか、チームの先導役みたいなイメージですかね。

そうですね。時にはチームの先導役として、また時にはいちプレイヤーとして、変幻自由に活躍するビジネスパーソンですね。リーダーの傍にいる「名参謀」や「右腕」もそうですし、様々な部署・取引先から信頼されている、プロジェクト実行のためにはなくてはならない存在の人は全般的に『畳み人』だと思っています。

――設楽さんはそういう立場を極めたからこそ、やりたい仕事ができていると。

ええ、やりたい仕事ができるようになるための最良のルートは、この畳み人としてのスキルを身につけることだと確信しています。僕が仕事をはじめてから約20年間、失敗と小さな成功をくり返しながら学んできた結果、その答えに辿り着いたんです。

――おお、20年間の経験から『畳み人』を目指せと仰っているわけですね。ちょっと意地悪な質問をしていいですか?

どうぞ、どうぞ。


――さっき「仕事を一つずつ丁寧に実行する」って仰っていましたが、「これさえ読めば上手くいく」みたいなビジネス書も結構あると思うんですよね。そういうのをマネするような考え方ではダメですか?ラクしてやりたい仕事ができるようになりたいです。

出版社の僕が言うのもなんですが、確かにそういう本は多く出てきてますよね。書籍に限らず、ネット上にも多くのノウハウや成功ストーリーが溢れています。もちろん本当に素敵なものもありますが、ただ、出版社の僕だから言えるんですが、「ラクしてできそう」みたいなコンテンツはわざと味付けを濃くしていることも多いわけです。

――味付けが濃い?

ええ、やはりビジネスとして売るためにはインパクトが必要なので、書籍であれば1冊でも多く売れるように設計してプロモーションされますし、無料のウェブメディアであればアクセスを稼げるような強めの表現をします。「最短で○○できる!」とか「カンタンに誰でもできちゃう」みたいな表現ですね。

――ああ、確かにクリックしたくなるような強いコンテンツが増えましたね。読みこんでみたら大したこと書いてなかったりして。

さらに今の時代、個人がインターネットで自由に発信できますから、多くの他者の情報が手元に届くようになりましたよね。それによって「焦り」も招きやすくなっているように感じます。

――まさに…、SNSでの友人たちの活躍が気になります…。

そうですよね。でも、これだけ情報過多の時代に、成功を焦って色々なことに手を出してしまうのは危険なんです。他者の行動に振り回されて自分のやることが中途半端になってしまっては、期待できる成果は得られません。

――色んなダイエットを試して、ずっと痩せられないみたいな感じですね…

だから、やりたい仕事をするためには、小手先のテクニックや味付けの濃いコンテンツに踊らされず、まずはビジネスの基本をしっかりと固めることが大事なんです。

――急がば回れってことですか。

そうです。足元でコツコツと「仕事を実行する力」をつけること。そのうえで、適切なタイミングで挑戦していくことことが大切なんです。


『畳み人』になるための秘訣

――『畳み人』になるためにも「仕事を実行する力」をつけるというのは分かりましたが、じゃあ具体的に何をすればいいのでしょうか?

「何をすべきか」は僕の20年間の経験から考えても一言では言い表せないので、ぜひこの『畳み人という選択』を読んでほしいですね(笑)


――そうですよね(笑) まあ、何か一つだけでもお願いします。

では1つご紹介すると、アクションを起こすときには「相手への想像力をもつ」ということですね。

――「相手への想像力をもつ」?

たとえば「A」というパワーポイントの資料があったとします。で、あなたが上司からメールで、「至急、Aの資料を読みたいので送ってくれ」と頼まれたとしましょう。上司に電話をかけてみると、移動中なのか、なかなか連絡が取れません。あなたはその資料を上司に、どんな形式で送りますか?

――え、パワーポイントじゃないんですか?

いやいや、電話したら連絡が取れなかったわけですから、上司は移動中でパソコンが開けないかも知れませんよね。もしかすると、スマートフォンで資料を見たいかもしれません。パワーポイントで送ると、機種やアプリによってはうまく表示されないとか、文字が読みづらくなる可能性があります。

――あー、確かに、経験あります。

その場合はPDFに変換してから送るほうが、上司は確実かつすぐに資料を確認できますよね。でも、相手の状況が分からない時もあります。その場合には、PPTとPDFの2つの形式で送れば確実じゃないですか。

――2種類を送ってあげるんですか。

そうすれば相手は、都合のいいほうを開いて資料を確認することができますよね。

――なるほどなあ。1つ先を想像してあげる、と。

実際の例でお話してみましょうか。僕は以前、編集者として『共感SNS』という本の編集を担当しました。著者は“モテクリエイター”として有名な、ゆうこす(菅本裕子)さんです。


『共感SNS』(ゆうこす・著/幻冬舎)を担当した設楽さん


――あ、読んだことあります、その本。

ありがとうございます。


ゆうこすならどう動くか、を考えて先回りする

ゆうこすさんとのやりとりは基本、LINEでした。ただLINEはPDFデータを送ると、「ダウンロード」して「開く」という2アクションが必要になります。でも僕は、画像に変換して送っていました。フィードにそのまま内容が表示されるからです。

――画像にすると1アクション少ないと。

ええ、そのぶんスピーディーに見ることができますよね。さらに僕は、画像に変換するだけでなくて、同じ内容のテキストも貼り付けて送付していました。また、テキストにURLが含まれるときは、本文とは別に送っていました。

――めちゃくちゃ細かい!なんでそこまで?

ゆうこすさんはSNSを活用したブランディングを行っています。そうすると、必然的に文字やURLをツイートなどに使うことが多いわけです。でもLINEは一つのコメントを一括コピーしかできないですよね。仮に僕が文章とURLを一緒に送ってしまうと、ゆうこすさんがその全文をメモ帳とかにコピーしてURLだけコピーし直すという手間がかかってしまう。

――ああ、それで!

そう。ゆうこすさんが迅速にツイートなどに使えるためです。彼女が秒刻みで動く忙しい状況を目の当たりにしていましたから、いかなる状況でもすぐチェックしたり、活用したりできるよう先回りしていたわけです。

――うへー、そこまで考えて動かれているんですね~…

こういうと面倒に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。相手のことを考えて動けば動くほど、最終的には自分の思い描く通りに仕事が進みやすくなります。つまり相手を気遣うことは、自分がスムーズにコミュニケーションするための方法なのです。

――そうか、自分がやりたいことをするのに自分中心の考えじゃダメだ、と。

そう、自分の仕事を円滑に進めたい、企画を通したい、お願いを聞いてもらいたい、と思うなら、そのアクションを受け取る相手の気持ちや状況に想像力を働かせるべきなんです。

――うわー、なんか考えさせられますね。他にも『畳み人』を目指すために何をすべきかがたくさん書かれているのが、この『畳み人という選択』という本ですね。

はい、是非お手に取ってみてください。


皆さんも、“やりたい仕事ができる人”になるために読んでみてはいかがでしょうか。

『畳み人という選択』(プレジデント社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4833423502


設楽さん、ありがとうございました!


取材協力:プレジデント社
取材+文:プラスドライブ

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