女子大生ロボットクリエイターとして活躍する近藤那央さんは、高校時代にペンギンロボット開発チーム”TRYBOTS”(トライボッツ)を結成。2014年には、すみだ水族館でペンギンといっしょに泳がせたことで人気者に。今回は、彼女のものづくりへの思いや、日々のアイディアの発想法、テクノロジーの未来について伺いました。
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きっかけはペンギン。好きなものだったら、どこまでも追求できる
—近藤さんはTRYBOTS代表として、ペンギンロボット「もるペン!」の開発を行っていますが、まずその作品を見せていただけますか?
近藤:これは、この夏にTRYBOTSの仲間と作ったものです。半年前は今の1.5倍ぐらいの大きさでしたが、とても小さくなりました。そのおかげで羽や足の動きなどもずっとズムーズなり、頭もちゃんと動くように速度制御をするサーボモーターも付けています。
—そもそもペンギンとの出会ったのはいつだったのですか?
近藤:高校生の頃に友達と水族館に行ったとき、水の中で何であんなに早く泳げるのだろう?と素朴な疑問を感じて、それからあの羽ばたきの仕組みを作りたくなり、当時は卒業研究のためにすみだ水族館の年間パスポートを買って、2週間に1回は通って研究していましたね。水族館は好きなので、いまでもネタ探しに行っています。
—ネタ探しにですか?
近藤:ここ最近でいうと、葛西臨海水族園に行ったときに“フェアリーペンギン”っていう小さなペンギンがいて、今まで見たものはもっと大きかったので驚きました。でも、すごいパワフルに飛んだりするんですよ。それでまた、どうなってるんだろうとその仕組みが気になったりしました(笑)
—やはり、ペンギンをずっと追いかけているんですね。
近藤:そうですね。だからこそ、ペンギンが好き!って言い続けていると、周りの友だちが連れて行ってくれたりするんですよ。自分の好みややりたいことを、常に周りに発信しておくことって意外と大事だと思うんです。時々よい反応が返ってきたりするので。
進路を決定づけたのは、意外にも友人や周りの環境だった
—東工大附属高校を卒業後、慶応SFCに進学されていますが、そのとき何か描いていた将来像があったのですか?
近藤:私、純粋な研究者にはあまり向いてないなと思ったんです。それよりも自由研究のときなど、企画してテーマに合った人を集めて、その人たちをつなげて、コラボしたりするのが好きだったので、全体を指揮したりすることが自分らしいかなと思ったりしていました。
特に、高校時代は数学や物理がそんなに得意ではなくて、やっぱりそこには友だちの中で得意な子がたくさんいたので、友だちがこっちなら逆に自分はあっち、みたいに我が道を行く感覚で進路を決めましたね。
—では、SFCに入ってからのTRYBOTSの活動はどのように行っていたんですか?
近藤:それは高校時代のまま続けているので、別に何か新しくなったということはありません。メンバーとしては、SFCからデザインの得意な子が1人入ったぐらいですね。今、名刺とかロゴとか作ってもらってます。あとのメンバーは、電気系統と機械系統と、それと構造設計を担当する人の計5人で活動しています。
—高校生と違って今は自分のために使う時間が増えたと思うのですが、他に追求していることはありますか?
近藤:今は航空部(慶應義塾体育会航空部)にも入っています。ロボットとは正反対なくらい、こっちは体育会です。簡単に言うと「飛行機に乗って飛ぶ」ことをやっているんですが、実はトレーニングもかなり必要で、夏の間は埼玉県の熊谷に合宿して朝から晩まで飛行機を飛ばしていました。
発想の種は、すべてを1冊にまとめたノート
—開発の話になるんですけど、近藤さんはいつも多くの企画や発想をしていますが、そのときの発想法について伺います。日常生活の中でのひらめきを大切にする、企画は机に向かって考える、人それぞれですが近藤さん自身はいかがですか?
近藤:どちらもありますね。例えば日常生活でいうと、美術館とか水族館とか見にいっているときとかに、「ああ、これとこれを組み合わせたら、おもしろいものができそうだな」とかを思ったりしています。その発想の種みたいなものを紙に書いておくなりして、ネタを出さなきゃいけないときにアウトプットするような感じですね。
—ネタ帳のようなものあるんですか?
近藤:はい。ノートは毎日持っていて、そこには授業のメモやスケジュール、落書きなどすべてを一括してそこに書いています。最初は、目的別にノートを分けていたんですけど、高校の時からずっとA5サイズのノートにどんな情報でも分け隔てなく書いていますね。もともと整理するのが苦手な部分はあるのですが、1冊にまとめた方が、個人的にはなかなか忘れにくいということがあります。それから、アイディアの組み合わせもしやすいですね。
—逆にインプットの方はどのようにしていますか?例えば読書など。
近藤:本は好きです。特に小説好きで、最近では伊坂幸太郎さんの「PK」や又吉さんの「火花」も読みました。電車の中でKindle Paperwhiteで読んでいるので、すぐ読み終わりましたね。あと、インプットということでいうと、私はまだ学生なので授業が一番大きいですね(笑)
ライバルはスマホ!だからこそ、ロボット周りのルールを整備する必要がある
—そうした近藤さんの発想から生まれたアイディア=ロボットは、将来的にどのように暮らしの中で浸透してほしい、という希望はありますか?
近藤:ゆくゆくは個人専用というか、1人ひとりのためのロボットという存在になればいいなと思っています。でも、そのためには「ライバルはスマホ」というか、スマホとどのように共存していくかが重要になってくると思います。
—それはかなりの宣戦布告ですね(笑)
近藤:産業ロボットをつくる素晴らしい技術を持ってる人とかが、なかなか商用サービスの分野にいけない原因は、まず市場がないことと、安全基準がないことというふうに言われています。特に安全面に関しては、そういう基準がないと、なかなか「これ安全ですよ」という証明ができないので、そういうことをきちんと整備していくことが必要なのかなと思ってます。
結局、機能性や携帯性から見ると、ロボットでなくてもスマホで十分という流れになりそうですけど、ロボットだからこそ面白い、ということも私はあると思っています。道具に対する愛情が湧いてくるように、それ以上にロボットも活躍できる場はあると思っています。
—なるほど。これからの近藤さん動きがますます楽しみになりました。本日は素敵なお話ありがとうございました!