トラウマを克服するために、辞めた会社の上司にダメ出しをされてきた

 

こんにちは。ヨッピーです。頭を抱え込みながら失礼します

本日は「辞めた会社の上司にダメ出しをされてみる」という、地獄みたいな企画をお届けするため、とある居酒屋に来ています。

そもそも、僕は普段から悪夢をよく見るのですが、その悪夢は2パターンあり、1つが「大学を留年する夢」で、もう1つが「昔働いていた会社の上司にめちゃくちゃ怒られる夢」であります。留年するにしろ上司から怒られるにしろ、両方ともリアルに体験したことなので、今でも心の奥にトラウマを抱えているのかもしれない。

 


▲サラリーマンを辞めた頃の僕

実は僕、今でこそ、こうやってライターとしてインターネットにしょうもない駄文を書き散らすことで細々と生きておりますが、5年前までは商社で働くサラリーマンでして、そりゃあもう典型的なダメリーマンだったので、当時から上司にはよく怒られていたわけです。

でも、もう5年も経ったわけですし、そろそろあの頃のトラウマを払拭し、新しい未来に向かって歩き出す時が来たのかもしれません。

このトラウマを、乗り越えなければ……!

 


▲編集担当兼カメラマン 宇内(うない)

宇内
どうしたんですか。いつになく表情が暗いじゃないですか。楽しくやりましょうよ。

ヨッピー
おい。殺すぞ。言っておくけど僕、本当にしょっちゅう怒られてたからね。なんで36歳のいい年こいたおっさんが人に怒られてる様子を日本中に発信しなきゃいけないんだ……! 怖い……!

 


※お店に特別な許可を得て持ち込んでいます

 

宇内
ちなみに、このチョコベビーはなんですか?

ヨッピー
いや、ボロカスに言われて心にダメージを負ったときに、チョコの甘さでダメージを中和しようかと思って……。はーー、緊張するーーーーーー。

 

 

 

「すみません、お待たせしました」

 

 

 

 

 

 

宇内
あ、RPGで敵にエンカウントした時みたいになってる!

 

ここで改めて紹介します。僕の元上司のA元課長(左)とN元課長(右)のお二人です。

会社を辞めて以来、会うのは5年ぶりになる。なんだこの緊張感

 

ヨッピー
えーー、お久しぶりです。本日はお忙しいところありがとうございます。メールでもお伝えした通り、僕は会社を辞めてからはライターとして細々と活動してましてですね、今日はそんな僕に活を入れていただけないかと思いまして……。

 

A元課長
俺はメールの内容がよくわからなかったんだけどさ、今は文章書いて飯食ってるってこと?

ヨッピー
そうですね。一応それでなんとか生きてますね……。

A元課長
へー! 立派なもんじゃん! お前が辞めてから「あいつ何してんのかなー」って、気になってはいたんだよ!

宇内
ヨッピーさんは現在ライターなんですが、最近だいぶ調子に乗ってるといいますか、育ちが悪いくせに社会派気取りの記事を書くことがあって……。ここらで一発ガツンと懲らしめてもらった方がいいんじゃないかって思ってるんですよ。

N元課長
なるほど、趣旨はわかりました。

ヨッピー
帰りたい……。

 

元上司からのダメ出しが始まる

宇内
サラリーマン時代のヨッピーさんってどんな人だったんですか?

ヨッピー
ヨッピーは、とにかく雑でしたね。

 

N元課長
まずね、机が汚いんですよ。こう、シマに机が並んでるなかで、明らかにヨッピーの机だけ書類から何からが散乱してて。それで私が「おい、ちょっとは片付けろよ」って怒って少し経つと、いったんは机の上がきれいになるんですけど、「なんか怪しいな」と思ってヨッピーの引き出しを開けたら書類から何からゴチャっと全部グチャグチャに詰め込んでありまして。「お前これ、見えなくしただけで片付けたとは言わないだろ」って怒ったりとか。

 

 

宇内
あ、もう食べた!

ヨッピー
まあ、そういう過去もありましたね……。

A元課長
あとは提出物とかも遅いんですよ。部署の人間が全員出してるのに、こいつだけしつこく催促しないと書類出してこないとか。

宇内
なるほど。確かにヨッピーさんって、請求書を送ってくるのが遅いんですよ。

ヨッピー
なんでお前まで一緒になって言うんだよ。

N元課長
服装もだらしなかったですね。ネクタイをきっちり締めないとか。営業ですから、やっぱりこう、キチッとした髪型にしなきゃいけないじゃないですか。でもこいつはいつも寝癖がついてるんですよ。それで、そのままお客さんの所に営業に行くんですね。

宇内
あー、わかります。今でもこの人、偉い人に取材しに行くのにビーチサンダルで来るんですよ。

ヨッピー
いや、でも髪型は寝癖じゃなくて天然パーマだから仕方ないんですよ、ほんと。

N元課長
でもお前がだらしないせいで、俺まで上から「おい、あいつをなんとかしろ」って怒られるんだから。

宇内
じゃあ、ヨッピーさんはしょーもないダメ営業だったんですね。

 

A元課長
いや、それがね、意外とダメってほどでもなかったんですよ。お客さんの懐に飛び込むのは異常に上手くて、なぜかお客さんからはかわいがられてたり。取引先から「売上に貢献してくれた」って表彰されたこともありましたね。あとは自分で「おっ、これいいな」と思ったら、そのまんまやるっていう不思議な行動力もありましたし。

ヨッピー
そうそう。その辺をもっと言ってください。つまりね、全部戦略なんですよ。服装から何から全部キチッとした営業マンだと、お客さんだって気を抜けないじゃないですか。でも僕はこう、自然体でね。飾らないスタンスだからお客さんからしても僕なんかと話してる方が気楽なんですよ。それを全部計算でやってただけで、本当は雑どころか繊細な人間なんです。

A元課長
何が繊細だよ! お前がやらかしたせいで、何度一緒に頭下げに行ったと思ってるんだよ!

N元課長
そうだよ! 決算の時に、お前の伝票計上が遅いおかげで追加支払いするための稟議書を何回も書いたのは俺なんだぞ!

 

宇内
あ、一気飲みしてる!

 

ヨッピーの社内評価はどうだったのか

宇内
ヨッピーさんは、社内ではどんな感じだったんですか?

A元課長
こいつはね、とにかく報告、連絡、相談をしないんですよ。

N元課長
そうそう。

A元課長
やっぱり我々はサラリーマンですから、上司に報告、連絡、相談をしなければいけないじゃないですか。失敗した時とかお客さんとトラブってる時とか、こいつはそういうの、一切言わないんです。自分で判断して自分で勝手にやってるんですよね。根回しが下手なんですよ。

ヨッピー
僕、正直者で真面目だからそういう、根回しみたいな裏工作が嫌いなんですよね、たぶん。

N元課長
裏工作とかそういうのじゃないんだよ。さっき言った、俺が追加支払いの稟議を切った時なんかもさ、もっと感謝してもいいくらいじゃん? 俺だって上から怒られながらやったんだからさ。飲みの席で「課長、あの時は本当にありがとうございました……!」ってビールの1杯くらい注ぎにくればいいのに、そういうのがないでしょ。「稟議通しておいたよ」って言ったら「あー、すいませんッス」って本当にそれだけ。思いやりの心がないよね

 

ヨッピー
あ、ガチのやつだ。

A元課長
お客さんに対してもそうですよ。一緒に商談しに行った時も、お客さんが「今度こういう企画やるんだけど……」って話してたら、こいつはなんか仏頂面して「その企画、ちょっと微妙じゃないですかね?」とか平気で言うから、お客さんもちょっとムッとしてこっちがヒヤヒヤしたり。空気が読めないんですかね? 本当に遠慮なくズケズケ言うし、それで相手から怒られたり嫌な顔されたりしても、全然気にする素振りもなかったから打たれ強さみたいなのはあったかもしれない。

N元課長
そうだね。怒られると一応は「すいませんでした」って謝るんだけど、本当に反省してるようには見えないんだよなぁ。

A元課長
そうそう。だからそういう意味では、営業に向いてたのかもしれないですね。営業は打たれ強さと図々しさがないとやれない仕事ですから。

ヨッピー
いや、僕はでも本当に、そういう時って心の底から「僕の提案の方が絶対いいに決まってるのに、なんでこの人はこの提案に乗っからないんだろう」くらいに思ってるんですよ。だからおべんちゃらも言えないし、ついつい本音が口に出ちゃうし、こっちが正しいんだから別に上司に相談もせんでええやろっていう。

N元課長
もちろんね、そういう自信を持って提案する事は大事なことだけど、でも当時まだ20代で若造のお前が、目上の人に向かってそういう言い方をしたら相手だって面白くないでしょ。言い方はもう少し考えなきゃ。

ヨッピー
まあ確かにそれはそうですけど……。

宇内
すごい。36歳のおっさんがガチで説教されてる。

 

会社もいろいろ変わったらしい

A元課長
ちなみにさ、なんで会社辞めたの?

ヨッピー
インターネットの仕事がしたかったからですね。会社入って仕事してても、「やっぱり僕はインターネットの方が好きだなー」ってずっと思ってたんですよ。だから転勤の辞令出たときに「いい機会かなー」って。

A元課長
なるほどね。ただ、会社も随分変わったから、今の会社ならお前も辞めてなかったかもしれないよ。

N元課長
そうそう。残業とかもかなり少なくなったし、随分変わった。

ヨッピー
へー、当時はだいたいみんな朝から結構遅くまで働いてましたよね。

N元課長
今はもう定時過ぎるとみんな帰るよ。それにこう、上司が部下にわーっと叱るような文化もなくなったからね。ちょうどお前がその、上から怒られた最後の世代くらいだったかもしれない。

ヨッピー
そうなんだ。あの、あちこちで怒鳴り散らしてたコワモテの社内有名人Xさんも……?

N元課長
うん。彼も全然怒鳴ってないよ。やっぱり時代の流れがあるからね。

A元課長
最近の新入社員は、勉強ができる真面目で素直なタイプの子が多いのよ。それはもちろん素晴らしいことなんだけど、お前みたいにふてぶてしいタイプの奴じゃないと、変に叱ると傷ついたりするんだよね。最近の若い子ってそうじゃない?

ヨッピー
いや、僕はその辺はよくわかんないんですよ。普段、一緒に仕事してる連中って30近くなるまでずっと無職だったりネットで変なことばっかりしたりしてきた人たちで、マトモに社会人経験あるような人が周りに全然いなくて。特殊すぎて参考にならないです。

A元課長
へー、それでちゃんと仕事になってるの?

ヨッピー
はい。わりと順調ですね。

A元課長
いや、それは素晴らしいことだね。大学出て最初に入った会社で定年まで働くのもいいかもしれないけど、就職しないやつは全員ダメなんておかしな話じゃん。そうやっていろんな経歴の人が活躍できる、多様性のある社会のほうがいいに決まってるんだから。お前だってサラリーマン辞めて、いま立派にライターやってるんだからたいしたもんだよ。

ヨッピー
そうですね。

A元課長
そうですね、じゃねえよ! 「お世話になってたのに急に辞めてすいませんでした」「お二人のおかげで立派にやってます」でしょ! お前が辞めたあとのフォローが大変だったんだから!

ヨッピー
このロケ、めちゃくちゃやりづらいわ……。

 

このあとも「引継ぎが雑だったせいで、僕が辞めてからも後任が苦労した話」「社員寮に入居してる時の抜き打ちチェックで、僕の部屋だけ死ぬほど汚かったせいで統括部長まで人事部に怒られた話」なんかを延々されました。精神的ダメージがそろそろ限界かもしれない。

 

会社を辞めて、本業が見つかった

N元課長
まあそんな感じでね。まとめると「雑」とか「ツメが甘い」とか「だらしない」っていう一言に尽きると思いますよ。

宇内
実際、営業マンとしてはどうだったんですか?

A元課長
懐に飛び込むのが上手いとか行動力があるっていう良い面ももちろんあるんだけど、抜けてるところもたくさんありましたからね。一流の営業マンにはまだまだ遠いって感じですかねぇ。そういう細かいところを直していけば、いい営業マンになれたと思いますけど、性格なのかなぁ。

ヨッピー
でもね、僕、ライターとしてもツメが甘くて読者に怒られたり突っ込まれたりすることはもちろんあるんですけど、でも全体的には「丁寧に取材してる」っていう評価をもらうことが多いんですよ。だから性格が雑っていうわけではないと思うんですけど……。

N元課長
それはね、結局はお前がウチで働いてた7年間が「本業」じゃなかったからだよ。頭のどこかで「これは腰掛け」くらいのつもりでいたんじゃない? でも、会社辞めて好きなことを仕事にして、好きなことだからこそ一生懸命、丁寧にやれるっていうね。会社辞めて本業が見つかったんだよ、きっと。それでよかったんだと思うよ。

ヨッピー
なるほどなぁ。まあ確かに、当時仕事に対して熱中できてたかというと、そうでもなかったですね……。

N元課長
でしょ。でも一般的にはライターってそんなに儲かる仕事のイメージはないけど、ちゃんと稼げてるの?

ヨッピー
まあ、ぶっちゃけると、サラリーマン時代の給料よりは全然いただいてますね……。

N元課長
へー、じゃあ、あの『TAMA GA DEKAI(※)っていうのもけっこう儲かった?

 


(※)TAMA GA DEKAI……ヨッピーは以前、なぜかテレビ朝日と組んでCDを発売して大爆死したことがある。正式なタイトルは『BIG BALLS ~TAMA GA DEKAI~』。もちろん全然売れなかった。

 

ヨッピー
いや、あれはもう売れるわけないのがわかってて、悪ノリで出したので全然……って、あれ?

 

ヨッピー
なんでNさんがあのCDのことを知ってるんですか……?

N元課長
ああ、これ出た時に社内で「これ、あいつですよね?」って話題になってて。ジャケットが明らかにお前の顔だからな。

ヨッピー
えーー! マジで……!?

A元課長
え! 私は全然知らなかったですよ! じゃあNさんはヨッピーがこういうことしてるの知ってたんですか!?

N元課長
うん、CDのときに知って、それから記事もちょくちょく読んでた。あいつ面白いことやってんなって思ってたんだけど、いきなり「説教してください」なんてメールが来たから、ちょっとびっくりしたよね。

ヨッピー
なーにーそーれーーー!

 

ヨッピー
うわーーー。なんか、めっちゃしてやられた感あるわ……!

N元課長
まあ、これでお前の過去のトラウマを克服できるかどうかは知らないけど、元気にやってるっていうのがわかってよかったよ。たまにウォッチしてるから、これからもしっかりがんばってな!

 

去ってゆく元上司二人。

 

そして疲労困憊して倒れ込む僕。

 

ヨッピー
めちゃくちゃ疲れた……!

宇内
でも、いい人たちでよかったですね。

ヨッピー
まあそれはそうかもしれんね。本気でヤバい人たちなら、こうやってネタにすらできなかったと思うわ……。

宇内
トラウマは払拭できそうですか?

ヨッピー
むしろ新しいトラウマができたかもしれない。

 

そんなわけで「元上司からダメ出しをされてみる企画」はいかがだったでしょうか。

僕の人生の大きな転機になった退職ですが、振り返って考えてみると、結果論とはいえ、あの時の決断は間違いではなかったと思います。

この記事が、大きな転機を迎える人たちにとって少しでも励みになるなら、僕も「いい“いけにえ”になったんだな」と思えるかもしれません。

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いやー、いい年こいてガチで説教されるのはさすがにキツいですね。みなさんも、くれぐれも雑な仕事にはご注意を……!

 

【取材・文】
ヨッピー + ノオト

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ヨッピー
フリーライター。平日毎日更新のおばかサイト「オモコロ」にて体を張った実験記事を執筆。ほかにも「ジモコロ」「トゥギャッチ」などで連載中。ブログ「ヨッピーのブログ(仮)」 TwitterID「@yoppymodel

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