【プロにキク!】 エンジニアは目の疲れを克服せよ!

※この「プロにキク!」では、毎回その道のプロに話を聞いて、私たちのようなプロのエンジニアに効きそうなノウハウをシェアしていきます。



さて、今回のテーマは「目の疲れ」です。

エンジニアといえば、プログラミングやコーディングなど長時間にわたって画面を見続けていて「目が疲れる!」という人も多いと思います。

今回、「目の疲れを克服したプロがいる」という噂を聞いて話を聞きに行ってみました。果たして目の疲れを克服したプロとは?


――こんにちは、よろしくお願いします。

はい、よろしくお願いします。矢澤啓之(やざわひろゆき)と言います。


――矢澤さんは何をされている方ですか?

家電メーカーのエンジニアを経て、今はソフトウェア会社で国際事業開拓を担当しています。

――なるほど。国際事業開拓ってのも気になりますが、それより「目の疲れを克服した」という話を聞いたんですが。

ええ、そうですね。目の疲れとは長年付き合ってきました。僕は眼科医ではないのであまり断定したことは言えませんが、体験談で良ければお伝えしますよ。


中学時代から目が疲れはじめた

――矢澤さんは30代半ばとお見受けしますが、いつ頃から目が疲れはじめたんでしょうか。

中学生ぐらいからずっと付き合ってきたんです。僕にとっての「目の疲れ」というのはもう、本当に簡単な話ではなくて。

――中学生ぐらいから目が疲れていたんですか?

そう、目が疲れて、首も痛くなって、体全体が疲れるようになってしまいました。

――何が原因なんですか?

「何でも完璧にこなさなければ」という思いがあり、無理をしていたせいですね。放課後に部活で部長をやって塾に行って、習い事も水泳や書道や英語やピアノ。あと学校でも学年委員長をやっていて、もちろん勉強もしなきゃいけない。そのため1日3時間睡眠でした。それで目にどっと疲れがきまして。

――それでどうしたんですか?

無理して勉強したおかげで無事に進学校には合格できたのですが、高校に入ったら燃え尽きたこともあって疲れが一気に押し寄せてしまって、何をやるにも疲れるんですよ。もう、ただ目を開けているだけで痛いという。

――それはヒドイですね。病院には行ったんですか?

これは普通じゃないな、と有名な眼科に片っ端から行ったんですが、「分からん」と言われてしまって。弱い度のメガネを勧められたり、視力回復トレーニングをしたり、色々とやったんですが全く改善しませんでした。

――あらら。困りましたね。

これでは勉強すらできないし、困ったぞと。それでたどり着いたのがラジオと音楽です。

――ラジオと音楽? あ、耳を使うってことですか。

そう、目が使えないなら耳だ、ということで英語のラジオを聞いていきました。そうしたら英語の成績は伸びていったんです。あとピアノは昔からやっていたので、そこも力を入れて。

――目を使わないことにフォーカスしたんですね。

そうです。ネットの記事なんかも読み上げソフトを使って聴いていて。これは現在でも続けていますが、耳からの情報を多めにして生きていったわけです。

――とはいえ、目を全く使わないって難しいですよね。

ええ、読書をしたくても目が疲れてできないので本をスキャンしてOCRソフトでテキスト化して、読み上げソフトで読んだものをMP3にして聞いていました。今でこそオーディオブックやKindleの読み上げ機能とかありますけど、15年以上前からそんなことをしてました。

――なるほど。それは大変ですね。


目の疲れによって、人生が変わってしまった

日本語って漢字の数も多くOCRでの正確なテキスト化が難しいので特に当時は誤字が多くて大変でした。その点、英語のアルファベットは数が限られますから誤字が少ないので、どうしても英語でのインプットが増えていきましたね。読み上げソフトも当時は英語の方が優れていました。

――そうか、読むという意味でも英語の方がラクなんですね。

はい。それで、高校を卒業するころになって大学を探すわけですが、英語と音楽を軸に様々な分野が勉強できる大学が日本には無かったんです。

――そうすると、海外へ?

ええ、カリフォルニア州立大学のロングビーチ校というところに行きました。


目が疲れるために進路を変更し海外の大学に行った矢澤さん


実は科学も好きだったので高校2年くらいまでは理工系の大学に行きたいなと思っていたんですが、いかんせん数式って読み上げができないんですよ。

――そうか、音声認識ソフトでは数式が読めないか…。

ですから、理工系を諦めるのは苦渋の選択だったんです。全く視力が無い状態だったら割り切って「音楽だけでやって行くぞ」とか思えたんでしょうけど、「目が疲れて本が読めないから」っていう状態だと、どうしても悔いが残る。

――ご自身の進路も迷われたと。

そう、沢山のことを学びたいという思いから音大ではなく一般的な総合大学へ行ったわけです。ただやはり理工系の学習は厳しくて「目の疲れさえ解消させれば、自分のやりたいことができるはずなのに……」って、ずっと考えている学生でしたよ。

――それで、どうなっちゃうんでしょう。

大学生の時、世の中に「ドライアイ」という言葉が広まってきたんです。それで、僕も目が乾いていてドライアイだから疲れやすいのかな?と思いました。

【参考記事】女性に多いドライアイ 原因は涙の「脂不足」


――それだ!と。

ええ、それで眼科に行ったんですが、「あなたはドライアイではありません」と診断されてしまって。

――あら! 違ったんですね。


目の疲れに効いたものとは

ただ、それでも目は疲れるわけです。乾いた感じがするし。だから、色々調べたところ「油が良い」という論文を見つけて、油を飲んでみようと思って。

――油を飲む!?

別の論文では「油を飲んでも効果は無いと思われる」と書いてあるものもあったんですが、実際に飲んでみると結構効いている気がしました。

――ああ、でも最近はテレビの健康番組なんかでもアマニ油やらエゴマ油を飲むのは健康にいいとか聞くようになりましたね。

そうですね、アマニ油やエゴマ油などはオメガ3脂肪酸と言われるDHA、EPAなども含まれる油なのでおすすめです。

【参考記事】健康な肉体を求める者は油を食べよ!──斎藤糧三先生に訊く油の新常識10


目の医療に関して日本とアメリカで大きく違うな、と思ったのは、アメリカには「オプトメトリー」という学問があって、その資格を取った「オプトメトリスト」という人がいるんです。

――オプトメトリスト。なんかカッコいい名前ですね。

日本語にすると「検眼士」ですかね。眼科やメガネ屋さんでは、その資格を持った人しか検眼はできない決まりなんですよ。

――へえ、日本ではそういうの無いんですね。

大学で専門教育を受けたオプトメトリストという公的資格は日本にはないんですよね。アメリカではオプトメトリストの歴史が100年以上あって、オプトメトリー・ドクターと呼ばれているんです。メディカル・ドクターやデンタル・ドクターと並んで社会的にも地位の高い職業なんですよ。

――全然知らなかったです。

で、そのアメリカのオプトメトリストからも「油を飲むといいよ」って勧められて。あ、やっぱり良いんだこれは、って思いました。

――へえ、オプトメトリストさんも油はいいって言ってたんですね。

そうですね、アメリカはサプリ大国なのでアマニ油のカプセルがあったんですが、習慣的に飲むことで症状がやや改善されました。少し良くなってから時を経て、2011年くらいでしょうか、仕事ではPCが日常的なのでやっぱり苦難が続きました。「なんとかしたい」と調べていると、涙の成分には脂が含まれていて、その脂を出すのがまぶたの内側にある「マイボーム腺」だと。

――マイボーム腺、ですか。

ええ、それが詰まったりすると目が乾きやすくなるというのです。だから「自分はマイボーム腺機能不全(MDS)ではないか?」と疑って、専門医を受診したのですが、「あなたのマイボーム腺は詰まっていません」と言われてしまいました…。

【参考記事】マイボーム腺機能不全(MDS)の症状 LIME研究会


ただ、その先生が「ジクアス」を勧めてくださいました。

――これまたカッコいい名前ですね。

で、それを試してみたら「キタ!」と。


2010年に製造販売が承認されたジクアス点眼液


――ハマったんですね。

ええ、相当疲れなくなりましたね。同じような薬で「ムコスタ」というのもあって、どちらもムチンという涙の成分を分泌する働きがあるんです。涙というのはさっき言った「脂」「ムチン」、それと「水分」でできているんですが、従来の点眼薬は水分の補給だったわけです。

――だから油を飲んでもよくなったし、ムチンを増やすのも効いたというわけですか。

ええ、あくまで僕の場合ですけどね。でも、調べてみたらジクアスなんかは韓国でも大人気みたいです。韓国は受験社会だから目が疲れている若者が多いみたいで。

――へえ、韓国の目が疲れている人に大人気なんですね。

あと、その先生が目を温める温罨法も勧めてくれたんです。これも効いてますね!

※温罨法(おんあんぽう)とは、眼の周辺を温めることで、マイボーム腺のつまりを緩和するもので、国際標準治療として以前から効果が認められている自宅ケア。


目が疲れなくなって劇的に変わった人生

他にも色々試してみて良かったものがあるんで紹介したいんですけど、その前に、僕がどれだけ新しい人生が始まったかって話をしてもいいですか?

――え、ええ。目が疲れなくなったことでどう変わったんでしょうか。

今までは動きたくもなかったので外にも出なかったんですよ。

――ああ、目が疲れるのに外出するのは危ないですしね。

でも最近は色々と試して目が疲れなくなってきたお陰で、精力的に動けるようになりました。たとえばアクロバット。バク転とかバク宙とか憧れていたんですが、最近できるようになりました。

――アクロバット!


「フォーリア」という技を決める矢澤さん


あと、音楽は昔からやっていたわけですが、YouTubeなんかに「歌ってみた」動画をアップするミュージシャンでもあるんです。月に10万以上は稼いでいます。

――月に10万以上!


演奏会に出ることもあるとか


あと、プログラミングも昔は目がすぐ痛くなってできませんでしたが今は書けるようになりましたし、通信制ですが大学の理工学部にも行っているんですよ。

――プログラミングや大学にも!

通信制とはいえ工学学位が取れるところで、2年次からの編入でした。夏休みはロボットを作りに行ったりと忙しいんですけどね。

――ロボット製作も!楽しそうですね。

ええ、目が疲れないってのは楽しいことが一杯ですね。もう本当に今は楽しくて。


KEK(高エネルギー加速器研究機構)の見学を楽しむ矢澤さん


――あ、それで他に試したことって何でしょうか?

あ、そうでした。せっかくなので5つをランキング形式で紹介していきましょうか。


目の疲れが緩和したものTOP5

――では、第5位は?

5位は「ムコスタ点眼液」です。


――第4位は?

4位はメガネですね。「モイスチャーメガネ」といってJINSさんから出ているやつですが、フレームのサイドに水のタンクが付いていて、目に水分補給をしてくれます。


JINS公式サイトより

――目に必要なのは「脂」と「ムチン」と「水」ですもんね。

ええ、ちなみに花粉対策用メガネでも少しは効果がありました。密閉性が高いので目の周りの湿度が高くなるんでしょうね。

――では、第3位は?

3位は先ほども紹介した「油」ですね。アマニ油もしくはエゴマ油を飲むこと。目は少しだけ楽になりましたが、目だけでなく健康にも良いのでオススメできますね。

――続いては?

2位が「あずきのチカラ」による温罨法ですね。電子レンジで温めてから目の上に乗せるとリラックスできるので、会社でお昼休みに目を休める時に使っています。


Amazonより


――へえ。やっぱり目を温めるのは効くんですね。

ただこれ、温めるとあずきの香りが充満するので、気になる人はあずき少なめ+セラミックの『ゆたぽん』という商品もオススメです。いずれも睡眠が深くなるので就寝前に使うのもオススメですよ。

――そうすると第一位は。

先ほど紹介した「ジクアス」ですね。僕にはとても効果的な薬でした。加えて番外編として目の体操があります。先ほどお話したマイボーム腺からは強く目を閉じると脂が多く分泌されるため、意識的にギュッと目を閉じるのはとても大事だと眼科医の先生にもオススメされました。

――なるほど、まとめると以下の通りですね。

1位 ジクアスの点眼
2位 あずきのチカラ(温罨法)
3位 アマニ油もしくはエゴマ油を飲む
4位 モイスチャーメガネ
5位 ムコスタの点眼
番外 目の体操


そうですね。他にも、網膜などにはルテイン+アントシアニンなども良いとされていますよね。こういったものを駆使して自分の体調を維持しています。とはいえ、あくまで個人の感想ですので、ご参考程度にしていただければ。

――まあ体の状態は人それぞれですからね。それにしても、ここにたどり着くまでに20年以上も掛かったわけですよね。

ええ、大変でしたね。ドライアイとかって主観ですから、「乾いている」だとか「痛い」という私自身の感覚を定量化できないんですよね。

――だから難しいわけですね。

ただ最近は自分の症状をしっかりと申告することで処方してくれる病院も増えてきたと聞きます。ぜひ目が疲れる人は、いつも行く眼科だけでなくセカンドオピニオンとして複数の眼科を試してみると良いかも知れませんね。

――今の時代は、目の疲れも改善しやすくなってきているわけですね。

そうですね。いまだにドライアイで勉強やプログラミングを諦めてしまう人も多いと聞きますけども、これからますます医学の進歩やテクノロジーで解決されていくことを期待しています。


Oculus GoでVRを楽しむ矢澤さん


なるほど、皆さんも参考になさってみてください。
矢澤さん、ありがとうございました!


取材+文:プラスドライブ

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