「ギャルも電子工作をする時代!」をスローガンに掲げ、2016年9月に活動開始。ギャル系のメイク&ファッションと光り輝く電子工作アイテムに身を包んだ異色の2人組ユニット。それが「ギャル電」です。(写真右:マオさん 写真左:キョウコさん)
「デコトラキャップ」や「光る大五郎」といった個性的なアイテムを制作しては、各種クラブイベントやカンファレンス、ワークショップなどに出演。その認知度を上げ続けています。
今だから正直に言いますが、ギャルに耐性のない筆者はインタビュー前「ギャル電、もしかしたら怖い人たちなんじゃ……」とビビっていました。しかし、インタビューを通じて見えてきたのは、真っ直ぐに「楽しい電子工作」を追い求める純粋な2人の姿だったのです。
ギャルに憧れ、タイから日本に移住してきた
――マオさんは、幼い頃からギャルへの憧れがあったそうですね。
マオ:そうなんです。5歳のときから「ギャルになりたい」と考えてました。その頃はガングロの全盛期で、ギャル雑誌の『egg』とか読みながら「マジ格好いい」と思ってたんですよ。
その後、家庭の事情で9歳から18歳までタイに移住したんですけど、その期間もずっと日本のギャルの情報を追ってましたね。インターネットやSNSを観たり。あとはタイに日本の色々なカルチャーが紹介されている雑誌があったので、それを読んだりして。
キョウコ:日本オタクみたいになってたんだよね(笑)。
マオ:そうそう(笑)。タイにいたからこそ、逆に日本文化の良さがすごくわかってきて。
――現在は日本の大学に通っているそうですが、それはやはり日本への憧れがあったから?
マオ:そうですね。「絶対にいつかは日本に行きたい」と思ってたので、日本の大学を受験して日本に戻ってきたって感じです。
――大学では、理系学科に所属してプログラミングを学んでいるそうですね。
マオ:はい。これからITって間違いなく重要になってくるし、プログラミングができれば色々なものがつくれるし。すごく可能性があるじゃないですか。それが「面白そうだな」って考えたのが、理系学科に入った理由ですね。
「いいギャルはおらんかい」と、会う人会う人に言い続けていた
――ギャル電のコンセプトはキョウコさんが考えたそうですが、そもそもなぜこのアイデアを思いついたんですか?
キョウコ:順を追って話していくと、私は地方出身で、もともと東京に対して「きっと、ぶっ飛んだ人がいっぱいいる街なんだろうな」ってイメージを持っていたんですよ。
でも、上京してきたらそんなことなくて、めっちゃがっかりしたんです。「すごい髪形でヤバいメイクしたヴィジュアル系のお兄さんが街をうろうろしてるのかと思ったら、いない!」みたいな(笑)。
マオ:すごいわかる! みんな格好が大人しいんですよね。私はギャルに憧れて東京に来たのに、ギャルって本当に少なくなっちゃってるんですよ。渋谷とかに行ってみても全然見かけない(笑)。
――(笑)。マオさんやキョウコさんのイメージしていた東京は、もっと個性的だったわけですね。
キョウコ:そう。だから、「私の思っていた東京はこうじゃない! みんなもっと派手なことやったら面白いのに」と思うようになったんです。
――その考えが「ギャル×電子工作」というアイデアに結びついたのはどうしてですか?
キョウコ:アイデアのベースになったのは、Webメディアを運営した経験ですね。
私は一時期、Webメディアの編集者・ライターをやっていて、そのメディアが「ちょっとワルなやつが読むテクノロジー系メディア」みたいなコンセプトだったんです。だから、テクノロジー系メディアなのに女の子のグラビアとかが掲載されていて。
――コンセプトが斬新すぎる(笑)。
キョウコ:しかも、よくある「男性の目から見た、可愛らしい女の子」みたいなグラビアじゃなく、「強い女は最高だ!!!」みたいな写真が掲載されてたから超トガってたんですよ(笑)。
そのメディアを運営していくうちに、「『強い女×テクノロジー』っていうコンセプトは、すごくいいな」って感じて。自分でもそういう新しいカルチャーを生み出したいと思うようになったんです。
――なるほど。それがギャル電の元になったわけですね。
キョウコ:そう。それで、「ギャルが電子工作する世の中がきっと来る」って信じて、飲み会とかで知り合いに会っては「いいギャルはおらんかい」って言い続けてたんですよ。
――完全にやばい人だ(笑)。
キョウコ:そしたら、あるとき友だちから「ギャルで、プログラミングもやってる子がいるよ」って紹介してもらえたんです。それがマオで。
マオ:そうなんです。それがきっかけでしたね。最初はSkypeで「はじめましてー」ってあいさつして。
――募集要項にピッタリな人がいたわけですね。
マオ:キョウコさんとは不思議とヴァイブス(ノリやフィーリング)が合って、一緒に話すのがすごい楽しかったんです。深夜に企画ミーティングしながらゲラゲラ笑って、気がついたら何時間も経ってたりします(笑)。
キョウコ:2人で一緒にアイデアを考えてると、謎のハイテンションになってきます。いい感じです。ホントに。
4リットルの大五郎(焼酎)を持った強めのギャル@渋谷
――「光る電子工作」を題材にするようになったのはどうしてですか?
マオ&キョウコ:クラブで光ると、めっちゃモテるからです!
――(笑)。お2人が開発したものの中でも「光る大五郎(焼酎)」は非常に話題になりました。開発エピソードをぜひ聞かせてください。
▲これが「光る大五郎」。インパクトがとにかくヤバい。画像はdotstudioの公式ブログ(https://dotstud.io/blog/gyaruden-party-people-daigoro/)より。
キョウコ:ある日渋谷を歩いていたら、すごい強めのギャルを見かけたんですよ。タンクトップにデニムのミニスカートで、隣にはタトゥーを入れた彼氏がいて、みたいな。
そのギャルがセンター街の真ん中で電話をしていて、4リットルの大五郎を持っていたんです。すごいサグい(ワルっぽい雰囲気)じゃないですか。なんで大五郎持ち歩いてるんだ、って思って。
▲こういう感じだったらしい。画像はdotstudioの公式ブログ(https://dotstud.io/blog/gyaruden-party-people-daigoro/)より。
――確かにワルそうですね。
キョウコ:しかも大五郎が半分減ってる。
――それは相当なワルだな。
キョウコ:その後、ギャルが電話で「マジで? 今から行くから」って言って、大五郎を手に持ってどこかに行ったんです。それを見て、すごい格好いいと思ったんですよ。「大五郎を手に持ってるギャル格好いい!」みたいな。
そこから「大五郎を光らせたら、絶対にもっと格好いい!!」って考えて、LEDを取りつけました。いい感じの色になって、めちゃくちゃ最高でしたね。それをパーティに持っていきました。
――パーティに持って行った感想は?
キョウコ:4リットルの大五郎、すごい重たい。
――それはそうでしょうね。
キョウコ:あと、盛り上がって飲みすぎたからあんまり記憶がない。
――色々とダメですねそれは……。
コードはコピペでもいい。まずは、ものづくりを楽しめ!
――「楽しみたい」という気持ちが、ユニークなプロダクトを生み出す原動力になっているんですね。
マオ:光る大五郎に限らずなんですけど、工作を始める最初のモチベーションって「なんか面白いかも」とか「モテるかも」みたいな軽い気持ちで全然いいと思うんです。必ずしも、ちゃんとしたものを開発しなくてもいいと思っていて。
みんな、趣味で電子工作をするときに「クオリティの高いものをつくらないと」って考えすぎている気がする。それだと堅苦しくなるし、つまんないじゃないですか。
キョウコ:実は、私たちが被っている光るサンバイザーも、部品をボンドと両面テープで貼りつけてるだけなんですよ。だから、よく外れるし、「なんだ、その取りつけ方は」って他の人からよく言われます(笑)。
でも、全然それでいいと思ってます。自分たちの手の届く範囲で、自分たちが楽しいと感じるところからやっていけば。それがきっかけで電子工作に興味を持てたら、徐々に色んなことに挑戦していけばいいと思う。
――肩の力を抜いてやればいいわけですね。プログラミング未経験の方が電子工作に取りくむ際、まずは何から手をつけたらいいと思いますか?
マオ:最初はサンプルコードを全部コピペで大丈夫。別にオリジナリティとかなくていい。はじめからちゃんとコーディングしようとするから、みんな挫折しちゃうんですよ。
だからギャル電は、自分たちが書いたコードをコピペしてもらえるように、ブログにコードを全部公開してます。なんなら、電子工作に必要な材料も全部書いてあるし。
▲このとおり、ギャル電が制作したソースコードはWeb上に公開されており、自由に利用できる。dotstudioの公式ブログ(https://dotstud.io/blog/gyaruden-party-people-daigoro/)より引用。
キョウコ:「材料揃えてコードをコピペしたら動いた。ヤバい!!!」っていうシンプルな楽しさが大事。そのエモさ(感情が高ぶること)を経験するから、ものづくりが面白くなってくるんだと思う。
――ものづくりを“楽しむこと”の大切さって、意外と多くの人が見失っているかもしれないですね。
キョウコ:そう。だから私たちは、真面目で堅苦しいものよりも、あったらワクワクするものをつくっていきたいです。
他の誰かのためとかじゃなく、自分たちが「欲しい」と思うから。テンションが上がるから。そんなモチベーションでこれからも電子工作をやっていきたいですね。
マオ:「モテる」「強い」「楽しい」「ウケる」みたいな。これこそがギャル電のすべてです(笑)。
――最後は非常に“らしい”感じの締めになりましたね(笑)。今回はとてもユニークなインタビューをありがとうございました!
取材協力:ギャル電、dotstudio株式会社