こんにちは、ヨッピーです。セイウチのチ〇コの骨を片手に失礼します。
っていうか、チ〇コに骨って珍しくない……?
「そもそも、チ〇コに骨がない動物の方が珍しいんですよ」と語るのが、こちらの骨オヤジさん。
見た目が怖いこの方ですが、何者かというと……、
じゃん!
あちこちで話題になっていた「ケンタッキーの骨で作ったキングギドラ」の作者さんなのです。
スカイツリーもあるよ!
これらのキングギドラやスカイツリーはテレビの企画に協力して作ったものですが、普段は骨を使ったアクセサリーなんかを制作しているそうです。
そんなわけで本日は、骨オヤジさんのご自宅兼作業場にお邪魔しています。
そもそもなんで「骨」なの? どうやって作るの? など、いろいろと聞いてみたいと思います!
なぜ「骨」なのか?
こちらが骨オヤジさんの作業スペース。
黒魔術師の家みたい。
まあ、いろんな骨がありますからね。
そもそも、材料となる骨ってどこで手に入れるんですか?
知り合いの猟師が送ってくれるんですよ。それをこちらで加工するようなイメージですね。もちろん、骨を取るためにわざわざ殺すようなことはしません。
獲って間もない動物の骨だと油が抜けきっていなかったりするので、こうやって干して乾燥させるんですね。そうするときれいな白色になります。
へーーーー。でも、こう言っちゃなんですが、なんで「骨」を使って作ろうと思ったんですか?
元々は、竹谷隆之さんという造形作家のファンだったんですよ。これがその竹谷さんの作品集なんですけど。
おおお! 何これめちゃくちゃカッコいい……!
でしょう。その分野では有名な方で、世界中にファンがいます。竹谷さんも骨が好きで、こういうミニチュアを作る時に材料として骨を使うんです。それがすごく格好よくて美しいので、僕も骨に興味を持ち始めました。ちなみに、竹谷さんはシン・ゴジラの造形も手掛けた人で、その造形のための骨を僕が竹谷さんに提供したので、『シン・ゴジラ』の映画のエンドロールに僕の名前も載せていただきました。
へーー! いろんな人がいるんですね……!
そうなんです。骨好きの人って意外といるんですよ。僕は造形作品から入った珍しいパターンなんですが、大学で生き物の研究をしている人なんかには多いみたいです。動物の骨格標本を集めている人とか。
これは以前に依頼されて作った、「ツチノコの骨格標本」。ツチノコが実在したらこんな感じだろうな、という想像をもとに作ったそうだ。
めちゃくちゃ雑な質問で申し訳ないんですけど、骨の何がそんなにいいんですか……?
ちょっとイラッとした骨オヤジさん。
たとえばね、これを見ていただきたいんですけど……。
少しわかりづらいかもしれませんが、この骨って一度関節が潰れてるんですよ。でも、それが治ってくっついてるのが見て取れるんですね。野生動物が足の骨を折ってしまったら天敵から逃げられなくなって、捕食される運命にあるわけじゃないですか。でも、この骨の持ち主は少なくとも、関節が潰れたまま骨がくっつくところまで自然の中で必死に生き抜いた。それがこの骨から読み取れるんですよ。「生命ってすごいな~!」って思いませんか?
ふーむ。
だから、骨は生命の結晶だと思うんですよ。それに、骨って進化の過程でどんどん形が変わって、その環境に最適化したわけですから、言わば究極の機能美です。だから僕、骨は進化の過程と生命の結晶だと思ってます。
なるほど、わからん。
制作にかかる期間と費用の話
見せていただいた熊のツメ
めちゃくちゃ硬い!
こうやって骨をきれいな状態にするのって、やっぱり難しいんですよね?
そうですね。素材の準備から組み上げにいたるまで、すべて経験と知識がモノを言います。技術も必要です。
そういえば、前にTwitterでなんか怒ってましたよね。
ケンタギドラの件で
— 骨オヤジ (@honeoyaji) 2016年10月10日
「もう一度作って貰ってその過程を逆再生にしてクイズにしたい」
と言ったテレビの依頼が来たが、制作費が1万円とゆうふざけた、製作者をバカにしすぎた価格を行ってきたので断った。
「ケンタギドラ」の制作依頼をしてきたテレビ企画会社の過去作った番組を見たら「ありえない衝撃映像」系や、過去には誰でも知ってる超有名番組を作成してる会社だった。
— 骨オヤジ (@honeoyaji) 2016年10月10日
そんな会社が1万円で物を作らせようとしてたのか。
俺の技術はそんなもんか。
悔しくて涙が出る。
いやー、そうなんですよ。お恥ずかしい。
あのキングギドラ、もちろん作るのはめちゃくちゃ大変なんでしょうけど、具体的にはどれくらいの日数がかかるんですかね?
そうですね。まず材料の骨をきれいな状態にするのに1週間、その骨を組み上げるのに5日って感じで、合計2週間近くはかかると思います。
それで制作費1万円だと、日当1,000円にもならないですね。怒って当然だと思いますよ!
ただ、あのあと制作会社の方から丁寧なお詫びのメールもいただいたので「言い過ぎちゃったな……」って反省しました。ちょうどいろいろあって落ち込んでる時だったので……。
いろいろって?
好きな女性にフラれたんです。
知るか!
骨オヤジさんの作品群。こうやって見ると確かにカッコいい!
ホントね、結構大変なことも多いんですよ。以前、材料になる骨をオークションで海外から仕入れようとしたら、その中にげっ歯類が混ざっていて、その肉が付着していたんです。検疫の問題で、げっ歯類は肉がついていると輸入できないので、税関と検閲局が立ち合いのもとで処分させられました。
そんな取り決めがあるのか……!
元々は生き物だから「面倒くさいし、じゃあ全部いらないわ」とはできないんですよ。生命に対する筋は通したいなと思っているので。俺がお前の姿をきれいに残してやるからな!っていう。動物からしたら余計なお世話かもしれませんけど……。
ちなみに、愛好家のお友達も多いんですか?
骨作品の愛好家ではありませんが、ゲームのキャラクターデザインをやってる知人が「骨格を知りたい」とか「皮膚の質感を知りたい」と言って、作品を借りに来たりしますよ。僕もキャラクターの造形は大好きなので、そういうのが好きな友人は多いですね。
このカレンダーに書いてあるのは、骨を組み立てるスケジュールですか?
いや、それはダイエットの記録です。恥ずかしいから撮らないでください!
すいません、もう撮っちゃいました。
趣味を仕事にするということ
ほかに大変なのは、息抜きができないことですね。映画を見るのも好きなんですが、出てくるキャラクターの造形が気になっちゃうんですよ。「あれはどうなってるのかな?」って。家で作業してなくても、なんだかんだで骨のことばっかり考えていますね。造形をやっている知人にそのことを話したら、「好きなことを仕事にしちゃったらもうしょうがないよな!」って。
あー、それわかります! 僕も「のんびり旅にでも出るか」って思うんですけど、「どうせ旅に出るなら、なんかネタになりそうな所にしよう」ってなって、「ここめっちゃいい所だから記事1本書こう」ってなって、最終的には「記事にするならあれもこれも入れよう」ってなって、旅先なのに取材続きで全然息を抜く暇がないっていう。まあ、それはそれで幸せなことなんじゃないですかね?
うーん、本当に幸せなのかなぁ。好きな人にもフラれたし……。
それは知りませんよ。
なぜかお土産に骨を1本いただきました。
さあ、そんなわけで「骨の世界」はいかがだったでしょうか!
世の中には驚くべき分野に情熱を注いている人がいて、その道を追求していくうちにいろんな技術を身につけていくんだなと思いました!
骨オヤジさんみたいに「好き」を突き詰めると、その技術でお金を稼げるようになるかもしれません!
みなさんもそれぞれの世界でがんばっちくりぃ~~~!
【取材・文】
ヨッピー + ノオト
ヨッピー
フリーライター。平日毎日更新のおばかサイト「オモコロ」にて体を張った実験記事を執筆。ほかにも「ジモコロ」「トゥギャッチ」などで連載中。ブログ「ヨッピーのブログ(仮)」 TwitterID「@yoppymodel」