【エンビジ!】 この時代に働くうえで心得ておくべきこと

※この「エンビジ!」では、エンジニアに役立つであろうビジネス書をご紹介しつつ、著者の方にもお話を聞いていきます。



まもなく4月を迎え、新しい組織や、新しい役職、新しい会社で働く人も多いのではないでしょうか。そんな皆様に、混沌とするこれからの時代に向けて“働くうえで心得ておくべき仕事の基本”について、改めて学びなおせる書籍をご紹介したいと思います。

ご紹介するのは、総合法令出版の「心得シリーズ」です。


経営者から入社1年目にいたるまで、重要な『心得』がまとめられています。このシリーズの中から、特に多くの方に該当する、「課長」「3年目」「1年目」の3冊からポイントを抜粋しつつ解説していきたいと思います。


課長はイノベーションせよ

まずは『課長の心得』からです。課長といえば、ある程度の経験値に伴って部下も数名抱え、マネージメントなどで忙しくなる役職でしょう。

この本では、そんな課長にこそ「イノベーションが重要だ」と説きます。


「課長として、ときに会社全体を巻き込んで、自部門でイノベーションをつくり出す仕組みや雰囲気づくりに取り組むべき」 ~P145より抜粋~




会社の中での経験値が積みあがってくると、どうしても合理的な判断をするようになります。そうすると、役員など上からイノベーションを求められても、そういった動きをすることができなくなるといいます。

この本にも書いてあるのですが、これは『イノベーションのジレンマ』と呼ばれるものです。

ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授による理論なのですが、「合理的に判断すればするほど破壊的イノベーションへの取り組みが遅れてしまう」という動きが世界中で起きているのです。

『イノベーションのジレンマ』は1997年に発売された書籍で詳しく書かれていますので、興味のある方はこちらのYouTuberの解説動画をご覧ください。




簡単に表現するなら、「年を重ねるごとに安定思考になるのではなく、課長自らも失敗を恐れずに攻める姿勢を持つべき」ということですね。ぜひとも肝に銘じておきましょう。


入社3年目には「強み」を理解しているべき

そして次は、「入社3年目」です。
入社3年目というと、仕事を一通り覚えて次のステップへ向かうような年次ですよね。

この本では、そんな3年目の人たちは「自分の“強み”を理解しているべきだ」と書かれています。


ある程度の仕事経験を重ねると、多くの人は「自分の弱み」にフォーカスしてしまうといいます。
「俺は○○が苦手だなあ…」「私ってなんでこんなに○○ができないのかしら」という具合です。

しかしこの本では、「弱みを改善するのではなく強みを活かそう」と主張されています。そして、その強みも弱みも本人が思っているものではなく、他人のほうが理解しているというのです。

「強みも弱みも自分ではなく相手が相対的に決めるもの」
~P298より抜粋~




確かに自分では当たり前のように思っていることでも、周囲からすると「すごいね!」「よくそんなこと簡単にできるね!」ということは結構よくあります。それこそが強みだということですね。

ですから、3年目は「自分の強みは何なのか」を周囲との対話の中で明確にし、そこに注力をして磨いていくべきなのではないでしょうか。


入社1年目は「長期的な目標なんて立てるな」

さて、最後は「入社1年目」です。
入社1年目といえば、これからの仕事に希望を抱いて目をキラキラさせている人が多いかも知れません。

そんな1年目の人に対し、この本では「長期的な目標なんて立てるな」と書いてあります。

「先輩や上司から「きちんとしたキャリアプランを立てていけ」などと言われるかも知れませんが、鵜呑みにしなくて良い」 ~P292より抜粋~




これはどういうことなのでしょうか。
この本を書いた著者の原マサヒコさんに直接お話を伺うことにしました。

――こんにちは、よろしくお願いします。

はい、よろしくお願いします。『入社1年目の心得』を書きました、原マサヒコです。


――原さんといえば、以前『トヨタで学んだ 動線思考』という本の際にもご登場いただきましたが、『入社1年目の心得』も出されているんですね。

そうですね、こちらは最新刊です。今回は、これからの時代を生きる入社1年目の皆さんに向けて、心得ておいてほしいことをまとめました。

――その中に「長期的な目標なんて立てるな」と書いてあるんですが、これはどういう意図なんでしょうか?

はい、学生だった皆さんは大学4年間でしっかりと授業に出て、論文を書いて、就活をして、と目標を立ててこられたかも知れません。しかし、ビジネスの世界では何が起きるのか分からないんですね。

――確かに、予想もしないことが次々と起こりますねえ。

大企業であっても潰れてしまったり、海外企業に買収されてしまったり、思いもよらないことが起きるのが常なのです。

――今まさに世界中で猛威を振るうコロナウイルスもそうですね。

ええ、そんな世界で仕事をしていく中で「5年後にこれをやります」などと言っても、その通りに出来る可能性はとても低いものです。ですから、その目標が達成できないからといってあなたのせいではないかも知れませんし、固執してしまってもいけません。

――そうか、自ら立てたキャリアプランに縛られてしまうわけですね。

そうです。世の中が大きく変化しているのに、「せっかく立てた目標なんだから達成しなければ……」などと意地になって、方向転換ができなくなってしまう人が多いのです。

――だから長期的な計画を立てても意味がない、と。

はい。私自身もそうでした。いくつかの業界で仕事をしてきましたが、それは入社1年目の時には想像もしていませんでしたし、こうして本を書いていたり、全国で講演活動をしたり、全く考えてもいないことを今なおやっています。

――そうなんですね。

社会に目を向けても、昔だったら想像もつかないような職業もたくさん生まれていますよね。そんな状況を考えてみても、「5年後のプランをしっかり立てろ」などというアドバイスは無責任すぎて言えませんよ。


――では、若い人にアドバイスをするとしたら何と言っているんですか?

「自分を取り巻く環境の変化を読みつつ、目の前の仕事に必死になっていれば良い」ということはよく言っています。

――なるほど。まずは目の前に必死になれ、と。

ええ、無理に5年後なんて見通そうとする必要はありません。将来が不確実性で溢れている以上は、長期的な目標を立てるのではなくて、むしろ目の前の短期目標を絶え間なくクリアしていくことです。


「他にいっても通用するか」を意識せよ

――長期的ではなく、短期目標をクリアしていけと。

あと、どんな仕事をされるにしても、「これは他にいっても通用することか?」という意識を持っておくべきです。

――「他」というのは他社とか他業界ってことですか?

そうです。仕事のなかには「自社でしか通用しないやり方」と「他業界でも通用する仕事のやり方」があります。それをしっかり見極めながら、どういったスキルに注力をするべきなのかを意識し続けてもらいたいものです。

――目の前の仕事に必死に取り組みながらも、他にいっても通用することかどうかを意識する。なるほどなあ。

そんなことを頭に置きながら全力で仕事に取り組んでいただきたいですね。


ということで、この時期に新たな気持ちで仕事に取り組まれる皆さんは、ぜひこの「心得」シリーズを手に取ってみてはいかがでしょうか。

今回お話を伺った原さんの『入社1年目の心得』については、入社1年目に限らずベテランのエンジニアでも自分の仕事の方向性を見つめ直すことができる機会になるかと思います。


「入社1年目の心得」(総合法令出版)
https://www.amazon.co.jp/dp/4862807364

原さん、ありがとうございました!



取材協力:総合法令出版
取材+文:プラスドライブ

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