Apple Watchの登場により、近年スマートウォッチへの注目が集まっています。非常に未来的で洗練されたデバイスで、私たちの生活を変えうる可能性を秘めたテクノロジーのかたまりです。誰しもがその革新性に感心したことでしょう。
しかし、同じ発想で作られた腕時計型デバイスは、実は33年も前に発売されていたことはご存知ですか?それはいわばスマートウォッチの原型といえるものなのです。
今回はApple Watchのルーツといえる製品を紹介しつつ、腕時計型デバイスの開発の歴史を当時のカタログを元に振り返っていきます。
Index
LC-GAME WATCHMAN ウォッチマン(TOMY/1982年)
1982年に発売されたTOMYの「ウォッチマン」は、ゲーム付きのアラーム機能付きのデジタル腕時計です。腕時計1つにつきゲーム1タイトルが入っていて、価格も手頃な子ども向けの製品として発売されました。ゲームタイトルは、ボタンひとつで遊べるアクションゲームやスポーツゲームがメインでした。
82年当時はインベーダーゲームやパックマンといったアーケードゲームが流行っており、さらにその1年後の83年には、任天堂が「ファミリーコンピューター」を発売しています。こうした時代背景のもと、発売されたのがこの「ウォッチマン」でした。
搭載されているテクノロジーは、当時の簡易的な携帯用ゲーム機のそれとほぼ同等。腕時計型デバイスというよりは、あくまでも子供向けのおもちゃの域を出ないものだったようです。しかし、時計でゲームをするというエンジニアの発想はスマートウォッチに通ずるものがありますね。
UC-2000(SEIKO/1984年)
1984年にはSEIKOから腕時計型デバイスの先駆けといえる、画期的な製品が発売されました。
それが「UC-2000」です。公式にはリストコンピュータという名称が使われており、腕に付けるコンピュータなので通称「腕コン」とも呼ばれていました。
このデバイスは腕時計部、テキストを入力できるキーボード部、プログラミングやスケジュール作成ができるコントローラー部に分かれており、腕時計は情報の閲覧に特化していました。
コントローラー部にはプログラミング言語「BASIC」で、グラフ作成や最小二乗法、フローチャート作成、在庫管理などができるようになっていました。また、腕時計部へのデータの転送はなんと無線転送方式になっているという画期的な機能を備えていました。
腕時計部の機能は、アドレス帳、メモ帳、スケジュールメモ、リマインダー機能などが備わっており、こうした機能があった「UC-2000」は、現在のスマートウォッチの原型といえるのではないでしょうか。いわばApple Watchの元ネタといってもいいガジェットが、31年前に販売されていたのです。
その4年後に登場!Ruputer(セイコーインスツルメンツ/1998年)
おお、すごーい。Windows7でもruputerの接続アプリ動いた♪( ´▽`) COMポートがちゃんとついてるあたりも奇跡的だな。 試しにアレックスのドット絵を転送して見た。 pic.twitter.com/MOoeb9xnHF
— もじゃ (@moja_sen) November 7, 2015
「UC-2000」が発売された14年後の1998年には、SEIKOのグループ会社セイコーインスツルメンツからさらなる進化を遂げた「腕コン」として「Ruputer」が発売されました。これは16bitCPUと独自OSを備え、「UC-2000」よりも機能が向上した製品。
Windows PCと接続し、独自ソフトで細かなファイル管理ができました。OSを備えたPCとの連携によって、データを管理するという、現在のモバイルデバイス全般に備わっている機能が、既にこの頃から実現していたということがわかります。
RC-20(EPSON/1984年)
SEIKOから「UC-2000」が発売された同年、EPSONからも腕時計型デバイスが発売されます。それが「RC-20」です。「コンピュータじゃないみたい。」をキャッチコピーにしたパンフレットにあるように、「UC-2000」に比べてスマートな印象がありますね。
「UC-2000」との最大の違いは、操作が基本的にスマートウォッチだけで完結することです。つまり、このデバイスだけでメモやスケジュールを入力することができるんです。
とはいえ、PCとつなげることでさらに機能を拡張することができるようになっていて、プログラミングで作った長期的なスケジュールや多彩なグラフィック、楽曲、ゲームなどを転送できるようになっています。そのうえ、タッチパネルで操作できるという現代にも通じた機能性を備えています。
ここまで多機能であれば、Apple Watchとなんら変わらないような気さえしてきます。しかも1984年当時からこうしたデバイスがあったことに驚きです。
33年もの間、進歩をつづけたテクノロジー。そこにはエンジニアの技術があってこそ
PCやモバイル端末の技術的進歩とともに、試行錯誤が繰り返されてきた腕時計型デバイス。こうしたエンジニアたちの挑戦の積み重ねが、Apple Watchなどの「スマートウォッチ」へとつながっていきます。
Apple Watchは2015年4月に発売されたばかりですが、スマートフォンの機能を腕時計に落とし込んだ最先端のスマートウォッチとして、すでに新しいIT体験を与えてくれています。
ここに搭載されている革新的な機能は、今回見てきたカタログに表現されているように、実は当時の「腕コン」に備わっていた機能をアップデートしたものが多いのです。エンジニアたちの新しいものを生み出そうとする技術への飽くなき挑戦が、私たちの暮らしを変えうる画期的なデバイスを生み出していくのですね。