※この「キニレポ!」は、“気になるテック系イベント”に参加して、ざっくりと概要をまとめてレポートしていく企画です。
これからの社会で僕たちは何をすべきなのか
こんにちは。レポーターのマサです。2018年9月29日~9月30日に六本木ヒルズで開催された「INNOVATION WORLD FESTA 2018」に参加してまいりました!
2日間、「イノベーション」というテーマでいくつものセッションがあったのですが、今回はこちらのセッションの概要をレポートさせていただきますね。
◆『新しい社会と経済の作り方』 田原総一朗さん/落合陽一さん/西野亮廣さん
なんとも豪華なメンバーですが、「田原総一朗さんからの質問」と「学生からの質問」に、落合陽一さんと西野亮廣さんが回答する、という展開でセッションは進んでいきました。
果たしてどのような質問が出て、どのような回答が飛び出したのか。 ご紹介していきましょう。
「学生はなぜ就職をするのか?」
学生さんが司会進行するのを遮って、田原総一朗さんからいきなりこんな質問が飛び出しました。
「学校を卒業したら就職をするのがずっと当たり前だが、今の時代そうでなくてもいいのではないか? なぜ学生は就職するんですか?」
ものすごく大きな問題提起ですね。
これに対して落合陽一さんは「なぜ就職するかって、それは“現状の分析ができていないから”ではないですかね?」と指摘します。
現状の分析ができていないとはどういうことか。
つまり、親の目を気にしたり、周りの目を気にしたり、なんとなく皆が就職活動をしているから自分もする、という感覚で就活をしている、と。本当に自分のやりたいことは何なのか、いま自分が置かれている社会的な状況や、その状況の中で何をやりたいのか、といったことが把握できていないからだということです。
そう、まずは個々が現状を分析し、自分自身が何をやりたいのかも分析し、いま自分は何をすれば良いのかを考えなければいけないのではないでしょうか。さすが、筑波大学の准教授でもある落合さんからの厳しい指摘に司会の学生さんも頷きます。
さらに落合さんは「今の時代、オンラインサロンやYoutube、クラウドファンディングなど就職しなくても食っていける仕組みなんてたくさんある」と続けました。これに関しては西野さんも「そうそう」と同調しながら、次のようなエピソードを話してくれました。
“20歳の時に深夜番組「はねるのトビラ」がスタートし、人気番組としてゴールデン枠に移ると25歳の段階で視聴率がトップになった。順風満帆のように見えた。でも、気が付くとスターにはなっていなかった。芸能界にはタモリさん、さんまさん、たけしさんなどが君臨し続けており、自分が走っていたレールには先人がたくさんいた。
自分がいくら頑張っても、その人たちを抜くことはない。「さんま御殿」に出て結果を出せば出すほど、さんまさんの寿命が延びる。これはファミコンで言えば良いソフトを作れば作るほど、任天堂が儲かる仕組みだ。この仕組みの上にずっとい続けて良いのかと考えはじめた。”
この辺りの話、ものすごく面白いのですが、実はこれから出る西野さんの最新刊『新世界』(2018年11月発売)の「はじめに」にも書かれており、既にブログで「はじめに」が全文公開されていますので興味ある方はそちらも併せてご覧ください。
https://ameblo.jp/nishino-akihiro/entry-12404125976.html
なぜ落合陽一が注目されるのか?
続いても田原総一朗さんから直球な質問が飛び出しました。
「なんで今の時代、落合陽一が注目されているんですか?」
自分のことを言われながらも、落合さんは冷静にこう答えます。
「僕は教授だから“教育”も語れるし、アーティストだから“アート”も語れるし、研究者だから“テクノロジー”も語れる。そういう立場の人がこれまでいなかったからではないでしょうか」と。
この部分、マサはとても重要な話だと思いました。これからの時代、ひとつの職種だけで一生やっていくなんてのは難しくて、多くの仕事を掛け合わせて唯一無二の存在になるべきなのではないか、と改めて唸りました。
調べてみるとこの辺りの話、落合さんの著書「日本再興戦略」にも書いてありましたので、補足がてら抜粋しつつ紹介させていただきましょう。
新しい時代に磨くべき能力とは何でしょうか。それは、ポートフォリオマネジメントと金融的投資能力です。(中略)一つの職業訓練を受けて永遠にその職業についていれば大丈夫という考え方はなくなるということです。これからの時代は、あらゆる人が、職業のポートフォリオを組みながら、暮らしていくことになります。(P204)
これからの時代は、複数の職業を持った上で、どの職業をコストセンター(コストがかさむ部門)とするか、どの職業をプロフィットセンター(利益を多く生む部門)とするかをマネジメントしないといけません。たとえば、区役所で働いている人が土木建設の会社で同時に働いてもいいわけです。(P205)
トップ研究者になるためには、時代感覚をつかむことが大事なのですが、日本人はこれがすごく苦手です。時代感覚をつかむ能力は、実は投資能力と近い。だからこそ、ポートフォリオマネジメントの能力に加えて、金融的投資能力が求められるのです。(P206)
落合さんはさらに「時代に合っていることも重要だ」と続けます。いま流行っていることを見ながら自分で考えて行動しているのだとも。時代を見ながら自ら手を動かすということが大事なポイントのようですね。
もしエンジニアの皆さんがこの話に自分を当てはめるとしたら何でしょうか。
何を語れる人になり、何と掛け合わせるべきなのか。どんなことで手を動かせばいいのか。じっくりと考えてみると良いかもしれませんね。
AIに使われるのではなく使う側に行くには?
続いても田原総一朗さんから。
「AIによって仕事はなくなるとよく言われるが、AIを使う側にまわるにはどうしたらいい?」という質問でしたが、落合さんは「AIによって仕事はなくなる」と言う部分についてこう答えます。
「確かに改札で切符を切ったりする人はいなくなりましたが、でもその人たちはいま違う仕事をやっているわけです。長期的に見れば配置が転換されるだけと考えます」
なるほど、日本はこれから少子高齢化していくのだから、それを前提としてテクノロジーで補いながら人間は配置転換をしていくものだと。
さらに、「AIを使う人になるには」という点については「どう使うかを考え続けるべきだ」と力強く答えられていました。さらに、そのためには「同じ業界の人たちだけで固まってはいけない」とも言います。
「同じ業界の中においては一緒にやってくれる仲間を作りつつ、別の業界の人たちと積極的に会って、“問題点”を聞いてくる。その問題点を、自分たちの分野で解決するにはどうしたらいいかと常に頭を使い続けると良い」と、そんなことを仰っていました。
これはエンジニアも同じでしょう。
エンジニア同士で集まってばかりいないで他の色々な業界の人たちと触れ、その業界での問題点を聞きながらそれはプログラミングでどう解決できるか、などを考えていくと良い刺激になるかもしれません。
これから先、生き残れるようになるには?
そして、もう少し具体的に「これから先、生き残れるようになるにはどうしたら良いか?」と田原総一朗さんが突っ込みます。これに対して西野さんは、「“個”を立たせるべきでしょうね」と答えられていました。
そして、実際の例として西野さんのオンラインサロンの話に展開していきます。
西野さんのオンラインサロンは今(2018年9月末時点)、1万1千人の会員がいるのだそうです。そのオンラインサロンに関して、こんな話をしてくれました。
ある時に大阪にいて「髪を切りたいな」と思い、オンラインサロンに「大阪で美容室やっている人います?」と聞いたら手が挙がった。
そして、お店に行って髪を切ってもらうと、美容師は自分のサロンの会員なので無駄な会話をせずに済み、とても居心地が良かった。そしてそれを機に、サロン会員がどこで誰が何をやっているかのマップを作っていった。
飲食店や整体院など様々な職種の人が登録しているが、そこで気付いたことがある。
今の時代、利用者側からすると、技術だったり味のレベルだったりというのは大差がない。「どの店か」よりも「誰がいる」が大事になるのではないか。
つまり、従来型の「店検索」ではなく、「人検索」になっているということだから、これからは顔が出ている人が売れていく時代になるのではないか。
では西野さん自身は具体的にどうしているかというと、収入の軸足を「広告費」から「ダイレクト課金」に移行しているということです。
西野さんのようなテレビタレントは収入の軸足が広告費つまりスポンサーであるため、嘘をつかなければならない、と。美味しくないものでもカメラの前で美味しいと言わなければならない。ウソを重ねれば、信用度は低くなる。これでは人気タレントと言うよりも“認知タレント”だ、と。
逆にファンを抱えている人は誠実で、できないことは「できない」とハッキリ言う。そうすると信用があるため、オンラインサロンやクラウドファンディングなどでもダイレクト課金してもらえる存在になるというのです。
この辺りの話は西野さんの著書「革命のファンファーレ」にも詳しく書いていますね。
・「好感度」と「信用」、「認知」と「人気」は、それぞれまったく別物だ。
・お金は信用を数値化したものであり、クラウドファンディングは信用をお金化するための装置だ。(P39)
この話も、自分自身に当てはめるとどういうことなのか、と考えてみると良いかもしれません。
もっと遊んだ方が良いでしょうか?
さて、学生さんからの質問です。
「社会に出ると遊べない印象がありますが、学生である今のうちにもっと遊んでおいたほうが良いでしょうか?」といういかにも学生さんらしい質問ですが、落合さんは「今も仕事が楽しいから遊びみたいなもんです」と笑いながら答えられていました。
確かに、マサの周りでも“仕事ができる人”というのは、遊びと仕事の境界線がなくなっているように見えます。遊んでいるかのように仕事を「おもしろい」と思いながら没頭することで、仕事も上手くいくというわけでしょう。
以前にホリエモンこと堀江貴文さんが書かれたベストセラー「多動力」でも、このような一節があります。
僕はそもそも「アイデアを見つけたい」「人脈を広げたい」なんていう頭でっかちな考えをもって日々を過ごしてはいない。おもしろい人たちとおもしろい時間を過ごす。その結果、偶然のようにアイデアが生まれ、仕事につながり、遊びにもつながる。1日24時間をできるだけ「ワクワクすること」だけで埋めるように努めている。(P220)
エンジニアの皆さんも是非、ワクワクする仕事をやっていきたいものですよね。
自分がやっていることを周囲に知ってもらう努力は必要でしょうか?
再び学生からの質問で、「自分がやっていることをなかなか周囲に知ってもらえません。知ってもらうための努力は必要でしょうか」というものがありました。
これに対して落合さんは「自分がやっていることをひたすら突き詰めていけばいい。そうやって突き抜けた存在になると、周囲が聞きに来るから」と答えます。
実際、落合さんは今でこそテレビにもたくさん出たり多くのメディアに取り上げられたりしていますが、自分がやっていることをひたすら突き詰めているだけだといいます。
そして、それでもかなり早い段階で堀江貴文さんが会いに来たのだとか。
もちろんSNSなどで発信することも大事だと思いますが、まずはニッチな分野でもいいから突き抜けた存在になる。そうすることで自然と知られていくようになる、ということですね。
ブラック部活(ブラック企業)にいる場合、どうしたら良いでしょうか?
最後も学生から「部活」についての質問がありました。朝早くから夜遅くまでトレーニングを続け、「先輩の言うことは絶対」という部活があるそうです。通称「ブラック部活」。辞めたいのに辞められないそうですが、どうしたら良いか、という質問でした。
これは社会人であれば「ブラック企業」に置き換えられるかと思いますが、西野さんは「自分の力で何とかできるはず」と言います。
具体的には、「辞めちゃえばいいのに辞められないのは不安があるからで、不安というのは『辞めてもやっていけるかどうか』ということだ」と。
確かに、ブラック企業で働いている場合には「辞めて次の職場が見つかるのだろうか」とか「収入が途絶えてしまって心配だ」といった点が不安になるのでしょう。
つまり、逆を言えば「会社を辞めてもやっていける体力や、お金を稼ぐ力、周囲からの信用力を普段から持っておくべきだ」ということなのだそう。
これらの力を蓄えておけば、今の会社がダメだと思っても「別を探せばいいや」となるし、自分の行動や決断に不安がなくなるというわけです。まずは自分の力を付けていくことが大事だということですね。
ということでセッションの一部をご紹介させていただきました。
短いセッションではありましたが、とても濃い時間でマサは大満足でした。
エンジニアの皆さんも、是非これからのAI時代を生き抜くための参考にしていただければと思います。
それではまた!
取材+文:プラスドライブ