テクノロジーで変わる私たちの日常!ウェアラブルアプリケーション「ウェアシスト」とは?

メガネ、腕時計、指輪など、身につけるものとインターネットを繋ぐ、「ウェアラブルデバイス」。GoogleグラスやAppleウォッチが有名な製品ですが、国内でもさまざまな企業がウェアラブル開発に取り組んでいます。

ウェアラブルデバイスには、パソコンやスマートフォンのように、ハード(本体)ソフト(OS・アプリケーション)という2つの要素があり、その2つがあってはじめて機能します。

その、ウェアラブル専用のアプリケーションを開発しているのが、神戸デジタル・ラボさま。神戸デジタル・ラボ(以下KDL)は、神戸初のデジタルコンテンツ・ネットワークシステムの専門会社として、情報システム開発・運用・保守サービスのほか、先端技術開発を行っている企業です。

先端技術の研究開発も行っており、ウェアラブルアプリケーション開発の一端も担っています。今回は、現在開発が進んでいるという「WearAssist(ウェアシスト)」について伺いました!

「ウェアラブル」がエンジニア心に火を点けた

kdl_1.jpg

ウェアシストは「日常のピンチからあなたを守る」がコンセプトのウェアラブルアプリケーションです。日常生活で起こる不便や危険を解消する機能を搭載しており、現時点で「同時通訳・3Dオブジェクト表示・方向・方角認識案内・メニュー認識・安否確認・バーチャル空間体験」という6つの機能を備えています。

開発がスタートしたのは今から3年前。Googleグラスが登場し、ウェアラブルへの関心が高まった時期に「自分たちの持つ技術で何かできないか?」を考え始めたのがきっかけだったといいます。

あるテレビ番組のウェアラブル特集がきっかけですね。その番組をチームメンバーの一人が見て、自分たちの技術で何かできないかを考えてみようということになったんです。発売直後だったGoogleグラスに触る機会もあり、AR・VR、位置情報、機械翻訳など自分たちの持っている技術を組み合わせて、ウェアラブルアプリケーションを作るというアイデアが生まれました」。

当初はエンジニア2人で開発がスタート。どのようなアプリを作るのか?という議論の中で、自分たちがやりたいこと、会社としての方向性など、さまざまな要因を組み合わせて「日常生活のピンチからあなたを守る」というコンセプトができたと岡田さん。

個人としても、会社としても、IT技術で介護・障がい者支援を行うということに関心を持っていました。そこにウェアラブルの波がきて、自分たちの技術とウェアラブルを組み合わせて、日常のさまざまな障害を解消できるアプリを作ろうということになったんです」。

ウェアシストには、KDLがこれまでに培った、さまざまなIT技術が使われているといいます。ウェアシスト開発はどのように進んでいったのか?また、開発過程にはどのような困難があったのでしょうか?

技術の組み合わせとハードウェアへの最適化

kdl_2.jpg

システム開発や大学や研究機関との共同研究など、これまでにさまざまな技術を蓄積していたKDL。開発メンバーが、言語解析等の開発に技術者として従事されていた経験があり、その経験を活かしてウェアシストの各種機能のベースを開発しているとのこと。それぞれの技術を組み合わせて、日常の不便・危険を解消する機能を作り上げていきました。

ウェアシストの6つの機能は、例えば位置情報とARを組み合わせたナビゲーションシステム、画像・文字認識、翻訳機能を使って、お店のメニューを自動翻訳、カロリー表示などをできるようにしたメニュー認識など、培った技術を組み合わせて作り上げたものです。技術と技術を組み合わせながら、ひとつひとつの機能を作っていきました」。

そんな開発過程において、もっとも難しかったのはハードとソフトの間にある性能のギャップ埋めることだったと岡田さん。

kdl_3.jpg

▲メガネに装着するタイプのウェアラブルデバイス。このようなデバイスで使うアプリケーションが「ウェアシスト」 (写真はテレパシージャパン社の「Telepathy walker」)

現在発売されているウェアラブルデバイスは、スマートフォンのような製品に比べ、一部の性能が劣る部分があるため、アプリでやりたいことがあっても、上手く実現できなかったんです。そんなハードとソフトの間にあるギャップを埋めるために、サーバーやクラウドを有効活用しました。ハード側ですべての処理ができないので、その負担を他の場所に分けていったんです」。

ソフト側からのアプローチで、アプリの機能をハードウェアに最適化。システム開発、ソフトウェア開発で培った技術力で、ハードとソフトのギャップを埋めていきました。また、ハードに依存しないことで、どのようなデバイスでもウェアシストを利用することができます。デバイスに左右されずに利用できるのは、ウェアシストの魅力のひとつだといえるでしょう。

ARを使ったナビゲーションシステムなど、一部の機能はすでに製品化しているものの、ウェアシスト全体では、まだ実証実験の最中。完全な製品化には至っていませんが、今後それぞれの機能をアップデートさせながら、ウェアシストをさらに進化させていくとのことです。

キーワードは「受動的」ウェアラブルの特徴を活かしたアプリケーションを

kdl_4.jpg

現時点で、最も注目されている機能は「翻訳機能」だと岡田さん。将来的には、日本語と英語など母国語同士の会話であっても、自然にコミュニケーションができるようになるといいます。この機能が実現すれば、外国人観光客が多い地域を中心に、レストラン、ショップ、コンビニ、駅などなど、さまざまな場所でウェアシストが使われるようになるのではないでしょうか。

翻訳機能を使うことで、お店に外国人がきても、スムーズにコミュニケーションを取ることができます。現時点では、まだまだ翻訳スピードが遅いので、人間の普通の会話についていくことはできません。音声を認識してから翻訳するまでにタイムラグがあるので、もっともっと翻訳のスピードを早めて、会話の邪魔にならないレベルまで持っていきたいですね」。

元々の体験を壊しては意味がない、体験にプラスアルファを加えるのがウェアラブルデバイスの役割」と語る岡田さん。今後は、新しい機能を追加するよりも、翻訳機能をはじめ、現在の機能を強化していくことに注力するといいます。

kdl_5.jpg

国内のウェアラブル業界では、ハードを開発する企業に対して、アプリケーションなどのソフトを開発する企業がまだまだ少ないのが現状とのこと。岡田さんは、「ウェアラブルが私たちに与える体験、その驚きや感動を、もっと多くの人に届ける努力をしていかなければならない」と今後の課題についても語ってくださいました。

デバイスもアプリもあるんだからスマホでよいのでは?という言葉が返ってきそうですが、実はスマホとウェアラブルは全然違うものなんです。自分で操作する能動的なスマホに対して、ウェアラブルは身につけるだけで、情報が流れてきたり、サービスを受けることができたり、スマホよりもずっと受動的なデバイスなんですよ。そういう、ウェアラブルならではの特徴をもっとウェアシストに反映させて、日常を変えるような体験をユーザーに届けたいですね」。

身につけるだけで、日常の不便・危険を解消し、異文化の壁すら乗り越える「ウェアシスト」。今後ウェアシスト、ウェアラブルがどのような進化を遂げるのか?今後もその躍進から目が離せません!

この記事が気に入ったらいいね!しよう

いいね!するとi:Engineerの最新情報をお届けします

プライバシーマーク