音楽やダンスによって構成されるライブパフォーマンスは、言葉の壁を越える世界の共通言語。
そうしたアーティストの世界観をステージや映像の中で表現するライブパフォーマンスは、テクノロジーの進化と共に大きく発展しています。
テクノロジーを取り入れ、表現の幅を広げたアーティストの功績は大きなものですが、アーティストの意志を具現化してきたエンジニアの技術も大きいといえます。
今回は、世界を驚愕させたライブパフォーマンスと、アーティストのステージを支える技術に注目。エンジニアにとって、鳥肌モノのパフォーマンスが続々登場します!
Index
「Perfume」の圧巻ライブパフォーマンス × ライゾマティックスの技術力
毎年3月にアメリカで開催される、クリエイティブの祭典「SXSW(サウスバイウェスト)」。
新進気鋭のパフォーマーが集う舞台で、「Perfume」のライブパフォーマンスは、世界をあっと驚かせました。
楽曲のすばらしさとダンスの美しさはもちろん、圧巻だったのは映像技術。
チームPerfumeの一員でもある、ライゾマティクスの真鍋大度氏が最新技術を使いこなし、実現したパフォーマンスです。
カメラが縦横無尽に動き回ったような映像の秘密は「センサー」と「AR(拡張現実)」。
スクリーンに搭載されたセンサーを大量のカメラで読み取り、スクリーンの位置に合わせて映像を写し出す最新の技術によるもの。
複雑なカメラワークは、AR技術を活用して、マーカーをつけた対象物に映像を追いつかせ、現実と仮想の世界を混ぜたような映像を実現しました。
Perfumeに対する評価はかねてより高いものでしたが、SXSWでの映像パフォーマンスが高く評価され、その評判はうなぎのぼりに!
音楽業界におけるエンジニアやクリエイターの重要性は今後ますます増えていくはずです!
出典:PerfumeのSXSW―真鍋大度とMIKIKOが語る舞台裏
「サカナクション」山口一郎のこだわり × 360度から音が聞こえる「バイノーラルサウンド」
日本発のアパレルブランド「アンリアレイジ(ANREALAGE)」が2015年9月に開催したファッションショーで、人気ロックバンド「サカナクション」の山口一郎がサウンドディレクターとして参画。
音と照明を使いこなした新感覚のファッションショーを実現。世界中から集った観客が大絶賛のパフォーマンスとなりました。
ファッションショーで使われた「バイノーラル」は注目を集めているサウンド技術です。
上記の動画で「バイノーラルサウンド」が詳細に説明されています。
人の頭部の形をしたダミーヘッドというマイクで音源を拾い、360度全方向から音が聞こえるようにしています。
近年注目されているバイノーラルサウンドですが、歴史は古く、1881年のパリ万博までさかのぼります。
山口一郎氏の取り組みにより、再び脚光を浴びるようになりました。
この動画を見ると、バイノーラルサウンドのすごさとサカナクションの魅力の両方を体感できるはずです。
技術者が作り上げた技術をアーティストが活用し、技術の素晴らしさが人々に伝わっていくというような流れが音楽業界では起こり続けています。
「初音ミク」の3Dライブ × 今をときめくVRテクノロジー
北海道のフューチャー・メディア・クリプトン社によって生み出されたVOCALOIDの「初音ミク」。
音楽表現以外にも、静止画に音と動きを組み合わせる「モーション・グラフィックス」や3Dモデリング技術と融合した、リアルな映像が続々と作り出されています。
中でも最も注目が熱いのは、VR(バーチャルリアリティ、仮想現実)やAR(オーグメンテッドリアリティ、拡張現実)と呼ばれる次世代技術とのコラボレーション。
映像世界に入り込み、現実と同じくらいリアルな映像美を体験することができます。
技術者の力により、2次元と3次元の境目が限りなく0に近づき始めています。
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今年中に知っておきたい!エンジニアが知るべき現代VRの基礎知識
奇想天外なMVが話題の「OK Go」× ホンダの次世代モビリティ「UNI-CUB」× ドローン
世界的に大人気のロックバンドOK Goの『I won’t let you down』のミュージックビデオは、「日本文化」をコンセプトに千葉県のロングウッドステーションで撮影され、冒頭にはPerfumeの3人が登場したことで日本でも話題になりました。
このビデオには今をときめかすテクノロジーが2つも使われています。
1つ目が本田技研工業の超小型モビリティ「UNI-CUB β」です。
2013年に発表され、「人々の新たな足」としての利用が望まれる、HONDAの一人用移動車。
一世を風靡したロボット「ASIMO」に代表されるヒューマノイドロボット研究から生まれたバランス制御技術が搭載されており、体重移動を行うだけで自由自在に動きまわることができます。
現在は実証実験中ですがOK Goが利用したことで、世界中から注目を浴びることになりました。
2つ目の技術は、ドローンによる空撮。
単にドローンを使って撮影しただけでなく、「ドローンおじさん」と呼ばれるメカニックが撮影用のドローンを作り上げ、上空700メートルからの撮影を可能にしました。
通常のドローンは構造上の問題や風の影響を受け、100メートルも飛ぶことができないので、ドローンおじさんのエンジニア魂が見てとれます。
日本のみなさん、見てくれてありがとう。このビデオは、日本以外では絶対に撮れなかったと思います。日本を選んで、本当によかった!http://t.co/eSAi2AgVjp pic.twitter.com/V7Y80incyV
— OK Go (@okgo) 2014, 10月 28
なお、OK Go側はクレジットに「ドローンおじさん達の名前を載せたかったそうですが、「俺は別にドローンの専門家じゃない、こういう仕事ばっかり来ちゃうと困る」という理由で断られたそう。
節々から作り手のこだわりが伝わってくる、鳥肌必須のミュージックビデオです。
ますます注目される音楽系エンジニアの存在
技術の力によって、表現の可能性を増し続けているライブパフォーマンス。
今後、音楽業界におけるエンジニアの存在感はますます高まり、人々を感動の渦に包み込むテクノロジーがどんどん生まれていくはずです。
職業としての「エンジニア」への期待度は、これから将来さらに増え続けることでしょう。