ここは新宿区・早稲田商店街。都心部にもほど近い好立地でありながら、どこか下町のような懐かしい雰囲気が特徴で、周辺に早稲田大学があることでも知られています。
▲早稲田商店街の街並み
▲早稲田大学の周辺には8つの商店街がある
そんな早稲田商店街で2018年1月、ある実証実験がスタートしました。その名は「スマート商店街」。テレビ通訳機能やQRコード決済サービスなどを使って、商店街の利用を活性化させるのが狙いです。
「4年前にアフリカのケニアを訪れた際、QRコード決済サービスを利用してキャッシュレス化されていたのを目の当たりにしたんです。心のどこかで『アフリカは遅れている』と思っていたんですが、逆に日本よりも最先端だったんです。大きなカルチャーショックを受けたこの体験をきっかけに、このプロジェクトを発案しました」とは、この取り組みの発起人でNIPPON Tablet株式会社のグループ創業者、高木純さん
▲高木純さん
「スマート商店街」実証実験とはどのようなものなのか?
高木さんに、このプロジェクトの具体的な内容や想いについて詳しくお聞きしました。
※NIPPON Tablet株式会社
「日本をキャッシュレス化する」をコンセプトに、さまざまな電子決済システムの導入を支援する「株式会社NIPPON PAY」の関連会社。防犯・防災・おもてなしの3つの「あったら安心・便利」を提供するタブレット端末を開発し、無料レンタル事業を全国展開している。
通訳機能とQRコード決済で昔ながらの商店街を変える
「スマート商店街」実証実験は、昔ながらの商店街にタブレット端末を導入し、お店を運営するのに必要な「通訳・決済・集客のデジタル化」を推し進めるものです。
今回の実験に用いられるタブレット端末には、『7ヶ国語テレビ通話機能』『QRコード決済サービス』『スタンプカード・クーポンカード発行機能』の3つが搭載されており、商店街での買い物がよりスマートになります。
高木さんによると早稲田商店街での実証実験を皮切りに、中小・個人商店はもちろん、キッチンカーやポップアップストアに至るまで、全国の20万店舗に無料で専用のタブレットを配布し、これら3つの最先端のサービスを利用してもらう予定とのこと。
まずは、『7ヶ国語テレビ通話機能』から、それぞれの機能の特徴や役割について伺いました。
『7ヶ国語テレビ通話機能』で外国人観光客との接客をスムーズに!
▲NIPPON Tabletが無料で配布するタブレット
環境省の発表によると、2017年にインバウンド消費がはじめて4兆円を超えただけでなく(※参照)、2020年には8兆円を目指すなど、いまの日本にとって無視できないのが外国人観光客の存在です。
しかし、突然、外国人観光客が店舗を訪れても、円滑なコミュニケーションができずに戸惑ってしまうことも珍しくありません。『7ヶ国語テレビ通話機能』は、外国語が話せない方でも安心して接客ができるように用意された機能です。
▲NTT テレビ通訳サービス説明CM ニッポンタブレット
「タブレットを起動して通訳してほしい言語を選択すると、専門のオペレーターに接続されます。このオペレーターが通訳をしてくれるので、言葉の壁がネックとなっていた外国人との接客がスムーズに行えます。英語や中国語はもちろん、韓国語、タイ語、ベトナム語、ポルトガル語、スペイン語の7ヶ国語に対応しており、さまざまな国籍の方に接客できます」
※【訪日外国人消費動向調査】平成29年年間値(速報)及び平成29年10-12月期の調査結果(速報)
http://www.mlit.go.jp/common/001217542.pdf
昔ながらの商店街で実現するスマートな「お支払い」とは?
▲スーパーマーケットをはじめ、4店舗が「スマート商店街」に参画
自分のスマホがお財布代わりになる『QRコード決済サービス』。銀行口座と紐づいたQRコードをスマホなどで提示するだけでショッピングができるこのシステムは、世界中で30億人以上の方が利用するなど、多くの国で普及しています。
QRコード決済サービスによるキャッシュレス化が進む海外に比べると、日本では紙幣や硬貨を使った買い物がまだまだスタンダード。コンビニなど利用できる場所は増えているものの、昔ながらの商店街ではまだまだ普及が遅れているのが現状です。
QRコード決済サービスは、増加し続ける外国人観光客との支払いギャップをなくし、より買い物を楽しんでもらうために用意された機能なのです。
「NIPPON Tabletが無料で配布しているタブレットは、世界で最もユーザー数の多い「WeChatPay」を含め、複数のQRコード決済サービスに対応しています。使い方は至って簡単で、店舗側でタブレットに購入金額を入力し、確認ボタンをタップしてカメラを起動後、お客様が提示するスマホのQRコードにかざせば決済は完了です。タブレットに初めて触れる方でも、安心して利用することができます。」
▲NIPPON PAY事業説明
今回の実証実験では、タブレットと合わせてカードリーダーも無料で配布。
クレジットでのお支払いにも対応することで、買い物をよりスムーズにします。
デジタル化で集客・顧客管理が簡単に!
3つめは、『スタンプカード・クーポンカード発行機能』。
この機能は、飲食店などで配られるスタンプカードやクーポンの役割を果たし、店舗の集客や顧客管理がより簡単になるシステムです。
「クーポンやスタンプカードは、財布に入れているとかさばりますし、提示を求められたときにどこにあるのかわからなくなるなど、不便な一面があります。また、お客様がカードを探しているうちにレジが渋滞したり、顧客情報の管理がめんどうだったり、印刷費がかさんだり、店舗側としてもトラブルの原因になるんです。カードをデジタル化することで、これらの多くの課題を解消することができます」
QRコードを読み込むだけでスマホにお店のカードが取り込まれます。さらにデジタル化されたカードには、お店の情報やお知らせ、クーポンを受け取る機能も搭載されています。
また、顧客管理機能を備えているのも魅力のひとつです。
「スタンプカードをデジタル化することで顧客の来店履歴を残すことができ、お客様に合わせたクーポンやキャンペーン情報を送付できます。これによって、より効率的な集客・販促活動が実現します」
▲ソシカ アプリCM ニッポンタブレット
これだけでも充実すぎる内容ですが、2018年の3月からは外国人観光客向けに免税手続きサービスを追加。通常、一人あたり10分〜15分ほど要していた免税手続きを、わずか1分に短縮できます。
高木さんによると、さらに便利な機能を追加予定とのこと。「スマート商店街」の実証実験は、どのように進んでいくのでしょうか?最後に、今後の展望について伺いました。
日本の経済成長を促進するために
今後はタブレットやカードリーダーにくわえ、Webカメラも無料で配布予定。店舗に設置することで、強盗などの金銭的被害から守るだけでなく、来店客数の自動カウントや年齢や性別の自動判断が可能になります。
「これは店舗側の了承を得た上になりますが、これらのデータが先ほどの決済のデータとリンクすると、そのデータが担保となって銀行からの融資が受けやすくなるでしょう。さらに、店舗の経営改善をしたい場合、このデータをもとにすれば改善内容をより明確にすることができるなどのメリットがありますね。」
Webカメラを無料で配布するかどうかは未定。極力、無料で配布し、デジタル化の魅力をより多くの方々に実感していただけるようにしたいとのこと。
さらに、2018年4月を目処に、防災や防犯に役立つ機能も盛り込んでいくと高木さん。地震などの際に必要な情報がいち早くタブレットに届くだけでなく、避難が必要な際は、適切な避難所へ誘導してくれる機能の搭載も予定しています。
これらの機能によって、工事で景観を大きく損なうことも特殊な知識を習得する苦労もなく、昔ながらの商店街を次世代の「スマート商店街」へと進化させます。
早稲田商店街での実証実験を皮切りに、実績を積み重ね、2020年までに日本全国20万店舗に、無料でタブレットを設置することがこの取り組みの目標。そして、最終的には日本をキャッシュレス化させるだけでなく、その結果、国家運営コストを激減させ、日本の経済成長を促進させたいと高木さん。
技術やシステムはすでに完成しているため、後は利用シーンを増やし利用者が慣れていくだけ。
デジタル化・キャッシュレス化の利便性にもっと私たちが気づいていけば、高木さんのいう日本のキャッシュレス化、コスト削減による経済成長の促進は、そう遠くない未来に実現するのではないでしょうか?