2016年は、VR(仮想現実)元年と言われています。
VRは、Oculus Riftやハコスコなど、様々なデバイスの登場により映像作品やゲームのリリースはもちろん、企業のプロモーションなどにも使用されるなど、広く注目を集めている技術です。
「VRって最近よく聞くけど、何がすごいの?」「そもそもVRってなに?」「一度どんなものか観てみたい」という人も多いと思います。
そんな人のために、まずVRに可能性を感じられる動画を2つ紹介します。
1本目は『攻殻機動隊 新劇場版』のティザームービー。通常のムービーとは違い画面内でマウス操作をすることで、自分が観たい場所を観ることができる仮想現実動画。
まるで、自分が映像の世界に入ったような感覚になるはずです。
2本目は、ゲームをVRで体験している動画。ゲームのプレイ画面を観ながら、床が動きゲームのキャラクターと連動して動くため、本当にキャラクターになったようにゲームを体感することができます。
従来のようにモニター越しにプレイするわけではなく、動きなどをリアルに体感することができます。
もちろん、動画で観るのとVRを実際に体験するのとでは、衝撃度は違いますが、技術的なすごさや面白さは伝わってくるはずです。
VRに関して、数多くの関係者が「2016年はVR元年になる」と語っていますが、来るVR元年に向け、エンジニアだからこそ知っておきたいVRの歴史を振り返ってみましょう。
Index
そもそもVRって何? 2枚のスライドで分かるVRの歴史
VRは最新の技術に思われてしまいがちですが、実際歴史は古く、起源は1956年まで遡ります。当初はアーケードゲームの「Sensorama」用に開発が進められていましたが、技術の高さから軍から高い評価を受けます。
1968年にはアイバン・サザランド氏によって、世界初のVR技術となるヘッドマウントディスプレイ型の端末「HMD」が提案されます。
そして、1991年にはイリノイ大学のトーマス・デファンティ氏らが没入型の投影ディスプレイである「CAVE」を発表しました。
ですが、技術は本来、人を喜ばせるためのものです!
1995年に任天堂から発売された3Dゲーム機「バーチャルボーイ」を皮切りに、VR技術は人々を楽しませるエンターテイメント・ツールとして開発が進んでいきます。
ただし、「画面酔い」の問題をクリアすることができなかったため、VR技術は低迷期を迎え、厳しい冬の時代が到来します。
VRの天機となるのは、2012年。「Oculus Rift」の誕生です。天才エンジニアのニラヴ・パテルやゲーム業界の神的プログラマーのジョン・カーマックの加入で技術的に大きな進化を遂げます。
「Oculus Rift」は、画面酔いの問題はもちろんクリアしており、しかも安価であることから、アメリカを中心に注目が集まっています。
実際に、「Oculus Rift」を装着してはしゃいでいる90歳のおばあちゃんの動画から、VR技術は老若男女問わずに受け入れられるテクノロジーということが分かります。
VRは世界が注目するテクノロジーです。
2016年のVR元年には、ソニーから「PlayStation VR」の販売が決定しているため、VRは一般家庭にも急速に広まっていくことが予想されています。
CGにロボット工学に制御工学…… テクノロジーから読み解くVRの実力
Photo By Maurizio Pesce
VR技術を構成する技術はコンピューター科学、ロボット工学、制御工学など多岐に渡ります。
例えば、人気の「Oculus Rift」にはヘッドマウントディスプレイとVR映像を算出するソフトウェアに加えて、外部の動きを感知する外部カメラで構成されています。
また、立体映像は「サイド・バイ・サイド」という方式で、液晶パネルに投影します。
「サイド・バイ・サイド」とは、右目用と左目用の映像を横並びにした映像形式で、左右それぞれに映し出された映像を両目で観ることによって3D映像として観ることが可能になっています。
さらに、ヘッドマウントディスプレイに設定された「魚眼レンズ」による映像補正と逆補正の2つを組み合わせることで、美しい立体映像を描き出します。
液晶パネルは、量産されているものを使っているので、リーズナブルな価格帯で「Oculus Rift」を提供することに成功しています。
なお、「サイド・バイ・サイド」方式に関しては、俳優のキアヌ・リーブスが企画製作した2012年の映画映画『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』で言及されています。
気になった方は、映画の方もチェックしてください。
様々な技術や取り組みにより、VR機器は現実世界に限りなく近い仮想現実を描き出し、人々を魅了するデバイスに進化してきました。
VRのすごさに関しては、実際に体験して頂くとして、世界から注目を集めているVR技術について、さらに詳しく紹介します。
VR元年が来る前に知っておきたい、3つのVR技術
Photo By Marco Verch
VRの歴史や技術面などについて解説してきましたが、ここからは実際に実際に流行・注目されているVRのコンテンツについて見ていきましょう。
VRのトレンドをしっかりと押さえて、VR時代の到来に備えましょう!
1.大ヒット間違いなし! ゲームの歴史を変える「Play Station VR」
2016年上期に発売が予定されている「PlayStation VR」。
サンフランシスコで開幕したGame Developers Conference 2015(GDC2015)で試作機が発表され、世界中を沸かせました。
「PlayStation VR」が注目されている理由は、コンソール機と連動した世界初のVRシステムという点です。
「PlayStation 4」に、ヘッドマウントディスプレイを接続。ヘッドマウントディスプレイの視野角は100度ほどで、他にも加速度センサーやジャイロセンサーを備えており、さらに「Play Station Camera」と呼ばれる外部カメラを使用することで、360度パノラマの3D映像を楽しむことができます。
参考:AV Watch
ソニー・コンピュータエンタテインメントの吉田氏は、Play Station VRの開発秘話を以下のように語っています。
ゲームはプレーヤーの没入感を重視して作られてきたコンテンツなので、その究極形は、プレーヤーをゲームの中に入れてしまうことではないかと常々思っていました。そして、それを実現できるのはVRではないかという考えも、以前から持っていました。
そんな折、2010年に「PlayStation 3」用のモーションコントローラー「PlayStation Move」(PS Move)を発売したのですが、一部の開発スタッフが、映像用のHMDにPS Moveをくっつけて、頭の動きに応じて映像が変化する、簡易VRシステムを作って楽しんでいたのです。しかもそうした動きが、日本だけでなく海外の複数のスタジオからも同時多発的に発生しました。そこで2011年に社内でVRシステムを開発するR&Dのチームを作り、「PlayStation 4」(PS4)と同時進行で開発することにしました。
ですから、実はPS4の関連機器には、PlayStation VRでの利用を意識した仕組みを最初から仕込んでいたりします。PS4のワイヤレスコントローラー「DUALSHOCK 4」にLEDを付けていたり、「PlayStation Camera」にカメラセンサーを2つ付けていたりするのは、実はPlayStation VRでそれらを使い、位置をトラッキングすることを想定していたからなのです。
出典:日経トレンディネット/SCE吉田氏が見る、「PlayStation VR」でゲームの先に見据えるVRの未来
ゲームエンジニアの遊び心から生まれた「PlayStation VR」は2016年に、間違いなく多くの人びとを魅了することになるはずです。
2.99ドルをついに切った! 本格的VR「Samsung Gear VR」の登場
2015年11月、VR業界に新たな衝撃が走りました。
サムスンのスマートフォン「GALAXY Note」の専用アクセサリとして、VR装置「Gear VR」が発売されました。価格は、たった99(日本円で12000円)ドル。
サムスンは、オキュラス社と提携関係にあるため、「Oculus Rift」の技術をフル活用し、驚きの価格でVRヘッドセットを生みだしました。
これまでのヘッドマウントディスプレイ型のVRは「新しいものが好きなギークのためのガジェット」という印象がありましたが、サムスンからスマートフォンを使ったVRシステムがリリースされたことを受け、一般の人々にも広く普及していく可能性が高くなっているため、注目されています。
「Samsung Gear VR」の開発に深くかかわった「Oculus VR」のマックス・コーヘン氏はGear VRの可能性について、こう言っています。
僕たちは消費者みんなが喜ぶようにしたかった。199ドル(だった「Samsung Gear VR Innovator Edition」)から99ドル(の「Samsung Gear VR」)にしたのは、みんなに使って欲しかったからなんだ。今はVimeoなんかの動画共有サービスもあるし、Oculus Cinema(※)を使えば、NetflixやHuluなんかの動画も見られるから、とても楽しめるよね。
出典:One-on-one interviewの英語インタビュー記事から意訳して引用
※「Oculus Cinema」については、以下のYouTube動画をご覧下さい。
「Oculus Cinema」は、「Oculus store」でダウンロードした映画を観ることのできるシステムのことで、3Dの立体感あふれる映画を自宅のリビングにあるソファでリラックスしていながら、映画館のような空間で映画を視聴することが可能になります。
参考:Engadget/サムスンGear VR が米国で発売
3.わずか1,000円? 誰でもVR体験ができるHMD「ハコスコ」
「Samsung Gear VR」よりも更に低価格な1000円と価格帯で使うことができる「ハコスコ」という段ボール製のVRビューワーがあります。
ハコスコとは、ダンボール製のVRビューワーとスマホを使って、お手軽にVR(バーチャルリアリティ)体験ができるスマホVRサービスです。1000円からのお手軽価格で、どこにでも持ち運び可能なお手軽さ。
製作・販売を担っているのは、2015年4月に創業した「SR Laboratories」。理化学研究所の適応知性研究チームのリーダーである脳科学研究者の藤井直敬氏が立ち上げた会社です。
「ハコスコ」の作りは非常にシンプルで、段ボールでできたパーツを組み合わせてレンズ、磁石、マジックテープを使って簡単に作成します。
完成した「ハコスコ」にアプリをダウンロードしたスマホを挿入することで、簡単にVRを体験することができます。
開発者の藤井氏は、「ハコスコ」は1人でも多くの人にVRを経験してもらうためにあると語ります。そこから、「ハコスコ」でVRの良さに感動した人が、その感動を友人に語りVRの輪が広がっていく…… このような現象が、すでに起こり始めています。
VRを使いこなせるエンジニアが優位な時代に!
VRは、まだ黎明期ですが、テクノロジーを愛するエンジニアなどの間での盛り上がり方は尋常ではないくらい大きなものになっています。
2016年のVR元年を迎えた後、VR業界のビジネスチャンスはますます広がっていきます。
今後、VRを使いこなすエンジニアのニーズは高まっていくはずです。
多くの人を驚かせたり、楽しめませるなど、世の中に感動を作り出したいエンジニアの方はVR業界に参入してみてはいかがでしょうか。