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DXの進展により、クラウドサービスを利用する企業が増えています。それとともに、クラウド運用の際に発生する課題を解決する「SREエンジニア」の需要も増加しており、気になっている方もいると思います。
一方で、
- SREが生まれた背景は?
- DevOpsとの違いがよくわからない
- SREエンジニアになるにはどうしたらいい?
目次
監修:大畑 健一(おおはた けんいち)
パーソルクロステクノロジー株式会社
採用・教育統括本部 ICT採用本部 キャリア採用部 2G
メーカーや教育、キャリア系を中心にネットワークエンジニアの経験を持つ。
2020年10月にパーソルクロステクノロジー(旧パーソルテクノロジースタッフ)に入社。
2022年4月から現在の部署にて中途採用エンジニア向けの広報を担当。
SREとは
SRE(サイト信頼性エンジニアリング)とは、「Site Reliability Engineering」の略で、Googleが2003年に生み出したシステム管理とサービス運用の方法論です。
SREは、システムの信頼性を高めることを目的としており、開発と運用のギャップを埋めることで、より効率的で安定したサービス提供を可能にします。
信頼性とは、一定の条件下においてシステムが正常に稼働し、サービスを安定的に提供しつづけられるかを測るための指標のことです。
SREが求めらている理由
ニーズの変化が激しい昨今では、開発スピードを重視した開発手法であるアジャイル開発を採用する企業が増えています。しかし、開発スピードの向上ばかり重視すると、利用者にとって使いづらいソフトウェアやサービスとなり、サービスの価値低下にもつながってしまいます。
この問題を解決するために考えられた方法論がSREです。SREでは、サイトやサービスの信頼性を向上させるため、コーディングによって手作業や繰り返し行われる作業(トイル)を減らしたり、システムを自動化したりして単純作業量の増大に対応します。
DevOpsとの違い
SREとよく比較されるのがDevOpsです。DevOpsは開発(Development)と運用(Operations)の組み合わせで、より迅速なリリースと改善を目指す考え方を指します。
リリースの高速化と開発・運用の自動化と監視を推奨する点では、両者とも共通しています。
両者の違いは、DevOpsが考え方や概念であるのに対し、SREは方法論である点にあります。SREはDevOpsの原則を具体的な実践に落とし込んだもので、信頼性の高いシステム運用を実現するための技術的なアプローチです。
SREの3つの指標
SREでは、目指す指標として、
・SLA
・SLO
・SLI
の3つの指標が定められます。それぞれについて解説します。
SLA
SLA(Service Level Agreement)とは、サービス提供者と利用者の間で取り交わされる、サービスのレベルに関する合意のことです。サービスの定義、範囲、内容、達成目標などが含まれ、サービス水準や品質保証が明示されます。
SLO
SLO(Service Level Objective)とは、事業者が定義し合意したSLAを実現するためのパフォーマンス目標を示すものです。例としてサーバー、ネットワーク、ストレージなど各領域における稼働率、性能、可用性、セキュリティ、サポートなどがあります。
SLI
SLI(Service Level Indicator)は、サービスの稼働状況を数値で示す指標のことです。
このSLIは、SLO(Service Level Objective)を達成しているかを評価するための基準となります。例えば月間稼働率を99%と設定した場合、そのSLIがこの数値を上回っている必要があります。
SREエンジニアとは
SREを担うエンジニアのことを、SREエンジニアと呼びます。SREエンジニアは、システムの信頼性を高めることを目的として、システムやクラウドの開発・運用、システムの自動化、トラブル対応などを行います。
また、DXの推進においてもSREエンジニアが注目されています。DXとは、デジタル技術で社会や生活の形を変えることです。DXの成功には様々な要素が必要ですが、デジタルに置き換えることで便利になる一方、システムが故障した際に被るリスクも増大します。そのため、SREエンジニアがシステムの信頼性を向上させる役割を担うことが求められています。
インフラエンジニアとの違い
ここでは、SREエンジニアとインフラエンジニアの違いを解説します。エンジニア職の中でも共通点が多いとされる両者ですが、最大の違いは業務範囲にあります。
SREエンジニアは、信頼性を高める活動全般が業務範囲であるのに対し、インフラエンジニアはインフラのみが業務範囲となります。その他の違いは、以下の表の通りです。
インフラエンジニア | SREエンジニア | |
---|---|---|
役割 | システムの設計、構築、運用、保守 | システムの信頼性、可用性、パフォーマンスの向上 |
業務内容 | サーバー管理、ネットワーク管理、データセンター管理 | 自動化ツールの開発、インシデント対応、システム監視 |
使用技術 | ハードウェア、OS、仮想化技術 | プログラミング言語、CI/CDツール、クラウドプラットフォーム |
業務の目的 | システムの安定運用、トラブルシューティング | 手作業の削減、システムの効率化、自動化の推進 |
スキルセット | ネットワーク設計、データベース管理、ハードウェア知識 | ソフトウェア開発スキル、スクリプト作成、DevOpsの知識 |
コミュニケーション | 運用チームやサポートチームとの連携中心 | 開発チームと運用チームの橋渡し役 |
【保存版】インフラエンジニアとは?仕事内容や種類をわかりやすく解説!
基本的な仕事内容と流れ
SRE(Site Reliability Engineering)やSREエンジニアに求められる役割について整理できたと思います。ここでは、SREエンジニアの基本的な仕事内容と流れを詳しく解説します。業務内容は以下の4つになります。
- 運用業務の環境整備
- システムの自動化
- システムやクラウドの開発・運用
- トラブルへの対応
運用業務の環境整備
SREは、Webサイトやオンラインサービスの信頼性を高めることに焦点を当てています。この目的のために、SREエンジニアはシステムの運用環境を最適化し、安定したサービスの提供を支える重要な役割を担っています。
システムが常に安定して稼働するように、運用体制の強化と維持がSREエンジニアの主な業務です。完璧に安全なシステムは実現不可能であるため、万が一のシステム障害に迅速に対応できるよう、事前に修正パッチを準備します。必要に応じてシステムを以前の安定した状態に戻せるようにすることも、SREエンジニアの業務です。
システムの自動化
システムの自動化を通じて開発チームの作業負担を軽減し、効率を向上させることも仕事の一つです。具体的には、ログ解析やスプレッドシート更新などの日常的なタスクを自動化することで、手作業を減らし、より重要な開発業務に集中できる環境を整えます。
また、CI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery : 継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を導入・運用して開発プロセスを自動化し、より迅速かつ信頼性の高いソフトウェア開発の実現も担います。
CI/CDは、ソフトウェア開発において、コードの変更を継続的に統合し、品質を保ちながら迅速にリリースするための手法のことです。これにより、テストの効率化とエラーの減少が可能となり、企業が変化する市場ニーズに敏速に対応するためのアジャイル開発を支援します。
システムやクラウドの開発・運用
安定性の高いシステムとクラウドサービスを構築・維持することで、開発チームが信頼できる基盤を提供します。また、サーバーの最適化やミドルウェアの効率化を通じてシステムの基盤を強化し、全体のパフォーマンスを向上させます。
これらの業務により、企業の技術インフラは常に最適な状態で運用されることになります。
トラブルへの対応
システムのリリース前に潜在的な問題を特定し解決することで、リリース後のシステムダウンという最悪の状態を回避できるようにします。
バグやエラーの修正だけでなく、サーキットブレーカーや修正バッチの準備など、障害発生時の迅速な対応策を提供することで、開発チームが安心して開発に専念できる環境を作り出します。
SREエンジニアの年収
SRE(Site Reliability Engineer)の平均年収については、直接的なデータが少ないため、dodaの求人情報から平均提示年収を計算すると約685万円でした。一般的なSREエンジニアの年収の範囲は年収600万円から900万円ですが、特に知識が豊富で経験が深いSREエンジニアの場合、年収800万円から1200万円とかなり高収入を目指せる職種です。
実際の年収は、経験やスキル企業の規模などによって変動するため、興味のある企業の求人情報や公開している給与情報を確認することをお勧めします。
SREエンジニアの年収は?必要なスキルや資格、キャリアパスも合わせて解説!
SREエンジニアに必要な知識・スキル
ここでは、SREエンジニアに求められるスキルについて解説します。SREエンジニアに求められるスキルには以下の5つです。
- クラウドサーバの構築・運用に関するスキル
- Webサービスの開発・運用に関するスキル
- ネットワーク・データベースに関するスキル
- セキュリティに関するスキル
- コミュニケーションスキル
クラウドサーバの構築・運用に関するスキル
上述のように、クラウドサービスを利用する企業が増加しており、SREエンジニアにも関連する知識やスキルが求められます。クラウドサーバーを適切に使うことによって、Webサービスの品質を向上させることができます。
具体的には、
- AWS
- Microsoft Azure
- GCP
Webサービスの開発・運用に関するスキル
SREエンジニアには、Webサービスの開発・運用スキルが不可欠です。
SREの役割はシステムの信頼性を向上させることであり、そのためにはWebサービス開発に関する知識が求められます。
具体的には、
- Java、PHP、Rubyなどのプログラミング言語
- SQLなどのデータベース言語
- WindowsやLinuxといったOSに関するスキル
ネットワーク・データベースに関するスキル
SREエンジニアは、システムの基盤に関する業務が多く、ネットワークやデータベースなどのインフラ系の知識が求められます。
具体的には、
- ネットワークプロトコルに関する知識
- ミドルウェアの最適化に関する知識
- SQLやストアドプロシージャなどの知識
セキュリティに関するスキル
SREエンジニアの業務にはセキュリティに特化した業務は含まれていませんが、ネットワークへの接続が必須であるため、セキュリティのリスクに対しては一定の理解が求められます。
セキュリティ の信頼性が高いシステム構築の方法を立案することもあり、ユーザーに安心してサービスを利用してもらうためにもセキュリティに関する正しい知識が必要です。
セキュリティに関するスキル
SREエンジニアの仕事は、チームを結成して行われることが多いため、日常的にコミュニケーションが発生します。チームでの仕事は、全員で話し合った上で方向性を決めることが重要です。
SREに関する知識があっても、コミュニケーションスキルが他かけていなければ活躍は難しいでしょう。
SREエンジニアにおすすめの資格4選
SREエンジニアを目指したり、SREエンジニアとしてのスキルを証明したりする場合におすすめな資格をご紹介します。以下の4つが代表的な資格です。
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- EXIN DevOps Professional 資格
- Cisco Certified DevNet Associate認定
基本情報技術者試験
- 受験料:7,500円
- 合格率:57.9%
- 受験形式:CBT / 選択
- 受験可能頻度:随時(年末年始を除く)
基本技術者試験とは行政法人情報処理推進機構が行っている国家試験で、ITエンジニアの登竜門と呼ばれている試験です。ITエンジニアとしてキャリアをスタートさせる人にはオススメの資格になっており、エンジニアに必要な基本的知識・技能を身につけることができます。
応用情報技術者
- 受験料:7,500円
- 合格率:約20%
- 受験形式:対面 / 記述式
- 受験可能頻度:年2回
応用情報技術者はSREエンジニアの業務領域に特化した資格ではありませんが、資格を取得することで幅広い知識を持った高レベルのエンジニアと判断されるでしょう。
EXIN DevOps Professional 資格
- 受験料:176,000円
- 難易度:高
- 受験形式:対面 or オンライン
- 受験可能頻度:随時
Cisco Certified DevNet Associate認定
- 受験料:44,800円
- 難易度:高
- 受験形式:CBT方式
- 受験可能頻度:随時
試験の前提条件として、1年以上のPythonプログラミングを含むソフトウェア開発経験が推奨されています。この資格を取得することで、アプリ開発とインフラの両方の実力を証明できます。
未経験からSREエンジニアになるには
実務経験がない未経験者が、SREエンジニアに転職するのは非常に難しいです。その理由は、SREエンジニアの業務が多岐にわたり、広範な知識と経験が必要になるからです。
まずはエンジニアとして必要なスキルを身につけ、インフラエンジニアやWeb系エンジニアとして実務経験を積んだ上で、SREエンジニアに転職することがおすすめです。
必要なスキルを身につける
インフラエンジニアやWeb系エンジニアには、ネットワーク、データベースなどの知識、Webサービスの開発などスキルが求められます。そのため資格の取得などを通じて、スキルを身につける必要があります。
必要なスキルを身に着ける方法は、主に以下の4つがあります。
- 参考書などを用いた独学
- オンライン学習サービスの利用
- プログラミングスクールへの通学
- 勉強会やセミナーへの参加
【14選】データエンジニアにおすすめな資格は?勉強法やスキルセットまで解説
求人を探す
次に求人を探しましょう。経験者のみを募集対象としている企業も多いですが、人手不足や新たな視点を取り入れを図るために未経験者を積極的に採用する企業もあります。
主な会社選びのポイントは、以下の4つです。
- 継続的に研修を受けられるか
- 資格取得を支援してくれるか
- 社風や労働環境は適切か
- 自分が考えたキャリアプランを描けるか
自分自身の成長やキャリアアップを目指せる会社を選びましょう。
具体的な4つのキャリアパス
ここでは、SREのキャリアパスをご紹介します。以下の4つのキャリアパスが考えられます。
- ITコンサルタント
- ITアーキテクト
- CxO
- フリーランス
ITコンサルタント
ITコンサルタントの仕事は、企業のIT戦略の策定からシステムの見直し、新システム導入の提案、システムの最適化や動作検証まで多岐にわたります。
SREエンジニアは、システム開発スキルに関する幅広いスキルやコミュニケーションスキルを求められる職種であるため、その経験を活かしてITコンサルタントになることは十分に可能でしょう。
ITアーキテクト
ITアーキテクトとは、経営戦略やビジネスプロセスに基づき、システム全体を設計する職種です。ITとビジネスを結びつける「橋渡し」の役割を担い、システムの基盤や構築手順などの共通化から運用・保守要件の提示までを行います。
具体的には、ITシステム化の企画・構想やグランドデザイン、それを実現するためのシステム全体の構造設計を行い、開発効率や品質を高めることも役割の一つです。SREエンジニアもシステムの全体に携わるため、経験を生かしてキャリアアップを目指せるでしょう。
CxO(経営職)
CxOとは、「Chief x Officer」の略で、企業の最高位の役員を指すビジネス用語です。CxOの役割は、企業の特定の業務領域における責任者として、専門性を活かした迅速な意思決定を行い、業務効率を向上させることです。
例えば、CEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)、CTO(最高技術責任者)などがあります。SREエンジニアとして培ったスキルに加えて、マネジメントスキルを身に着けることで、このような経営職への道も開けてきます。
フリーランス
専門知識や経験に自信がある場合、フリーランスとして独立するという選択肢もあります。会社勤務ではなく、業務委託や請負契約が主流で、>報酬は会社員時代よりも高くなることが多い フリーランスとして働く場合、SREエンジニアとしての求人は少ないため、多くの場合はマネジメントやコンサルタントとして活動することになります。
今後の需要・将来性は?
最後に、SREエンジニアの今後の需要や将来性について解説します。
SREエンジニアの需要や将来性は高いと言えます。その理由は、DX推進やクラウドの普及によって信頼性の高いサービスの需要が高まっているからです。サービスの開発を企業に依頼する際には、 安全性・信頼性が大きな基準となります。それは、継続的に安定したサービスでないと利用者の離反する確率が大きくなってしまうからです。特にDXやIoTが進んでいる現在ではその傾向が顕著です。
令和5年版 情報通信白書によると、2022年の企業におけるクラウドサービスの利用状況は、72.2%となっています。2020年では68.7%、2021年では70.4%であるため、今後もクラウドサービスへの高い需要は継続するでしょう。
クラウドの運用では、信頼性の確保、セキュリティ対策、コスト管理などにおいて様々な課題が発生します。これらの課題を解決するために、SREエンジニアを採用する企業が増えているため需要が増加しているため、SREエンジニアの将来性は非常に高いと言えます。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はSREからSREエンジニアの仕事内容や向いている人の特徴、必要なスキルまで幅広く紹介していきました。SREエンジニアは他のエンジニア職と比べても将来性があり、需要や平均年収も高い魅力的な職種です。ご自身のキャリアパスの候補として検討してみてはいかがでしょうか。