創業からわずか6年の株式会社GENDA。「GiGO」ブランドでゲームセンターの出店を広げるほか、映画配給のギャガ株式会社やカラオケ事業の株式会社シン・コーポレーションなど、さまざまな企業をM&Aでグループに加え、エンターテイメント事業を幅広く展開しています。
一見すると、エンジニアとは縁が遠そうにも思えるエンターテイメント業界。しかし現在、エンターテイメント業界のDX化が急激に進んでいて、エンジニアの活躍の場も広がってきているそうです。
今回は、同社で活躍するエンジニアの白倉悠祐さんと、テックチームの採用を担当する萩原美緒さんに、エンターテイメント業界のDX化が進む現状や、同社で活躍するエンジニアの仕事や将来について、お話をうかがいました。
プロダクト開発部 エンジニア
2023年11月入社。入社以来、ゲームセンターの業務アプリ「GiGO NAVI」の開発に従事。
萩原美緒(はぎわら・みお)さん
HRBPチャプター マネージャー
2023年10月入社。主にテックチームの採用・組織づくりに携わる。
急速に進むM&Aに対応するため、横断的に活躍できるエンジニアチームを配置
――まず、御社についてうかがいたいです。創業からわずか6年ほどにも関わらず、急速にM&Aを進めてグループ規模を拡大されていますが、それにはどういった意図があるのでしょうか。
萩原さん(以下敬称略):当社は「世界中の人々の人生をより楽しく」というAspiration(大志)を掲げており、成長戦略としてM&Aを取っています。IPO前に11件、IPO後に16件(※2024年4月取材時点)で合計27件のM&A及び資本取引を実施しました。現在はエンタメ・プラットフォームとエンタメ・コンテンツという2つのセグメントで事業を展開しています。
M&Aを行う背景には、エンターテイメントの業界はボラティリティが高いため、経営統合を行い1つの大きな企業グループになった方がいいという考えがあります。現在はアミューズメント施設の「GiGO」等を運営する株式会社GENDA GiGO Entertainmentや、映画配給会社のギャガ株式会社、レモネード専門店の株式会社レモネード・レモニカ、カラオケチェーン店「カラオケBanBan」を展開する株式会社シン・コーポレーションなどがグループ企業に所属しておりますが、それぞれの企業同士のシナジーも発揮できています。
現在、GENDAグループ全体の売上の約7割を占めているのが、アミューズメント施設運営事業です。なかでもクレーンゲームは、世界的に広がるアニメの人気もあり、実店舗だけでなくオンラインでも非常にブームになっています。
――エンタメ企業である御社が、ITやエンジニアを必要としているのはなぜなのでしょうか。
萩原: GENDAは「世界一のエンターテイメント・テックカンパニー」を目指しています。アミューズメント施設「GiGO」のDXを推進したり、テクノロジーを活用したプロダクト開発に挑戦したりと、エンターテイメントをテクノロジーで支えたいと考えています。
エンターテイメント領域は市場規模に対してDXの余地が大きく残されているんです。そこにテクノロジーの力を入れることで、顧客体験や働いている人たちの環境が改善されれば、飛躍的に伸びるとされており、白倉をはじめとしたエンジニアの力が欠かせないのです。
――M&Aを進めてグループ会社がどんどん増えていく状況で、エンジニアはどのように配置されているのでしょうか。
萩原:エンジニアはグループ企業に所属するのではなく、純粋持株会社のGENDAに所属し、横断的に各プロダクトの開発を支援する体制を構築しています。生産性を向上させるために、使用技術の統一や開発環境の差異を無くすなど、キャッチアップコストを減らすように工夫していますね。
白倉さん(以下敬称略):社内に横断的なエンジニアチームがあり、開発を内製化していることで、横展開できることのメリットは大きいと感じています。
ただ、M&Aによって加わったプロダクトは、私たちが普段使用していない技術や言語を使っていることもあります。そのようなシステムをいきなりリプレイスするのは難しいので、そういった場合は対応できるメンバーがサポートに入り、リプレイス判断は適宜行っています。
エンジニアでありながら、週1回ゲームセンターで接客を体験
――白倉さんは、どのような業務を担当しているのでしょうか。
白倉:入社以来、一貫してゲームセンターで働くスタッフ向けの管理ツール「GiGO NAVI」の開発に携わっています。
「GiGO NAVI」は、店舗のスタッフがExcelや紙を使って行っていた在庫管理や棚卸しなどの業務を、ウェブアプリでサポートするものです。ログインして商品数を入力すると自動的に在庫数などが集計されて、そのデータをCSVなどで出力して別のシステムにも連携できるようになっています。「GiGO NAVI」を導入したことで、現場で紙やExcelでやっていた作業を大幅に減らすことができています。
現場で働いている方から話を聞いて、実際にどういう機能が必要かを知り、それをどのようにして開発に落とし込むかを検討し、実際に開発してリリースするところまで、一連の流れを担当しています。
――そもそも白倉さんがGENDAに入社したきっかけを教えてください。
白倉:もともとゲームセンターにあるメダルゲームが好きだったこともあり、新卒ではゲーム会社に入社しました。ただ、もっと人の生活に密着した衣食住に関わる業界に関わりたいと思うようになって、エンジニアとして別の業界に転職しました。GENDAは6社目になります。
複数の会社を経験してきたなかで、動画メディアの会社でサーバーサイドのエンジニアをしていたときに非IT領域にテクノロジーを導入していく面白さに目覚めたんですよね。その後転職したアパレル大手企業でも在庫管理のシステム開発などを経験して、さらにDXに興味を持ちました。
ただ、DXに携わっていたものの、前職は大企業だったこともあり、現場の方と話す機会がなかったんですよね。システムの仕様を考える方と話をするばかりで、現場で働く方々の本当の課題がわかりにくくて……。それぞれの企業の開発スタイルがあっていいのですが、私はなるべく現場とコミュニケーションを取り、現場に近い環境で開発がしたいなと思っていました。
そんなときに声をかけていただいたのがGENDAでした。エンターテイメント業界はもともと好きな業界だし、その場所を運営している方々のためのツールを作って、DXを推進できるのはいいなと思って、入社を決めたんです。
――GENDAに入社してから、特に印象に残っているのはどんな業務でしたか。
白倉:開発に活かすために、実際に当社グループが運営する「GiGO」の店舗に行ったことですね。ただの見学だけでは実際の業務のことがわからないと思ったので、実際に週1回フルタイムで、制服を着て、アルバイトスタッフと同じように業務体験をさせてもらっていました。
――エンジニアでありながら、ゲームセンター勤務もしていたんですか……!
白倉:そうなんです(笑)。でも、実際に現場で業務に入ると、多くの発見がありました。業務を経験すると「本当にこの作業はやる暇がないな」とかも実感して、システム化して業務を効率化する必要性も感じましたね。
それにゲームセンターの運営は、属人的なところも多いんですよね。毎日店舗にいるスタッフは、どの位置に何があるかを全部覚えていて、それで業務がまわっているところがあるんです。周りのスタッフもその人に聞いて、「これはあそこにあるよ」「これは2日後に景品を入れ替えるから、この端に置いといて」と教えてもらうことも多い。その方の頭の中に計画があるから回せているんですよね。それをいかに言語化して機能化するかが、DXの課題になるんです。
一方で、現場に出てみると、属人化が必ずしも悪いことではないこともわかりました。実際に業務を経験すると「何回かやってみたらこの作業は覚えられるな」と感じることもあります。そうすると「アプリのこの機能は過剰だったな」と思うこともあるんです。開発を進める上で無駄な機能を作らないことも大事ということも学べました。何でもかんでもDX化すればいいわけではないんですよね。
現場に入ったことで、人が接客してサービスを提供する大切さを実感できたのも大きかったです。ゲームセンターのDX化を推進してスタッフが接客にもっと時間を使えるようにしていきたい、エンジニアとして開発で力になりたいと改めて思えましたね。
――エンターテイメント領域に限らず、非ITの現場でDXを進めるために、エンジニアに必要な資質は何だと思いますか。
白倉:プロダクトが使われる場面をきちんと想像できる能力だと思います。ただ、ゼロから想像するのは難しいので、想像できるための材料を得られる行動が取れないと難しいのかなと。私は想像できなかったので、店舗に行って実際の業務を経験したんです。想像することができた上でプロダクトに反映していかないと、うまく使えるものにならないと思います。
あと、人とモノが絡むとき、人は絶対にミスをするし、モノは絶対になくなるとあらかじめ想定しておくことも大事です。どんなに優れたシステムを開発しても、人やモノが絡むとミスはあり得る。そして、そうしたことが起きたときの対処まで想像しておく必要があると思っています。
「何にでもなれるエンジニア」になりたい
――白倉さんにとって、GENDAでの仕事でやりがいを感じる瞬間を教えてください。
白倉:現場の課題を直接聞き、フィードバックを受けながら仕事ができるのはやはり楽しいですね。自分の中でわからなければ、現場に直接質問ができて、お互いに納得感を持って開発できる環境があるのがありがたいです。
現場には、ITやシステムに詳しくない方も少なくありません。一方、私たちエンジニアは言語や専門用語で話してしまうこともあります。だからこそ、言葉をきちんと定義して、私たちも現場で使われている言葉を理解するようにするだけでなく、現場の方にもなるべく統一した言葉を使っていただくなど、コミュニケーションの仕方も工夫しています。
また、現場から「こういうUIがほしい」と要望を受けても、システム上どうしても実現できないこともあります。そんなときに「できません」と一方的に伝えるだけではなく、「じゃあなんでそのUIが必要なのか」を細かくたずねつつ「この業務フローを変えることで実現できませんか?」といった感じで、現場と一緒に考えるんです。そうやって最適解を探ることができるのも、今の仕事でやりがいを感じるところですね。
――最後に、白倉さんのエンジニアとしての目標を教えてください。
白倉:ずっと昔から一貫して目指しているのは「何にでもなれるエンジニア」です。前職まではマネジメントをやってきたのですが、当社ではエンジニア業務に集中させてもらっています。それは、自分に足りていないと感じている“アウトプット”に取り組みたいと思ったからです。
ただ、例えばコードを書くのが好きなエンジニアばかりが集まっているチームなら、私がマネジメントを担当して全体を見て調整する役割にいた方が開発の効率がいいか、など考えます。チーム全体を見渡し、「今どのポジションが必要なんだろう」と考えて、そこに入れるようなエンジニアでありたいなと思っているんです。
マネジメントも好きだし、現場と連携して課題を抽出していくのも好きだし、手を動かして開発するのも好きです。現場の近くで開発ができている今の環境を存分に生かして、成長していきたいですね。
文:遠藤光太 撮影:関口佳代 編集:エディット合同会社 協力:ちょっと株式会社