生命保険営業職から分電盤のAutoCADオペレーターに 仕事と育児、勉強のワークライフバランスの秘訣を聞く

コンピューターの画面上で設計・製図を行うCADオペレーターは、今注目されている仕事の一つです。なかでもソフトウェア「AutoCAD」のスキルを持つ人は、家具・インテリアから土木・建築、機械など幅広い分野で求められています。そんなAutoCADオペレーターの仕事とはどのようなものなのでしょうか。

本記事では生命保険の営業職というまったく異なる分野から、電気分電盤の設計を行うAutoCADオペレーターに転職されたU.A.さんにインタビュー。転職の経緯や現在の仕事について、またワーク・ライフ・バランスについて幅広く伺いました。

U.A.さん
U.A.さん
CADオペレーター

大学卒業後、生命保険会社に入社し営業職を経験。その後、電気設備メーカーに転職。AutoCADを使って分電盤の設計を行う。産休・育休をはさみ、現職で5年のキャリアを持つ。

 

分電盤を設計するAutoCADオペレーターの仕事とは

――本日はよろしくお願いします。最初に現在の仕事について教えてください。電気設備メーカーでAutoCADを使って電気制御などの盤内設計をされていると伺いましたが、具体的にはどのようなことをするのでしょうか?

マンションやショッピングモール、ビルなどの屋内には、配電盤から送電された電気を各電気機器に分配する「分電盤」があります。分電盤のふたを開けるといっぱい配線があり、配線をそれぞれ機器につなぐのですが、どの線をどの機器につなぐか、機器には何を使うかなどを、お客さまの依頼通りに設計します。

一般家庭のものは小さくて配線も単純ですが、ショッピングモールのような広い場所だと、それだけ電気の使用量も大きくなります。それに伴い分電盤自体の数が多くなり、配線も複雑になります。後者のケースを設計する時は、気をつける点も増えますね。

配電盤が設置されたマンションのイメージ

 

また設計だけではなく、営業さんとやり取りを重ねて認識をすり合わせ、チームでお客様の要望に答えることも。その際には「なぜこういう設計にするのか」という技術的な部分をわかりやすく説明するスキルも求められます。

分電盤の設計に関わる規格や法令や社内の規定もちょこちょこ変わるので、随時覚え直す作業も必要です。自分で毎日勉強しますし、社内研修にも参加してキャッチアップしています。業務についていくために欠かせないことですが、営業さんとのやりとりでわかりやすい説明をするためにも勉強は必要だなと感じますね。

 

生命保険の営業職から畑違いの分野へ

――大学を卒業後は生命保険会社の営業職としてキャリアをスタートされたと伺いましたが、最初のお仕事はどのように決めましたか?

金融関連の仕事に興味があったので、生命保険会社を選びました。FP(ファイナンシャル・プランナー)の資格を取得するなど自分なりに勉強もしたのですが、入社前後で仕事のミスマッチが起きてしまって。

私の職場はジェンダーバランスに偏りがあったので、「もっといろんな人がいる環境で働けたらな」と思うようになりました。もうひとつ、想像以上に体力が必要で、続けていけるか不安になったということもあります。

入社して半年経ったころから、転職活動を始めました。親を含め周りの人には何も言わずに、1か月ほど転職活動をして今の会社に転職することが決まりました。

 

――もともと設計などに興味はあったのですか?

特に業種を絞っていたわけじゃないんです。でも「手に職をつけたい」と思っていて、技術やスキルを身につけられる仕事を探していました。転職活動をする中で今の職種の求人を見つけて、単純に「おもしろそう」と感じたんです。もともとパソコンを触るのは好きな方だったので、割とすんなり決められましたね。理系の勉強も好きでしたし、抵抗はありませんでした。

入社後も、とまどうようなことは特になかったですね。AutoCADの知識は全くなくて入社してから学び始めましたが、社内は気さくな人が多くて、入社後の研修やOJTが始まってからも、何を聞いても全部教えてくれる人ばかりでした。周りの人たちにも助けてもらいながら、日々の業務を通じて少しずつ身につけていきましたね。また分電盤の設計には電気工事士の資格も必要で、職場で研修を受けたり、スキマ時間を活用したりして勉強しました。

 

自分の仕事が役立っていることを肌で感じられるのがやりがい

――CADオペレーターとしてのやりがいやおもしろさについて教えてください。

自分が手がけたものが商品となって、自分の目で見られるのはうれしいですね。

逆に大変なのはやっぱり勉強です。 もうそこにつきます。今ちょうど育休が明けたばっかりなのですが、今まで使っていた機器の変更や、配線の仕様など社内の規格も変わっていました。それに合わせて今後一つひとつ、対応していかなければなりません。

――最も印象に残っている仕事はありますか。

地元に大型ショッピングモールが建つことになり、そこの分電盤を担当することになったときは、やっぱりうれしかったですね。オープン後、実際に店舗に立ってみて「ここに私が書いた図面の商品が入ってるんだ!」と思いました。

 

仕事もプライベートも「自分がやりたいこと」をやる

――現在、お子さんもいらっしゃると伺いました。フルタイムで働く上で家庭とキャリアのバランスをどのようにとっていらっしゃいますか?

今、子どもが2人いるんですけど、やっぱり仕事で帰りも遅くなってしまうので、晩御飯は前日に作るなど工夫して家事をこなしています。あとはやっぱり夫の協力は不可欠ですね。

今の職場は子育て中であることを配慮してくれるので、とてもありがたいです。仕事も時短勤務にさせてもらっています。休みを取ったり、子供が熱を出して急に呼び出されたりすることもありますが、悪い顔をされたことは1回もありません。

――出産後もフルタイムで働くことは考えていたのですか?

そうですね。今の職場に転職してから結婚・出産を経験しましたが、転職する際には育休などの制度を利用しやすいところを選ぼうと考えていました。

――子育てしながら働くことのやりがいについて教えてください。

がんばっている母の姿を見てもらえてたらいいですけどね……まだちっちゃいので、わからないかもしれないです(笑)。

 

――U.A.さんはブログの運営やライターとしてのお仕事もされています。そのように幅広い挑戦をしている理由を教えてください。

ブログは育休中にやっていました。さすがに今は全然、更新できていないんですけど。育休の間も時間を無駄にしないで、何か動いておきたかったのと、「子育ての経験を残しておきたい」「少しでも他の人の参考になったらいい」という思いでブログを始めました。

ライフステージが変わっても、「自分のしたいことはしよう」という思いが強かったのかもしれません。家庭も仕事も、なんだってやりたいことは、まずはやってみよう、と思っているんです。

――10年後に達成していたいこと、または今後も大切にしていきたいことなどを教えてください。

仕事の面では、10年後は指示を出す立場にキャリアアップしていたいと思っています。それがより早い段階で実現できることを目指してはいますが、「何がなんでも絶対に達成したい」と焦ってはいません。自分のペースで着実にステップアップしていきたいなと思っています。

そのために、今後も仕事を頑張りすぎないことを大切にしていきたいですね。子どもって、どんどん大きくなるので、その一瞬一瞬をちゃんと見届けたい。だからあんまり気を張りすぎないようには心がけて、自分の心の余裕を大切にしたいと思っています。これからも、プライベートでも仕事でも、自分のやりたいことに取り組んでいきたいです。

 

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