洗濯機、食器洗い機、掃除機など、さまざまな家電の登場によって、私たちは少しずつ「家事」から解放されてきました。
「世の中にないモノを作り出す技術集団」セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社が開発する、世界初の全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」は、さらなる「家事からの解放」を実現する家電製品。
※セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社
「世の中にないモノ・人々の生活を豊かにするモノ・技術的なハードルが高いモノ」の3つのクライテリア(基準)を満たすものに挑戦していく「世の中にないモノを作り出す技術集団」
「ランドロイド」は、洗濯・乾燥後の衣類の折りたたみから整頓までを自動で行い、私たちが生涯で衣類の折りたたみや整頓にかける9,000時間(375)日の自由な時間を生み出します。
▲シンプルなデザインと美しいブラックのカラー。
2017年の5月に予約販売が開始されるランドロイドには、約12年の開発期間を要したとのこと。
画像解析、人工知能(A.I.)、ロボティクスの3つの技術を融合することで可能となった、全自動衣類折りたたみ機は、どのようにして生み出されたのか?
▲ランドロイド開発の初期から携わる北川宏司さん
開発当初からランドロイドに携わるrobotics(ロボティクス)事業部の北川宏司さんに、製品の魅力と開発過程について詳しく伺いました。
画像解析・人工知能・ロボティクスの技術を集結した新しい家電
▲ランドロイドの1/7模型。リカちゃん(142cm)と比較すると、実物のスケールがわかる。
ランドロイドは家庭用の大型冷蔵庫ほどのサイズ、高さ約220cm、奥行き約63cm。1番下の引き出しに衣服を入れて、操作をスタートさせれば、真ん中の棚からキレイに畳まれた状態の衣服が出てきます。
本体部分に操作盤がある他、種類別や家族別など、細かい設定や動作確認は専用のスマートフォンアプリから行えます。
▲こちらの専用アプリで、設定・操作が行える
外側からは、内部の動きを確認することはできません。
衣服を乱雑に放り込み、数分後にキレイに整頓されて出てくる様は、まるでマジックを見ているかのよう。
内部では、どのような機能がどのような工程で衣服を処理しているのでしょうか?
「ロボットアームが、乱雑に入った衣服の一枚一枚を持ち上げて広げます。広げたところで、画像解析を行い衣服の種類を識別して、人工知能がそれに合ったたたみ方を選び、ひとつひとつをたたんで積み上げるというシステムになっています。すべての衣類がたたみ終わると、真ん中の扉が開き、整頓された衣類があらわれます」
▲シーテックジャパン2016にてセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ発表のランドロイドデモンストレーション。作業が終わると、中心の扉が開きキレイに整頓された衣服があらわれる。
ロボティクスが人間の腕や手、画像解析が目、人工知能が脳の役割を果たしており、3つの技術が融合することで、人間が衣服を折りたたむように、衣服の種類に合ったたたみ方、種類や家族ごとの仕分け(父、子、母など、サイズや形で衣服の持ち主を判別する)を実現しました。
私たちが行うのは、たたまれた衣服を取り出してクローゼットに戻すだけ。
ランドロイドの登場によって、洗濯、乾燥の続きを完全に機械に任せることができるようになりました。
さらに、使えば使うほど精度が高まっていくのもランドロイドの魅力のひとつです。それを可能にするのは、本体とは別にある専用サーバに搭載された人工知能。
「本体とは別に、ランドロイドコアという専用サーバにも人工知能が搭載されていて、このサーバに集積されたデータをもとに、衣服の種類やサイズごとにたたみ方の最適化が行われます。使えば使うほどにランドロイドが自己学習して、衣服を折りたたみ、整頓する精度が向上していくんです」
現時点では、布団のような大きなサイズは難しいものの、Tシャツ、カットソー、ポロシャツ、フェイスタオル、バスタオル、パンツ類など、多種多様な衣類に対応しています。枚数は、一度に約30枚まで可能とのこと。
一枚を折りたたむのに約5~12分必要なため、枚数が多いと時間はかかるものの、睡眠前にスタートさせれば、整頓された状態で朝に収納することができます。
▲「ランドロイドライフ」のイメージ(BEFORE)
▲画像右に埋め込まれているのがランドロイド(AFTER)
ランドロイドを導入することで、家事の習慣が変わり、折りたたみにかかっていた時間が大幅に削減されます。それによって常に整理整頓された住空間の実現、趣味の時間や家族との時間の確保など、より充実したライフスタイルを送ることができるのです。
セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズでは、どのようにして全自動衣類折りたたみ機を実現させたのか?
北川さんに、ランドロイドの開発過程について詳しく伺いました。
未経験から世界初の技術開発へ
ランドロイドの開発は「まったく新しい製品の開発は、常に身近なニーズの中に潜んでいる」という、代表である阪根信一氏の考えがきっかけになったと北川さん。
▲セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社、代表取締役の阪根信一氏
「弊社代表の阪根が奥さんに『今こういうものがあればいいなと思うものある?』と聞いたところ『洗濯物をたたんでくれる機械があればうれしい』といわれたことが開発のきっかけだったそうです。開発するものは『世の中にないもの』なので、まずは世界中の特許を調べて、全自動衣類折りたたみ機が世の中に本当にないかどうかを調査しました。自動で衣類を折りたたむ技術や製品がないことがわかり、プロジェクトが動きはじめました」
北川さんがランドロイド開発に関わることになったのは、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズに入社した直後。プロジェクトがスタートしたタイミングとほとんど同時に開発に関わることになりました。
「僕はほとんど未経験の状態で入ったので、ロボティクスも人工知能も画像解析も、すべて開発を進めながら学んでいきましたね」
北川さんはもちろん、他のメンバーも全自動衣類折りたたみ機に必要な知識、技術がわからない状態でプロジェクトがスタート。当初は、手当たり次第に試作品を作り、試行錯誤を繰り返しながら製品化の可能性を模索しました。
全機能を網羅的に開発することが難しいため、当初は衣類を折りたたみ整頓するユニットと衣類を認識するユニットに分けて研究・開発を進めました。開発過程において特に難しかったのは、衣類を認識させる機能だったとのこと。
「ロボットアームで衣類を広げて、画像解析によって形状を認識させるのですが、衣類のような柔軟物は、持ち方によって形が幾通りにも変わります。『Tシャツとタオルの違いを機械に認識させるにはどうすればよいのか?』 何度も何度も試行錯誤を繰り返しながら、画像解析の精度を向上させていきました」
画像解析、人工知能、ロボティクスの技術が融合した全自動衣類折りたたみ機。
製品化のフェーズに至るまでには、数え切れないほどの試作品の開発と、技術向上のための試行錯誤がありました。
「例えば自動で掃除をするロボットは、掃除機の吸うという技術を参考にして開発することができます。吸うという技術は、既存のものを参考にしながら、自動で動くという部分の開発に注力するという方法が取れるのですが、全自動衣類折りたたみ機の場合は、参考にできるものがないので、手当たり次第に試作品を作っていくしかありませんでした」
開発がスタートしてから5~6年でユニットごとの技術が確立し、それぞれを融合させたプロトタイプの開発が可能となりました。そのころに開発したプロトタイプは、一部屋が埋まってしまうほどの巨大なもの。
部品のひとつひとつをコンパクトにしたり、衣類を完全に広げずに種類を識別できるように画像解析を向上させたり、さらなる試行錯誤を経て、ついに製品化を実現しました。
知識も技術もゼロの状態から手探りで開発を進めた北川さんは、ランドロイドに携わることで新しいものを創りだす喜びを感じたとのこと。
「既に世の中にある製品や技術を改善するための開発も素晴らしいですが、世の中にないものをイチから創り上げることのおもしろみは、ランドロイドに開発に関わったからこそ得られたものです。開発が難しければ難しいほどに熱くなるのがエンジニアですし、ランドロイドのような、全く新しい価値を提供できる製品の開発に関われたことは、エンジニアとしての大きな喜びですね」
現在は耐久テストを繰り返し、さらなる品質向上に努めているとのこと。
予約販売後も、ソフトウェアアップデートによって機能を追加したり、使いやすさを追求したり、これからも終わることなく、ランドロイドの開発は続いていきます。
ランドロイドが「当たり前」になる世界を目指して
「家事からの解放」による豊かなライフスタイルの確立を目指し、膨大な時間を経て製品化を実現したランドロイド。
洗濯機、乾燥機、冷蔵庫、エアコンのように、「家電の必需品のひとつとしてランドロイドがあることが目標」と北川さん。より多くの人に使ってもらい、家事から解放された豊かなライフスタイルを体感してほしいとのこと。
かつては洗濯が、かつては皿洗いが、エンジニアたちの絶え間ない研究・開発によって機械で行えるようになったように、2017年、「衣類の折りたたみ、整頓」を機械に任せることができるようになりました。
またひとつ家事から解放されることで、私たちのライフスタイルはより自由なものへと変化していきます。
今後も研究・開発によって、さらに進化していくランドロイド。
今後、どのくらい私たちの生活に浸透していくのか?
ランドロイドの今後の展開に注目しましょう。