IT調査・コンサルティング会社の株式会社アイ・ティ・アール(ITR)が2021年8月に発表した調査レポートによると、日本におけるAI市場の2020年の売上金額は、前年比19.9%増の513億3,000万円。2025年には1,200億円に達すると予測されています。規模拡大をし続けるAI市場において、これまで以上に注目を集めているのがAIエンジニアです。
この記事では、AIエンジニアとはどのような職種なのか、具体的な役割や必要とされる素質、知識・スキルのほか、気になる年収などについて解説します。
出典:株式会社アイ・ティ・アール「ITRがAI主要8市場規模推移および予測を発表」
AIとは人工知能のこと
AIとは、Artificial Intelligence(人工知能)の略です。AIの定義にはさまざまなものがありますが、「人間の知的な能力を模倣して学習するシステムや技術のことを指す」と捉えるとわかりやすいでしょう。
近年、AIはデータの分析、推論と判断、学習、課題の定義と解決、さまざまな最適化計算による提案など、多くの機能を持つようになってきています。
AIを活用した具体的な商品やサービスとしては、部屋にある家具などを検出・認識するお掃除ロボットや、自動運転システム搭載の自動車などを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。また、ウェブサイトの検索エンジンにおける自然言語処理や検索結果最適化、コールセンターオペレーション業務のサポートシステムなどでもAIが活用されています。
AIエンジニアの仕事内容
AIエンジニアは、AI関連技術を活用して、さまざまなシステムや商品の開発に携わる職種です。ただし、その職務範囲は一様ではなく、AIにデータを与えて精度を上げていく「機械学習」、収集・蓄積したデータの解析を担う「データサイエンティスト」、データの分析結果から課題解決のための方法を導き出す「データアナリスト」、Pythonなどの言語を使用したプログラミングやシステム開発を行う「AI開発」の4種類に大きく分けることができます。
ここでは、AIエンジニアの具体的な業務内容について見ていきましょう。
機械学習アルゴリズムの開発や実行
機械学習とは、コンピューターが大量のデータをもとに自動的に反復学習して、そこに潜むパターンやルールを発見する技術です。機械学習エンジニアは、この機械学習を用いるための機械学習アルゴリズムの開発や実装を行います。機械学習の一種であるディープラーニング(深層学習)という手法もよく知られています。
データサイエンティストとしてビッグデータなどの分析
データサイエンティストは、ビッグデータなどを分析して必要な情報を抽出し、ビジネスの意思決定や課題解決に役に立つ知見を得る専門家です。「データから価値を創出してビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」ともいわれ、近年各業界で需要が高まっています。
データアナリストとして課題解決のための施策立案・提案
データアナリストもデータ分析の専門家です。データアナリストは、ビッグデータを分析し、意思決定や課題解決のための施策立案・提案をします。
なお、データサイエンティストは分析モデルの構築にあたることが多いのに対し、データアナリストは分析結果から課題解決のための方法を導き出し、提案を行うことが多い点が異なります。
AIモデルやシステムの開発
AI開発とは、機械学習やディープラーニングのアルゴリズムを用いたAIモデルの開発、あるいはAIモデルを実装したAIシステムの開発を指す言葉です。現在は主に、特定分野において人間以上の処理能力を有する特化型AIの開発が多く進められています。AI開発を行うエンジニアは、そのためのAIモデルやシステムの開発に携わります。
AIエンジニアが日本で人材不足となっている背景
現在、日本において、AIエンジニアは人材不足に陥っているといわれています。その原因はどこにあるのか、人材不足の背景について見ていきましょう。
労働人口減少による慢性的な労働力不足
AIエンジニアの人材不足の原因としてまず挙げられるのが、少子高齢化による労働人口の減少です。2025年以降には、約800万人いるとされる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、日本は超高齢社会となります。
そのため、企業は労働力不足を補うべく、業務効率化・生産性向上を推進しています。中でも有効策として期待されているのが、人間のサポートや、代理として作業するAIの導入です。AI導入の成功は、慢性的労働力不足を解消するカギとされています。
高い専門性が必要
AI導入のためには、AIエンジニアが不可欠です。しかし、AIエンジニアには高い専門性が求められます。大学や企業の研究開発部門でAIの研究をする人は徐々に増えていますが、その専門知識をビジネスの現場で活かし、商品化に結び付けられるような技術者の数は、特に不足しているといわれています。
AIエンジニアの重要性への理解の遅れ
例えば、ビッグデータ分析のためにAIエンジニアが重要な役割を果たすことや、AIの活用によって商品やサービスの価値が飛躍的に高まる可能性があることなどは感じていながらも、予算の都合や人員配置など、さまざまな問題でAIの活用に踏み切れていない企業もあるでしょう。
そのため、AIエンジニアを育成する環境の整備や、十分な待遇の用意がなされていないという状況も、AIエンジニアの人材不足の要因のひとつとなっています。
AIエンジニアに必要な素質
AIエンジニアは、どのような性格の人が向いているのでしょうか。AIエンジニアに必要な素質についても見ていきます。
論理的な思考能力を持っている
論理的な思考能力は、AIエンジニアに最も求められる資質といえます。例えば、AIエンジニアは計算の手順となるアルゴリズムを用いて、AIがデータからパターンや特徴を発見して、データの処理や分析を行うためのモデルを構築します。このアルゴリズムの理解やモデル構築には、論理の積み上げが欠かせません。
好奇心が旺盛である
AIは、まだ過渡期の段階にあります。日進月歩のスピードで更新される技術を活用するには、常に好奇心を持って情報を得る必要があります。また、統計学などの理数系分野以外にも、人間の思考に対する考察や脳の働きに関する興味、分析対象となる事象に対する探究心なども求められるでしょう。
AIエンジニアに必要な知識・スキル
AIエンジニア二必要な素質を押さえた上で、続いて必要な知識やスキルを見ていきます。AIエンジニアを目指す上で必要となる知識やスキルには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
AI開発言語のプログラミング知識
AI開発で現在よく使用されるプログラム言語にはPython、C言語、JavaScriptなどがあります。中でも注目度が高いのはPythonです。
近年、Pythonには人工知能の開発に役立つライブラリーが増えています。これらの言語を使ったプログラミング知識は、AIエンジニアにとって必須といえます。
統計学、数学、情報科学、工学、理学などの知識
データ分析・解析のためのベースとなる理論は、統計学を通じて学ぶことができます。また、線形代数や微分積分などの数学的知識、情報科学、工学、理学の知識がAIエンジニアに求められることもあります。
機械学習やアルゴリズムの知識
コンピューターがみずから学習してタスクを実行できるようにする機械学習は、AIをビジネスで活用する際によく用いられる代表的な技術です。多くのAIエンジニアが、機械学習や機械学習のアルゴリズムに関する知識・スキルを身につけています。
また、ディープラーニングもAIエンジニアが身につけておきたい重要な手法です。
SQL文法を含むデータベースの運用知識
AIが分析して弾き出す結果の精度を高めるには、データの量と質が重要になります。データの効率的な活用のために必要となるのが、データベース言語であるSQLなどを含むデータベースの運用スキルです。
AI開発に役立つフレームワークやライブラリーの知識
フレームワークやライブラリーに関する知識は、現在ではプログラミングに関わるほとんどのエンジニアにとって必須となっています。AI開発も例外ではなく、機械学習フレームワークやPython関連のライブラリーがよく利用されています。
クラウドサービスの知識
現在、さまざまなクラウドサービスがAIのモデル構築に役立つ機能を提供しています。クラウドサービスを活用すれば、AI開発の工数短縮やコスト削減が可能になります。
論文のリサーチ力
多くの新しい論文や研究資料が随時発表されるのも、AI分野の特徴です。最新の情報をいち早くリサーチして取り入れる能力もAIエンジニアには必要です。論文の中には英文のものも多いため、英語力も求められます。
AIエンジニアが取得したい認定資格
AIエンジニアとして活躍するために、おすすめの資格があります。社会にAIエンジニアとして認められる資格には、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITエンジニアを含む「デジタル人材の登竜門」と位置付けられている資格です。デジタル人材としての基礎教養を身につけるために、最初に取得したい資格です。
G検定
G検定(ジェネラリスト検定)は、ディープラーニングの基礎知識を有し、事業活用する能力や知識を有しているかを検定する資格です。難度はそれほど高くなく、ディープラーニング習得を目指す際に挑戦するのがおすすめです。
E資格
E資格(エンジニア資格)は、ディープラーニングの理論を理解し、実装する能力や知識を有しているかを認定する資格です。難度はかなり高く、取得すればディープラーニングに関する一定水準以上の知識やスキルを持っていることを証明できます。
Python 3 エンジニア認定基礎試験
Python 3 エンジニア認定基礎試験は、AI分野のみならず注目度の高いプログラミング言語、Pythonに関する専門知識を評価する試験です。Pythonの基本的使い方や仕組み、文法の基礎などに関する知識が問われます。
統計検定
統計に関する知識や活用力を評価する検定としては、統計検定が挙げられます。統計検定には、レベルや専門分野に即した10の検定種別があります。
AIエンジニアの将来性と年収相場
AIエンジニアの将来性や年収相場は、どのようになっているのでしょうか。具体的な求人例と併せて見ていきましょう。
AIエンジニアの将来性
画像認識、自動運転、業務自動化など、AIの活用分野は今後さらに多方面に及ぶと予測されます。それに伴い、AIエンジニアに対する需要は数年間のうちに、今よりもっと高くなっていくでしょう。国も「Society 5.0」などの未来社会のコンセプトを掲げ、その中でAIが重要な役割を果たすことについてふれています。今後は、AIエンジニア育成のための環境も整備されていくことが期待されます。
AIエンジニアの年収相場
日本での求人例を確認すると、AIエンジニアの平均年収は約600万円です。給与幅は、370万~1,100万円と幅が広い傾向が見られます。勤務先が大手企業、外資系、ベンチャー企業、研究機関かによって、年収に開きが生じているようです。
AIエンジニアの求人例
AIエンジニアの求人例を、具体的に見ていきましょう。下記は、「パーソルクロステクノロジー」の派遣求人で過去に掲載された求人例です。
■パーソルクロステクノロジーでの求人例
職種:AIエンジニア |
・仕事内容:自社開発製品(ロボット組み込み型AI搭載外観検査システム)の開発 ・環境:Python、AWS、GitLab ・年収:約460万~480万円(※) |
職種:AIエンジニア |
・仕事内容:詳細設計、実装、テスト ・環境:Python、AWS、GitLab ・年収:約440万~460万円(※) |
職種:開発エンジニア |
・仕事内容:ロジスティクスサービス開発において、AIエンジニアとして最先端技術を駆使した業務を行う ・環境:Python、JavaScript、Scala、Kotlin、JIRA、Git、Confluence ・年収:約610万円(※) |
▼「パーソルクロステクノロジーのAIエンジニア、データサイエンティストの派遣求人」についてはこちら
AIエンジニア、データサイエンティストの派遣求人
AIの進化を支えるAIエンジニアは、チャレンジしがいのある職種
近い未来、人々の生活のあらゆるシーンにAIは浸透していくと考えられます。そのAIの進化を支えるのがAIエンジニアです。AIが発展途上にある今だからこそ、AIエンジニアはチャレンジしがいのある職種だといえるのではないでしょうか。
エンジニアの自己実現をサポートするパーソルクロステクノロジーでは、AIエンジニアをはじめ、ITエンジニア、クリエイティブ職、機電エンジニアの人々に向け、さまざまな求人情報を掲載しています。エンジニアとしてのキャリアプランを相談したい方はぜひこの機会に、パーソルクロステクノロジーのサービスをご利用ください。
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キャリア支援について |IT・機電エンジニアの派遣求人ならパーソルクロステクノロジー
※記事に記載の内容は、2023年2月時点の情報です