介護事業者に対してITのチカラで全面的にサポートをしている株式会社ビーブリッド。前回の記事ではITの領域を超えて、あらゆる問題解決にあたっていることが日常業務内容から伺い知ることができました。
今回は、エンジニア出身の代表竹下康平さんに、介護業界が抱えている問題を解決するIT技術や介護分野で活躍するエンジニアの未来について詳しくお伺いしました。
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いま介護業界で求められているのは、問題解決型のエンジニア
—今後、介護の分野に限らずエンジニアの働き方として、「エンジニア×○○」という付加価値のあるエンジニアが増えてくると思うのですが、御社はその先駆けではないかと思います。
竹下:エンジニアっていうと、ビーブリッドは今までのエンジニアの概念とは少し違うかもしれないです。
私の話でいえば、創業前はエンジニアとして何か作ったり、設計したり、コンサルしたりしていました。
いまはハードの問題でも、ソフトの話でも、人との交渉事でも何でもしています。
介護事業者さんが、ビーブリッドに相談すれば、時間はかかるかもしれないけど何かしらの答えは出る。「絶対に解決するんで待って下さい」という形ですね。
基本的にビーブリッドがやっていることは、「介護事業者さんがお客さん」と決めているだけです。だから、ITに限らず何でもやっているという感じですね。
たとえ優秀なソフトウェアエンジニアでも、それまでの経験が活きるというわけではありません。
例として挙げるとすれば、建設中の有料老人ホームの現場でそのエンジニアが平面図を見せてもらって、ホームの業務に必要な所に有線LANが来ているかとかを確認したり、消防検査のため電話番号をいつまでに引かなきゃいけないとか。または、アナログ回線は何本必要か、光回線は何本必要かと矢継ぎ早にいわれても、そのエンジニアはフリーズしちゃいますよね。でも現場は実際そういう状況なんです。
反対に、配線工事とかをしてきたフィールドエンジニアに「お客さんのパソコン、ブルースクリーン出たみたいだから、ちょっと見てきて」とか言ってもやっぱりできない。
—そうすると、御社に入るとOJTは、必ず現場に行って要望を聞くということですか?
竹下:そうです。だから、どんなスーパーエンジニアでも現場では固まってしまいますね。うちは「介護」っていうキーワードがつく領域の仕事なら、何でもやるので。
介護関係のことをするので、もちろん介護業務も知らないといけない。介護の知識があるエンジニアなんか、そうそういません。なので、ほとんどが素人です。
なので、素人大歓迎。むしろ、「これから介護業界のことが分かるエンジニアになりたい」という人が求められますね。
介護業界にITテクノロジーが加われば、利用者と介護士の双方にとってメリットが生まれる
—医療分野ではIT化が進んでいますが、介護業界はまだまだという状況について、その課題と解決方法をお聞かせ下さい
竹下:未開拓な部分が大きい分、大手のメーカーさんが作った介護向けのガジェットに関して意見が欲しいという依頼が多々あります。
私の視点からだと、介護向けに作られていないテクノロジーでも「介護の現場で役立つのに」と常々思うことがあり、自動運転技術やセンサーなんてまさに介護を根底から変えてしまう可能性がありますね。ちょっとした買い物にも出かけられるし、旅行にだって行けます。
IT業界の人は、介護業界のことを知らないし、介護業界の人もITのことに詳しくないから、テクノロジーを利用するという発想はなかなか生まれにくいのかもしれません。
ビーブリッドでも、いくつか介護の現場で利用されているガジェットを取り扱っています。
おもいでばこ/株式会社バッファロー
▲思い出すことは認知症ケアにおいて大切な行為であるという発想から生まれた、データ管理の楽なデジタルフォトアルバム「おもいでばこ」
アイアンキー/株式会社フォースメディア
▲忙しい介護の現場でパスワードやマイナンバー管理などの負担を減らし、強固な暗号化機能で情報を管理する指紋認証「アイアンキー」
—具体的に介護の現場で役立つテクノロジーってどのようなものがありますか?
竹下:動体認識機能のついた見守りカメラってありますよね。Wi-Fiでデータを飛ばしてスマートフォンやパソコンで見られるものです。
天井吊りの防犯カメラは後から取り付けるのは難しいけど、見守りカメラなんかはWi-Fi環境さえ整っていれば、死角を作る事なく、簡単に付けることができますよね。そうなると、介護事業者は多少楽になるはずです。
ベッドや床に離着床を感知する動体検知センサーを設置したり、生態情報を監視するセンサーがベッドにあれば、体温から脈拍を計測して、いつもとバイタルが違うなとかがすぐに分かりますよね。
あと、行方不明になってしまうお年寄りのニュースがあったりしますが、その対策としてビーコンとドローンを組み合わせ、行方不明者を探知する仕組みを開発すればよいのではないかとも考えます。
でも、仮にそんな商品やサービスがあったとしても、介護事業者としては「よく分からない」ものとされ、受け入れてもらいにくい現状があります。
—だからこそ、介護に精通したビーブリッドさんにお話が集まるということですね。
モニターをしたり、ITで実現可能なアイデアを提供することができるのも私たちぐらいかもしれません。介護業界のITリテラシーを上げたり、テクノロジーの力を使って、介護の仕事を少しでも楽に安全にしていくのが今後の課題ですね。
介護業界のエンジニアは、多様化するエンジニアの価値をダイレクトに体感できる
—将来的に介護に関するエンジニアは、従来のエンジニアと比べて、立ち位置や受け止められ方など、どのような変化があると思いますか?
竹下:エンジニアって、基本的に怒られる仕事なんです(笑)。できて当たり前の世界で、予算通りに作って、納期に間に合って、寸分違わず導入して当たり前っ感じですよね。たとえ2〜3日早く納品しても褒められるということも少ない。
ところが、介護業界だとほんの些細なことで感謝される。ヘルパーさんたちは、日々サービスを提供して、感謝されてお給料をもらってます。これって、コンピューター業界とは真逆をいくもの。
将来的にエンジニアは介護領域の仕事をすると、自分の立ち位置とか存在意義、エンジニアとしてのアイデンティティが変わってくると思いますよ。
Excelでちょっとしたグラフを作るだけでも、ものすごく褒められたりしますからね。「すげー、神の手だ!」って(笑)
—エンジニアが介護事業者のサポートをすることで、ビーブリッドの存在意義も高まっていきますよね。
竹下:そうだと思います。それを確立していくのが僕の役目ですね。やっぱり、介護業界って面白いですから。
—価値観の多様化が進んだことで、エンジニアの役割も多岐にわたっています。その中でもビーブリッドのような「介護事業に携わるエンジニア」の重要性がよくわかりました。本日はどうもありがとうございました。
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介護の現場でエンジニアが大活躍!?ITリテラシーとテクノロジーで福祉を支えるビーブリッドの仕事場に潜入【IT×介護】
竹下 康平さん
株式会社ビーブリッド代表取締役
1975年生まれ。ソフトウェアプログラマー、システムエンジニア、システムコンサルタントを経て、2010年に株式会社ビーブリッドを創業。創業前(2008年)介護業界での業務に従事し、それ以降介護業界用のITを考慮し続け現在に至る。現・一般社団法人クラウド利用促進機構理事を兼務し、IT業界(クラウドコンピューティング)にも精通している。