電車に乗りたくないし、子どもに「おかえり」と言いたい。ラシュリエLLP 吉岡綾が在宅エンジニアを選ぶ理由

「満員電車の人ごみが苦手で、なるべく通勤したくない」
「子どもが熱を出したから、本当は会社に行かず在宅で働きたい」

企業に勤める方のなかには、こんな悩みを抱えている人も少なからずいるのではないでしょうか。多くの会社は出社が義務付けられています。それに、制度的には在宅勤務が可能でも、さまざまな理由で利用するのが大変なケースもあるかもしれません。

今回、お話を伺った吉岡綾さんは「家で働きたい」という想いから在宅エンジニアを選び、子育てをしながらラシュリエLLPというweb系フリーランス集団の代表を務めています。そんな吉岡さんに、今の働き方を選んだ理由についてお聞きしました。

「家でできる仕事ってなんだろう?」が出発点

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――吉岡さんが在宅で働きたいと思いはじめたのはいつ頃からですか?

吉岡:うちは父が会社をやっていて、自宅で働いている姿をずっと見ていたので「家で働くこと」が私にとって自然だったんです。

――在宅でできる仕事のなかで、エンジニアを選んだのはどうしてでしょうか?

吉岡:中学生のときにチャットをやっていて、その仲間の中でホームページを作るのが流行っていたんです。自分も流行りに乗ってホームページを作って、それが楽しくて。ITに親しむようになりました。

高校生になったときには「エンジニアになろう」と決心していましたね。私が通っていたのは進学校だったんですけど「エンジニアになるなら大学に行く必要性はない」と思って、授業中にJavaの本を広げて独学していました(笑)。

――すごい思い切りですね(笑)。

吉岡:でも独学していくなかで学習に行き詰まってしまって「これは学校に行って教えてもらわないとだめだ」と思い、web系の専門学校に行くことにしました。

プログラミングは心の安定剤でもあった

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――専門学校に行ってもプログラミングに挫折してしまう人もたまにいますが、吉岡さんは楽しんで続けていましたか?

吉岡:はい。というより、心の支えになっていました。

――当時何か大変なことがあったのですか?

吉岡:私、群馬から東京に出てきて専門学校の寮に入っていたんですけど、当時大変なことが続いて心が病んでいたんです。実は高校のときと専門学校1年生のときに、自分にとって大切な人たちが相次いで自殺で亡くなって、追いつめられていて。

でも、そんな精神状態でもプログラミングだけはできたんです。プログラミングは私にとっての心の安定剤でもありました。

人と話すのってすごく気を遣うというか、神経削られる面があると思うんですけど。プログラミングは、私が書いた内容に対して、淡々と返してくれる。ダメだった場合も、「ここがダメだったよ」って正直に答えてくれます。それが好きで。

会話ではないんですけど、会話をしているような気分で、気を遣わずにやりとりできます。当時は人とコミュニケーションを取っていなかった分、プログラムとの会話が癒しになっていたんです。

人間って、話している内容と行動している内容に矛盾がある人が多いじゃないですか。そういう嫌なところがなくて、書いてあることを正直にやってくれるプログラミングに、心が落ち着きます。

インターネットは、本当にいいやつ

――エンジニアとして仕事をし始めたのは、いつ頃から?

吉岡:専門学校の頃から、複数のスタートアップ企業でお仕事をリモートでさせていただいたんです。それでなんとかやっていけたので、「このまま本職にできるな」と思いました。

クライアントさんは比較的小規模な企業が多かったので、要件定義から開発、リリースまで全工程を任せていただけるケースがたくさんありました。それで、フロントエンドからバックエンド、インフラまで全部に手を広げていったんです。そしたらいつの間にか、色々なことを自分でできるようになりました。

――キャリアが浅いうちから幅広い領域に手を出すのは、大変ではなかったですか?

吉岡:私の場合は最初からそうだったので「エンジニアの働き方ってこうなのかな」と思って、それほど苦ではなかったです。それ以外の働き方を逆に知らなくて、それが当たり前だったんですね。

――自分のスキルを磨くために、どんなことをしていましたか?

吉岡:勉強は、とにかく「検索しまくる」という感じでした。私、コミュ障で人に聞くのがあまり得意じゃないので、とにかくインターネットを頼りにしていました。人に聞くくらいなら自分で調べようという感じで(笑)。検索スキルをフル活用してやってきましたね。

――でも、インターネットって本当に、いいやつですよね。

吉岡:いいやつです。本当にいいやつです。

――あいつは何でも教えてくれますからね。

吉岡:もう、大先生です。

――エンジニアの仕事をしていて楽しい瞬間ってどんなときですか?

吉岡:わからなかった問題が少しずつ解決できるときですかね。私はプログラミングするとき、最初にバーッと適当にコードを書いて、エラーを出しながら直してを重ねていくんですけど、それが解消されたときは楽しいです。それから書かれているコードの意味がどうなっているかがわかったときも楽しい。プログラミングってその連続なので、私にとってはずっと楽しいんです。

緩くつながる、仲間たち

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▲吉岡さんが代表を務めるラシュリエLLP。サーバ構築からシステム開発、デザインに至るまで、さまざまなスキルを持ったメンバーが所属している。画像はラシュリエLLP公式webサイト(https://lachelier.com/)より。

――web系フリーランス集団であるラシュリエLLPを立ち上げようと思ったのはどうしてですか?

吉岡:ラシュリエLLPをスタートする少し前に、お悩み相談のボランティア団体に所属していて、1日100件くらいの悩みを聞いていたんです。そこで人間関係に悩む人や、働きたいけど条件が合わずに働けない人がすごく多いことを知りました。

でも、自分はすごく自由に働けていたので「こういう働き方(在宅フリーランスエンジニア)があるんだよ」と広めたり、あるいは自力だけでは在宅勤務まで持っていくことが難しいけれど、サポートしてもらえたらできるという人の支援をしたいと思うようになりました。それが、ラシュリエLLPのきっかけになっています。

――「ラシュリエ」というフレーズには、どんな意味が?

吉岡:造語なんです。「緩く」「つながる」という言葉をフランス語に翻訳して、くっつけました。ラシュリエLLPのロゴには猫が描かれているんですけど、これは猫の生き方に憧れているからです。猫ってすごくマイペースだけど、それが周囲に受け入れられている。そんなライフスタイルがいいなと思って。

ラシュリエLLPもメンバーが猫みたいに、自由なことをやって、誰かがそれをとがめることなく、受け入れられるような環境にしたいという思いを込めているんです。

エンジニアなら、場所や環境にとらわれずに働ける

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――そもそも、吉岡さんがそれほど在宅ワークを大事にするのはなぜですか?

吉岡:理由は3つあります。まず、出勤したくない。どうしても電車に乗りたくないんですよ。電車に乗ると具合が悪くなってしまうので、嫌なんです。

次に、大勢の人がいるなかでプログラミングをすると、私はすごく作業効率が落ちてしまいます。

3つ目は、今子どもが3歳なんですけど、これから幼稚園、小学校に通うようになったら、帰ってきたときに「おかえり」って言える環境を用意しておきたいんです。そういう子どもとの時間も大切にできるから、在宅を選んでいます。

――そう考えると、出産や育児などでライフスタイルが変わる女性に、在宅エンジニアはすごく向いているんですね。

吉岡:私は理想的な職種なんじゃないかなと思っています。子どもが小さい頃って、すぐに体調を崩しちゃったりするじゃないですか。そういうとき、会社勤めだとお家にいったん戻って別の日に残業したりとか、もしくは子育てしながら働くのがそもそも難しいことも多いです。

そういう場所や時間などの融通が利きやすいのが、エンジニアという仕事の良い面だと思います。私の場合は、子どもが生まれたばかりの頃は、お腹を満たして不快なものを取り除いてあげれば寝てくれたから、抱っこしながら片手でプログラミングをしていました(笑)。

――吉岡さんのライフスタイルに、エンジニアがすごくマッチしているんですね。最後に、これからエンジニアになりたいと思っている人へメッセージをお願いします。

吉岡:プログラムって、難しいものっていうイメージがあると思うんですけど、実はやっていることは全然難しくありません。中身がわからなくてブラックボックス化してしまうから、難しそうに見えるだけなんです。書かれていることを丁寧に読めば、何をやっているか絶対にわかると思います。

投げ出してしまうんじゃなくて、ゆっくりコーヒーでも飲みながら、だらだらとコードを読んでみてほしいです。プログラムはすごく素直に処理しているだけ。その素直さを、楽しんでみてください。

取材協力:ラシュリエLLP(https://lachelier.com/

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