27歳で独立した若手フリーランスの挑戦 「将来はマネジメントのプロフェッショナルに」

2022年10月に行われた総務省統計局の調査によると、フリーランスを本業とする人は約209万人、そのうち20代は約10万人。若いうちにフリーランスという働き方を選んだ人は、どんなキャリアを経て、どんな思いで決意したのでしょうか。

今回は27歳で独立し、フリーランスエンジニアとして活躍する青木利雄恩さんにお話を伺いました。青木さんは大学卒業後、証券会社のシステム子会社を経て独立。会社を辞めるかどうか「約2年悩んだ」といいます。そんな青木さんに当時の思いやその後のキャリア、これからの目標を聞きました。

青木 利雄恩(あおき りおん)
青木 利雄恩(あおき りおん)
2022年10月に、約5年勤めた証券会社のシステム子会社からフリーランスとして独立。Web系の運営会社で企画、PM、PMOとして参画する。現在は、独立系Slerの案件に携わる。エンジニアの支援団体「EndeaBar」も運営。交流会やキャリアサポートを通じて、より多くのエンジニアが自分らしく、ありのままの姿で活躍できる環境づくりに励む。

 

27歳でフリーランスに転身するまでの道のり

――これまでのキャリアの道のりを教えてください。

大学では情報工学の勉強をしており、就職活動の中でIT業界に興味を持ち始めたのが、エンジニアになるきっかけでした。業界の中でも特に「より多くの人に影響を与えられる分野は何だろう」と考えたとき、私たちの暮らしに身近なお金を取り扱う仕事がしたいと思い、新卒で証券会社のシステム子会社に入社しました。入社後は、主にPM(プロジェクトマネージャー)やチームリーダーなどを務めました。約5年間勤務した後、フリーランスとして独立し、今に至ります。

――フリーランスに転身するきっかけや経緯を教えてください。

同じ業界の中でも、色々な分野を経験したいと思ったことがきっかけでした。以前勤めていた会社では、上司と私の2人体制で担当システムの開発・保守を行っていたので、将来は自分が上司の立場になり、同じシステムを担当し続けるんだろう、となんとなく見通していたんです。そんな中で、他のことにもチャレンジしてみたいという思いが強くなり、転職を意識するようになりました。でも約2年間、悩みましたね。前職は福利厚生もしっかり整っていましたから。そんなときに、背中を押してくれたのは友人でした。「転職するかどうか悩んでいる」と相談したら、フリーランスとしての働き方やエージェントの紹介をしてくれて、独立の道を決意しました。

 

――若い年齢での決断は、どんな思いでの挑戦でしたか。

当時勤めていた会社では、先が見えていることが多かったので、新しい経験ができ、面白そうな方を選ぼうと思いました。正直なところ、綿密な計画をしていた訳ではありません。周囲にモデルケースはなかったのですが、未知の働き方にわくわくしたことが決断を後押ししました。

当時は27歳だったので、フリーランスとして3年活動してみて、30歳になったときに改めて働き方を見直すことも視野に入れていました。そのときに、正社員とフリーランスどちらの働き方も経験し、それぞれのメリット・デメリットも理解した上で選択できるということは、私の強みになると考えたんです。

もしまた(出戻りを含めた)転職をすることになったとしても、自分で決断し、複数の企業を通してより多くのことを経験してきたフリーランスとしての職歴は、大きなアドバンテージになると思っています。

――独立に至るまで、または独立してから役に立ったと感じるスキルや経験を教えてください。

以前勤めていた会社が金融系ということもあり、業務手順や成果物の仕上がりを厳しく精査される環境を経験できたことは、大きなメリットでした。前職での精度が基準になっているので、どの現場でも対応できる自信がついているなと感じます。フリーランスとして活動してからは気持ちの余裕ができ、依頼主からの要望以上の成果を提供できる姿勢でいられる強みを持てています。

また、どのような職種でも共通することではありますが、コミュニケーション能力は必須スキルだと思います。特に私は、独立してからPMやPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)としてのポジションでいることがほとんどなので、プロジェクトの管理・進行を適切に行うためのコミュニケーションが欠かせません。会社員としての社会人経験で得たコミュニケーションスキルは、フリーランスになってからも活きています。

 

会社員とフリーランスの働き方の違い

――独立してからの業務内容を教えてください。

フリーランスとして初めて契約を結んだのが、Web系の運営会社へPMOとして参画するという案件でした。ユーザーやシステム担当者との仲介を担当していたのですが、前職の金融系と比べて精度よりもスピードを意識する必要があり、そのギャップに慣れるのに苦労しました。判断基準にマニュアルなどはないので、利用者に影響のない範囲で制度に影響が出ないようにするためにはどうすれば良いのか、経験の長いPMOに適宜確認をとったり、エンジニアと細かな調整をしたりして、徐々に適切な判断ができるようになっていきました。

現在取り組んでいる独立系SIerの案件では、プロジェクト管理やユーザーとの折衝を担当し、状況によって設計やテストを兼務することもあります。この案件は、私が参画する前までは、依頼元に共有する業務内容が大まかだったため、依頼元の要望と成果物の仕上がりに差が発生してしまうことがありました。そこで私が参画してからは、事前に具体的な工程やスケジュールの提示と、そのときの優先度に応じた臨機応変な対応、細かな報告・連絡・相談をするようにしています。こまめにコミュニケーションをとることで業務が見える化し、依頼元にも安心感を与えられ、結果的に満足度の高い成果を提供できているのではないかと感じています。

 

――フリーランスになって、どのような変化がありましたか。

前職では、残業をすることがかなり多かったのですが、フリーランスになってからはそれがほぼなくなりました。自分の時間をつくれるようになったので、気持ちの余裕が生まれましたね。自由に過ごせる時間を活用して、2023年5月にはエンジニアの支援団体「EndeaBar」を結成しました。エンジニアの交流会やキャリアサポートの活動を行い、より多くのエンジニアが楽しく、いきいきとありのままの姿で活躍できる環境にしていけるよう取り組んでいます。

――これまでの案件は、どのように獲得してきましたか。

これまで携わってきた案件は全て、エージェント経由での紹介です。私は、成果物の完成が契約内容となっている「請負契約」ではなく、定められた行為の遂行が時給方式などで契約内容となっている「準委任契約」を結んでいるため、一定の報酬を必ず受け取れる安心感があります。

 

一社目では、事業側としての立ち回りが多く、企画業務なども兼任していました。次第にエンジニアとしてマネジメントを行う役割を確立したいと感じ、現在の二社目に移りました。

 

キャリアを考えるときは「変われる方向を目指し、行動すること」

――フリーランスへのキャリアチェンジに必要なことや大切な考え方を教えてください。

固定概念をなくすこと、それから「フリーランスって大丈夫なの?」「今の会社にいた方がいいんじゃない?」といった周りの声に負けない芯を持ち続けることが大切です。私も転職を決断できなかった2年間があり、迷う気持ちも理解できます。ただ、迷うというのは自分自身で何か変わりたいと願っているということだと思います。それなら変われる方向を目指し、何か行動を起こしてみる。それが良い未来につながるのではないでしょうか。

また、私の場合は、当時勤めていた会社の上司や同僚ではなく、会社外の知り合いに相談をしたときにフリーランスへの道が広がりました。今の自分がいる環境より外の世界を知っている人脈を作ることも役に立つと思います。

――フリーランスエンジニアとして活躍するには、どのような人が適していると思いますか。また、一緒にお仕事をして好印象なのはどのような人でしたか。

会社員・フリーランス問わずですが、タスク管理やスケジュール管理をしっかりできること、定められた内容や期限を守ることができる人は、気持ちよく一緒に仕事ができるなと感じます。

万が一遅れが発生してしまう場合でも、迅速で細やかな対応をして、周囲への影響を最小限にしようと動ける人からは、良い印象を受けます。

――今後の展望や取り組みたいこと、それを実現するためにどんなことに力を入れていますか。

マネジメントに特化した人材になりたいと考えています。そのために、現在はPMP®※の資格取得に力を入れています。プロジェクトマネージャーとして、より現場に即した形で知識を活用し、実務を遂行できること、また資格保有者として活動の幅を広げたいです。

業務の中では、PMP®でも強くいわれているコミュニケーションをとることの大切さを意識し、年代を問わず、全ての人とまんべんなく対話をするようにしています。仕事で関わりのある方以外との交流も心がけ、今後の活動につながる情報交換の場としても運用していきたいです。

※プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル。プロジェクトマネジメントのスキルを証明する国際的な資格。

10年後は誰かに「教える」ことができるエンジニアになっていたいですね。それを実現するために、資格取得や団体運営など、今からできることに力を入れていきます。

 


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