RPAによる業務効率化が注目される中、RPAツールの導入と既存業務の自動化を担うRPAエンジニアの果たす役割が大きくなっています。
ここでは、RPAエンジニアとはどのようなことを行う職種なのか、その仕事内容や必要な経験、スキル、学習方法、将来性などについて解説します。
ロボットによって作業や業務の自動化・効率化を実現するRPA
RPA(Robotic Process Automation)とは、主に人がPCを使って行う定型的な作業や業務を、ソフトウェア型のロボットによって自動化・効率化する仕組みのこと。PCのマウスやキーボードの操作を、RPAによって自動化させることができるのです。
現在、RPAは下記のような業務を人間に代わって行うことができます。
<RPAが可能とする業務>
・発注・納品処理、請求書の処理など「手順が決まっている単純な定型業務」
・定型的な質問や要求に応える「電話・メール対応などのサポート業務」
・プログラムに設定した条件分岐のルールなどに従って行う「データの収集・分析業務」
・顧客状況などに合わせて行う「メール一斉配信業務」
RPAエンジニアの仕事内容
RPAに関する技術面のスペシャリストといえるのが、RPAエンジニアです。RPAエンジニアの仕事内容を、実際の業務の流れに沿ってご紹介します。
1. 導入検討
まずは、クライアントの社内で行われている定型業務をRPAで自動化できないか、RPAエンジニアが既存業務の分析を進めていきます。
そして、業務内容の分析結果から、RPAを提供する業務の範囲を決め、要件定義を行い、自動化による効果を予測して、クライアントに説明。そこで導入について検討をしてもらい、承諾を得られれば次の段階に入ります。
2. 開発
次に、要件定義に従って、RPAツールを使った自動化の仕組みを構築していきます。これまで人間の手で行っていた作業を分析してシナリオ化し、条件による分岐なども考慮してフローを作っていきます。こうした作業は、「ロボットの設計」などと呼ばれることも多いです。
3. 運用・保守
運用段階に入ったら、設計したロボットが正しく動作し、効率化などクライアントが望んだとおりの結果が出るかどうかの検証をします。その結果、いくつかの修正や調整を行うこともよくあります。いったん完成した後も、業務内容やクライアントが要求する内容の変化によって修正を施すケースも多いです。
また、RPAツールの操作マニュアルの作成や、現場の担当者への導入研修、問い合わせ担当などのサポートもRPAエンジニアの担当範囲となることが多いでしょう。
RPAエンジニアに必要な知識・スキル
RPAエンジニアに求められる経験やスキルとは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、RPAエンジニアに必要な経験・スキルをご紹介します。
システム開発の経験
RPAエンジニアになるには、システム開発の経験があると有利です。特に、RPAの導入検討や開発のフェーズで行う業務は、SEやプランナーが担当する仕事内容と似ています。
RPAの開発経験があればもちろんそのまま評価をされますが、一般的なシステム開発の経験や知識に対しても一定の評価を得られるでしょう。
Access、Excel VBAなどの知識
RPAエンジニアの仕事には、AccessやExcel VBAの知識、スキルが必要とされるケースもあります。
Accessは、リレーショナルデータベース方式のデータベース管理ソフトです。Accessを使って大量のデータを蓄積・保存・活用している企業は多く、そのデータを扱う業務をRPAで自動化したいという要望があれば、Accessに関する知識が必要となります。
Excel VBAは、Excelの機能を拡張するプログラミング言語です。Excelへのデータの記入や抽出、転記などをRPAで行いたいときは、Excel VBAを利用することがよくあります。Excel自体の知識はもちろん、Excel VBAについても精通しているとRPAの開発に役立ちます。
AccessやExcel VBAの知識、スキルをベースにプラスアルファのスキルも身につけていればRPAエンジニアとしてより重宝されるでしょう。
HTMLに関する知識
ウェブサイトから特定の情報を探し出して自動的に抽出する技術は、ウェブスクレイピングと呼ばれます。そのための専用ツールもありますが、RPAを用いてスクレイピングを実現することもできます。その際、ページのHTML構造を解析して情報を抽出するために、HTMLに関する知識が必要です。
RPAツールに関する知識・経験
RPAツールに関する知識も、当然ながら必須です。国内製品、海外製品を含め、世に知られているRPAツールについての知識と経験があるといいでしょう。少なくとも、数種類の製品に関して知識を持ち、導入・運用経験を持っていることが求められます。
RPAの学習方法
未経験の人がRPAエンジニアを目指すには、どのような方法があるのでしょうか。RPAの主な学習方法をご紹介します。
基礎知識を学ぶ
まずは、ウェブ上の情報や書籍、解説動画などを活用して、RPAに関する基礎知識を学びましょう。RPAでできることとできないこと、活用シーン、どんな種類のRPAツールや導入事例があるかといった基礎知識を得ていきます。各RPAツールの資料を入手して、機能や具体的な使い方について知っておくと、RPAの活用イメージがつかめるはずです。
実際にRPAツールにふれる
代表的なRPAツールを、実際に操作していくことも大切です。製品によっては個人でも評価版などの無料トライアルを利用できます。チュートリアル動画視聴やeラーニングのサービスが受けられることもあるので、確認してみてください。実際の操作感を知り、RPAツールに親しむプロセスも重要です。
資格取得を目指す
RPAエンジニアとして活躍するために最も直接的なアピール材料となるのが、RPA関連資格の取得です。RPA関連資格は、ベンダーごとに製品別の資格が用意されています。
・UiPath(UiPath Certified Professional)
UiPathは、ルーマニアで設立され、現在はアメリカに本社を置くUiPath社が提供するRPA製品「UiPath」関連の資格です。製品に関するスキルを証明するための「アソシエイト」と「デベロッパー上級」の2種類が用意されています。
アソシエイトはUiPathの基本的な使い方と業務自動化の基礎スキルを認定するもの、デベロッパー上級はより高難度なUiPathとRPAに関する知識と理解を求めるものです。
・WinActor(RPA技術者検定)
NTTグループが提供する国産RPA「WinActor」関連の資格もあります。「RPA技術者検定 アソシエイト」と「RPA技術者検定 エキスパート」の2種類が用意されています。
アソシエイトはWinActorの基本的なスキルを証明するもの、エキスパートは実務的なスキルを証明するものです。
・Blue Prism(Blue Prism認定プログラム)
Blue Prism認定プログラムは、イギリスのBlue Prism社が提供するRPAツール「Blue Prism」関連の資格です。同製品のコンセプトや機能について理解度を深めるためのプログラムであり、日本語での受験もできます。
・BizRobo!(BizRobo!検定)
アメリカKofax社のRPAツールをもとに、RPAテクノロジーズ社が日本企業向けに改良したRPA「BizRobo!」関連の資格もあります。e-ラーニングや研修が実施されており、その習熟度を確認するために活用できます。
・Automation Anywhere(Automation Anywhere Certified)
アメリカのAutomation Anywhere社にも、同名製品関連の資格、Automation Anywhere Certifiedがあります。社会人向けとして、「Advanced」と「Master」の2種類が用意されています。
RPAエンジニアの将来性と年収相場
最後に、RPAエンジニアの年収相場などを確認していきましょう。RPAエンジニアの将来性や需要、求人例と、年収例をご紹介します。
RPAエンジニアの将来性
RPAは2017年頃から国内でも注目されるようになり、大手企業を中心に導入が進んでいきました。その背景にあるのが、労働人口の減少による人手不足です。業務の自動化や効率化はDX推進の一環とも捉えられ、ほとんどすべての企業にとって重要な課題とされています。RPAは、その課題解決のための有効な対策のひとつとして期待されているのです。
2023年現在、RPAは本格的な普及期に入っているといわれます。株式会社矢野経済研究所が発表した「RPA市場規模推移・予測(2020年)」によれば、2023年度のRPA市場規模は事業者売上高ベースで1,520億円、そのうちRPAツール製品は520億円、RPA関連サービスは1,000億円まで拡大すると予測されています。
■RPA市場規模予測
出所︓(株)矢野経済研究所「RPA市場に関する調査(2020年)」2020年12月7日発表をもとに作成
※RPAツール製品はサーバー型、クライアントPC型いずれも含み、RPA関連サービスはRPA診断サービスやRPA導入支援サービス、RPA業務プロセス自動化サービス、RPA活用業務プロセス改善コンサルティング、RPA運用保守サービスなどRPA関連サービス全般を対象とした。
▼「RPA市場に関する調査を実施(2020年)」についてはこちら
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2599
RPAエンジニアの現在の需要
RPAの普及とともに、RPAエンジニアの需要も高まっています。顧客の業務効率化実現に向けて、RPAエンジニアが中心となってRPA導入支援を行い、その導入プロセスにおいて、RPAエンジニアが技術的なサービス提供だけではなく、コンサルティング的な役割を担うことも求められているのです。
今後、中小企業へもRPAの導入が進めば、そうした需要はさらに拡大していくでしょう。RPAエンジニアには、企業の業務内容に応じてどのような仕組みを導入するのが最適なのかを提案し、サポートするスペシャリストとしての活躍が期待されています。
RPAエンジニアの年収相場
日本での求人例を確認すると、RPAエンジニアの年収の目安は、およそ450万~800万円以上と幅があるようです。ほかのIT系エンジニアの平均年収と比較すると、同じレベルかそれ以上といった相場のようです。
RPAエンジニアの求人例
RPAエンジニアにはどのような求人案件があるのかも見ていきましょう。ここでは、過去に大手求人サイトで掲載された求人例をご紹介します。
■RPAエンジニアの求人例
職種:RPAエンジニア |
・仕事内容:RPAによる顧客の業務効率化を目標とした、開発、運用、進捗管理 ・環境:WinActorまたは他のRPA製品 ・年収:350~700万円 |
職種:RPAエンジニア |
・仕事内容:RPAエンジニアとして、RPAの新規事業プロジェクトに参画 ・環境:BizRobo、UiPath、WinActor ・年収:420~530万円 |
職種:サーバーエンジニア |
・仕事内容:工場系システムRPA化対応 ・環境:RPA(UiPath)、VBA ・年収:350~650万円 |
需要が高まり続けるRPAエンジニアは、理想の年収やキャリア形成を得るチャンスがある
業務効率化の推進が必要とされればされるほど、RPAエンジニアが担う役割は大きくなっていきます。DX推進やリモートワークの普及などとともに、RPAは時代の流れでより一層、社会に普及していくことが見込まれるでしょう。同時に、RPAエンジニアの需要も高まっていくため、年収の向上も期待できるはずです。
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※記事に記載の内容は、2023年1月時点の情報です