Google Analytics 4とは?使い方・分析方法と旧バージョンとの違い
Googleアナリティクス4プロパティは、従来のGoogleアナリティクスよりも高度なユーザー行動分析を可能としたアクセス解析ツールです。最大の特徴はWebサイトおよびアプリの横断的なユーザー行動の一元管理にあり、よりカスタマージャーニーに即した形でユーザー行動を追えるようになりました。
ただし、2020年10月から本格運用が開始されたため、2021年3月現在では多くの情報は未だ出回っておりません。そこでこちらでは、旧バージョンとの違いや基本的な使い方・設定方法を紹介していきます。
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Google Analytics 4 property(GA4)とは
Googleアナリティクス4プロパティ(以下、GA4)とは、Googleが2020年10月14日から提供を開始した最新のGoogleアナリティクスです。2019年8月から「アプリ+ウェブプロパティ」としてβ版がサービス提供されていましたが、正式版へのアップデートにあたって名称がGA4へと変更されています。
なお、2021年3月時点では、GA4へのアップデートおよび運用は無料となっています。
クロスプラットフォーム分析
従来のGoogleアナリティクス(以下、GA)との大きな違いは、Webサイトとアプリそれぞれのアクセスを1つのユーザー行動として把握できる(クロスプラットフォーム分析ができる)点にあります。β版でもクロスプラットフォーム分析は可能でしたが、GAのデフォルトとして設定できるようなったのは今回が初めてです。
プライバシー保護への配慮
また、クロスプラットフォーム分析以外にもさまざまな機能が搭載されており、複雑化するユーザー行動の把握・予測に加え、3rd Party Cookieを例外なくブロックするITP2.0(プライバシー保護)などに対応した計測を行うようアップデートが施されました。
プライバシー保護の規定に対応しつつ、新しいユーザー行動を詳細に追えるようになったといえるでしょう。
Google Analytics 4 と旧バージョンの違い
GA4と旧バージョンでは、主に以下の点が異なります。
- 機械学習の導入
- ユーザーを中心とした行動の把握
- 自動計測
- より深いデータの分析・活用
また、これらの違いに加えて、GA4ではプライバシー保護の問題にも入念に対応しています。
- GDPR(EU一般データ保護規則)
- CCPA(カリフォルニア州 消費者プライバシー法)
- ITP2.0実装にともなう3rd Party Cookieブロック など
Googleは2020年1月にサードパーティークッキーの利用に制限をかける方針を示したことで知られていますが、GA4ではクッキーを利用したユーザー行動の把握(サイトトラッキング)を制限する代わりに、代替技術(ブラウザにAIを読み込む形式)を活用したクロスプラットフォーム分析が採用されています。
機械学習の導入
GA4にはAIを活用した機械学習が導入され、GA上に蓄積されたデータから将来の売上や解約率などを計測できるようになりました。
機械学習の導入とは、例えば企業がマーケティングキャンペーンを行う場合、ユーザーがどのようにコンバージョンに向かうアクションを取り、どういった形・タイミングで解約するかを把握できるようになったことを意味します。この機械学習による未来予測は、特に定額制サービス(サブスクリプション)の中長期的な収益予測を可能にし、経営判断を下すひとつの指標として機能すると期待されているのです。
また、こうした機械学習による新しい計測方式は、Googleが提唱する「認知から一気に購入に至る消費行動(パルス消費)」のデータ収集・予測にも対応し得る可能性があります。
スマホ操作中に突発的に買いたい気持ちが高まり購入意思を固める「新しい消費行動」を予測できるようになれば、マーケティング対策領域は拡大し、施策の精度も向上していくことでしょう。
ユーザーを中心とした行動の把握
GA4はユーザー行動をセッションごとの計測ではなくイベントごとの計測に切り替え、その結果、1人のユーザーのクロスプラットフォーム利用を時系列で追えるようになったこともポイントです。
「1人のユーザー行動を時系列で追えるようになった」ということは、セッション計測では把握しづらかったコンバージョン要因がわかるようになり、より実践的なカスタマージャーニーに沿った施策展開が可能になったことを意味します。
自動計測
GA4がユーザー行動をイベントごとの計測に切り替えたことで、自動的に取得できるイベントが増えました。
従来のGAからGA4にアップデートした直後は「first_visit」や「session_start」といった項目しか表示されていませんが、時間の経過とともに「離脱クリック数」や「スクロール数」といったイベントが自動計測されていきます。
なお、各種イベントは画像右上の「イベントを作成」から追加することも可能です。
GA4でこうした自動計測が可能となった背景には、拡張されたコードレス機能の追加があります。イベントトラッキングのためのコード追加を行わずに「スクロール率」や「動画再生率」などを計測できるようになりました。
より深いデータの分析・活用
GA4では、従来のGAで計測されていた「PV」や「イベント」よりも深いデータの分析・活用が可能で、ひとつのPV・イベント上で行われた各アクションなどを計測できるようになっています。
こうしたGA集計前のユーザー行動に関する情報は「生データ」と呼ばれ、従来は有償版のGA360を使うことで取得可能でしたが、コスト負担が大きいといった理由で導入に踏み切れない企業が多くあったといわれています。しかし、この度のGAアップデートによって生データの取得が無償となり、多くの企業がより詳細なユーザー行動分析をGA上で行えるようになったのです。
また、GA4には、有償版のGA360に搭載されていた「BigQuery」へのデータエクスポート機能が標準搭載されています。この機能を活用して、GA4上のローデータ・BigQuery上の生データをもとにしたデータ分析が可能です。
Google Analytics 4の導入方法
GA4の導入では以下の2つのパターンが想定されます。
- 新しくGA4を導入する
- 旧バージョンにGA4を追加する
それぞれのパターンによって導入方法が異なるため、GA4での分析を開始するWebサイトやアプリが従来のGAで計測されているか否かを事前にチェックしましょう。
既に旧バージョンを利用しているユーザーは既存タグ(gtag.js:グローバルサイトタグ)を活用したデータ収集が可能ですが、新たにGAを導入するユーザーは、CMSやWebページにタグを追加する必要があります。
新しくGA4を導入する
新しくGA4を導入する手順は以下の通りです。なお当該手順はGAアカウントの作成後を想定しています。
GAアカウントにログイン後、プロパティ列の「データストリーム」を選択します。この時、アカウント列で新しく作成したアカウント名が記載されていることを確認してください。
次にデータ収集を行うデータストリームを決定していきます。iOSアプリ・Androidアプリ・ウェブの3種類から選択します(ここでは例としてウェブを選択しています)。
画像のようなウィザードが表示されます。データ収集を行うウェブサイトのURL・任意のストリーム名を入力し、「拡張計測機能」をONにしましょう。拡張計測機能をONにすることで、「離脱クリック」や「サイト内検索」、「動画エンゲージメント」や「ファイルダウンロード」などが自動的に測定されるようになります。
ストリームを作成した後は、データ収集を行うためのタグ設定方法を選択します。画像の赤枠を選択すると、グローバルサイトタグが表示されるため、CMSのカスタムHTML機能に貼り付けましょう。
旧バージョンにGA4を追加する
旧バージョンのGAで既にデータ収集を行っている場合は、以下の手順でGA4を導入していきます。
- 「管理」を選択
- プロパティ列の「GA4 設定アシスタント」を選択
- 「ようこそ」を選択
- グローバルサイトタグの設置(※必要なWebサイトのみ)
既にGAを導入しているWebサイトがグローバルサイトタグを利用している場合は、4つ目の手順を実施する必要はありません。GA4が既存のグローバルサイトタグを再利用してデータ収集を行うからです。既存のGAにグローバルサイトタグが設置されていない場合は、別途タグの設置を行う必要があります。
なお、2017年8月以前にGAを導入したWebサイトには、グローバルサイトタグではなく「analytics.js」とよばれるタグが使用されているのが一般的です。自身が管理するWebサイトにグローバルサイトタグの設置が必要かどうかは、GAの導入時期を目処に考えると良いでしょう。
Google Analytics 4の設定方法
GA4を導入した後は、以下の3つの設定を行いましょう。
- 基本設定
- イベントの設定
- コンバージョンの設定
なお、コンバージョン設定に用いる項目は、あらかじめイベントで作成した項目を適用するのが基本となります。GA4導入時では十分なデータが集まっていないため、導入後しばらくしてから設定すると良いでしょう。
基本設定
GA4を導入したら、まずは以下の項目を設定しておきましょう。
Googleシグナル
Googleシグナルとは、Googleアカウントでログインしているユーザーのクロスデバイス分析が可能になる機能です。導入時にはOFFになっているため、サイドメニュー「管理」→プロパティ列の「データ設定」→「データ収集」→「Google シグナルのデータ収集を有効にする」をONに切り替えましょう。
ユーザーデータとイベントデータの保持
ユーザーデータとイベントデータの保持では、GA4上で収集したユーザー行動データを保存しておく期間を決めることができます。デフォルトの設定では「2か月」となっているため、はじめは「14か月」に変更しておくことをおすすめします。
なお、イベントデータ保持期間の下にある「新しいアクティビティのユーザーデータのリセット」をONにしておくと、特定ユーザーからのアクセスがある度にデータ保存期間は初期化されることも覚えておきましょう。これは、あるユーザーが毎月1回アクセスを行うのなら、GA4上では14か月のデータ保持期間が常に維持されるということです。
イベントの設定
GA4ではユーザー行動を自動計測し、first_visitやpage_viewといったイベント名を随時記録していきますが、この「イベントを作成」を活用することで、収集したイベントを編集したり、任意のカスタムイベントを追加したりといった操作が可能です。例えば、BイベントのトリガーとなるAイベントに編集を加え、特定の条件が一致した場合のみ計測を行う、といった変更を追加できるようになります。
こうして新たに作成されたイベントには「コンバージョンマーク」を付与でき、コンバージョンレポート上で確認可能です。なお、自動で収集されるイベントの詳細は、[GA4] 自動的に収集されるイベントを確認してください。
コンバージョンの設定
GA4で設定するコンバージョンは、事前にイベントとしてデータ収集されている項目に限られるため、十分なデータが収集できるまで待つ必要があります。ここではGA4導入直後のイベントを使用して解説します。
イベントをコンバージョン計測用に新規作成する方法
既に計測しているイベントをコンバージョンとして計測する場合は、サイドメニュー「イベント」→「コンバージョンとしてマークを付ける」をONで設定完了です。
新しいコンバージョンイベントを設定する方法
サイドメニュー「コンバージョン」→「新しいコンバージョンイベント」→「新しいイベント名」への入力で設定完了です。今回は例として、「ユーザーがプロモーションを選択したとき」を意味する「select_promotion」を入力しています。
Googleが推奨するイベント[GA4] イベント: 小売と e コマースも参考にしてください。
レポートの閲覧・分析の方法
各種機能の追加・アップデートに合わせて、GA4ではレポート画面のUIも変更されています。
画像はレポート画面の一部となりますが、従来のGAと比べて、サイドメニューやカード情報にさまざまな変更が加えられていることがわかります。機械学習の導入にともないアップデートされたユーザー行動に関する分析タブとして「集客」や「維持率」、「ユーザー属性」などがレポート画面のファーストビューに表示されました。
また、サイドメニューには「分析」タブが標準搭載されており、GA4上で収集したデータをさまざまなテンプレートを使って可視化できます。使い方によってはGA4を活用したユーザーデータの収集・活用の一元管理ができることでしょう。
Google Analytics 4へ移行するべきか
使い方がよく分からない状態でのGA4完全移行には抵抗を覚える方も多いかと思いますので、まずは従来のGAとの併用をおすすめします。仮にGA4プロパティを作成したとしても、既存のGAプロパティのデータが消えることはありませんので、まずは導入してUIを確認し、しかるべきタイミングで完全移行へと踏み切るのが良いでしょう。
- GA4は、Googleが2020年10月から提供を開始した最新のGoogleアナリティクス
- Webサイトとアプリそれぞれのアクセスを1つのユーザー行動として把握できる「クロスプラットフォーム分析」が可能に
- プライバシー保護を考慮しつつ、ユーザー行動を詳細に追えるようになった
- 機械学習が導入され、GA上に蓄積されたデータから将来の売上や解約率などを計測可能に
- パルス消費のデータ収集・予測にも対応し得る可能性
- セッションごとの計測ではなくイベントごとの計測に切り替え、コンバージョン要因を分析
- 「イベントを作成」の活用で、収集したイベントの編集や、任意のカスタムイベントの追加が可能
- 各種機能の追加・アップデートに合わせ、レポート画面のUIも変更された
- まずは従来のGAとの併用がおすすめ