自動運転のレベル0~5までの定義と車種一覧|レベル5はいつ実現するのか?
自動運転レベルとは、「運転の自動化がどこまで成されているのか」の度合いを示す指標で、レベル0から5までの6段階にて設定されています。
- レベル0/運転自動化なし:運転支援システムが存在しない
- レベル1/運転支援:運転補助機能が部分的に備わっている
- レベル2/部分運転自動化:アクセルやブレーキなどを一定条件下で自動制御できるが、運転者は常に介入可能である必要がある
- レベル3/条件付運転自動化:一定条件下で自動運転が可能で、その状況下では運転から解放されるが、緊急時には運転を引き継ぐ必要がある
- レベル4/高度運転自動化:一定条件下で完全自動運転が可能で、運転者の介入は原則として不要
- レベル5/完全運転自動化:あらゆる条件での完全自動運転が可能
本記事では、自動運転レベルの概要とレベルごとの定義の詳細、対応車種を解説するとともに、国内における自動運転レベルの現況について解説します。
POINT
- 自動運転レベルとは、0から5の6段階で定義される、「自動運転の度合い」を示す数値のこと
- 自動運転レベル0から2を「運転支援(ADAS)」、レベル3から5は「自動運転(AD)」と2つの領域に大別される
- 政府は2025年を目処に自動運転レベル4を実現する目標を掲げているが、実現にあたっては法律やルールの整備・策定が必要不可欠
- 自動運転レベル5に達するのは、少なく見積もっても10年以上先になると見られている
Contents
自動運転レベルとは
自動運転レベルとは、0から5の6段階で定義される、「自動運転の度合い」を示す指標です。
なお、日本国内では2024年現在、自動運転車として市販されている車種の多くは、レベル2の「部分運転自動化」にまで達しており、一部の車種ではレベル3に該当する「条件付運転自動化」の技術も導入されています。さらにレベル4の「高度運転自動化」の実装に向けた進展も見られる状況です。
また、「自動運転」という言葉には人間を介せずとも自動車が完全に自走するイメージもありますが、現段階では主に運転するのはあくまでも人間であり、自動運転機能は人間の運転を補助する機能にとどまっています。
国土交通省による自動運転レベルの定義
自動運転レベルは、米国自動車技術者協会(SAE:Society of Automotive Engineers)が定義づけたもので示されるのが一般的です。ただし日本では、国土交通省がそれとは別に基準を設け、日本独自の定義を作成しています。
この自動運転レベルがあることで、自動運転技術の実用化によって必要になる法整備等に役立つほか、開発側とユーザーの認識を一致させることができます。
自動運転のレベル分け【表と図解】
自動運転レベル0~5の定義を図表化したものがこちらです。
レベル | 名称 | 安全運転に係る監視、対応主体 |
---|---|---|
レベル0 | 運転自動化なし | 運転者 |
レベル1 | 運転支援 | 運転者 |
レベル2 | 部分運転自動化 | 運転者 |
レベル3 | 条件付運転自動化 | システム (作動継続が困難な場合は運転者) |
レベル4 | 高度運転自動化 | システム |
レベル5 | 完全運転自動化 | システム |
自動運転レベル0はまったく自動運転技術が搭載されていない状態です。レベル1では運転の補助支援を、そして日本の公道においても広く普及しているレベル2では、部分的に自動運転を利用できます。
なお、レベル0から2は主に「人間が」運転する状態です。事故等の責任は運転者にあるとされます。
そしてレベル3では、特定の場所などの条件下であれば自動運転が可能な「条件付運転自動化」に達します。ただし、特定の状況下では運転者はシステムの監視から解放されますが、緊急時には運転を引き継ぐ必要があります。
さらにレベル4では、特定の条件下で自動運転システムが運転のすべてを制御する「高度運転自動化」に達し、レベル5は場所や条件に関わらず、いつ・どこでも自動運転機能が働く「完全運転自動化」を指しています。
このように、レベル3から5では、「システムが」主に運転を担います。そのため事故等の責任はシステムにあるとされるのが一般的ですが、実用にあたっては責任の所在を定義する法整備は不可欠となるでしょう。
つまり、事故等の責任の所在から、自動運転レベルは大きく「レベル2以前/レベル3以降」で分類されます。自動運転レベル0から2は「運転支援(ADAS)」、レベル3から5は「自動運転(AD)」と、2つの領域に大別されているのです。
- ●ADASとは
- ADAS(エーダス:Advanced Driving Assistant System)は先進運転支援システムのことで、自動車運転中の事故を未然に防いだり、運転にかかる不可を軽減したりするシステムの総称。自動ブレーキ機能やレーンキープアシスト機能などがこれに該当する。
自動運転レベル0:運転自動化なし
自動運転レベル0は、自動運転技術がまったく使われていない車です。ドライバーが運転にかかる作業をすべてこなす必要があり、運転を支援するシステム(ADAS)も搭載されていません。ひと昔前の自動車を想像するとわかりやすいでしょう。
自動運転レベル1:運転支援
自動運転レベル1の自動車には、運転を支援するシステムが搭載されています。
- アダプティブクルーズコントロール機能:前方を走る車に追従する
- レーンキープコントロール機能:車線内走行の維持を支援する
これらの機能を有する自動車がレベル1に該当します。
自動運転レベル2:部分運転自動化/ハンズオフ
自動運転レベル2では、アクセルやブレーキ操作を自動で行い、前走者を追従して走行する「アダプティブクルーズコントロール」にも対応し、ハンドルから手を離す「ハンズオフ」状態での走行が可能になります。システムが縦方向と横方向両方の運動を制御できるようになり、システムによる加速と減速、操舵が実現されます。
国内では日産の「Pro PILOT 2.0」が代表的な該当例です。高速道路走行時など一定の条件を満たせば、ドライバーはハンドルから手を離すことが可能です。
メーカー | ADASシステム | 搭載車種例 |
---|---|---|
トヨタ自動車 | Toyota Safety Sense |
|
ホンダ | Honda SENSING |
|
日産自動車 | Pro PILOT 2.0 |
|
スバル | アイサイト アイサイトX |
|
マツダ | i-ACTIVSENSE |
|
自動運転レベル2の技術革新でしのぎを削る、日本国内メーカー各社のシステム開発への取り組みを紹介していきます。
トヨタ自動車「Toyota Safety Sense」
トヨタ自動車では国内トップの自動車メーカーとして、自動運転を含むさまざまな最新システムの開発に努めています。
TOYOTA Safety Senseは、カメラとレーダーによって情報を取得し、そのデータをもとにドライバーの運転における負荷を軽減するシステムです。
レーダークルーズコントロールによって、前方の車と適度な車間距離を保つよう自動で運転を行います。また、カーブ速度抑制機能も有しており、システムが必要と判断した場合には速度を抑制してくれます。ただしこの機能では、カーブに入りはじめは自動運転のままですが、途中からドライバーによる手動操作が必要になります。
ホンダ「Honda SENSING」
Honda SENSINGにもさまざまな機能が搭載されています。
- アダプティブクルーズコントロール
- 車線維持機能
- 道路標識認識機能
- 自動ブレーキシステム
これらの機能にて、高速道路下での自動運転や、一般道を含むすべての道路での運転を支援してもらえます。
なお、Hondaは国内の自動車メーカーの中で初となる、自動運転レベル3の自動車の市販も果たしています。自動運転システムに関しては国内メーカートップクラスの技術力を有するといっても過言ではないでしょう。
日産自動車「ProPilot 2.0」
日産のPro PILOT2.0では、自動車に搭載したナビゲーションのルートに連動した走行や車線追い越し支援が可能です。
さらに、ハンズオフドライブも高速道路であれば利用できます。自動運転では、加減速だけでなく、カーブでのハンドリングアシスト、標識・道路形状に合わせた走行を可能にしています。
日産の自動運転は機能が豊かで、ドライバーの負担を大きく軽減できるシステムになっているといえるでしょう。
SUBARU「アイサイト」「アイサイトX」
SUBARUのアイサイト、アイサイトXでは、下記のような機能によって自動運転システムを実現しています。
- カーブ前の速度抑制機能
- 渋滞時ハンズオフアシスト
- 自動路線変更機能
また、SUBARUアイサイトの特徴として、ドライバー異常時対応システムを搭載していることが挙げられます。ドライバーが突然意識を失うなどしてハンドル制御が困難になったときでも、ドライバーの状態を検知して周囲に注意を促しながら停車をアシストするものです。
マツダ「i-ACTIVSENSE」
マツダのi–ACTIVSENSEは、前方・後方の衝突被害軽減ブレーキや前方走行車との車間距離を認識して自動で速度をコントロールする機能などで運転時のリスクを低減します。このように、マツダの自動運転機能は、自動車のコントロール機能を強化して安全性を高めることに主に用いられています。
さらに2022年からの新モデル車種には「マツダ・コ・パイロット」が順次導入されており、ドライバーの異常を検知して自動走行に切り替えるシステムが搭載されたことから、これまでよりも多くのリスクに備えられるようになっています。
自動運転レベル3:条件付運転自動化/アイズオフ
自動運転レベル3になると、ハンドルだけでなく視線も運転に集中しなくてよい「アイズオフ」が可能となります。ただしアイズオフは一定の条件下のみで、すべての状況でできるわけではありません。また、緊急時などADシステムからの要求があれば、運転者は運転を引き継ぐ必要があります。
自動運転レベル3になると、自動運転機能もより充実してきます。具体的には、交通渋滞時の自動運転や自動レーンキープ、自動加速・減速、緊急時の自動停止などが含まれます。
自動運転レベル3の車種
2021年3月発売の新型レジェンドに搭載された「Honda SENSING Elite」は、日本初の自動運転レベル3を実現しました。この技術では、ウインカーを操作するだけで車線変更が可能となるほか、高速道路の渋滞時にはシステムが周囲の監視や運転操作を行うことが可能です。ナビ画面での動画視聴や目的地設定も行えます。
なお、2024年時点においても、ホンダのレジェンドは日本メーカーが販売している唯一のレベル3自動運転技術を搭載した市販車となりますが、現在は生産終了となっています。
海外メーカーに目を向けると、メルセデスベンツは「DRIVE PILOT」システムを搭載した自動運転レベル3の車種を販売しています。同システムはSクラスおよび EQS セダンモデルに搭載されています。
自動運転レベル4:高度運転自動化/ブレインオフ
自動運転レベル4ではほぼ完全な自動運転が可能です。限定領域下においてシステムがすべての運転タスクを自動で行い、ドライバー不在でも自動車が走行するようになります。
ハンズオフ、アイズオフに加えて、レベル4以降では運転者が何も考えなくとも走行できることから、レベル4以降の自動走行の状態は「ブレインオフ」と呼ばれています。
自動運転レベル4の車種と現状
前述した通り、日本国内では自動運転レベル4の実装に向け、官民を挙げた取り組みがなされています。2023年3月には福井県永平寺町にて、レベル4の自動運行装置「ZEN drive Pilot Level 4」を搭載した車の公道での運行が初めて認可されました。これにより、運転者不在での運行も可能となり、特定の条件下での運用が許可されています。
さらに日本政府は、2025年までに少なくとも40の地域にて、自動運転レベル4の運用の展開を目標としています。
参考:国内初!自動運転車に対するレベル4の認可を取得しました|経済産業省
自動運転レベル5:完全運転自動化
自動運転レベル5では、完全な自動運転が可能です。高速道路や一般道路など道路の種類に関係なく、どのような状況でもブレインオフな自動運転を実現します。
現在の技術では実現は困難とされていますが、今後のセンサーやAI技術の進歩によって実現できるのではと期待されています。
自動運転レベル5にいつ達するか
自動運転レベル5は、あらゆる環境下にて運転者の介入なしに自動運転を実現できる、まさに夢の技術です。「未来のあるべき社会」の姿のアウトラインとして政府が推進する「Society5.0」とも密接にかかわっており、早期の実現が待たれていますが、現在のところ公道での運用が許可されている例はありません。
達成時期については専門家の間でも意見がわかれていますが、完全なレベル5自動運転の実現は少なくとも10年以上先とされているのが一般的な見解でしょう。技術的な課題のほか、安全規制の確立、インフラ整備など、多くの障壁が存在します。
自動運転技術の進歩は今後も目が離せないイノベーション
自動運転は、一般ドライバーだけでなく、公共交通機関や配送業界においても大きな期待が寄せられている最新技術です。レベル5に達するまで、長期間にわたりシステムの開発が進められて行くとみられます。
画期的なシステムが開発されれば、自動車を取り巻く環境は大きく変化するはずです。社会変革のきっかになりうる自動運転技術は、今後も目が離せないイノベーションとなるでしょう。
- 自動運転レベルとは、0から5の6段階で定義される、「自動運転の度合い」を示す数値のこと
- 自動運転レベルは、米国自動車技術者協会が定義づけたもので示されるのが一般的だが、国土交通省でも日本独自の定義を作成している
- レベル0から2は人間が主に運転する状態になるため、事故等の責任は運転者にあるとされている
- レベル3から5まではシステムが主に運転を行うことから、事故等の責任はシステムにあるとされるのが一般的
- 自動運転レベル0から2を「運転支援(ADAS)」、レベル3から5は「自動運転(AD)」と2つの領域に大別される
- 自動運転レベル2の自動車は国内メーカー各社から市販されており、レベル3の自動車も量産化が可能な状態となってきている
- 政府は2025年を目処に自動運転レベル4を実現する目標を掲げているが、実現にあたっては法律やルールの整備・策定が必要不可欠