週休3日制とは?いつから義務化される?給料は減る?メリットと導入事例を徹底解説

新型コロナウイルスの感染拡大や少子高齢化などを背景に、多様な働き方が求められている昨今、「週休3日制」が注目を集めています。
現在では大企業を中心に導入が進められている週休3日制は、単純に「休日が増える」だけの制度ではありません。週休3日制の種類やメリット・デメリットなどを、導入事例を交えて考察していきます。
Contents
週休3日制とは

週休3日制とは「月に1度以上、1週間に3日間の休日を設ける」制度です。
これは、現在多くの企業で採用されている「週休2日制」同様に義務ではなく、すべての企業で取り入れられるものではありません。昨今では大企業を中心に導入が進んでおり、世間的に高い注目を集めている制度です。
週休3日制には、次の3つの運用パターンがあります。
- 給与維持型:休みを増やし、かつ給与は週休2日制のときのまま
- 労働時間維持型:休みが増える代わりに1日の労働時間も増える
- 給与減額型:休みが増える分、給与は減額となる
運用パターンによって、労働時間や給与に対する仕組みが変わってきます。「休日が増えて、給与は減らない」パターンもありますが、「休日分の給与は減額される」パターンもあるので、種類の違いをしっかり認識しておきましょう。
給与維持型
給与維持型は、「休みを増やし、かつ給与は週休2日制のときのまま」の運用パターンです。
これは1日休みが増えるぶん、残り4日間の稼働日の労働時間が増えるわけではありません。給与水準を保ったままで週に1日休みが増える、従業員にとってはもっとも嬉しいパターンでしょう。
一方、月あたりの総労働時間は必然的に減少するため、制度導入前と同水準での企業活動を継続するには、1日あたりの生産性を高める必要に迫られます。業務フローの見直しやITツールの導入など、生産性向上施策との並行が欠かせないでしょう。
労働時間維持型
労働時間維持型とは、「休みが増える代わりに1日の労働時間を増やし、週あたりの労働時間を確保する」運用パターンです。
現在の労働基準法では、労働時間は「1日8時間以下、週40時間以下」と定めています。週休2日制の場合は、「8時間/日×5日間=40時間/週」ですが、労働時間維持型の場合は「10時間/日×4日間=40時間」となります。
これはあくまで一例で、導入する企業によって1日の労働時間の規定は変わってくるでしょう。
総労働時間が変わらないため、給与も週休2日制のときと変わりはありません。ただし、1日あたりの労働時間が長くなるため、労働負荷が増す点が懸念されます。
給与減額型
給与減額型は、「単純に休みが増える分、給与が減額となる」パターンです。休みが増えて嬉しい反面、給与が減ることに抵抗感を覚える従業員もいるため、希望制を採ることが一般的です。
週休3日制はいつから義務化される?
現在では、週休3日制を義務化する動きは見られません。
2021年6月に閣議決定された「「骨太の方針経済財政運営と改革の基本方針2021 日本の未来を拓く4つの原動力~グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策~」(骨太方針2021)」では、選択的週休3日制について、下記のように言及されています。
選択的週休3日制度について、育児・介護・ボランティアでの活用、地方兼業での活用などが考えられることから、好事例の収集・提供等により企業における導入を促し、普及を図る。
「企業における導入を促し、普及を図る」ことに留めていることから、週休3日制導入の意思決定は企業側に全面的に委ねられている状態です。
週休3日制のメリット

週休3日制は、さまざまなメリットが期待されている制度です。
離職率の低下・求職者の増加
休日を増やすことにより、ワークライフバランスが取りやすくなることから、離職率の低下が見込めます。また、多様な働き方ができる企業として、理想のライフスタイルを実現できる環境が強みとなり、求職者が増える可能性もあります。
生産性の向上
労働時間減少に応じて、事業をスローダウンするわけにはいきません。生産性向上のためのツール導入や業務改善への取り組みは、企業側にとって欠かせないミッションとなります。
結果、1人あたりの生産性が向上し、企業全体のオペレーションも最適化へ向け整っていくでしょう。
経費削減
休みが増える分、職場の稼働日数も減るため、光熱費などの経費削減につながります。通勤手当や残業手当などの削減もなされるでしょう。
週休3日制のデメリット

メリットの一方で、週休3日制には次のような課題も指摘されています。
ビジネス上の機会損失リスクが増える
自社が週休3日制を採用しても、取引先は週休2日制を維持している場合では、円滑なコミュニケーションが阻害される事態が懸念されます。
場合によっては、ビジネスチャンスを逃すことにもなりかねません。導入後のフォロー体制をあらかじめ綿密に整えておく必要があります。
業務の進捗に影響が出やすくなる
休日が1日増えると、社員同士でコミュニケーションを図る機会も1日分減ることになります。コミュニケーションの総量が不足した結果、業務遂行に影響をおよぼす可能性も否めません。
運用パターンによっては勤怠管理が煩雑化する
3つの運用パターンのうち、希望制を採ることが多い「給与減額型」を採用した場合、週休2日制の従業員と週休3日制の従業員が混在することになります。
結果、勤怠管理は煩雑化し、人事・労務担当者の負担が増すことにもなるでしょう。
日本における週休3日制の導入状況と事例
厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査 結果の概況」によると、週休3日制を導入している企業は8.5%に留まります。なお、企業規模に応じて導入率に差分が見られます。
従業員数 | 導入率 |
---|---|
30~99人 | 7.4% |
100~299人 | 10.5% |
300~999人 | 11.9% |
1,000人以上 | 12.6% |
上記では、週休3日制は大企業を中心に導入が進んでいる実態が示唆されています。
実際に週休3日制は、株式会社日立製作所やYahoo!株式会社、株式会社ファーストリテイリングなどの有名企業で導入されており、その事例からは運用パターンにおける工夫が見られます。
株式会社日立製作所の週休3日制導入事例
株式会社日立製作所は、2022年4月に週休3日制の導入を発表しました。
これに合わせ、勤務日あたり最低30分は働かなければいけなかった労働下限時間も撤廃。1ヶ月の勤務時間をクリアすることを条件に、従業員の判断に応じて1日の労働時間を増やせるようになったことで、有給休暇以外にも休暇の取得が可能になりました。
ヤフー株式会社の週休3日制導入事例
ヤフー株式会社では、2017年4月1日に週休3日を選択できる「えらべる勤務制度」を導入。利用対象者は「小学生以下の同居する子を養育する」または「家族の介護や看護をする」正社員および契約社員です。
制度を利用して取得した休日分は無給となる、給与減給型の運用パターンを採用しています。
株式会社ファーストリテイリングの週休3日制導入事例
株式会社ファーストリテイリングでは、転勤のないユニクロの地域正社員を対象に、2015年10月から週休3日制度を導入。従業員数の増加とあわせ、離職率の低下を目的にしています。
運用パターンは労働時間維持型。労働時間は1日10時間×週4日(土日含む)で、休日は平日に取得できる仕組みを採用し、通常のフルタイム勤務と同額の給与が支給されます。
週休3日制以外にもあるフレキシブルな働き方
多様な働き方を実現できる雇用形態は、週休3日制以外にも考えられます。
職務限定正社員 |
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勤務地限定正社員 |
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短時間正社員 |
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派遣社員 |
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このように、フレキシブルな働き方は週休3日制だけが実現できるものではありません。理想のワークライフバランスや志向するキャリアを実現するためには、上記のような雇用形態を採用している企業を探してみるのもひとつの手段です。
週休3日制に関するよくある質問・Q&A
最後に、週休3日制に関するQ&Aをまとめます。今後の働き方について、選択肢を広げる参考にしてください。
週休3日制が義務化される予定はある?
週休3日制の義務化は、その時期なども含め何も決まっていない状況です。将来的な義務化についても白紙であり、導入の意思決定も現状では企業の裁量に任されています。
公務員はいつから週休3日制になる?
現時点では、公務員において週休3日制は導入されていません。今後の導入も未定です。
週休3日制だと給料は下がる?
給与変動の有無は週休3日制の運用パターンによって異なります。給与が下がらない運用パターンは「給与維持型」と「労働時間維持型」です。一方、「給与減額型」は、休日の取得に応じて給与が減額となる仕組みになっています。
週休3日制の求人はある?
あります。週休3日制の導入企業はまだまだ少ない状況ですが、その数は年々増えつつあります。
週休3日制で働ける業種や職種も多様化へ向かっており、今後の選択肢がさらに広がることも予想されます。
- 週休3日制は「月に1度以上、1週間に3日間の休日を設ける」制度
- 休みが増え給与は週休2日制のときのままの「給与維持型」、休みが増える代わりに1日の労働時間も増える「労働時間維持型」、休みが増えるが給与は減額となる「給与減額型」の3つの運用パターンがある
- 現在、週休3日制を義務化する動きは見られず、導入の意思決定も企業側に全面的に委ねられている状態
- 週休3日制には、離職率の低下と求職者の増加、生産性の向上などのメリットがある一方で、業務へのネガティブな影響も指摘されている
- 週休3日制を導入している企業はまだまだ少なく、大企業を中心に徐々に導入が進んでいる状況
- 週休3日制のほかにも、フレキシブルな働き方を実現する雇用形態がある