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アノテーションとは?AI・機械学習における意味や役割をわかりやすく図解

急速に活用が進んでいるAI技術領域において、「機械学習」はその中核を担います。

AIの開発や活用に関連する話題にて、聞かれる機会が増えてきた「アノテーション」とは、機械学習に必要なデータを生成するために実施される作業の一環に該当します。機械学習において重要なプロセスのひとつに数えられるものです。

本記事では、AI分野におけるアノテーションとはなにか? その種類や実施方法などについて解説します。

アノテーションとは

アノテーション(annotation)とは、日本語では「注釈」「注解」を意味する言葉ですが、AIの分野ではタグ(metaタグ)をさまざまな形式のデータに付与する作業を指します。

機械学習において、AIが特定のデータが「何か」を認識するには、それぞれのデータの特徴を理解しなければいけません。たとえばAIが複数の食べ物の画像データを収集する際、事前に食べ物の特徴をタグで示しておくことで、それぞれがどの食べ物なのか、正確に区別できるようになります。

アノテーションはすでに広く活用されており、コールセンターやスマートスピーカー、車の自動運転など、さまざまなサービスやプロダクトを支える工程になっています。

たとえばコールセンターやスマートスピーカーでは、音声認識技術の精度向上などを目指してアノテーションが実施されています。また、車の自動運転においては、車載カメラで撮影された画像にアノテーションを活用し、リアルタイムでの障害物検出などの実現に役立てられています。

 

なぜアノテーションが必要なのか?

AI技術にアノテーションが必要とされる理由に、主に次の2つが挙げられます。

  • 機械学習における教師データの作成
  • ビッグデータを活用できる形式にする

 

機械学習における教師データの作成

そもそも機械学習とは、コンピューターがデータの背景にあるルールやパターンを発見・学習する一連のフローを指すものです。コンピューターに大量のデータを読み込ませ、反復学習を介してデータ分析や予測の精度を高めます。

なお、機械学習は大きく「教師あり学習」「教師なし学習」の2種類に分類できますが、アノテーションは「教師あり学習」のための作業プロセスです。

 

ビッグデータを活用できる形式にする

アノテーションは、ビッグデータを「活用できる形式」に変換するためにも必要な作業です。

なおビッグデータとは、「データベースソフトウェアが蓄積や分析できる能力を超えたサイズのデータ」が一般的な解釈です。このビッグデータの解析は、企業活動や社会・経済の問題解決に貢献するとされています。

SNSの投稿やWebサイトで収集された行動ログ、あるいは業務で生まれる膨大かつ多様なデータをビジネスに活用するには、詳細なデータ解析が必要です。

それらのデータの分類にあたり、アノテーションによるタグの付与は重要な役割を担っており、データの分類・解析の容易化に寄与しています。身近な例では、検索エンジンの検索結果を最適化するためにもアノテーションが行われています。

 

アノテーションの種類

アノテーションは、次のようなデータの属性に応じた種類に区分できます。

  • 画像や動画のアノテーション
  • 音声のアノテーション
  • テキストのアノテーション

 

画像や動画のアノテーション

画像や動画のアノテーションでは、写し出されているものを検出して意味を付ける方法や、特定の領域を選択しタグ付けする方法などがあります。具体的には、次のような方法でアノテーションが実施されます。

バウンディングボックス
  • 物体検出とも呼ばれる
  • 画像や動画に写し出されているものを検出し、言葉に意味を付ける
  • 画像にある物体をバウンディングボックスで囲み、その物体が何かをタグ付けする
セマンティック
セグメンテーション
  • 領域分類とも呼ばれる
  • 画素の一つひとつにラベル付けする方法
  • 空や道路など不定形の領域を検出できる
クラシフィケーション
  • 画像をカテゴリ別に分類する方法
  • 画像の内容からどのカテゴリに属するかを判別できるようになる

画像や動画のアノテーションには複数の種類があり、それぞれ目的が異なります。

バウンディングボックスは、自動運転技術や、請求書やレポートなど帳票画像の分類などに用いられます。また、セマンティックセグメンテーションでは、画素(画像ピクセル)ごとにラベルを付ける細かな作業が発生します。これにより、自動で被写体を識別できるようになることが特徴です。こちらも自動運転技術に活用されているほか、製造工場や医療など、さまざまな業界の現場で活用されています。

クラシフィケーションは、比較的簡易なアノテーションです。画像を人や動物など、カテゴリ別にタグ付けし、被写体がどのカテゴリに属するかを判別します。クラシフィケーションは、顔認証システムなどに活用されています。

 

音声のアノテーション

音声のアノテーションは、音声データをテキスト化した後に、単語ごとに意味をタグ付けする方法で行われます。このアノテーションは、自然言語処理などに活用されています。また、話者の年齢や性別など属性をアノテーションし、話者識別や感情認識技術に用いられることもあります。

音声のアノテーションは、音声認識アプリケーションの精度向上、ポッドキャストなど音声コンテンツやビデオコンテンツにおける自動字幕生成機能にも必要不可欠なものです。

 

テキストのアノテーション

テキストのアノテーションは、さまざまなテキストに商品名や企業名、感情や意図などのタグ付けを行います。これは主に、コンピューターが人間の言葉を理解するための自然言語処理に用いられており、自動応答ができるチャットボットなどにも活用されています。

 

アノテーションを実施する方法

アノテーションを実施するにあたっては、アノテータに依頼する、あるいはアノテーションツールの活用が想定されます。

 

アノテータに依頼する

アノテーションをアノテータに依頼する際には、代行サービスやクラウドソーシングの利用が考えられます。

方法 メリット デメリット
代行サービスを利用する
  • 品質が高い傾向にある
  • 契約に時間がかかることがある
  • 目的や想定する内容に適した業者を選定する必要がある
クラウドソーシングを利用する
  • 比較的低コストで実施できる
  • 作業者によって品質にバラつきがでやすい

アノテーションを専門とする業者に依頼する代行サービスの利用では、品質の高いラベル付きデータを得られる傾向にあることが大きなメリットです。一方で、業者との契約や選定に時間がかかることもあります。

個人事業主などに作業を依頼するクラウドソーシングの場合、作業者によってデータの品質にバラつきがでてしまう懸念はぬぐえません。一方で、比較的低いコストで実施できることは利点です。

なお、アノテーション作業に使用されるデータには、顔写真や氏名など、重要な個人情報が含まれるケースも少なくありません。どの方法を利用する場合においても、データの利用ルールやセキュリティポリシーに準じた作業は必須です。費用と品質のバランスのほか、セキュリティ体制も依頼時の重要な判断基準になります。

 

アノテーションツールを導入する

アノテーションツールとは、教師データを作成するためのツールです。画像や音声、テキストなどアノテーションの種類に応じて選択します。

アノテーションツールを導入する際には、次のような点を確認します。

  • 必要とするデータ形式で出力できるか
  • 複数人で利用するための管理機能を有しているか
  • データのセキュリティ対策やプライバシー対策は万全か

 

アノテーションにおける注意点

アノテーションを実施する際には、次の2点に注意しましょう。

  • ルールや定義を統一する
  • 専門分野では有識者が必要になる

 

ルールや定義を統一する

複数の作業者がアノテーションに携わる場合、アノテータによって品質にバラつきがでてしまうことがあります。また、ルールや定義が統一されていない状態でアノテーションを実施すると、AIに学習させたい内容とは異なる、品質の低いデータが生成されてしまいます。

また、低品質なデータを用いた学習は、AIの予測や認識精度の低下を招きます。複数のアノテータによる作業であっても適切なデータを生成できるよう、作業基準書や仕様書の用意は欠かせません。

 

専門分野では有識者が必要になる

専門性が高い分野でのアノテーションでは、有識者の知見が頼りになります。そもそもどのようなタグを設定すべきか、あるいはタグが正しく付与されているかの確認などがボトルネックになってしまっていては、有識者の存在なしで高品質なデータは生成できません。

たとえば、高い専門知識が必要な疾病の診断支援や技術手術支援に用いられるAIや医療ロボットには、医療や人体に関する深い知見をもつ専門家の存在が欠かせません。

 

まとめ
  • アノテーションとは、AI分野ではタグをさまざまな形式のデータに付与する作業を指す
  • 機械学習における教師データの作成や、ビッグデータを活用できる形式に変換する際などに欠かせない工程
  • すでに広く活用されており、コールセンターやスマートスピーカー、車の自動運転など、さまざまなサービスやプロダクトを支えている
  • 画像や動画、音声、テキストなど、データの属性に応じてアノテーションの手法は異なる
  • アノテーションを実施する際には、ツールを導入する、ルールや定義を統一するなど、品質の高いラベル付きデータを生成するための準備が欠かせない

 

 

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